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第13話:紅の宝石と未来へ

 空が、明けていく。


 浮遊都市の縁、傷だらけになったリビルドの隣で、ナオヤはあぐらをかいて座っていた。半分吹き飛んだコックピットに手を添えながら、やけに静かな朝をぼんやりと見つめる。


「……おいおい、相棒。ボロッボロじゃねぇか。ま、俺も似たようなモンだけどよ」


 ひび割れた装甲から漏れる蒸気。けれど、リビルドのコアは、まだかすかに脈打っていた。まるで「次、行こうぜ」って言ってるみたいに。


 ポケットから、ルビナが残した紅の宝石を取り出す。朝陽を受けて、かすかに光が揺れる。


「こいつ……あんなカッコつけた割に、めっちゃ人間くさかったじゃねぇか。“命令”言ってたくせによ」


 ナオヤは小さく鼻で笑って、宝石を指先でくるくる転がす。


「俺さ、昔からずっと思ってたんだ。“死んだら終わり”ってよ。だから、やりたいことは全部、やれるうちにやっとけって。それが、引きこもり時代の俺のマイルールだったわけ」


 壁の向こうに、誰もいなかった。だから、机の上でだけは、自由でいたかった。未完成なロボに、自分だけの正義とか夢とか、いっぱい詰め込んでさ。


 そして今――そのロボが、自分を守ってくれた。


「でもな……ルビナ見て、ちょっとだけ考え変わったんだよ」


 ナオヤは宝石をギュッと握りしめた。


「“命令”だけで動いてたやつが、最後には自分の言葉で笑ったんだぜ? ……つまりさ、“死ぬまで”なら、人って変われんじゃね? だったら、俺もまだまだ変われるってことだろ」


 そのとき、背後から、冷静な声が響いた。


「ナオヤ、リビルドの損傷。想定以上よ。……整備し直すしかないわね」


 アイナが無表情でそう言いながらも、わずかに声がやわらかい。ナオヤは立ち上がり、壊れた愛機の肩をポンと叩く。


「おーし、リビルド! お前はしばらく入院な! 俺がピカピカに仕上げてやっからよ!」


 そして、アイナのほうを振り返る。


「つーわけで、工房に向かうか!」


「……“ガラクタ”をまたバラして、再構成するの?」


「当然。俺のロボに“廃棄”は無いんだよ。常にアプデ、常に進化。理想は――永遠の未完成!」


 そう言って、ナオヤはルビナの宝石をポケットへしまった。


「命令も制約もねぇ。けどさ、俺は忘れねぇよ。ルビナが、ここにいたこと。俺に“自分で選んだ一撃”を見せてくれたことをさ」


 その時、崩れかけた《アストラ・カーネル》が、最後の光を放って崩落した。


 まるで、ひとつの物語が終わったように。


 *


 浮遊都市内の工房。ナオヤは荷物を背負いながら軽く口笛を吹いていた。


 その横で、アイナがぽつりと聞く。


「……ねぇ、ナオヤ。もし次も、同じような戦いになったら? あなた、また命を懸けるの?」


 ナオヤはキッと空を指差す。


「当然っしょ! “死んだら終わり”。でもよ、逆に言やぁ“生きてる間はなんでもアリ”ってことだろ?」


「……あなたって、本当にどうかしてる」


「それ、褒め言葉な?」


 アイナは肩をすくめ、小さくため息をついたあとで、ぼそっと言った。


「……次も付き合ってあげる。でも、無茶は……絶対、死ぬな」


「おーけーおーけー! 死ぬまで全力! 死ななきゃ勝ち!」


 ナオヤは陽気に笑う。空はすでに、光に満ちていた。


 未完成の夢は、まだまだ続く。

 クラフトと冒険の旅は、これからも――。

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