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俺は主人公の友人Aとして生きたいの!〜バトルファンタジー漫画の世界に転生した俺はTS転生した美少女主人公(中身おっさん)を狙っている訳ではない〜  作者: どかんどかん!ぱおんぱおん!
第一章 学園入学:龍紋 ファフナ編

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第三十八話 空き教室でヴロちゃんさんと

 授業終わりのチャイムが鳴った。


「はぁうあ…」


 腰がほぼ直角に曲がった歴史担当のお爺ちゃん先生が何かを感じ取ったのか、チョークを教壇に置いた。そして、フガフガぷるぷると震えながら耳に手を当てた。どうやらよく聞こえていないらしい。


 しばらくの間、教室という空間をチャイムの音のみが支配する。


 ある種の静寂の中、ごくり、と誰かが唾を飲んだ。クラスみんなの想いはたった一つだ。ぷるぷると震えるお爺ちゃん先生に皆の視線が集中する。


(((終われ…!早く昼休憩を…!)))


「………んあ〜?」


 駄目そうだった。ぷるぷるどころかブルブル震え出したお爺ちゃん先生。ケータイのバイブレーションかってくらい酷い。ついたツエなんかゲームのバグかってくらい暴れ倒している。

 しかし、話に聞くとこう見えて昔は凄かったらしい。嘘か誠か、かつての100年戦争では空や大地を割断したとかどうとか。

 あぁ…どんどん地面に沈む様に膝から頽れていく…。


「…あのジジイ大丈夫なのかぢょ。

 なぁ、もう休憩時間に入ってもいいんぢゃないか?お前もそう思うぢょ蛇ば…おぉ?」


「先生、大丈夫すか!」

「んおあぁ…」


 思わず駆け寄ってみたが、駄目そうである。振動が速すぎて俺の動体視力では捉えきれないレベル。

 先生が前後不覚に陥った場合はどうすりゃいいんだ。とりあえず誰かに他の先生を呼んでもらおう。その間、俺は名前を呼び続けるしかない。


「ごめん誰か他の先生呼んできてくれ!」

「わ、わかった!」


 ファフナちゃんがパッと教室を飛び出して行く。………。彼女の足のことだ。すぐに誰かを連れて戻って来てくれるだろう。


「おーい先生…!大丈夫ですか!」

「あ…んお…」

たけ先生…!たけ 震右衛門しんえもん先生!」

「んおあ………おぉ、そうさ。儂こそ『国断ち』震右衛門しんえもんさァ」


 おぉ…?


 突如として、ぐん、とお爺ちゃん先生の背が伸びた。いや、伸びた訳ではない。曲がっていた腰が真っ直ぐになったのだ。

 震えはピタリと鳴りを潜め、胸を張って立っている。彼はツルリとした頭を撫で上げながら、クアッと大きな欠伸を一つした。そしてツエでぴしゃりと己の肩を叩きながら、


「…帰って来たぜ戦場にァ!…ってアラ?……ツァッ!しァった夢かァ!」


 舌打ちしながらパンと自身の頭を叩き、しまったという顔をするお爺ちゃん先生。

 急すぎる豹変にクラス一同、何も言えずに彼に注目し続けている。

 参った様子でツルツル頭を撫で回す先生と、一番近くに立っていた俺との目が合った。すると、先生は歯を剥いた快活な笑みを浮かべ、俺の頭をくしゃくしゃと撫で始める。


「ありがとよォわっぱ。うっかりァぜ。儂としたことがァ。…へっ、悪ィな。助かったゼ」

「あ、えっと全然大したことじゃないです」

「近頃ァ、トシでなァ。たまにゃ無の時間作らにゃァ、残り時間が減っちまうのヨ。ま、最近ァ帰って来れねェ時間ァ増えちアったんだがよォ…へっへっへ。

 おぉら時間ァ食っちまって悪かったなテメェら。これにて授業終わらせてもらわァ。あばよォ」


 そう言うと先生は、ついていたツエで肩を叩きながら大股歩きで教室を出て行った。彼の鼻唄だけが廊下から響いて来ている。

 しばらくの間、全員が廊下の外を見つめ続ける。俺はみんなの声を代弁する様にポツリと呟いた。


「キャラ濃いなぁ…」

「「「「お前もな」」」」

「ん?」

「オヒゲ先生連れて来たわよ!…ってあれ?お爺ちゃん先生は?」

「お、おお、おおお…。この歳でおんぶされるとはこのオヒゲ…不思議な感動を覚えているネェ…!」


 …

 ……

 ………


 すでにお昼休憩に10分近く食い込んでいる。あれからすぐに俺は、ヴロちゃんさんの背についてしばらく廊下を移動していた。

 ヴロちゃんさんは走りはしないものの、かなりの早歩きだ。競歩とかのレベル。俺はもうしんどい。かなり。会話も一言もない。辛い。喋る余裕も無い。


「ここでいい」

「ひぃ…へぇ…う、うん。わかった」

「『御魂揺るがす五天輪(フィンガーリングス)第一ファースト』」


 階段を上がったり降りたり、また昇ったりしながら10分近く移動を続け、ようやくヴロちゃんさんが歩みを止めた。俺はもう息も切れ切れだ。

 一方で、まるで疲弊を感じさせないヴロちゃんさんはスキルを発動して教室のドアを開いた。………。何も言うまい。

 恐る恐る中に入ると当然ながら、そこには俺とヴロちゃんさん以外に人影はない。どうやら今は使われていない空き教室らしい。

 しばらく使われてない様で、教室後ろに下げられた机には僅かにホコリが積もっていた。


 曇った窓を人差し指で撫でると、こんもりとホコリが溜まる。きちゃない。ふぅーっ!


「で、どうしたのヴロちゃんさん?」

「…一つ礼を言う。昨日のことだ」

「えっ!ちょ」


 ヴロちゃんさんが深々と俺に向かって頭を下げた。こんなこと初めてだ。漫画でも見たことなかった光景に、俺は心底困惑していた。


「昨日はファフナ様を助けてくれた事、感謝している。眷属として実に不甲斐ない姿を見せた。

 …貴様のスキルがどういったものかという疑問はある。だが、貴様がいなければファフナ様はきっと命を落としていただろう」

「ちょちょちょっと!頭上げてよ!俺は全然何も出来なかったじゃんか!」

「いいや違うな。貴様はあの煙男を撃破し、死に至るキズを負ったファフナ様を救ったのだ」

「そんな事ない!俺が余計な事を言わなきゃ、ファフナちゃんはあんな大怪我しなかったしアイツの事もきっと無事に倒せてたの!」

「そんなのは仮定の話だ!貴様!黙って礼を言われろ!」

「やだやだやだ!頭上げろ!俺はなんにも出来てないんだよ!」

「貴様ァァァ!!!!」

「やだやだやだやだ!!!」


 頭を下げ続けるヴロちゃんさんの頭を召喚したヘビくんたち一同で無理矢理持ち上げようと奮闘する。彼女の両肩を下から持ち、顔を上げさせようとするもビクともしない。伊達に龍の眷属やってない。ヘビくんが何匹いても持ち上がる気がしない。仕方ない…。切り札を召喚するしかないみたいだ。俺は大きく息を吸うと、つい昨日進化した彼?の名前を呼んだ。


「シ、シマヘビくん手伝って!」

『…くだらん力比べだな』


 切り札の黒金縞模様のニュータイプヘビくんが俺の胸から飛び出して来た。彼?は俺の足元に着地すると、やれやれと首を振りつつもピョンとヴロちゃんさんの頭に向かって突進した。


『それ』

「うぐっ!」

「おぉっ…!?」


 ずでーん!


「いてて…」


 ヴロちゃんさんが後ろに倒れる勢いで、俺も一緒になって転けてしまった。

 …?なんか地面がやわやわでむにっとしてる…。


「…おいニンゲン。早く離れろ」

「ご、ごめん。すぐ…に…」

『あらら』

「…あ」


 死んだかもしんない。


 顔を上げて初めて事態に気がついた。どうやら俺は丁度、ヴロちゃんさんの胸部にダイブしてしまったらしい。

 普段はピッタリとガードされているヴロちゃんさんのソコだったが、今はシャツのボタンが外れて中からは肌色が…


「チッ。サラシがゆるかったか」

「あわわわわゴメン!ヴロちゃんさん!お詫びにサラシがわりにヘビくんで…」

「できるかー」

『ジャミラはテンパるとまるで駄目だな』


 咄嗟に目を逸らして殴り飛ばされる覚悟を決めた。…。くるなら来い!………。どうぞ!…………ファフナちゃんより大きかったな。むむ、雑念が…!

 ………おや?拳も足も何も来ないぞ。恐る恐るうっすら目を開くと、彼女は俺のことなど見向きもせずにサラシを巻き直している真っ最中であった。


「あ、あれ?殴り殺さないの?」

「…貴様はワタシをなんだと思っているのだ」

「クレイジーサイコレズ」

「殺すぞ」

「ごめんなさい」

「チッ!…おい。サラシを巻き直す。後ろを向いていろ」

「あっ、はい!」


 目を手で覆い、しばらくの間完了報告を待つ。だが、返事はなかなか返ってこない。

 彼女の苛立ちの声が時折聞こえるばかりだ。そこでなんとなく察した。右肩の怪我のせいだろう。まるでそんな様子は見せないが、かなり巻きにくそうにしている。


「せ、背中から回すくらいは手伝おうか?」

「…頼む」

「う、うん!わかった!」


 彼女の背中だけを見て、煩悩を殺しながら回ってくるサラシを受け取る。


「おい」

「な、なにかな?」

「…お前が何を思い、今日突然ファフナ様を避け出したのかは知らない」

「………」

「覚悟が足りんと罵る気はない。

お前はバカで、ノリが軽く、ヤケに明るく、イヤに気の利く、ヒトに取り入るのがムダに上手い、ただそれだけの普通のニンゲンだからな。だが…、」

「だ、だが…?」

「癪ではあるがファフナ様もお前を友として認めている。

お前の行為が優しさからであろうとも、御身の心に穴を作る。他の誰であろうとも決して埋められない穴をな」

「穴…」

「ただそれだけは覚えておけ」

「…わかった」


 最後の方は会話はほとんどなかった。彼女がしっかりとサラシを締め直し、制服を整えるとそそくさと空き教室を後にした。


 休憩時間も折り返し時間に突入している。

食事を終えた学生たちが気の向くままに廊下を行き交う中、ヴロちゃんさんがこちらを振り向いた。


「…おい、この話はファフナ様には秘密だ。わかったな?」

「…わかった」

「ならいい。さらばだミナダイスキー」

「うん、またね」


 ヴロちゃんさんが身を翻し、カツカツと廊下を行く。その背中は実に満足気だ。俺もしれっと着いていく。


「…」

「……」

「おい。なぜ同じ方向に歩くのだ」

「帰り道わかんないし、ヴロちゃんさんも教室に向かうんでしょ?」

「…ふん、そういえばそうだったか」

「そういえばそうだったんだよ」


 行きと同じくヴロちゃんさんは何も話してくれない。しかし、以前よりは幾分か心を開いてくれたのかなと思った。


 …?


 なんとなしに振り返った。


 しかし、昼休み中の学生たちはみんな思い思いに休み時間を過ごしている。

 特定の誰かが俺のことを見ていたり、目を逸らすなどという事もない。

 なんだろう。やっぱり今日はどこからか視線を感じる気がする。

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