スパリゾート設置しました 其の参
『ようこそ、癒温泉へ。この温泉施設を担当する琴と申します。まずは温泉についてご説明致しますね。温泉とは地下から湧出する水で、温度が25度以上のもの、または一定の温泉としての成分物質を規定値以上に含んでいるもの、または、一定の含有割合(1000gあたり1g以上)で含んでいるものと定義されております。
当館の温泉は全て規定以上の効果が実証されており、特に治療の目的に供し得るものとして「療養泉」と呼ばれます。その為、温泉に入る前に是非守って頂きたい事がございます。
1・空腹で入らない事
2・入る前に水分補給をする事。
3・甘いものを取り、ひと時団欒してから入浴する事。
4・身体を洗ってから入浴する事。
5・最後にシャワーを浴びない事。
1の理由としては、空腹状態では急激な温度変化による貧血や体調不良が起こりやすくなる為でございます。3も同じ理由でございますが、体の血糖値を少し上げておき体調不良を予防しようという目的の為でございます。2の理由と致しまして、発汗作用を促す為。4は身体の表面の汚れを落とす為、5は効果の持続性の為でございます。
またマナーの悪いお客様は強制退去をさせて頂き、以後入館はできかねますのでお気をつけ下さいませ。ご質問はいつでもお近くのモニターにて受付しております。では、ごゆっくり癒しのお時間をお過ごし下さいませ』
エレベーターを降りるとすぐに広めのエレベーターホールにモニターがあり、琴が温泉について説明をしてくれています。ウチは全部効能がある温泉なのですねぇ。そういえば火龍温泉もありますからね。うーん!楽しみです!
モニターの後ろ側には広いオープンラウンジがあり、マッサージチェアも壁際に10台くらいありますね。オープンラウンジ内にフリードリンクコーナーがあり、スポーツドリンク、お茶、サービスのウェルカムお菓子(団子、大福、チョコレート菓子)が置いてあります。
僕らは少し空腹だったので、お茶とお菓子を食べて少しまったりする事に。お菓子や大福、団子はみんなに高評価でした。僕も久しぶりに食べましたよ。美味しかったぁ。その後は5分程雑談をして、いよいよ温泉に向かう事に!
「じゃ、僕は女湯に行くから!」
左の女湯に向かう通路を指差しながらウキウキ顔のシャラさん。まあ、シャラさん僕らより時間かかるでしょうねぇ。女性は長湯ですから。
シャラさんと一旦別れて僕らは右の男湯へ繋がる通路を歩いて行きます。青い暖簾に男湯とこちらの言語で書かれているのでしょう。みんながすんなり引き戸を開けて入って行きます。
暖簾をくぐるとそこは脱衣所。5人同時使用出来る洗面台や鏡の他、壁側にロッカー、真ん中に脱衣カゴが25個設置されている棚、奥に個室が3部屋あります。個室は貴族用でしょうか。
僕らのグループは気にせず脱衣カゴに脱いだ服を入れ、裸になります。あ、タオルは腰に巻きますよ、僕は。さあ、入りましょう!って言ってもまずは洗い場なんですけどね。
「やっぱりホテルより広いな」
裸一貫のスレインさんがタオルを肩にかけて、慣れた様に洗い場へ。ネイサンギルド長はラキさんスーさんにシャンプー、リンス、石鹸の説明をしています。ヤンさんはしれっと、既に洗い始めています。僕も洗いますかね。
結構職員さん達がこちらにも入っていますねぇ。使い慣れた人が慣れない人を助ける姿が見えます。うんうん、いい事です。と周りを見ながら身体を洗う僕の隣では、「こんなたっぷりのお湯を使えるとは……」と感動しながらシャワーを浴びるスーさんと、「目に沁みる!」と、どうやらシャンプーの泡が目に入ったラキさんの声が。初心者あるあるですね。
のんびり身体や髪を洗っていると、気がつけば周りはみんな先に温泉に入りにいき、僕1人になっていました。みんな早いですねぇ。身体の泡をシャワーでしっかり落として、さあ、僕も行きますか。
カラララ……と洗い場から引き戸を開けると、ブワッと熱気が僕を包みます。目を開けると目の前には広く長い通路がありますねぇ。どうやら温泉は通路の下にある様です。通路を真ん中に左右に3種類ずつ温泉があり、行き止まりが火龍温泉。という事は7種類でしょうか?各温泉に降りる階段横には水や熱気でも大丈夫なモニターがあって、各温泉を琴が案内しています。
入り口から右側1番目の温泉はというと……
『こちらは炭酸水素塩泉、炭酸ガスを含んでいる泉質です。炭酸水素塩泉は美肌にもうれしい効果があります。また、炭酸ガスには血管拡張の効果があることから、血流や新陳代謝を促進します。サッパリとした清涼感を感じる温泉ですので是非最初に入る事をおススメ致します』
まずは温泉初心者にはいいですねぇ。ここ檜造りの湯船ですね。木のいい香りに包まれてゆったり入れるいい温泉です。しかもどうやら大きな窓からは綺麗な風景が映し出されていて、じっくり鑑賞しながら入れます。おや、スーさんはこちらでしたか。いい湯でしょう。僕は全種類制覇したいので、先に移動しますね。
ゆったりとした階段を上がっていくと今度はお隣左の1番目の温泉へ。
『こちらは乳白色の温泉です。乳白色の優しげな彩り、硫黄とわかる温泉本来の香りに炭酸成分が多く含まれたお湯は、なめらかな肌触りで、すべての方にやさしい中性(弱酸性)のお湯となっております。美肌はもちろん慢性疲労回復、神経性ストレスに効果の高いお湯でございます』
……成る程。通りでネイサンギルド長がいるわけですねぇ。ヒバ造りの大浴槽にここは日本庭園が見えます。あれ枯山水ですよね。んー、いい感じです。あ、ネイサンギルド長、じっくり浸かって下さい。え、なんです?毎日通いたい?いいじゃないですか。是非利用して下さい。
さて、またゆっくり階段を上がって気づいたんですが、各温泉の匂いが混ざっていないんですよ!階段を降りていくと途中から匂いがする感じで、通路は無臭。亜空間仕様ですねぇ。しかも通路には所々にベンチと給水設備があります。職員さん達も利用しているみたいです。
僕も少し休憩しましょう。お水も補給してふう……と満足のため息を吐きます。いいですねぇ、温泉って。これこそ僕が望む時間の使い方です。ん?誰です?枯れてるって言っているのは?良いものは良いんですよ。……まあ、どうでも良い事は置いといて、次に行こうとすると琴に止められました。
『オーナー、こちらのお湯全てを一度に利用するのは身体の負担が大きすぎます。じっくり時間をかけて入る事をお勧め致します』
これは仕方ないですね。火龍温泉は絶対入りたいので、他の四つは様子を見にいくだけ行ってみましょう。右側真ん中のお湯はどうやら硫黄泉でも強酸性ですねぇ。琴、お願いします。
『こちらは酸性泉は、酸性泉のなかでも“強炭酸性泉”と呼ばれる泉質です。酸性泉は、肌への刺激が強いのが特徴です。入浴すると、ピリピリした刺激が感じられるので、肌が弱い方や小さな子どもには向いていません。ですが、酸性の刺激が強い分、殺菌力が高いため、切り傷や火傷のほか、ニキビ、アトピー性皮膚炎にも効果がございます』
ああ、某有名温泉の泉質ですねぇ。あのお湯でいつものクセで顔洗ったらいけませんよ。痛いんですから!まぁ本当に肌はよくなるんですよ。でも顔はいけません。「うひゃああ!」ってこの声はラキさん。ここでやっちゃいましたか。……大丈夫でしょう、温泉ですし。
そして左側真ん中のお湯はあれ?泥湯ですか?
『こちらのお湯は泥湯の由来ともなった白濁色をしていますが、美肌の湯として当館で効能が高いお湯でございます。毛穴の中の汚れをとり、古い角質の除去、美白作用がございます。女性に最も人気のお湯となっております』
成る程、女湯であれば泥パックしながら入る人もいることでしょう。しかし男湯では関係ない……ん?あれはヤンさん。しっかりパックしてますよ。ああ、美意識が高い方だったんですねぇ。より男ぶりが上がるでしょう。
さて残りの二種類は右にラジウム岩盤浴と、砂湯。左がサウナになっていますね。これらは発汗作用を高めて新陳代謝を良くするのと、ラジウム岩盤浴は細胞を刺激、活性化し、免疫力を増大させるらしいですよ。早速「体調良くなった!」という声が聞こえてきます。うんうん、良かった良かった。
さ、僕は火龍温泉に入りに行きましょう。行き止まりの階段を降りるとなんと火山岩と同じ洞窟造りです。成る程、「大地の赫への誘い」と同じ岩ですねぇ。中は間接照明によってなかなか神秘的な感じです。おや、湯船に浸かっているのはあれはスレインさんですね。僕がスレインさんと声をかける前に気付いてくれました。
「おう、トシヤか。……見てくれよコレ」
ザバッと湯船の中で背中を見せて立ち上がるスレインさん。「立派な身体付きですねぇ」と言ったら「阿呆!」と叩かれて僕はバッシャン!と湯船に飛び込む事に!「痛いですって!」という僕の非難をサラリとかわし、スレインさんが言う事には……
「俺の背中の古傷が消えてるだろ。……アイスドラゴンにやられた傷が消えたんだぜ。皮膚が引っ張られる痛みがねえんだ。しかも身体の内側から力が出てくる。凄えよ!コレ!」
興奮して教えてくれるスレインさん。どうやらその時は治癒魔法がかけられる程の魔力が残っていた人がおらず、しばらくしてから治癒魔法をかけて貰い一命は取り留めたものの傷が残る事になったそうです。自分の不注意と慢心からの怪我だったらしく、かなり気に病んでいたみたいですねぇ。
ってそういえば僕の怪我痕も全く無くなっています。え?僕の怪我の理由は、自転車の立ち乗りの時に手放しを挑戦してついた馬鹿なものですよ。良いんですよ、治ったから。
《……この魔力……糸目の男がいるのか……?》
馬鹿な事考えていたら頭に声が届きます。スレインさんを見ると、特に驚く様子もないので、これは僕だけに聞こえている様ですね。これはエンシェントドラゴンさんですか?と頭のなかで聞き返してみます。
《……そうだ。此処は我の魔力が溶け出した湯……認識するには容易い事よ……。糸目の男よ、名を教えよ……》
え?言ってませんでしたっけ?トシヤです。
《……トシヤか……どうだ?……我に名をつけてみないか……?我の力は長い年月の放出により残り僅かだ……だがこの場所は守らねばならん……トシヤのギフトの力は心地良い……やって見てもらえぬか……?》
うえ!まさかの名前つけですか?折角逃れられたと思ったのに!っていうかまずいじゃないですか!守り主がいなくなったら大変ですよ!……しかし名前つけるだけで良いのでしょうかね?僕がつけるとしたら、エンファドさんしか出てこないですけど。
《……エンファド……まぁ……良いだろう……》
なんとも言えない声が聞こえて来たと思ったら一瞬強く光りだした温泉。「おいおい!なんだ今度は!?」と流石のスレインさんも驚き僕をみます。いや、僕も何が何やら?
《トシヤよ……これにて我エンファドとトシヤは従魔の契約で繋がった……力がドンドン湧いてくる……!しばしこの身体に慣れる為に眠るが……何かあれば頭の中で我を呼ぶが良い……力になろうぞ……》
って、はい!?なぜそんな事に?というか、あちらは完全に意識を切ったのか繋がらなくなりましたよ?ええ?まさかの従魔契約?
あれ?従魔契約ってなんでしたっけ?スレインさん。
アクセスありがとうございます!なんとエンシェントドラゴンと繋がったトシヤ。これは今後どうなるやら?次回はようやくティアさん出てきます。従魔報告と美容の回です。宜しければまたアクセスして見て下さいませ(*´꒳`*)誤字報告いつも助けてくださりありがとうございますm(_ _)mホントタスカリマス。