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第16話:リビルド・ノワール

 黒い機体――“リビルド・ノワール”が、重々しくその身体を動かす。ナオヤの魔力リンクに応じて、紅のセンサーが光り、静かに起動音を響かせた。


 「こいつ……やっぱすげぇや」


 興奮を隠せないナオヤが言う。だが、そのとき。


 「魔力反応……高速接近!」


 アイナの声と同時に、地下空間の入り口を衝撃波が突き破る。


 降り立ったのは、人の姿を模しながらも、人とは思えぬ気配を纏った存在だった。漆黒のコートに包まれた痩身。肌は灰のように白く、右目だけが異様に輝いている。


 「“柱”が目覚めたか。ならば排除対象だ」


 金属のような声が響く。だが口は動いていない。


 「お前……ギルドの奴か……?」


 「正確には、“人魔融合部隊”所属の抹消官。コードネーム《クラヴィア》。君とその機体の抹消を命じられている」


 ナオヤは笑った。


 「まーた出たよ。お決まりの“排除対象”。でもさ……それってつまり、“大当たり”ってことだろ?」


 「黙れ、異端」


 その瞬間、クラヴィアの腕が変形した。筋肉が浮かび上がり、骨格が機械と融合する。腕部が一気に砲台へと変化し、魔力の濁流を凝縮し始めた。


 「こいつ、魔力砲を生体融合で……ッ!?」


 アイナが即座に結界を張るが、砲撃はそのまま直撃し、石壁が崩落する。


 「ぐっ……まさに、生きた兵器ってやつかよ」


 ナオヤはノワールへと跳び乗る。グローブを握り、叫ぶ。


 「起動!リビルド・ノワール、発進!」


 黒き機体が爆音と共に跳躍、クラヴィアへと突撃する。


 「迎撃開始」


 クラヴィアの背中から、骨のような羽根が伸びる。それは実際には魔法で構成された、魔力式の疑似ブースターだった。二人のは空中で激突し、凄まじい音が地下空間に轟く。


 「体の硬度、尋常じゃねぇな……!」


 ノワールのブレードが叩きつけられるが、クラヴィアは腕を刃に変形させ、紙一重で受け止める。


 「その機体、ギア=テクトの中枢システムにアクセスしたな」


 「だったら何だよ」


 「我々の敵であるということだ」


 クラヴィアの左腕が展開し、槍状の刺突器が現れる。それをノワールの腹部に突き立てようとするが、ナオヤは即座に両脚のスラスターを噴射。


 ノワールが真上へ跳躍する。


 「“黒鋼・発動! いける、ブースト斬撃!」


 ノワールの両腕がブレードに変形。背部ウィングが推進を行い、機体が高速回転しながら落下斬撃を仕掛ける。


 「その程度で、終われると思うなよ」


 クラヴィアの身体が崩れる――かと思いきや、その肉体は霧のように分解し、再構築される。


 「転移能力まで……!」


 「これは、“ギルドの意思”だ。君の存在は、世界の歯車を狂わせる。排除する」


 「はっ、だったらその“世界”ごとクラフトし直してやるよ!」


 ナオヤの瞳が光る。ノワールの腕部が展開し、双刀の黒鋼が形成される。


 「最終演出フィナーレってやつを見せてやるよ、クラヴィア!」


 ノワールの黒鋼双刀ブレードが、一閃。


 再生途中のクラヴィアに時間差で、直撃した。


 《……機能停止。コード――解放》


 光が閃き、クラヴィアの肉体が崩れ落ちる。


 アイナが静かに近づいてきた。


 「やっぱり来たわね。ギルドはノワールの再起動を感知していた……これから、また来るわ」


 「それでも、止まれねぇ。もう始まっちまったからな」


 ナオヤは拳を握り、ノワールの肩を軽く叩く。


 「いいかノワール。お前は俺の相棒だ。“創るために壊す”ってのは、ちゃんと意味があるって証明しようぜ」


 ノワールの目が、再び紅く光った。


 こうして、ナオヤとアイナの戦いは、より深い“人と世界の歯車”へと踏み込んでいく。

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