第14話:未完成(リビルド)と、黒きパルス
浮遊都市の工房――。
ナオヤは工房にこもっていた。文字通り、リビルドを分解して部品単位まで戻し、再構築を始めている最中だ。
「くぁ~~ッ! やっぱこういう時間が一番落ち着くわー!」
工具片手に、ナオヤは全身を真っ黒くしながらニヤニヤしていた。魔動コンバータ、強化装甲板、反重力ユニット……どれもボロボロだったが、彼の《機巧分析眼》で見ると、可能性しか映らなかった。
「よし、ここにギア=テクト製の補助骨格フレームを強度限界まで削り込んで……魔導コアとの接続は、無理やり、ここを中継すりゃ――おおおおっ、スピード、火力三割増しィッ!」
爆速でアイデアを組み立てるナオヤの背後で、アイナが腕を組みながら見下ろしていた。
「……どうして、あなたって、そんなむちゃくちゃな機構ばかり追加するの?」
「いいかアイナ、ロマンってのはな、ちょっと爆発するくらいが丁度いいんだよ!」
「爆発するのはリビルドと、あなたの体よ」
「だーいじょうぶ! 保険きいてるから!」
「はぁー……どういう意味よ……」
そんな他愛もないやりとりを続けていたら、工房の片隅に置かれた“あの宝石”――ルビナのコアから、微弱な魔力波が放たれ始めていた。
そして、それに反応するかのように、ナオヤの《ギア・スキャン》が一瞬チラつく。
「……ん?」
視界の端に、赤い波形のような表示が一瞬だけ走った。通常の魔力反応とは異なる、深層構造に干渉する“何か”。
「アイナ。これ、見てみ」
「……これは……魔力干渉でも自然現象でもない。断定はできないけど――“意思”に近い波形ね」
「まさか、ルビナの残留意識……?」
「……あり得ないわ……」
その時、工房の窓の外、遠くの山脈に向けて一筋の黒い光柱が立ち上がった。
ナオヤとアイナは顔を見合わせる。
「なあ、アイナ。……あれ、行くしかなくね?」
「……またあなたの好奇心が暴走し始めたわね」
「暴走って言うなよ! これは冒険者魂ってヤツだ!」
「……どうせ行くんでしょ。準備はしておくわ」
「よっしゃ、決まり! リビルド、ちょいと中断! “未完成”のままでも、お前ならやれるって、信じてるからよ!」
ナオヤは満面の笑みで拳を突き上げた。
彼らの旅は、また新たな「禁忌」に触れようとしていた。




