第二十三話 あっ!ここ原作で見たやつ!
「うっわぁ!ファフちゃんったら制服姿も似合ってるね!まるでモデルさんみたい!」
「…それほどでもないわよっ」
キャッキャしながらファフナちゃんの手を取る落ち葉ちゃん。そして満更でも無さそうなファフナちゃん。実に目の保養になる2人である。
…羨ましいなぁ落ち葉ちゃん。いつの間にそんなに仲良くなったのさ。いじけいじけ。
「ふん。何を面白くなさそうな顔をしている。ミナダイスキー」
「ヴロちゃんさん…」
そう言って俺に声をかけてくれたのは、空色の髪をしたクール系男装美少女のヴロちゃんさん。
腕組みをしながらこちらに冷ややかな目を向けているが、声をかけてくれるとはなんて優しいんだ。最早、あだ名でもない呼び名で呼ばれていることなんて些細なことだ。
今の俺は寂しさの権化。かまわれるだけで懐いてしまうチョロイン独葉巳くんなのだ。落ち葉ちゃんとファフナちゃんの馴れ初めが知りたいよ〜。
「教えてヴロえも〜ん」「ゔー!」「シャー!」
「うわっ!馴れ馴れしいっ!やめろぉ!まとわり付くなっ!」
慰めておくれよぉ。長い足に縋りついていると、ゲシゲシと頭を蹴られた。痛いよぉ。心も痛いよぉ。
「……貴様が入院している間、あの少女が随分と落ち込んでいてな。心優しいファフナ様はその相談相手となってやっていたのだ」
「はえ〜、そんなことが。さすがファフナちゃん。優しいんだなぁ。後でお礼言っとかなきゃ」
「当たり前だ!ファフナ様の御心は海よりも広く寛大なのだからな!
そうだ。これはまだファフナ様が5歳の時…」
ヴロちゃんさんの強火なとこが出てきたな。放っておいたら無限に至高のファフナちゃんエピを語り出しそうだ。少し興味はあるけど。
しかし、なんだ。俺はもう少しヴロちゃんさんには嫌われてると思ってたんだけど。
ふんふん、と鼻息荒くファフナちゃんエピを語る彼女。その顔は本当に楽しそうで嬉しそうで、羨ましい限りだ。
「むっ、なんだその不思議な表情は?」
「いやぁ、ヴロちゃんさんとも友だちになりたいなって」
「…ミナダイスキー・ドッグ。
随分とおかしなことを言う。ワタシは龍の眷属だぞ。偉大なるファフナ様の御付きなのだ。ただのニンゲンと友になるなど、あり得ないことだ」
「くぅ〜ん…」「んー!」「シャ〜…」
…残念無念。この子、まじの顔で言ってきたぞ。本気でそう思ってるぽい。種族の価値観の差ってやつかなぁ。まぁ、3年間の学生生活だ。チャンスはまだまだあるでしょう。
ファフナちゃんの友だちになる。その目標の為にも、ヴロちゃんさんとも友だちになりたい。その方がきっと楽しいだろうし!
「おっ!おいお前!そこの黒と金のヘンテコな髪の女!よろこべ!おでちゃまの彼女にしてやるじょ!」
む…?
なんだなんだ?野太い声の方を振り向けば、とても横に大きなおっさん…いや、制服を着てるから学生か。い、いや待て!か、彼は…!
俺は彼を知っている。そう。いわゆる原作知識というやつだ。あ、目が合った。
「なんだじょ?下々の民が高貴なおでちゃまを見るんじゃないじょ!」
くぅ〜ん。虐げられちゃったよぉ…。彼は確か漫画『じゃむうま』第一話の冒頭も冒頭でやられてた生徒Aだ!!原作の俺よりも雑に、詳しく言えば総登場コマ4コマくらいでぶっ飛ばされてた奴じゃないか…!
あまりにもキモ、ではなく捨てキャラな容姿の残念おデブが、ファフナちゃんへぐぷぐぷときちゃない笑みを浮かべている。見たくないけど、すごい目を引くビジュアルしやがってこのやろー!そんなんだからニッチ系エロ同人誌でそういう役ばっかさせられてんだよ!
確かこの後は…。視線を移せばあら不思議。ここが同じ空間だとは到底思えない程の容姿格差を感じさせる美少女、もといファフナちゃんが、大きなため息を吐いた。おぉ、吐く息すら美しい気がするぞ。
「どっくん?ファフちゃんのこと見過ぎじゃない?」
「そんなことは可もなく不可もなく」
「どっくん?」
落ち葉ちゃんの声が心なしか低い。しかし、今の俺はこっちに夢中なわけで…!そうそう。この後はファフナちゃんがナンパを断ってだな…。
「…はぁ。またか」
「ファフナ様。ここは私が」
「いいよヴロトレキ。…残念だけどお兄さん。私、彼氏とか作る気ないから。ごめんね」
「な、なんだちょっ!?ゆ、許せねぇじょ!!よくも、この美肉井ちゃまに恥をかかせやがっちぇ!!」
そうそう!逆上したミニーくん(今、あだ名を考えた)が殴りかかって、それをファフナちゃんは容易く…
「いや、やっぱ女の子が襲われるとこ大人しく見てられるかーーーーー!!!!」
「え?ちょ、ジャミラ!?」「どっくん!?」「ミナダイスキー、貴様っ!」
「ぐえーーーーーっ!!!!!???」
ごめん。我慢できなかった。つい飛び出しちゃった…。
重たいパンチが俺のもちぷるほっぺにクリーンヒットだ。俺のほっぺがぷにぷにだったからこの程度で済んだものを…。俺じゃなかったらこうはいかなかったね。殴られた勢いで倒れそうだったけど、太っちょヘビくんが支えてくれたのでなんとかセーフ。
くそぅ。俺、原作壊しちゃったよ。本編1話からやっちまったよ!まさか体が先に動いちゃうなんて俺の馬鹿っ!え?今更?そ、そんなぁ…。
「な、なんぢゃお前!」
「お、俺はみんな大好きどっくんだ…!
体重の乗ったいいパンチだったぜミニーくん…!」
しかし、動いてしまったものは仕方がない。
そうだよね?そうでなくても、そうであってほしい。




