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ドルナウの街に必要なものとは?ですよ

 カポーン……


 「良い湯ですねぇ」

 「ええ、良いお湯でいい景色です」


 僕の言葉に同意しながら、映し出されている景色にも癒されているビスタギルド長。そうでしょう、そうでしょう。僕達はスパリゾート・癒の癒温泉「乳白色の湯」にゆったりと浸かっているところです。


 ******************


 あの後、メイン扉をギルド長室に出し、入館手続き後ホテルへ二人をご招待した僕。最初は「は?」「ええ?!」と驚き、なかなか動き出してくれなかった二人。ここはセイロンのメンバーが「まあまあ」「これで驚いていたらもたないぜ」「行けばわかる」「大丈夫ですよ〜!取って食われるわけじゃないんだから」と二人を促してサポートしてくれます。


 そして、ホテルに着いて「いらっしゃいませ」「ようこそ亜空間グランデホテルへ」とサーシャさんミラルさんの可愛い歓迎の後、「うぇるかむふらわーをどうぞ!」「ほんじつはかもみーるです!」と可愛いベルボーイ、ガール姿のライ君リルちゃんの歓迎に表情が柔らかくなった二人。うんうん、うちのスタッフいい仕事をしてくれます。


 そのままライ君リルちゃんに案内をお願いして癒温泉に直行した僕達。「ここはれすとらんです」「ここはきゅうけいじょです」と一生懸命案内をする二人に、ビスタギルド長もレイノルさんも緊張が解けて自然な笑顔になっていましたねぇ。


 そして癒し温泉に到着。ライ君リルちゃんはお手手繋いで「ごゆっくりどうぞ」「あったまってください」と言ってフロントに戻って行きました。可愛い過ぎますでしょう?うちの子達!とオープンラウンジで軽く自慢しながらみんなでお茶をして、その後男女に分かれて脱衣所へ。この頃には「凄いですね〜」「こんな凄い設備があるなんて」と受け入れ態勢になっていた二人。服を脱いで準備が整ったらいよいよ温泉へとご案内です。


 まずは温泉マナーの洗い場で身体をしっかり洗います。ここでも感動していた二人。最初は感動しますから時間がかかる事。結局二人は早く入りたいゼノさんハックさんに遊びながら洗われてましたねぇ。僕とヒースさんはマイペースに洗ってましたけど。


 そして洗い終わって、ようやく温泉ゾーンへ。最初はみんなで「炭酸水素塩泉」に入り、僕はビスタギルド長を伴って隣の「乳白色の湯」へ移動。ん?レイノルさんはどうしたのかって?それが……


 「何だよ?副ギルド長、この腹の傷!」

 「うげ!結構深かったんじゃね?」

 「一刺しだな」


 ゼノさんがレイノルさんのお腹を見て傷痕を見つけたんです。ハックさんも傷痕から判断し、ヒースさんに至っては刺され方まで言及。これには苦笑いをするレイノルさん。代わりに説明してくれたのはビスタギルド長。


 「レイノルの傷は数年前に私を庇って出来たものです。隙を作った私に以前から恨みを抱いていた元ギルド員が襲ってきたんです。……どうしてもこの仕事をしていると、恨みを買う事はありますからね。その時にレイノルがいなければ私は死んでいたでしょうね」


 穏やかに話し出すビスタギルド長によると、事件はギルド内で起こり、犯人は他のギルド員に取り押さえられて衛兵に突き出されたそうです。ですが、その時はたまたま大討伐でポーションが足りなくなっていた時。急いで冒険者ギルドに治癒魔法を使える人員を呼びにいき、何とかなったものの傷痕は残ったそうです。……最近も似たような事聞きましたねぇ。あれはアイスドラゴンでしたけど。


 で、その話を聞いたゼノさんハックさんが、顔を見合わせてニィッと笑い「よっしゃ!じゃ行こうぜ!」「だな!」と?マークのレイノルさんを連れて火龍温泉に連れて行っているところです。ヒースさんも「やれやれ」とついて行ったので、乳白色の湯には僕とビスタギルド長だけ。今は他のお客様も入っていなかったので、貸し切り状態ですね。


 「これは……うちの街の人たちに入って貰いたいですね……」


 ボソッと呟くビスタギルド長。この人は気弱そうに見えているだけで、本当は優しく芯の強い人なんでしょう。カディルの民にもって言っていたの聞こえてましたよ。


 「ビスタギルド長。なぜ「コバディ」商店の好きにさせているんです?」


 僕の単刀直入の言葉に「もうそこまで知っていたのですか」と苦笑いのビスタギルド長。


 ビスタギルド長の話によると、どうやら前店主の時にお金で借りを作ったらしく、現在も返済は滞っていて強く言えないそうです。そして、ほぼこの街の商店はコバディの傘下に入っていて食料にしても塩にしても幅を利かせられていて、街の住民と商店と商業ギルド問題で困っていたところに、アルクトドゥスキングベア(立つと11mもあるでっかいクマの魔物ですね)が街を襲撃。冒険者と衛兵で何とか撃退できたものの、今度はカディル人問題が明るみに。


 「おかげで情けないですが、最近は困って食事も通らなくて……」


 ちょっと前に来たサムさん達も支援したそうですが、それも尽きそうだったところに僕らが到着。かなり胃がキリキリしたそうです。ありゃあ、辛かったですねぇ。……しかし、成る程成る程。これって手助けできそうですよ、と考えていると、レイノルさんの声が階段から聞こえて来ましたねぇ。


 「ビスタギルド長!見て下さい!傷が!傷が無くなったんです!」

 「ええ!?見せて下さい!……本当だ……どう言う事です?トシヤさん」


 驚きの顔で僕に問い尋ねるビスタギルド長。「ああ、それはですねぇ……」とエンシェントファイアードラゴンの魔力が溶け出した火龍温泉の説明をしたのですが、それに加えてゼノさんが「コイツ、エンシェントファイアードラゴン従魔にしたんだぜ」と言うものですから二人が僕に対する言葉使いが一変しちゃったんです。


 「トシヤ様、本当にありがとうございます」「まさかこれほどのお力をお持ちだとは……」と跪くじゃないですか!やめて下さい!僕そんな大層な者じゃないんですから!


 どんなに言っても直らない二人の態度に困っていると「おーい、お二人さん。トシヤに感謝示したいなら普通に話してやれよ」「トシヤに感謝しているなら困らせるよりも、喜ばせてやったほうがいい」とハックさんとヒースさんが僕の後押しをしてくれます。「感謝の気持ちは気持ちよく受け取ってもらえる方法を選ぶべきだぜ」と僕と肩を組みながら言ってくれるゼノさん。


 何です何です?今度は僕を泣かせに来てどうするんです。


 「まあ、コイツはのんびりだし、お人よしで、隙がありすぎるけどな」「あと抜けてるし、寝過ぎだよなぁ」「限度を知らないがな」と付け足していくセイロンメンバー。


 涙が秒で引っ込みましたね……でもこうやって気兼ねなく言える関係がいいんですよねぇ。流石僕の専属護衛です。わかってらっしゃる。


 「成る程。わかりました。トシヤさんに感謝を込めて接していきたいと思います」とビスタギルド長。「そうですね。ありがとうございます、トシヤさん」と笑顔のレイノルさん。


 良かった良かった。やっと話が出来ますねぇ。ホッとした僕の提案で一旦脱衣所に戻ることにした僕達。そして全員着替えをした後ケニーさんも合流し、「じゃ、亜空間通路(ターミナル)に案内します」と僕の案内でターミナル通路へ移動していきます。


 「ターミナル?」「何ですか?それ?」と言う二人を「まぁまぁ」「いいから、いいから」とハックさんゼノさんが押して進ませてくれています。勿論くすくす笑いながら歩くケニーさんとマイペースに僕の隣で歩いているヒースさんも一緒ですよ。みんなでワイワイ雑談しながら通路を通ってターミナルに着くと、大型モニターからの大音量の声が聞こえてきます。


 『本日のお得情報!早速ビニーから紹介するわね』

 『はーい!みんな!今日はホットスナックがお買い得よ!グランデコンビニエンスストアとジークとドイルのお店で買えるわよ!なんと全品100ディア!五の刻からのタイムセールよ!ジークとドイルのお店は在庫限り、私のお店は時間内なら大丈夫よ!仕事帰りに今日の晩御飯に是非買って行ってねー!』


 モニターではキイの紹介で出てきたビニーが本日の目玉品を宣伝しています。モニター前ではざわめきと「急げ!」と言う声が聞こえてきます。ターミナルオフィスでは王都の両ギルドもオフィス登録し、人数も増えていますし、何とお店も増えているんですよ!セクトの屋台のお店が何件か入ってます。ヴァントさんももちろんいますよ!屋台誘致成功ですねぇ。王都からも見にきているお店の人達もいます。


 そんなこんなでターミナル通路は今や流行の最先端。セクトの街の人たちにも認知されてきています。グランから拡張のお願いもきていますしね。王都からはこれからでしょうし、忙しくなります。


 モニターではビニー情報から切り替わりファイのニュース速報が流れています。僕らがドルナウに着いた事が流れると更に「わあ!っ」と賑やかになるターミナル内。オフィスから顔を出しているサムさんも僕らに気付き手を振っています。そしてあちこちから聞こえてくる声。


 「遂に到着したか!」「やっと行ける!」「手伝いって募集しているのか?」「あ、カディル人いるだろ」「ばーか!知らねえの?カディル人手先器用なんだぜ」「そうですよ、うちの店で助かっているんですから」「お?あんた今日見学に来た店主か?どこからだい?」「王都ですよ。まさか王都より進んだ商業地帯があるとは思いませんでしたよ!」「だろう!これでドルナウの問題なんてあっという間に解決よ!」「そうですな」「なあ、いつ開通するんだ?」「もうすぐだろ」「忙しくなるぞー!」……


 聞こえて来る声はみんな知らない人達です。ビスタギルド長やレイノルさんがここにいるとは誰一人知りません。だけど思いは一緒。ドルナウの復興に力を貸してくれる人達で溢れています。いい光景ですねぇ。僕がビスタギルド長やレイノルさんに見せたかった光景が目の前にあります。


 うんうん頷く僕の後ろで「おい!」と言うゼノさんの声が。振り向くと膝を床について両手で顔を隠しているビスタギルド長。レイノルさんは片手で顔を隠しています。……気持ち届きましたかね?


 「そうですか……応援してくれる人達がこんなにいたんですか……」と涙声のビスタギルド長。「なんて……なんて有り難い……」と声はしっかりしていますが、流れる涙は隠せていないレイノルさん。ケニーさんがビスタギルド長の背中に手を当て慰め、「俺らもいるぜ」とレイノルさんの肩をポンポン叩くハックさん。


 賑やかなターミナルの中、感動の空間が生まれていたんですけど……


 「おーい!トシヤー!ドルナウの扉つけたかー?」


 僕を見つけたデノンさん。両手にいっぱい唐揚げ抱えて頬張りながら歩いてきます。


 「ん?何だ?邪魔したか?」


 と飄々としたデノンさんの登場に「ぶはっ!」「あはっ!」「ナイス師匠!」「タイミング良すぎる」と笑い出す僕らと泣き笑いをするビスタギルド長にレイノルさん。


 そうです。復興にあたって大事なのは人々の笑顔と僕は思います。笑顔を生み出す活力源はここから発信できますからね。それに僕だってまだ役に立つ秘策ありますからねぇ。


 さあ!ビスタギルド長、レイノルさん!

 これから忙しくなりますよー!

アクセスありがとうございます!ドルナウで動き出しますよー!でも大事なのってやっぱり復興に携わる人達の心だと思うんです。未来を見据えられる事って強いですよね。

さて、すみません!5/27は一日中用事があって更新ができませんm(_ _)mく、悔しい……。ですが気持ちを切り替えて5/28からまた頑張ります!でも、最近いいねの数が減ってきたので、また読者離れそうですねぇ……。くすん。なんとか待っていてくださると嬉しいです!(≧∇≦)

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