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ドルナウの街の再興に向けて 体制を整えますよ

 「ああ!あんたがトシヤかい!冒険者ギルドドルナウ支部のギルド長アインって言うんさ。ほれ、あんたも名乗ってやんな」

 「副ギルド長ジードだ。世話になる」

 「全く、もっと言いようがあるだろうに!うちの旦那が済まないね。慣れとくれ。さて、聞いたところじゃ面白い力があるんだって?」


 レイノルさんの案内で元気いっぱい姉御肌のアインさん(僕推定年齢30歳)と物静かなタイプでがっちりした身体付きのジードさん(僕推定年齢30代前半)と現在対面している僕です。


 あの後、商業ギルドの二階大会議室にパスポート型出張扉を設置し、権限付きのタブレットと携帯を渡してきたので、今度は冒険者ギルドに設置しに来たんですけど……


 「なんだい、なんだい!こんな面白い力ってあるもんだねぇ!」

 「大したもんだ」


 僕のギフトの力を見て驚くどころか、バシバシ僕の背中を叩いて褒めてくれるアインさんに、物おじしないジードさん達。その様子を見て「ヤンとジウさん、バスターさん以来じゃね?」と僕の後ろで言っているハックさん。領主様なんですからジウ様って言いましょうよ。そう思いながらもハックさんの言う通り、その後もターミナル、温泉、ホテルを見せても、終始会話のペースはアインさん。


 「こりゃ凄いわ!トシヤって言ったかい!あんたの力があればコバディなんて目じゃないね!」「俺達も泊まれるのか?」


 いやぁ、お見事です。この大変な時期にも明るさを失わず、懐が大きく、そんなアインさんをそっと支えるジードさんの姿に僕も驚きます。あ、ジードさん勿論ですよ!是非泊まって下さい。レイノルさんも「アインさんのこの明るさにビスタギルド長も助かっているんです」とこっそり教えてくれました。そうでしょうねぇ。


 そして場所を戻して、冒険者ギルドの会議室にもパスポート型出張扉を設置。タブレットと携帯を渡して使い方はホテルの会議室で「ファイ」が常に教えてくれる事を伝えると「ちょっといいかい?」とアインさんが真面目な顔になります。


 「レイノル、トシヤにドルナウの「店主会」の事教えたかい?」

 「いえ、こちらは話せる立場ではありませんので」

 「まあったく義理堅いやつだよ。知恵はあんただって出しているってのに。まぁいい、店主会ってやつはね……」


 アインさんの話によると、動けない商業ギルドの代わりに裏で冒険者ギルドが動いて支援している会だそうですよ。それも、反「コバディ」の意思を持つ数人の店主達。カディル人を援助する事も含め、カディル人を率先して雇っている宿屋、食事所、肉屋、鍛冶屋の店主達の会だそうです。


 「あいつらは苦しい状況でも決してカディル人を見捨てたりしなかったんだ。おかげで生きているカディル人達が多いし、協力的な支援者を支えている。だから少しずつだが、なんとか街を直していっているんだ」と誇らしげに語るアインさん。


 「ああ、だがその分コバディからの風当たりも強い。冒険者ギルドで支援していたからこそなんとかなっていたが、最近冒険者ギルドにも塩や食料を売らないと圧をかけてきた。だがトシヤ達なら……」そう言って僕を見るジードさん。


 うんうん、最後まで言わなくてもわかりましたよ。まずはその「店主会」を通してやっていこうじゃありませんか!


 「勿論「店主会」を主に支援して行きましょう!こちらはみんなそのつもりですし、コバディの圧力も関係ないですからね!」


 サムズアップをして答える僕に「ありがたい!あんた見た目によらずいい男だねぇ」と僕の背中をバシッと叩いてカッカッカと笑うアインさん。痛いですし、見た目によらずって……それに何やらジードさんの目がちょっと怖いのですが。そんな僕とアインさんの様子に爆笑するセイロンメンバー。……そんなに笑わなくてもいいじゃないですか。ふんだ!


 和やかな雰囲気の中、ガチャッと冒険者ギルド会議室の扉からレイノルさんが連れて来た男性3人と女性1人。ん?もしかして……


 「おいおい、こっちは必死だっつうのに和やかだねぇ」とニヤッと笑いながら入ってきた料理人?らしき男性。「まあ、明るい事はいい事でしょうよ」と料理人の肩に手を載せて、僕らを見てニコニコする男性も料理人みたいですねぇ。「ふふっ、久しぶりに和やかな雰囲気で始められそうです」とこちらは綺麗で穏やかな女性ですねぇ。「時間が惜しい。始めるなら始めてくれ」と入って来たのは小さめの頑固親父という表現が似合う男性。こ、この方ドワーフの方では?


 「あの!ドワーフの方ですよね?」と思わず近づく僕。それに対して「そうだが、何だお前?」と怪訝そうなドワーフの男性。おお!ドワーフの方に初めて話しましたよ!とジーンと感動する僕でしたが、他から見ると怪しい男ですよねぇ。すっかり引かれちゃいまして……「あの怪しい男に何が出来るってんだ!」とご立腹。うーん、困りましたねぇ。


 「トシヤ、時々ああやって変になるよなぁ」

 「あ?いつもだろ?」

 「とりわけライとリルに対してだな」

 「あ、スレインから聞いたけど、温泉の「琴」だっけ?琴が出て来た時もそうだったみたいよ」


 ハックさんの感想に当然の様に答えるゼノさん、冷静に話すヒースさんにスレインさんから聞いた情報をバラすケニーさん。どうやらこんな会話を後ろでしてたそうですよ。そんな事も知らない僕はというと、ドワーフならコレでしょう、とエアからあるものを出して貰います。


 「いやぁ、大変失礼しました。憧れのドワーフ族の方に会えたのでつい感動してしまって。お近づきの証にこちらはどうですか?」

 「……なんだ?ん?………こ、これは!!」


 トクトクとコップに注ぎドワーフの男性に渡したのは……


 「っかあ〜!この喉を通った時の感触といい、癖のある風味といい、こりゃ良い!甘さもあるが上等な酒じゃねえか!」

 「そうなんです!PE◯NOD AB◯INTHE(ペル◯ ア◯サン)といえば僕の世界のとある国で社会現象となった伝説のスピリッツですよ!アルコール度数は68度と少し高めですが、酒愛好家のドワーフの方ならこれくらいは軽くいけると思いまして!」

 「なんだ、お前!わかっているじゃねえか!俺らは普段もっと高い酒を飲んでいるが、美味さはこちらが上だな!お前のとこにはこんな酒が置いてあるのか?」

 「ふっふっふ、これは序の口ですよ。僕のところにはまだまだいろんな種類のお酒が置いてあります!いかがです?見に行きませんか?」

 「なんと!そんなに種類があるのか!こうしちゃおれん!すぐ連れて行ってくれ!」


 憧れのドワーフ男性と意気投合して、ウキウキと早速パスポートを発行しようとする僕とドワーフ男性。「うっ」「ぐえ」……の襟首を掴むアインさん。


 「お二人さん、ちょーっと待ちな」


 笑顔は笑顔でも恐ろしい笑顔ってあるものですねぇ。アインさんの後ろに何かいるんじゃないかってくらいの迫力がありました。同じく恐ろしさを感じたドワーフ男性も「ア、アインか……そうだったな。話が先だ」とすぐに切り替えます。あ、ズルい!


 少々おいたが過ぎた僕とドワーフ男性、あ、グオルクさんって言うんですって。二人でアインさんから説教を受けていると、それを見ていたセイロンメンバーが……


 「あいつ、人の懐に入るの上手いよなぁ」とハックさん。

 「それは言える」頷くヒースさん。

 「あいつの顔じゃね?」と余計なお世話です、ゼノさん。

 「ああ!ゼノ確かに!警戒どころかなんか和むのよねぇ。今回もなんか手強そうな人から手なづけているしね〜」とケニーさん。


 ……後で聞いたら嬉しい様な悲しい様な複雑の心境でしたねぇ。まあ、なんとか説教も乗り越えた僕とセイロンメンバーに、改めて後から来た四人に自己紹介してもらいましたら、やはり「店主会」のメンバーでした。


 「お前、面白いなぁ」と笑う一番最初に入って来た男性はバドックさん(26)あ、年齢自己申告してくれましたよ。料理人かと思ったらお肉屋さんでした。通りでエプロンに血の様な跡があるはずです。


 「愉快な人だ」とニコニコ顔のもう一人の料理人姿の方は、食堂を経営しているゲイルさん(35)。なかなかの体格の方でティモに似ています。こちらの見立ては正解でしたね。


 「ふふっ、お願い致します」と笑顔の似合う紅一点の美人、イエニタさん(24)。カディル人の旦那さんが料理長で、お子さんが男の子(8)、女の子(6)と女の子(4)で宿屋を経営する女将さんでした。成る程雰囲気ピッタリ!


 で、僕と共に怒られていた同志。ドワーフで鍛冶屋のグオルクさん。「必ず見せてくれよ!」と懲りずに僕に頼み込んできます。ええ!勿論です!とがっしり腕を組む僕ら。


 「はいはい、それは後でやっておくれ。で、トシヤ「店主会」のメンバーも改めて亜空間の中を案内したいんだがね」


 呆れ顔のアインさんに言われ「それもそうですね」と即行動に出る僕。四人にオーナー権限で年間パスポートを申請し、入館手続きをしてまずはターミナルにご案内します。四人を伴ってターミナルのメイン通路(大型モニターのある通路の事です)に入ると……


 「なあ!塩は大丈夫か?」「野菜は足りているか?」「ここの店でいっぱい調味料買えるぞ!」「布足りていますかね?」「肉の仕入れなら任せとけ!」「あ、こっちの方が安くて新鮮な肉を仕入れ出来るぞ!」「果物も足りてる?」「酒も色々あるぞ!」「これ持って行きな!」……


 なんと「店主会」の四人を囲んで集まる大勢の職員さんや商人さん、冒険者の皆さん。これは予期していなかった僕ら。「店主会」の皆さんも訳がわからず戸惑っています。そんな僕らを助けてくれたのは頼りになるサムさん。


 「はい、みんなー!止まって止まって!まだこの四人ターミナルに入ったばっかりなんだよ?助けるどころか困らせてどうするのさ!」


 サムさんが僕らの間に入って一喝してくれたおかげで、「それもそうだった」「いきなりは困るよな」「つい先走ってしまった」「いつでも声かけてくれ!」「あ、私こういうものですから」と口々に言いながら聞き分けてくれた皆さん。なんか名刺渡していた商人さんもいましたねぇ。商機を逃さないとは流石。


 サァッ……と人が引けていつも通りの賑やかなひと通りのターミナルに戻りましたが、何やら既に疲れてしまった雰囲気の「店主会」メンバー。


 「いやぁ、ごめんごめん!集まっているなぁと思ってたけど、まさかここまでの騒ぎになるとはねぇ」


 済まなそうなサムさんによると、原因はファイのニュース速報だそうです。僕がドルナウの両ギルドに出張扉を設置した事、冒険者ギルドや「店主会」の皆さんの働きを伝えた所、感動した人多数。しかも、ファイは店主会が助けを必要としている事に加えて僕が店主会メンバーを連れてくる事まで伝えたそうです。それででしたかぁ、納得。


 「どうなっているんだ……?」とまだまだ戸惑う四人に、嬉しそうなアインさん、ジードさん、レイノルさん。そのドルナウメンバーに更に爆弾発言をするサムさん。


 「あ、そうだ!セクト周辺の街に王都や王宮から義援金集まってるよ!これで借金返済してもまだまだ余るくらい届いているからね!」


 これには、「本当かい!」「有り難い!」「えええ!良いのですか?」と驚きのドルナウギルドメンバー。おお!流石サムさん達ですねぇ!


 一挙に事態を把握した「店主会」のメンバーとギルドメンバー全員から喜びの叫びが上がります。いつの間にか輪になってそんな彼らを温かな目で見ているターミナルにいる皆さん。「良かったなぁ!」「これから力になるからなぁ!」「いつでも呼んでくれ!」と温かい声援を送っています。良い光景ですねぇ。


 やはり一人の力は小さくても、集まれば大きな力になります。復興は地元の人達だけでは難しいですからね。僕のターミナルが有効活用されて何よりです!


 ……で、ターミナルの皆さん。ドルナウの方々をいつ解放してくれますかねぇ?


アクセスありがとうございます♪まずは体制を整えるところから始まりました!現実にも様々な立場で店主会の様な皆さんがいるでしょう、是非頑張って下さい!という思いも込めて書いた回です。次回は生活支援が始まりますよ〜。宜しければ明日もアクセスしてみて下さいませ(*´꒳`*)

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