第四話 戦闘訓練所へ行こう①
居住区の大壁を越えれば、そこは魔物蔓延る世の中だ。
以前ちらっと言った100年戦争を終えた今も、RPGやファンタジー系の作品でよく見るスライムやゴブリン、オークなどが跋扈している。
これでも比較的安全にはなった方らしい。昔はもっと凶暴凶悪なモンスターがわらわらといたらしいのだから笑えない。
さて、そんなこんなで移動中です。俺と落ち葉ちゃんは今電車に乗っていた。
今日は平日ということもあり、電車は比較的空いている。今は絶賛春休み中なので遊びに出かけるらしい同年代の男女がポツポツと見受けられるくらいだ。
「つーん」
「くぅ〜ん」
落ち葉ちゃんはおこだ。
俺が約束をすっかり忘れてたのが悪いので、素直に反省中である。
あの後、ぷんぷん丸おおせられた落ち葉ちゃんを宥めるのは実に大変だった。
彼女の背後にでっかいラーテルが腕組みしてる幻影が見えたくらいにはおこだった。
「パフェ奢りだからね」
「あいあいキャプテン…」
俺のサイフに大打撃である。白ヘビくん黒ヘビくん慰めて…。
「「シャー」」
パーカーの首元からこっそり出てきた2匹のヘビくんが俺の頭を撫でるようにニョロニョロと這う。かわいい。
俺たちがこれから向かう先は戦闘訓練所という施設。
それだけではないのだが、メインは魔物との戦闘を想定した訓練施設だ。
来るのはこれが初めてではない。実際に訓練を受けるには、中学卒業が最低条件となるのだが観覧は自由なのだ。
賭け事は禁止だが、暇を持て余した人などはスポーツ観戦感覚でここに足を運ぶ。
ごく稀にちょー強い魔物との戦闘が見られたりするのだ。
しかし、俺と落ち葉ちゃんは観覧目的で来た訳じゃあない。実際に訓練を受けに来たのだ。
コースを選択すれば、お金こそ掛かるものの専門学校よりは比較的安めで短期間の対魔物戦闘訓練の受講ができるらしい。
俺たちの場合は学園からの支援により無料で訓練を受けれる様になっている為、受付で学生証だけ見せれば自由に出入り出来るのだ。さすがエリート校。太っ腹だ。ありがたい。
「2名で予約してた蛇腹です。お願いしまーす」
「しまーす!」
受付のお姉さんに学生証を見せると、彼女はニコリと微笑み応対してくれた。
「はい!学生証のご提示ありがとうございます!ワームヴェルトの新入生さんですね!
ようこそ苦渋ヶ島戦闘訓練所へ!
こちらのご利用は初めてですか?」
「はい、そうなります。
ね?落ち葉ちゃん」
「初めてで問題ないでーす」
「はい。そうしましたら、まずは簡単なご説明をさせていただきますね」
そう言って、お姉さんはイラスト付きのカンタンな表を取り出して説明を始めた。
「こちらの施設では大きく3つの訓練を受けることが出来ます!
1つ目は対魔物を想定した戦闘訓練です!
こちらは、魔物との戦いに慣れることを目的とした訓練となります。
魔物との戦闘を、教官の指導を受けながら行うことが出来ますよ。もちろんスキルの使用も許可されてますし、武器の貸与もしております。
基本的に数が多く、ごく一般的な魔物が戦闘の相手となります。コボルトやスライム、ゴブリンなどですね。
あ、万が一に備えて複数人の熟練スタッフが立ち合いますので安全面についてはご安心ください。
実力と支払い能力が認められればお時間は頂きますが、より強い魔物やお客様のお望みの魔物との戦闘も可能ですよ。
2つ目は武器の訓練!
大剣、日本刀、ナイフ、槍、ハンマー、斧、鎌、ムチ、投擲武器、弓、銃などメジャーどころは一通り揃っておりますので、ご自分に合う武器が見つかるまで、思う存分お試しいただけます!
こちら使用の際はバンドの着用が必須となります。お客様同士での接触を防ぐ為のスキルが付与されておりますので。
ご自身の武器をお持ち込みの際は、必ず受付でご提示いただきます様お願いしますね!
3つ目はスキルの訓練!
こちらは併設された研究所での訓練となります。スキルは十人十色千差万別のものとなりますので、しっかりとスキルを伸ばしたいという方は3ヶ月から1年のコースの選択をお勧めいたします。あ、こちらは学園生徒さんでも別途料金が必要となりますのでお気をつけくださいね?
ふぅ…たくさん喋っちゃったけど、ご理解頂けましたか?」
「…おっけーです!」
「わ…わぁ…」
分かんないけど分かった!
俺の苦し紛れのサムズアップを見て、お姉さんは苦笑いを浮かべた。
「あはは、もし分からないことがあったらいつでも気軽にお尋ねくださいね」
やさしい(やさしい)。優しい受付お姉さんに後ろ髪を引かれながら、俺は頭がショートした落ち葉ちゃんを引きずり、対魔物戦闘訓練の区域へと足を運ぶ。
魔物との戦闘が許可される職業は3つに分類される。
ほぼ日銭稼ぎで、居住区に近づく魔物や群れを作りやすい魔物をメインで狩る討伐屋。
魔物の過剰な繁殖を抑制し、反対に減り過ぎた魔物を保護し絶滅を防ぐ天秤機関。
そして危険指定の魔物の討伐もしくは封印、ごく稀に発生する魔物の巣窟の探索を任された特別探索士
俺みたいな若者の多くは特別探索士を目指す。選ばれる理由には給与の良さや名誉欲もあるが、多くは若さ故の万能感と自身の持つスキルへの絶対の信頼からだろう。
ファフナちゃんも名前のカッコよさと冒険心に駆られて特別探索士を目指していた。
原作落ち葉ちゃんもファフナちゃんの助けになりたいからと、志願していたハズだ。
俺がここに来たのは別に打算があった訳じゃない。単純に前世を思い出す前から少し憧れがあった。
だって男の子だもん。男なら一回くらいそういうお仕事憧れるじゃんねぇ。
…
……
………
魔物戦闘訓練区域はお隣の研究所近くにある為か、少し離れたとこにある。
中は2階建てで、1階は戦闘用のコートが10以上用意されていた。広さは1つのコートにつきテニスコートくらいはあるかな。
2階は観覧席だ。ビデオ撮影する人や中には叱咤激励を飛ばす人もいた。
それぞれのコート内では訓練を受ける学生や新人討伐屋などが至る所で魔物との戦闘を繰り広げている。
「ふー…よしっ!気合い入れるか。
起きな落ち葉ちゃん。
中入ったよ。お着替えするよ」
「あいあいキャプテン…」
お着替えタイムだぜ!散ッッッッ!!!




