王都の冒険者ギルドです
説明回です。
ザワザワザワザワ……
流石凄い人ですねぇ。道が人で溢れ返っています。でもさっきから色んな人が通りすぎて行くんですよ。獣人さんは勿論、小さなお子さんかと思えばドワーフさん、人も皆さん大きいですねぇ。エルフの綺麗な方々もいらっしゃいますし、片腕だけ鱗で覆われている男性もいらっしゃいます。なんかかっこいいですよ。
「おーい、トシヤ。あんまりジロジロ見るなって」
「さっきからおバカさん達が狙って居るわよ」
「笑ってスリ返してやったけどな」
あんまりジロジロ見すぎてたんでしょう。ゼノさんが僕に注意を呼びかけます。ケニーさんは笑顔で周りを威嚇してますし、ハックさんはどうやらスリからサイフを盗って撃退してやったそうです。ん?盗ったサイフは道に投げた?おやおや、今頃探しているでしょうねぇ。
はい、僕らは現在歩いて王都の冒険者ギルドに向かっています。馬車で移動もできたんですけど、せっかくだし僕の運動不足の解消に良いだろうってゼノさんが。確かに最近サボってましたからねぇ。
「ほら、また狙われているぞ」
後ろからヒースさんが声をかけて来たかと思えば、後ろで倒れている人が……その人生きてます?と思わず心配になりました。
「治安良いわけでは無いんですねぇ」
「あら、雑誌で見せたでしょ」
「それに、どの街でも基本隙を見せた者が悪いからな」
僕の感想にケニーさんが「旅気分!王都道中編」をみせ、ゼノさんが情報を補足してくださいます。「トシヤ一人で歩けねえなぁ」と笑って言うハックさんに、僕は同意します。何たって隙だらけですし。
そうやって歩く事しばらく、風に乗って水の匂いがしてきました。目の前の人だかりも無くなり、今度は大きな噴水が僕の目の前に現れます。なんとなくローマのト◯ビの泉を思い出します。だって噴水の中にコイン入っているんですよ。でもまあ、この噴水の大きい事!それに道が凄く広いんです。人の多さが気にならないくらいですね。
それに噴水を囲う様に二つの建物が建っているんです。建築に力入れているんでしょう。建物のデザインがバロック様式に近いですねぇ。確かバロック様式って装飾が凝っている事で有名でしたよね。朧げですけど。
「おいおい、トシヤ。間抜けな顔してないで行くぞ。ほれ、左側が冒険者ギルドだ」
む!ゼノさん違いますよ、間抜けな顔はいつも通りなんです!って変ないいわけしてないで行きましょうか。ここも正面玄関の周りにいる人達でわかりやすいですし。
大きな正面玄関は開け放たれていて、中が見える様になっています。強そうな冒険者さんでしょうか?門番の様に両脇で警戒してますねぇ、ご苦労様です。
内装は美術館の様に凝っていますが、造りは一緒ですねぇ。正面に受付、右側に掲示版、左側に酒場が併設されています。おや?なんか僕らが入って来ただけでザワザワしてますねぇ。
「おい、セイロンまで来てたのか?」「きゃあ!良い男!」「朝テラとクライムも見たぜ、俺!」「ウチのギルドにも高ランクはいるだろうが」「まぁ、アイツらは仕方ねえよ」
おや、ちょっと不穏な情報も聞こえて来ましたよ。でも相変わらずウチの護衛は目立ちますね。僕ちょっと慣れてきました。
「ようこそ!冒険者ギルド王都本部へ!」
受付まで歩いて来ると、元気な受付嬢さんが声をかけてきます。「セイロンのゼノだ。デノン師匠から言伝何か預かっていないか?」とゼノさんが代表して聞いてくれます。受付嬢さんは「確認致します」と奥へ一旦下がって行きますが、僕らを見たベテランの受付嬢さんが慌てて交代してこちらに来ます。
「セイロンの皆様にトシヤ様ですね!失礼致しました。ギルド長がお待ちです。只今ご案内致します」
受付カウンターから出て横の大階段へ僕らを案内する受付嬢さん。ん?なんか僕まで知られてますねぇ。デノンさんなんか言ったんでしょうか?
そう考えながら向かうは3階フロア。先導する受付嬢さんが、階段登りながら僕らに施設の案内をしてくれます。どうやら二階が専属個室や受付嬢さん達の控え室、3階が会議室やギルド長、副ギルド長の部屋、四階からスタッフの宿舎棟になっているそうです。
……しかし、エレベーター無しで上がり降りするんですよねぇ。これは良い運動になりそうです。と僕が少し息が切れて来た頃、3階奥のギルド長の部屋に着いた様ですね。
「ギルド長、トシヤ様とセイロンの皆様をお連れしました」
ノックと共に「どうぞ〜♪」と言う女性の声で返答があります。おや?ここのギルド長は女性ですか?と思っていたら……
「おっ前頭固ぇなぁ!だから本当の事だって言ってるのに」
「私はデノンさんは尊重しますが、言っている事はあり得ない事ばかりです。実際見て触れて初めて信頼する価値のある事だと考えます」
「だー!王の依頼だっつうのに!」
扉を開けるとデノンさんが、机に座って書類整理をしている男性と言い合いをしています。その横のテーブルとソファーではまったりとお茶をするカーヤ様と可愛らしい女性の姿が。「あら」と言って笑顔で僕らに手を振るカーヤ様。あの、この状況是非説明してください。
「あ、テュルはもう下がって良いよ〜。ええと、トシヤ君にセイロンのみんなようこそ!あの二人はさっきからあんな感じなんだ。僕は副ギルド長のシャラって言うんだ、宜しくね」
僕っ娘シャラさん(24)はふわふわのショートの髪の可愛いらしい女性です。あ、年齢はこっそりカーヤ様が教えてくれましたよ。童顔を気にしているから年齢ははっきり公言しているんですって。そして僕とシャラさんが握手しているところで、僕らに気付いたデノンさん。
「よお!トシヤ来たか!まずコイツに見せてやってくれよ。頭固いったらねえぜ」
「デノンさんがゆるゆるなんですよ。初めまして、トシヤさんにセイロンの皆さん。冒険者王都本部ギルド長のネイサンと申します。以後宜しくお願いします」
デノンさんの言葉にも負けないネイサンギルド長(33)が僕に手を伸ばして来ます(あ、年齢はカーヤ様ですよ)。僕も挨拶しながら握手をすると、セイロンのみんなにも挨拶と共に握手をする律儀なネイサンギルド長。おお、誠実な人ですねぇ。
「あ、トシヤ騙されるなよ。ネイサンのスキルに人格判断ってやつがあって、ソイツがどんな奴か判断する為に握手してんだ。初っ端から人を疑ってかかる奴なんだ、コイツって奴は」
呆れながら言うデノンさんに言われないとわかりませんでした。しかし、だから見て触らないとって言っていたんですね。
「で、お前からするとどうだ」
「ふむ、全員合格ですね。後は能力を見てみない事には頷けません」
「本当にごめんね、こんなのがギルド長で」
デノンさんが僕らの結果をネイサンギルド長にきくとまずは合格ラインだそうです。そんな二人の代わりに僕らに気を使うシャラさん。でもだからこそ本部のギルド長をやれているんでしょう、と納得する僕。
「いえいえ。それなら早速見て貰った方が早いですから、設置する場所を教えて下さいますか?」
「助かる〜!このせいで逆に警戒されるってのに直らないんだ、ギルド長ってば。じゃ、案内するよ。ついて来て」
僕の言葉に安心したシャラさんが扉を開けると……
「おや、間に合った様だねぇ」
「まぁ、流石ね、あなた」
と驚く事なくマイペースなイクサ様とユーリ様がいらっしゃいます。その二人の後ろにはお貴族様ですか?という男性と女性も一緒です。
「ああ、トシヤ君。紹介しよう、商業ギルド王都本部のギルド長のシロカと副ギルド長のキーンだよ」
イクサ様が紹介すると綺麗なカーテシーと共に女性の方から挨拶をして下さいます。
「初めまして、トシヤ様、セイロンの皆様。私、商業ギルド王都本部のギルド長を務めさせて頂いております、シロカ・シュナイデルと申します。取り分けトシヤ様は、私の敬愛致しますユーリ様のオーナーでいらっしゃるとお聞き致しましたわ。私、ユーリ様のオーナーに相応しいかしっかりと判断させて頂きますわね」
ストレートロングの綺麗な方なんですけど、なんでしょう……ゾクッと寒気がしました。ええと、シロカ様笑っていらっしゃいますけど、僕を見る目がちょっと怖い様な……しかもなんか内容が変わっている気がしますし。(カーヤ様がこそっと「彼女あれでも33よ」って教えてくれたんですけど、女性の年齢ってわかりませんねぇ)
「ああ、すみません。シロカギルド長はユーリ様の信奉者ですから、あまりお気になさらず。そして初めまして、私はキーン・ポリッシュベルと申します。商業ギルド王都本部副ギルド長を務めております。どうぞ宜しくお願い致します」
こちらは優しそうな方ですねえ。なんかホッとします。え?カーヤ様なんです?なんと、あの落ち着き様でキーン様28歳ですか?え、「鋼のポリッシュベル」って異名持ち?これまた仕事になると性格変わる方なんでしょうかね。と言うかカーヤ様僕で遊んでますね。
僕とカーヤ様でボソボソやっていると、様子を見ていたシャラさんが動き出します。
「じゃ挨拶済んだ様だし、移動するよー」
冒険者ギルド組は来るの予測してたんでしょうね。人数増えるのが当たり前の様に案内してくれたのは、ギルド長室から歩いてすぐの会議室の一室。
「ではトシヤ君。ここに君が言う出張扉を出してくれるかい?」とネイサンギルド長。
思いがけず両ギルド長達が揃いぶみですねぇ。
そうであっても僕らはいつも通り歓待するだけですけどね。
では、王都本部ギルドの方々もお連れしましょう。
僕の亜空間ホテルとターミナルへ!
アクセスありがとうございます!今回はほぼ説明回です。そして続々現れる新キャラ達。それでもトシヤがやる事は変わりません。次回はターミナルから歓待しますよー。宜しければアクセスしてみて下さいませ(*´꒳`*)