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スパリゾート設置しました 其の弐

 「ウッヒョウ!凄え迫力!って!ブワッ!」

 「よく話せま!プワッ!すね!」

 「なにこれ!なにこれ〜!」

 「おお、気持ちいい!」

 「「ひえええ〜!!」」


 ……人数増えてますでしょう。思いっきり水を被ってはしゃいでいるスレインさん。必死にゴムボートに捕まる僕。オールを持って余裕のシャラさん。気持ち良さそうにずぶ濡れになるネイサンギルド長。巻き添え体験中のギルド職員ラキさん(22歳男性)とスーさん(31歳男性)。あ、ラキさんスーさんは僕も安心するこの世界では珍しい普通顔(笑)。すぐに溶け込みました。


 スパリゾートのレジャー施設って皆さんプールって思いますでしょう?着替えた時から明らかに違うのがわかったんですよね……


 ******************


 「さあて、なにが出るかな?」


 ワクワクしながら歩いているスレインさん。エレベーターで1階に降りてすぐ、僕らの目の前には男性用と女性用更衣室に分かれている扉があります。僕らが男性用更衣室の扉を開けると、ガチャッと右側にある似た様な扉も開き、そこから入ってきたのはネイサンギルド長。


 「あれ?ネイサンギルド長じゃん。どっから来たん?」

 「いや、私達はターミナルの通路から来たんです。ここの視察にまずは1階からと思って。お2人はもしやホテルからですか?」


 動じないスレインさんにネイサンギルド長。2人共普通に話してますけど、後ろの職員さん二人は「一体どうなっているんだ!?」「なんだここは!」と驚いてます。スレインさん、ネイサンギルド長、僕の力に慣れましたねぇ。


 「僕らはホテルから来たんですけど、ターミナルから来ても更衣室で一緒になるんですねぇ」

 「そうみたいですね。ああ、そうそう今ギルド職員にも体験させようと2人連れて来ているんですよ。経理部門から2人、赤い髪の方が経理職員のラキで、青の髪の方が経理担当のスーです。2人共、こちらの方がこの施設を含めた亜空間ターミナルとホテルの経営者のトシヤさんと護衛のテラのスレインです。ご挨拶を」


 冷静に僕らに2人を紹介するネイサンギルド長。ネイサンギルド長から僕らの事を紹介されて、狼狽え畏まるラキさんスーさんでしたが、普通に接してほしいと頼み込むと、渋々普通に対応してくれる様になりました。敬語は取ってくれなかったですけどね。


 さて、挨拶も済み改めて更衣室を見ると、広めの通路を挟んで両脇に個室がずらりと並んでいます。どうやら鍵付き個室ですね。中にロッカーと着替えるスペースがあったので、とりあえずそれぞれ入って着替える事にしたんですけど……なんでヘルメットに全身タイプのスウェットスーツ、ライフジャケット、簡易ブーツがあるんでしょう?あ、因みにロッカーには小さなモニターが付いていて着衣の説明がありました。親切設計です。


 もしや……と思いながらも着替えて個室から出ると、似合いますねぇ、皆さん。既に着替えて面白がっている男性陣。うん、これ決定ですねぇ。僕1人理解した中、更衣室を出ると「遅い!ってアレ?トシヤ達じゃんか」と完璧に着こなしたシャラさんが待っていました。


 どうやらシャラさんは3階のエステよりこちらが興味あったらしいです。シャラさんらしいですねぇ。そんな会話をしながら通路止まりの扉を開けると……


 広めの階段の上から見える青い空。緑が鬱蒼と繁る真ん中を雄大に流れる川。その河川敷に並ぶゴムボートの数々とモニターのついた小屋。うん、やっぱり渓流下りですねぇ。


 扉が開いて「は?」「なんで?」とキョロキョロするのはラキさんとスーさんだけ。「良い景色です」「へえ〜今回は川かぁ」とニコニコしながら階段を降りて行くネイサンギルド長とシャラさん。「アレなんだ?」とボートを指差しながら降りて行くスレインさん。僕は「まあまあ、行けばわかりますって」と2人の背中を叩いて進ませます。


 全員階段から降りて小屋に近づくと……

 

 『ようこそ!ラフティングツアーへ!案内しますのは私「フティ」です!宜しくお願いします!』


 モニターの中ではオールを掲げた僕らと同じ格好の元気そうな女性が歓迎しています。アレがフティですか。でもモニターはここだけですよねぇ。


 『はーい、オーナー!ちゃんと種明かしをしますよ〜。その前にラフティングとは何かをご説明します。オーナーの世界ではラフトは「いかだ」。いかだの様な乗り物を使ってみんなで協力しながら川下りをする事です!しかーし!唯の川下りと思うなかれ!ここは旅行代理店と提携して出来た奇跡のスポットです!どなたかドリュース川って聞いた事はありませんか?』


 フティの質問にすぐに反応したのは僕以外の全員。どうやら有名な激流川で川には魔物もいないと言われていて、この世界では有名な場所らしいのです。そしてここも存在する場所が特定できておらず、噂でしか聞いた事のない場所なんですって。いやいや、駄目でしょう!激流川を川下りしたら危険ですって!


 『はーい!そこは安心安全の「アルコ」設計ですよ〜!転覆、横転、沈没知らずのボートに、しっかり固定された座席により乗船者の落水はありません!しかもボートにはガイドAIがついていますから安心して下さい!またボートもオートモードと手動モードの切り替えも可能!体力のない方でも安心!但し、ずぶ濡れになる事だけご了承下さいね!』


 フティの説明の間モニターでは激流コースの映像が流れていますが……大丈夫ですかね。あ、ラキさんとスーさんも同じ人種ですね。不安そうな表情が一緒です。あとの3人は「うわぁ!楽しみ〜!」「ほう、これは面白そうな!」「これ絶対手動で行こうぜ!」とウキウキ顔。冒険者って凄いですよねぇ。


 そして始まるレクチャー。まずはモニターでオールの動かし方を映し出し、その通りに陸でオールを動かします。あ、オールは小屋から持って来ましたよ。しかし、陸でやると笑えますよねぇ。そして浅瀬でボートに乗り込み、腰を座席に固定させていざ出発!


 『はーい皆さん、流れに乗るまで漕いで下さーい!』ガイドAIに激励され漕ぎ出す僕達。回ったりもしましたが、コツを掴み真っ直ぐすすむと気持ちいいものです。川の水の匂いと緑の匂いに包まれ空気が美味しいんです。「気持ちいいですねぇ」とラキさん。「これはなかなか!」と楽しそうなスーさん。そして力強い冒険者組。……正直3人の力で進んでいます。


 『さあ!オールを固定具につけて下さい!ここからはオールが効かない激流ゾーンです。ボートもオートになりますよ〜!』


 3人のおかげで、この先急な流れになっているのが見える位置まで来ました。いよいよ激流に突撃です!と、余裕があったのはここまで。


 「どわあ!」「ひええ!」「落ちる〜!!」


 この声出しているのは誰かわかりますか?そう、ラキさん、スーさん、僕です。皆さん、いいですか?落ちない、転覆しない、水没しないという事は流れに弄ばれるという事なんですよ!一回転して水面が頭の上になったり、水面が僕のすぐ横になるくらい横になったり、真っ逆さまに落ちて行ったり!


 オートなので、その場所に止まり続ける事なく激流ゾーンを乗り越えられるのですが一旦流れが落ち着く頃には、ぐったりしている3人と思いっきり堪能している3人と反応が分かれていましたねぇ。


 「すっげえ!すっげえ!」「あはははは!」「いや〜、これは面白い!」と3人嬉しそうでしょう?いやぁ、ちょっと休ませて下さいよ……と思っていたら、ガイドAIから案内が入ります。


 『はーい!お疲れ様!次はシャワーウォークゾーンです!浅瀬に着きますから皆さん降りて下さいね』


 なんと今度は川の中を歩くそうですよ。あ、ボートはちゃんと岩に固定していきますよ。ぐったり組も川底に足をつけて伸びをすると、気分も落ち着き、行動開始です!因みにガイドAIはボートから取り外し可能な携帯サイズなので、ライフジャケットの胸ポケット部分に僕が装着。ガイドAIの案内でマイナスイオンに包まれながらしばらく歩いていくと、ん?かなり大きな岩があります。上から水が結構流れてますねぇ。


 『さあ!皆さん!この岩を登って下さい!大丈夫足場はきっちりありますから!後は皆さんの体力勝負です!』


 ガイドAIの案内によると、ここに来てまさかのクライム!固定ロープもあるので女性でも出来るそうですが……


 「ほら!トシヤ!今度は右!」「ちゃんとロープ掴めよー!」「大丈夫です!私も登れましたから!」「そうですよ!水に向かって行くのが爽快でしたし!」「トシヤさん、しっかり足場確認して!」


 そうなんです。僕以外は既に登っているんですけど、僕は苦戦。結構流れる水の圧があるんですよねぇ。でもなんでしょう、確かにこれ気持ちいいんです!よいしょっと!


 「ほらやれば出来るじゃねえか」と登り切った後にスレインさんに肩をポンと叩かれる僕。岩の上から見る景色に加えて風が気持ちいいんです。ふう……清々しいですねぇ。


 で、どうやって降りるんだろう?と思っていたら、ガイドAIが教えてくれた方法は……


 「いい〜やっほ〜い!」


 スレインさんが反対側の深い滝壺目掛けて飛び込んで行くじゃないですか!ドッボン!と着水し水面に顔を出して「気持ちい〜!」と叫んでいます。その後をネイサンギルド長とシャラさんも続けて飛び込み、水面から顔を出して「これはいいですね!」「もう一回やりたい!」と叫んでいます。凄いなぁ。


 しかーし!飛び込みが怖い人にはそれは無理。そんな人には……


 「行きまーす!うわあああ!」


 ラキさんが挑戦したのは、水が岩を削って作られた天然スライダー!これちゃんとメンテナンス済みで引っかかる事なく滑らかに滑るらしいですよ。下まで滑りおちて滝壺に入り、水面から顔を出すラキさん。「これ面白いですよ〜!」と笑顔で僕とスーさんを手招きしてます。


 「うおーー!!」「うひゃあああ!」


 勇気を出したスーさんが滑り降りて、次に僕が滑りおります。バシャーン!バシャーン!と滝壺に入水し、水面から顔を出して僕らは大笑い。めちゃくちゃ気持ちいいんです!少し泳いで浅瀬に戻り、ぐるっと岩場を歩いて行くと、固定されたボートのところに戻って来ます。


 そして流れに乗って下流を目指しますが、その先も激流ゾーンです!でもここまで来ると……


 「いやっほー!」「いっけえ!」「あはははは!」「わあ!」「ウッヒョウ!」「ひゃー!」


 誰が誰だかわかります?もうみんな楽しんでいるんです。安心安全アルコ仕様ならではですね!


 下流についた頃には、全員が笑顔で「もう一回!」というシャラさんの言葉に同意していますねぇ。え?どうやって帰るのかって?これが面白いのが簡易出張扉がついた小屋が下流にあるんです。


 ガイドAIの指示の元、空気を抜くとオールも一緒に縮む設計になっているボートを持ち、簡易出張扉を開けると……


 「階段……戻って来たんですね」


 ネイサンギルド長の言う通り上流の出発地点に戻って来ました。そこでは「じゃ!行ってくるねー!」というサムさん商業ギルド組と「行くぞ!」というブライトギルド長組が出発したところでした。アレ?あれだけあったボートが無い。


 『ああ、皆さんの様子、ターミナルモニターやホテルのモニターで流していたんですよ。おかげで、お客様が増えてもうボートは完売です!』と嬉しそうに報告するフティ。使い終わったボートも小屋に戻して1時間メンテナンスが必要という事らしいので、僕らはもう一回乗る事はできませんでした。


 『少し冷えた身体は2階の温泉施設であっためて下さいねー!』とフティに言われた僕らは一旦更衣室に戻ります。更衣室のロッカーに濡れたまま全て入れると、クリーンとドライがかかって再利用出来る仕組みだそうです。便利ですねぇ。


 「いやぁ!これは楽しかった!」というラキさんの言葉に同意して、賑やかに移動する僕達。さ、次は念願の温泉です!楽しみですねぇ、と思いながらエレベーターに乗ろうとすると、「ウチのバカギルド長見ませんでしたか?!」と開いたエレベーターから出て来たヤンさん。


 ブライトギルド長……またですか、全く。ヤンさん、しばらく戻って来ませんから一緒に温泉行きませんか?

アクセスありがとうございます!トシヤならではのレジャー施設ですがいかがでしたか?明日は火龍温泉も含めた温泉施設です。宜しければアクセスしてみて下さい(*´꒳`*)

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