第三十六話 シマヘビくんとのお話
「ねぇねぇ。きみは俺のスキルなの?」
「シャ〜?」
『好きに捉えてくれるといい』
現在、俺は自室にて日課のヨガをしながらシマヘビくんとお話し中だ。もちろん普通のヘビくんもいる。
あれから警察と救急車が来て、事情聴取やらなんやらで解放されたのは日が暮れた頃だった。肩に裂傷と骨にヒビが入っていたヴロちゃんさんがわーぎゃー騒ぎながら救急車に無理やり連行されていったのが強く印象に残っている。救急隊員のみなさんムッキムキだったな…。
ファフナちゃん曰く、龍の眷属の治癒力は非常に高いらしい。なので3日もすれば傷跡一つ残さず綺麗に治っているだろうとの事だ。とりあえず良かったと思う。
それより気になるのは…
ヨガマットの前にデンと鎮座するトグロを巻いたシマヘビくんだ。金と黒のシマが実にゴージャスである。ほっ!戦士のポーズ!
彼?彼女?と古参ヘビくんと一緒にお話の真っ最中なのだ。
「シマヘビくんは前の姿から成長したって考えていいの?」
「シャー!」
『成長…まぁ、そうだな。以前より強くなったと考えてくれていいだろう』
「名前は?なんて呼んだらいい?」
『好きに呼べ。元の名前はとうに失った』
「失ったぁ?」
「シャ〜?」
聞けば聞くほど謎が深まる。
この子は本当に前と同じシマヘビくんなのかしら。あんなに甘えん坊だったのに、今は随分と態度がふてぶてしいのだけど…。それに失ったってことは元の名前があったってことだよな?
「あ、じゃあつまり協力して欲しいことって…」
『ふ…察したか?そうだ。お前には私の名前を取り戻すのに協力して欲しいのだ』
「…それってずばりどうすりゃいいわけ?」
『さぁな。とにかく私の力を取り戻せる様にスキルをたくさん使うといい。いつでもどこでもな』
「スキルってそんな感じで成長すんの?
もっと魔物倒したりとか必要なんじゃないの?」
『問題無いだろう。頼りにしているぞジャミラ』
そう言って尻尾の先でアゴを掻くシマヘビくん。けっこう呑気そうだ。…はぁっ!木のポーズ!
頼りにされるのは悪く無いけど、具体的に何をすれば良いのか全くもって思い浮かばないなぁ。目を瞑り精神統一をしつつ、どんな事をみようかと頭を巡らせる。
「独ー!風呂空いたわ!
母さんが早く入れって!」
「あ、はーい!」
アネキの声がドアの外から聞こえた。時計を見るともう21時だ。
今日は疲れたし、さっさとお風呂に入って早く寝よう。最後に亡き骸のポーズ…!
『その仰向けに寝ているだけなのもヨガなのか?』
「そうだよ?シマヘビくんもやる?」
『出来るかー』
「うっし今日のヨガ終わり!とりあえずお風呂入りますか!」
『私は入らないぞ』
「ダメダメ!あんな埃まみれになったんだから入らないと!」
『入らないぞ!』
あぁっ!
折角、一緒にお風呂に入ろうと思っていたのに、シマヘビくんはスルスルと俺の胸に開かれていた召喚門に帰っていってしまった。
「お風呂嫌いなのかな?ヘビくんは入る?」
「シャ〜」
ヘビくんの方は入りたいみたいだ。右腕を差し出すと、スルリと素早く這い上がりいつもの定位置、俺の首元に巻きついた。
軽く汗を拭いつつ、パジャマを手に取る。自室を後にしながら俺は明日からの事を考えていた。
すでに俺の明日からの学園での過ごし方は決まっている。
ファフナちゃんに関わるのをやめよう。
寂しさに蓋をしつつ、今後の蛇腹 独葉巳としての生き方を考えていた。
シャワーを浴びながら、肌のケアをしながら、髪をドライヤーで乾かしながら、歯磨きをしながら、ベッドで横になりながら、眠くなって意識を失うその瞬間までずっとずっと模索していた。




