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「風の痕跡への誘い」の体験後です

 「トシヤ!もう一回チャレンジさせてくれ!」


 僕を見つけると駆け寄ってくるデノンさん。あー……何とも言えませんねぇ。なぜならここはグランデターミナルクリニックだからです。


 ******************


 ターミナルの会議室でシュバルツ様達と一旦別れた時、エアを通してニックから連絡あったんです。デノンさんが担ぎ込まれたって。あのデノンさんがですよ?しかもアルコの施設利用していてなぜ?


 そう思って僕はスレインさんとティアさんを連れてニックのもとへ急ぎ行くと、待合室でプリプリ怒っているカーヤ様と項垂れているデノンさんの姿が。アレ?無事じゃないですか。


 『オーナー、皆さんの診療が今終わりました』


 モニターのニックが僕に報告をした後、シュッと診療室の扉が開きセイロンのメンバー全員が出て来ます。


 「いやぁ、悪いトシヤ。無理しちまった」と僕を見つけ頭をかきながら言うゼノさん。「本当よ!治すこっちの身にもなってよね!」とゼノさんに注意しながら出てくるケニーさん。「いやでもさぁ、アレは仕方なくね?」と二人の後ろから出て来たハックさん。「とはいえ、自分達のレベルも考えるべきだったな」と冷静に判断するヒースさん。


 皆さんの怪我は治った様なので良いのですが、結構あちこち服が破けています。珍しいですねぇ。それを見たスレインさんも同じことを思ったらしいんです。


 「おいおいおい!何だおまえら?珍しい格好してるじゃないか」

 「そうねぇ。何があったの?」


 ティアさんも心配していますが、セイロンの男性陣ティアさんを見て「おまえがどうした……」と後退りしてますね。唯一ケニーさんが前のめりです。


 「ええ!ティアさん何その肌の艶!しかも全身が輝いているじゃない!」


 ええと、ケニーさんの目にはティアさんが輝いて見えるんですねぇ。そりゃすごい。その反応に気を良くしたティアさん。


 「そうでしょう!ケニーはすぐに気づいてくれると思ったのよぉ!見て!完成されたこの私を!」

 「きゃー!ティアさん、カッコいい!」


 ええと、また様々なポーズをとるティアさんに、それを見て手を叩いて喜んでいるケニーさん。この二人を遠巻きに見る僕ら。これはあちらはあちらで放っておきましょう。


 「で、どうしたんです?安心安全のアルコ仕様じゃなかったんですか?」

 「あー、あの扉は最低限の保護だったんだよ。だから冒険者専用なんだ」


 僕の質問に答えるハックさん。どうやらハックさんやゼノさん、ヒースさんから聞いた事を纏めると……

 

 「風の痕跡への誘い」の扉は前回言っていた様にビフラス渓谷につながっているんです。渓谷ですから山と山に囲まれた場所といえばそうなんですけど、山が三角とは限らないんです。まさかの巨大な台形の山なんですって。

 山の上部部分が平原の様になっていて、山の斜面に木が鬱蒼と生えているそうですよ。山と山の間の川には獰猛なセベコスダイル[エア情報:セベコスダイル:危険度ランクA 体長4m越えの巨体で群れで生息するワニ型の魔物。群れでいた場合危険度AAランク。川沿いや川の中で敵を捕食。皮は防具やバックに最適]が多数生息。


 斜面にはブルーゲムズボック[エア情報:ブルーゲムズボック:危険度ランクAA 体長2m単体で動くオリックス型の魔物。鋭く丈夫な2本の角と素早さが特徴。渓谷斜面を行動範囲とし、斜面での素早さに長けている。雑食。角は特に剣の素材として高級品]とアムールセンレオパード[エア情報:アムールセンレオパード:危険度AAランク 体長2m単体で動くヒョウ型の魔物。2本の大きな刃と鋭く大きな爪を持ち、木々の間の移動を得意とする。時折雷属性の魔法を持つ種も出る(その場合危険度ランクは単体でAAA)。音もなく動き後ろからの攻撃が得意。毛皮が滑らかで高級品]がウヨウヨしているんですって。僕これ聞くだけでも行きたくありません。


 そして上部分の平原こそ風の痕跡の代名詞。風で削られて作られた平原なんですよ。全く、一体どんな風でしょうねぇ。その平原には多くの魔物が生息しています。例えば……


 ハーテヌービースト[エア情報:ハーテヌービースト:危険度Bランク、但し常に大きな群れで行動する為危険度ランクはAAランク。怒らせなければ襲って来ない。ヌー型の魔物。肉が上質]やワイルドビッグバッファロー[エア情報:ワイルドビッグバッファロー:危険度Bランク、こちらも大きな群れで移動する為群れの危険度はAAランク。こちらも怒らせないと襲ってこない。水牛型の魔物。太く曲がった2本の角が特徴。角は武具に使われ、肉が上質]が群れをなし、それを狙うジャイアントアードハイーナ[辺境を襲ったハイエナ型の魔物ですね]、エラスライナーモテリウム[エア情報:エラスライナーモテリウム:危険度AAランク。単体で行動するサイ型魔物。大きな一本角と3mの巨体を生かし突進してくる。素早く火を纏う種も稀に現れる(その場合危険度AAAランク)角は硬質化しており、武具にも武器にも使われる最上のもの]がいるんですよ!


 そして一番恐ろしいのは……


 「バーバリアトランスリオンがいたんだ……」とデノンさん。


 バーバリアトランスリオン[エア情報:バーバリアトランスリオン:危険度SAランク。一頭のオスと数頭のメスで行動するため、群れではSSランク。吠え声で失神させるほどの威圧感と風の魔法を用いる巨大ライオン型魔物。草原最強生物。なかなか姿を見せないため、素材自体が未知数]って逃げてくださいよ!全く!


 あ、ちなみに普通のドラゴンがSランクで、エンシェントクラスは危険度計り知れないそうですよ。それ考えても逃げるべきでしょうに!


 セイロンメンバーによると、何とかハーティヌービーストやワイルドビックバッファローを相手をしていたらしいのですが、いきなり単体で現れたバーバリアトランスリオンを見て、デノンさんが一人で向かって行ったらしいんですって!後でアルコに聞いたんですけど、これが丁度「風の痕跡への誘い」に入って大体8時間半が過ぎていた頃だそうです。


 最初はデノンさんが気が触れたか、と思ったセイロンメンバー。しかし、カーヤ様がすかさず応援にいきながら「アレがデノンの夢よ!」と叫ぶ事で、みんながデノンさんをフォローしに行ったそうです。


 でも流石危険度ランクSA。単体でもメンバー全員の力より上回り苦戦。その中でも少しずつでも攻撃をしていたデノンさん。ですが、途中でメスのバーバリアトランスリオンが現れ、背中をやられるデノンさん。みんなで救出するも、血の匂いに集まって来たジャイアントアードハイーナにも囲まれて……というところで、アルコが強制退去させたらしいです。


 強制退去の場合、グランデターミナルクリニックに現れる設定になっているんですって。で、全員すぐにデノンさんをカプセルの中へ。一応現地でポーション、ヒールをかけていたらしいのですが足りなかったみたいで、カプセルで全快したデノンさん。


 ここで問題になっているのは、再三のアルコの警告を無視したデノンさん達。アルコによって「風の痕跡への誘い」の扉を出禁にされたそうです。これを今聞いたデノンさんが項垂れ、カーヤ様が挑戦しようとする気がまだある事に怒り、今に至ります。


 で、デノンさんに肩を掴まれ懇願されている僕。セイロンメンバーもそれに加わります。


 「頼む!アイツを倒したくて俺は冒険者になったんだ!あの挑戦権を折角得たのにこのままで終わりたくないんだ!」


 いつものデノンさんと違い真剣に頼み込んでくる態度に、更に「頼む!トシヤ!俺達もあの場所に挑戦させてくれ!」とゼノさんや「アルコの警告守るし、アルコの補助も受けるから!」とハックさん。ヒースさんでさえ「頼む」と頭を下げて来ます。この様子に「どうしたものかしら」とぷりぷり怒っていたカーヤ様も困り顔。そんな中意外にも後押ししたのはケニーさん。


 「……ねえ、トシヤ。夢が目の前にあって諦めるのって辛い事よ。それに夢だった事だもの。無茶だってするわ。でもみんな現段階での実力の見極めもできたと思うの。……挑み続ける事が生き甲斐なのが冒険者よ。その意思を尊重して貰えないかしら?」


 これにはスレインさんもティアさんも頷いています。……僕としては危険な事はしてほしくないんですけどねぇ。でも、夢ですか……。デノンさんの様に長く生きてきても諦めずに持ち続けた夢なんて格好良いじゃないですか。それに、人の生き甲斐は応援するものです!


 「エア、アルコに繋いで下さい」

 「畏まりました」


 僕の言葉にみんなが注目します。さてさてアルコのご機嫌はどうでしょうねぇ。


 『はーい!オーナー呼びましたか?』

 「アルコ、「風の痕跡への誘い」の件ですが……」

 『あ、オーナー!第一陣のメンバーの事ですね!駄目ですよ!折角用意したブレスレット型魔導具も装着せず、自分達の力を試したいからって言って、無茶をした挙句に警告を無視する人達は!しかも、第二陣のメンバーも同じ事を言って行ったにも関わらず、今危ない事になっているんですよ!もうこの人達も出禁にしようか悩んでいたところですから!』


 アルコ思ったより怒っていますねぇ。しかし第二陣メンバーもですか……これはこれは。でも仕方ない人達ですねぇ。


 「どうでしょう?アルコ。せめて一ヶ月の出禁にさせては。そして挑戦させる為に扉をバージョンアップさせますから、デモンストレーションの部屋を作るのはどうですか?そこで擬似体験をさせて挑ませるのです。必ずアルコの指示に従う事と、ブレスレットを嵌める事を必須事項にして」


 いやぁ、最近追加されていたんですよ。コレ。

 

 【グランデツーリストアルコ 】

 〈設定〉

 〈旅行先リスト〉

 〈スタッフ登録〉

 〈扉バージョンアップ〉←コレ!


 中はというと……


 〈扉バージョンアップ〉

 1・「碧への誘い」    0/100,000(魔石)

   (next:ダイビングセット×3)

 2・「古代文明への誘い」 未設置

 3・「風光明媚への誘い」 未設置

 4・「風の痕跡への誘い」 0/100,000(魔石)

   (next:デモンストレーションルーム)

 5・「大地の赫への誘い」 0/100,000(魔石)

   (next:一人専用特別車両×3)

 6・「地底湖への誘い」  未設置


 デモンストレーションルームに至っては最初からあればと思ったのですが、アルコ側からすると……『ブレスレット無しで行くなんて思いませんよ!』だそうですよ。まぁ、ブレスレットの詳しい事に関しては次回ですねぇ。


 『うっ!オーナー、そこに気付きましたか……まぁオーナー次第ですからねぇ、私達は。……いいですか!皆さん!今回は一ヶ月で解禁しますが、必ず私の言う事守ってもらいますからね!』


 アルコの声に「いよっしゃあ!」と男達の声が響くクリニック内。ん?診療室の中からも聞こえますが……まさか……?


 「助かった!トシヤ!私達も悔しかったんだ!」とレイナさん。

 「まさかあんな格上がいるとはなぁ」とボルクさん。

 「あのままじゃ悔しいもんな」とザックさん。

 「まさかあそこまで歯が立たないとはなぁ」とグレッグさん。

 「次こそは……勝つ!」とジェイクさん。

 「次はいつになるんだ?」とガレムさん。


 既に強制退去されていた「テラ」と「クライム」混合メンバー達が診療室から出て来ます。……みんなボロボロなのに、何でしょうねぇ。この前向きさ。でも、これが冒険者ですか。凄いなぁ。そう思いながらも全員に声をかける僕。


 「皆さん!まずは一ヶ月しっかり働いて貰います!既に恩謝は王から受け取っているんです。ドルナウの街に出張扉設置しに行きますよ!」


 僕の声に「おーう!任せとけ!」「ああ!その分働くぜ!」「合間に鍛えねえとな」……と次々喜びとやる気のある声が上がります。全く……わかりやすい人達ですねぇ。僕もですけど。


 さあ、次こそドルナウの街に向かいますよ!


 と、言っている後ろで……

 「なあ、なんか乗り遅れた感ねえか?」「そうなのよねぇ」と言っているスレインさんとティアさんがいたそうな。

アクセスありがとうございます!さてようやく次回からドルナウ編に入ります!ドルナウの街では何が待っているでしょうねぇ。是非明日もアクセスしてみて下さいませ(*´꒳`*)

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