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俺は主人公の友人Aとして生きたいの!〜バトルファンタジー漫画の世界に転生した俺はTS転生した美少女主人公(中身おっさん)を狙っている訳ではない〜  作者: どかんどかん!ぱおんぱおん!
第一章 学園入学:龍紋 ファフナ編

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26/80

《サイド:龍紋 ファフナ》オレが私になった時

 異世界転生した!


 そう思った。


 だって、そりゃあそうだろう。気がついたら目の前にいたのは巨大なドラゴンだったのだから。


 最後の記憶は、36歳の誕生日当日。26時に会社を出て、最寄の24時間スーパーで1番安いレモンサワーと売れ残りの半額唐揚げ、あと誕生日だからと奮発してショートケーキを買って、「もっとマシな生活が出来たらなぁ」とため息まじりに帰宅していた、いつもの日常。


 着古したヨレヨレのスーツで、ネクタイを緩めながら缶を開けつつ信号待ちしていたあの瞬間。

 なんとなしに横を向いたら、無点灯のトラックが真っ直ぐオレに向かって突っ込んできていて、形容し難い衝撃と共に視界がひっくり返った。


 そして次に目を覚ました時だ。まさしく異世界転生だと直感した時の話に戻る。

 その時、オレはベッドの上にいてくだんのドラゴンがオレのことをじっと見下ろしていた。


 薄ぼんやりとした視界に入ったのは巨大で真っ黒なドラゴンだ。

 オレの住んでた3階建てのアパートよりもずっと大きくて、全身が夜の闇より真っ黒で、頭にはモン◯ンのランスみたいな大きなツノが生えていて、胸と左目に大きな傷跡のある怪物だ。

 ソイツが真っ直ぐにオレを見つめていたかと思うと、ゆっくりと口を開いたのだ。


 喰われるっ!?


 そう思って悲鳴を上げたら、いや上げようとしたらオレの喉から出た声は…


「ふにゃあぁぁぁぁ…!」


 正直、耳を疑った。何か話そうにもオレの声帯はふにゃふにゃと甲高い泣き声を発するばかりで言葉にならない。それどころか感情を制御出来ず、年甲斐もなく大きな声で泣き喚いてしまった。


『…泣くな我が娘。お前は強き龍たる我の子なのだ』

「ふにゃああ!ふにゃあああ!」

『だから泣くなと…。ヌヌ、ヒルデ。これはどうすれば泣き止む』


 その龍が風貌に似合わない困惑を孕んだ声で誰かを呼んだ。すると、オレの体を柔らかく暖かな感触が包み込んだ。

 どうやらずっとオレの隣にいたらしい。涙で歪む視界の中、長い金髪の女性が確かにオレに笑いかけた。


「ふふ。もう、あなたったら。

 大丈夫よファフナ。大丈夫。お母さんがいるからねぇ。ほら、あなたも。やさしく声をかけてあげて」

『ヌ…我が娘、何も恐れる事は無い』


 は?どういう状況?なにこのドラゴン!?ドラゴンの娘?いや、でも母親らしき人は人間で…?てかこの女の人デカくないか!?…いや、もしかしてオレが小さい!?いや、娘って誰のこと?まさかオレ?って娘!?オレ、男だしおっさんなんだけど…!


 頭の中を駆け巡る疑問に次ぐ疑問。それは止む事無く、やがて知恵熱の様にオレを苛む。そして最後には…


「ふにゃあぁぁぁぁああ!」(えぇぇぇぇぇ!?!?!?!?)


 またもや年甲斐もなく泣き喚いてしまったのである。


 …

 ……

 ………


 時は経ち、オレが第二の生を受けてから15年。


 流石に15年も過ごすと、女の肉体にも、この世界にも随分と慣れたものだ。

 …まぁ、たまに男子トイレに入ったりしてしまうんだけど、それはお茶目として許して欲しい。まだ男として生きた人生の方が長いんだ。習慣とはなかなか抜けなくて困る。

 しかも、最近困っていることがある。…胸がだんだんと出てきたのだ。男時代は大きければ大きいほど良いと思ってたが、女の身としては正直邪魔だ。ブラとか付けるのめんどすぎる。でも、一度付けないで運動したら捥げそうになったので渋々付けている。まぁ、そんな話は今はいい。

 

 あれからこの世界について調べ物も随分と行った。言語が日本語だった為、情報収集にはそう苦労しなかった。そして、分かったことがある。ここは完全な異世界では無いということだ。

 いや、異世界は異世界なのだが、オレが元居た、もとい三十路サラリーマンをしていた地球の要素も少なからずある、似て非なる地球だったのだ。


 元の世界とこの世界の大きな違いはおおよそ3つ。


 まず1つ。それは魔物と言うモンスターの存在。


 オレの親父含むドラゴンや、漫画やゲームなどで見たゴブリン、オーク、スライムなどの多種多様なモンスターがこの世界では実在する。

 また、それらの脅威に立ち向かう為か、この世界では魔物を狩る専門職である討伐屋ハンターや、その魔物たちが住み着くダンジョンを探索する特別探索士ハイシーカーなどと特殊な職業が存在する様だ。

 そう言えば昔はそんなライトノベルを好んで読んでいたなぁと染み染みさせられた。


 2つ目。それはスキルと言う名の特殊能力。


 これはゲームの魔法の様でいて、しかし少し異なる。ド◯クエやF◯では多種多様な魔法や呪文が使えるのが定番だ。


 だけど、この世界のスキルとやらは1人につき1つの能力のみが与えられる。まぁ、簡単に言ってしまえばメラを覚えてしまったらメラしか使えず、ホイミなどの他の魔法は絶対に覚えられない。そういうシンプルな話だ。


 人は一人一人、異なるスキルを所有しており、大体10歳前後にはその力が目覚めるらしい。どんな能力に目覚めるかは、個々人の思想や願い、環境によるという話だ。

 後、オレ自身は何故かまだスキルに目覚めていない。まぁ、それでも父親であるドラゴンの力と何故か超人的なパワーを持つ母親の血を引いているおかげか、身体能力は化け物染みているのだが…。


 3つ目。これは1つ目の魔物とも関連することなのだが、今俺のいる場所について。


 日本語が使用されていることもあったので、もしやとは思っていたのだが、どうもここは日本らしい。

 以前、母さんと街に降りた時に図書館で地図を見て驚かされた。

 どうもこの世界の日本は3割ほど人の住める地域では無くなっている様だ。東西は分割されており、人の住めないという地域は魔物たちが蔓延り、土地は汚染されているらしい。

 しかし、これでも大分マシになった方だと言う。十数年前にあったという魔物と人間の戦争が終結する以前は、日本の半分以上が魔物に支配されてたというのだから恐ろしい話だ。


 そんか元の日本とは似て非なる世界に、どういう訳か第二の生を受けた訳だが、別段オレは魔物たちをぶっ倒して大活躍してやりたいなどとは思っていない。

 むしろその逆だ。折角、あのブラック企業を退職(死亡により)出来たんだ。今世では少しゆっくりしたい。そりゃあ、オレだってゲームの主人公みたいに魔物と戦う事に憧れが無いわけじゃない。でも、そう言うのは程々が一番だ。

 …そうだなぁ。折角、今年高校に入るんだ。仲の良い友だちでも作って、週末に軽いノリでみんなでダンジョンで軽ーく戦ったりして、夕方ごろにはファミレスとかで馬鹿話でもして笑って生活できたらいい。いわゆるスローライフってやつだ。

 ……恋人ぉ?この体でどっちを恋愛対象にしろって言うんだ。悪いが、体は女でも心はまだまだ男の子のつもりだ。

 そりゃ時代はどっちもOKだろうけど、男相手にラブラブするのは想像も付かないなぁ。女の子との恋愛も、元々枯れかけてたってのもあるからあんま興味ないんだよなぁ〜。ま、同性の友達ってのは少し興味あるけど。


 そうそう。さっきチラっと話したわけだけど、オレはこの春から高校生になる。

 青春再びかぁ。年甲斐もなくワクワクするなぁ。気の良い友だちが出来たら嬉しい限りだ。

 なんせ、今のオレの住まいは田舎も田舎の超山奥。多分、長野県のあたりだ。母さんが人との交流も大事だからと週に一度は街に下りるのだが、逆に言えば人との交流はその程度。それ以外は基本山奥で父さんと母さんに勉強やら魔物との戦い方などを教わっている。友達はもっぱら森の動物たちと後、父さんの眷属たち。

 学園は東京にあるので超遠い。入学後は寮に入る予定だ。ああ、そうだった。これを機にスマホが欲しいと思っていたんだ。父さんに入学祝いにおねだりでもしよう。

 オレはベッドから立ち上がると、部屋の窓を開けた。するとすぐ目の前には黒いドラゴン、すなわち父さんが寝そべっていた。ちなみにオレの部屋は2階にある。


「父さーん!聞こえてる?」

『どうした我が娘』


 ググ、と父さんが長い首を持ち上げた。黄金に煌めく右目が真っ直ぐにオレを見つめてくる。生まれたばかりはよくビビっていた。しかし最早慣れたものだ。


「父さん!オレも春から高校生なんだからさー。スマホくらい買ってよー!」

『…スマホ。我の知らぬ種族だ。飼うというと愛玩動物か何かか?』

「う〜ん、この。やっぱいいや」

『…スマホ、スマホ。永きを生きる我が知らぬとは、余程希少なものと見た』


 ぶつくさと独り言を呟いてる父さんを放って、オレは部屋を出た。階段を降り、目指すはリビング。母さんがいる筈だ。


「母さーん!」

「はーい。どうしたのファフナ」


 優しくおっとりとした声で答えてくれたのはオレの母さん、龍紋 ヒルド。日本人とは思えない明るい金髪と、反対にしっかりとジャパンを感じさせる黒の瞳が特徴的な容姿の背の高い女性である。

 どうやら母さんは夕飯の支度をしていたらしいが、オレが話しかけたからか指を弾いてコンロの火を消した。


「あらあら随分慌ててたのね。髪もボサボサでパジャマ姿だなんて…」

「う、後で整えるから…。

 母さん。オレ、スマホが欲しいんだけど父さんが理解してくれなくって」

「…スマホ。聞いたことの無い生き物ね」

「…母さん?」

「ふふ、冗談よ。でも必要?その気になればホラ、『念話とかで』」

「それ母さんにしか出来ないから!

 頼むよ母さん!オレ、友達と連絡先の交換とかしたいんだよー!」

「うーん。そうねぇ」

「ファフナ様!また口調が乱れています!」

「う、ヴロトレキ…!来てたのか…!」

「えぇ!ワタシはファフナ様のボディガードですからね!いつ何時であろうとも、お供させて頂きますよ!」


 振り向くとリビングに空色の髪をしたショートカットの中性的な女の子がいた。彼女は母さんが出した毒々しい色のお茶に口を付けている。

 彼女の名前はヴロトレキ。わたしの幼馴染でどうもボディガードらしい。人の形を取っているものの、その正体は父さん…邪龍ファブニールと同じドラゴンらしい。らしい、と言うのはドラゴンとしての姿を見たことが無い為である。

 彼女はとてもオレの事を慕ってくれているのだが、かなりキッチリした性格をしていてオレや父さん母さん以外にはかなり辛辣だ。


「ヴロトレキ〜…。家の中ぐらい良いだろ?外では気をつける様にしてるんだから…」

「いいえファフナ様!これまでとは違うのです!春よりはニンゲン共の巣窟である学園に入学するでしょう!

 偉大なるファブニール様とその伴侶、ヒルド様の子であるファフナ様にはキチンとした女性として仕草を身に付けて頂きたいのです!

 ただでさえファフナ様は行動や仕草が男らしいのです!いえ、おっさん臭いと言っても差し支えありません!」

「ぐっ…!」


 ヴロトレキのチクチク言葉が胸に刺さる。しかし、それも事実。女性らしいは難しい。

 父さんはまるで気にしていないが、母さんなどは前々からオレが女の子らしい口調やオシャレをするのを期待している。オレ自身、我ながら容姿はかなり美少女だとは思っているで勿体無いという自覚はあるにはある。

 でもこれがなかなか…!言い訳になるが、ほんと男歴の方が長いのよ。今更、女の子らしくなんて難しい。女口調は気恥ずかしいし、仕草なんて気を抜いたらあっという間に胡座に猫背。あと、おっさん臭いって言わないで欲しい。ちょっぴり傷つく。


「あっ!いいこと思いついたわ」


母さんがニコリと微笑み、オレの方を向いた。なんだか嫌な予感がする。


「ファフナ。あなた、女の子をマスターしなさい」

「へ?」

「一学期が終わってこっちに帰省した時、女の子がマスター出来てたらスマホを買ってあげるわ」

「えっ?」

「前々から思ってたのよねぇ。ファフナにはもう少し女の子らしくして欲しいなって。

 良い機会なんだから頑張りなさいな。ねっ?」

「えっ?えっ?」

「おぉ!ナイスアイデアですヒルド様!」

「でしょう!ヴロトレキ、監視をお願いねっ」

「えっ?えっ?えっ?」

「任せてください!ワタシがファフナ様が立派なレディになるのを見届けましょうとも!」

「期待してるわよファフナ」

「うええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」


 ガシャァン!!!!!


『どうした我が娘!お前が悲鳴を上げるなど…!!!』


 オレの悲鳴を聞きつけて、父さんが家をぶっ壊しながら突っ込んできた。

 半壊した家と母さんが静かにブチ切れる背中と、珍しく慌てているヴロトレキの姿を眺めながら、オレはしばらく放心していた。


 こうして、オレは…いや私は女の子を演じるハメになったのだ。いや、体はとっくに女の子なんだけどね。

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