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私の愛した飛行士

作者: 緑川きね

兎耳セツナさんの三題噺からかきました。

★お題【ポッキー/飛行機/木枯らし】 ⇒三題噺☆サブお題【イチゴ/ナポリタン/和菓子】


愛した飛行士


海辺にあるバルコニーでポッキーを食べながら、空を見上げるマダム。

かつては女優として名を馳せたマダム…マリーナは飛行機を探し、白い機体の飛行機を見つけるとバルコニーの端の海の方まで走る。


「今日も元気ね…私たちの息子は」


30年前の写真をみる。かつて美しい笑みを浮かべたマリーナと仏頂面で睨みつけるように写真に移る男は彼女の夫で猫のような気まぐれで、

3年近く前の木枯らしが吹く日に、マリーナがいない時を見計らったようにベットに安らかに亡くなった。


夫の機体は今は無いがいちごとナポリタンが大好きだった小さい坊やだった息子が受け継いだ。


夫になる前の彼は女優のマリーナがストーカーに襲われそうになった時に叩きのめした後そのまま有名なマリーナにも興味がなく立ち去ろうとしていた。


彼は日系人で茶色い瞳に猫のような目つきであの時も仏頂面。


だが、繋ぎに隠れた美しい身体。見せるためのものでは無く、使うための筋肉。


マリーナが一目惚れして劇場のチケットを渡した。


「いらない」


と言われて、マリーナは食事でも奢るからとデートをこじつけた。


彼は店を大衆居酒屋を指定して、彼は大盛りのナポリタンとビールを頼んだ。

マリーナは普段は飲まない安いワインとチーズを頼んだ。

普段、何を食べても美味しいと思わなかったが、一目惚れした男と一緒に食べると初めて美味しく感じた。


支払おうとしたら彼が支払った。


「女に支払いさせられねぇ」


と言われて完全に骨の髄から惚れた。


それからマリーナは彼に付きまとった。

彼が折れて付き合うことになった途端、飛行路である海辺にバルコニーのある家を建てた。


彼の飛行機をバルコニーから見る。

とても幸せだった。

マリーナは彼の子を身ごもると、とっとと女優業を辞めて結婚し、男の子を産んだ。

家族の為に大衆居酒屋の女将さんからナポリタンの作り方を頼み込んで味を完全に再現させ、彼が美味しいとは言わないまでも、がっついて食べる勢いで、

美味しいと分かるまでナポリタン作った。



それからは普通の主婦として暮らしており、(あくまで彼女目線では。息子たちの間では美人な母親として有名だった)


そして30年。息子が独り立ちしたのを見届けて、彼のお墓に好物の和菓子をお供える。


「もう少し待っててね」


マリーナがそう言うと木枯らしが彼女の帽子を飛ばそうとするので、空見上げると飛行機雲がひとつ。


その飛行機雲は愛した飛行士の飛行機雲に思えたマリーナは微笑んだ。

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