第2話:異端のクラフトと、動き出す世界
……ナオヤは小さな村の広場にいた。
魔獣を倒した直後、近くの木陰で隠れて見ていたらしい猟師に、連れてきて貰ったのだった。
「命の恩人かぁー。まぁ、確かに助けたけどさー……何で、あんなに怯えてたんだろ?」
彼は腕に残る金属の義肢――オートリムA1の右腕部を見つめた。応急処置で作ったアームは、構造もバランスも不完全だが、エネルギーコアさえあれば稼働する。
「とりあえず、こいつのチューンから始めるか。俺のクラフトライフはここからだ」
村では、拾ってきた金属などを買い取り、剣などに加工していた。要らなそうなパーツを売り、食料を買い。近くの森で、ナオヤは早速作業台を組み上げた。周囲には拾ってきたジャンク品、折れた魔導杖の柄、丸い盾の様な物、謎のレンズなど、ガラクタの山。
「見た目はアレだけど、中身は宝の山。なにより、こいつら――」
《機巧分析眼》を発動。
ナオヤの視界に、各パーツの内部構造とエネルギーの流れが図面のように浮かび上がる。それを使って、再配置と改造案を考える。
「なるほど!この杖の魔力導管……金属フレームに埋め込めば、魔力補助回路として使えるな。ロボパーツと魔導部品の合体……アツすぎる!」
彼は歓喜の声を上げ、早速作業に入った。
工具を作り、分解し、パーツを削り、接続部を調整して結合。魔導杖の破片をアーム内部に埋め込んで魔力の増幅器とし、コアの安定装置も追加する。
ここまで、2日徹夜した……ナチュラルハイの状態で、試運転を始める。
「うおぉぉぉ!試運転……いっけぇええぇ!」
――ブゥゥン!
新生・パワーアームが低く唸り、指先まで滑らかに稼働する。かつての不安定さが消え、今や武器としても十分すぎる完成度だ。
「ふははははっ! これが俺のロボの第一歩だっ!」
その時、
「おいっ! 何を作ってる!? これは……禁忌の技術だろう!」
現れたのはギルドの調査員達。腰には魔導剣、目には警戒の色。
「うわー、やっぱ来たか……」
ナオヤは頭を掻いた。村で話を聞いてる時、この世界は魔法主流で、機械技術は“異端”として扱われる。ましてやそれを動かしたなどと知られれば、ただでは済まないと聞いていた。
「誤解だって! これは……そう、魔法仕掛けのカカシ! 近代農業用!」
「ふざけるな。お前が倒したという魔獣の痕跡、そしてその右腕……古代兵器オートリムのものと見て間違いない」
「ちょっ、待って! これ誤解、いや半分ホントだけど!」
「連行する。ギルドの審問を受けてもらう」
ナオヤは顔をしかめる。中世風のこの世界では、人の命は軽い。加えて“ロボいじり”が即座に疑惑の対象になるとは、まったくやっかいだ。
だが――。
「逃げてもいい?」
「足の一つでも、切り落とせ!」
目の前で剣を抜かれた瞬間、ナオヤは後方へ跳び、ガラクタをぶちまけた。
「俺はなぁ!逃げ足には、自信があるんだ!何たって25年間、人生から逃げてきたんだからなーー!!」
叫びながら、岩の後ろに仕込んでいた小型の二輪駆動車に飛び乗る。もちろん、ジャンクをかき集めて即席で作ったやつだ。
「いけぇええ、ジャンクライダー一号!」
ギュイィィンと空回りしながらも、なんとか前進。村の裏道を突っ切って脱出を図る。
その背中に、ギルドの男の声が響いた。
「機械を操る異端者! お前の存在は、この世界の秩序を乱す!」
――この世界は、古代の機械文明を恐れている。だが、それでも。
「やめねーよ。だってこれ、超面白いじゃん!ふははは!」
ナオヤは笑った。楽観主義者で、どこまでも自由なクラフター。彼にとってこの混沌すら、ワクワクする冒険の始まりだった。