原因判明です
「まぁったく!ライルは甘いんだよ!」
「ええ、あの害虫を野放しにしていたとはね」
「そうですわ。あの虫ケラにいいようにされるなんて、まだまだですわね」
飲み物をテーブルにドンッと置いて、ぷりぷりしているサムさんに、優雅に紅茶を飲むイクサ様。笑顔のままこちらも優雅にカップを置くユーリ様。皆さん辛口です。
言われている現国王といえば……
「いや、ボードン一家がおかしいだけだ。何で王宮に来て一週間で物事が解決しているのか、未だにわからない……」
頭を抱えて下を向いています。はい?既に解決済みなんですか?というより、何でこの場にこの3人がいるのかって疑問ですよね。サムさんは面白がって遊びに来たんですが、ユーリ様イクサ様は元々合流予定だったそうですよ。で、結論からすると……
「もともと、あの顔付きは僕嫌いだったんだ」
「サム、外見で裁いてはいけないよ。だが、あの男仕事はそこそこだったからね。ユーリが深く探ってくれたから証拠が掴めたんだ」
「あら、ありがとう、あなた。ウチの後身は有能ですもの。例え相手が宰相といえども負けませんわ」
サムさん、イクサ様、ユーリ様が言っているのはつい最近まで宰相だったゴアという男。そう、黒幕は宰相だったんですって。理由は……
「そんなに王座が欲しいものなのか……」
「ライル。地位や権力がほしい輩が目指すところはそんなものですよ。貴方がそういう姿を見せているというのも宜しくありません」
「お父様の言う通りですわ。いい加減、気弱なところをお直し下さいませ」
王といえども人間ですから、弱いところを見せる相手も必要なんでしょう。シュバルツ様やユーリ様からツッコミ入ってますが、僕はライル様にちょっと同情します。気を許した相手だけに見せる言動が、まさかこの様にかえってくるとは予想したくないですし。
というか凄いのは能力の高い宰相を、子供相手のように片付けてしまうボードン一家ですよ。僕、こんな人達の雇い主なんですよねぇ……もっと何かして差し上げてなければいけないんじゃないでしょうか。そんな思いに駆られている僕の横で、話は宰相が仕掛けた罠の話に移行します。
「で、結局あの馬鹿が行動に出たのは、三箇所だって?」とサムさんが確認します。どうやらイクサ様のまとめてくれた話によると、国内を魔物騒動で騒がし、王の権威を失墜させたところで王に消えて貰い、自分が王になるという算段をしていたそうです。こう聞くと、よくある話だなぁって思いますが、これがまた巧妙に物事を進めていたらしいんです。本当に良くわかりましたねぇ。
「自分の側につかないジウや、邪魔な辺境伯ルーティ、そして直接ライルを狙って来たからね」とシュバルツ様。魔物そんなにいたんですか!と驚く僕に、ライル様が頷きます。
「私のところに来た魔物はアナチスタンレオパードだった。あれはデノンがいたから助かったんだ」
と、ライル様が事の起こりを話始めます。そもそもアナチスタンレオパードという魔物は何かというと、僕から言わせたら身体の消える大型豹ってところでしょうか。その消える特性と身体の割に俊敏な動きに狡猾さ。危険度は単体でAAランク。
姿が消えようが僕のレンタカーからは逃げられません。しっかり到着前から居場所を検知していたシュバルツ様達。デノンさんカーヤさんの見事な連携で、王都に潜伏していたアナチスタンレオパードを仕留めたそうですよ。これは後で詳しく話を聞く案件ですね!
既に王都では、謎の大量失踪事件として王宮にも届いていたものの、宰相がもみ消していて後手に回ったライル様側。そんな時に元凶を持って現れたデノンさん、カーヤさん、シュバルツ様達。
宰相は足がつく事を危惧し、国外逃亡しようとするも、ボードン一家の結束により拘束。事態が事態な為、宰相は拘束後に王家によって処刑。黒幕はいなくなっても残る影響に聞こえて来た被害状況の大きさ。僕に見せてくれたのは、その一部だそうです。
あれ?辺境伯のところはどうなったのかって思いますよね。覚えてますか?辺境の冒険者ギルドにアイスドラゴンと戦った3パーティが所属している事!
辺境伯の領地に来るまでの村が被害を受けたそうですが、フィフスの街に入る前にその3パーティが討伐したんですって!いやぁ、こちらも後で是非聞いてみたいものです。
因みに魔物はジャイアントアードハイーナ。僕に言わせれば、大型のハイエナです。だけど厄介なのは大型で徒党を組む事なんです。単体ではBクラスが集団になると、危険度はAAクラスなんですって。うわぁ……集団って恐ろしい。
もう一つ単純に思ったのが、そんな危険な魔物をどうやって目的地まで向かわせたのか?これを質問したら、ライル様始めシュバルツ様、イクサ様、ユーリ様、サムさんまで黙り込んでしまいました。教えてくれたのは更に多くの犠牲がいた事、近隣の国が関係している事です。これは更に問題が大きくなって来たじゃないですか!
「防衛を固める為にも、復興にも少し頭を悩ませていた所だった。だが、シュバルツが君の事を教えてくれた。『オーナーに話をしてみなさい』とね」
ライル様が真剣な表情で僕をみます。僕といえば……なんかシュバルツ様らしいですねぇ、と内心喜んでいました。断言するんじゃなくて、僕に考える余地を残してくれる事。そしてライル様もです。
「トシヤ君。国王として、いや私個人として頼みたい。君の力で我が国も助けてくれないだろうか?モレアの恩人に更に縋るようで申し訳ない!……これ以上国民が苦しむ事は防ぎたいのだ!」
えええ!国王であるライル様自ら頭を下げるじゃないですか!いやいや、頭を上げて下さいよ!と僕があわあわしていると、シュバルツ様が僕に微笑み話かけます。
「オーナーがのんびり過ごしたいところ、こんな話を持って来てしまいお詫び致します。ライルも私にとっては大勢の孫のうちの一人。ほっとけなかったんです。でも、勘違いしないでください。オーナーが手伝ってくだされば最善ですが、強制ではありません」
「そうですわ、オーナー。それならそれで、私達で何とか致しますわ。ただ……ホテルスタッフとして働くのは随分後になってしまうのが残念ですの」
「そうだねぇ。ティモさんやキイさんに教わるのが楽しくてね。それがしばらく出来なくなるのは残念だけど、やりようはあるよ」
シュバルツ様の後にユーリ様、イクサ様が僕の決定に任せてくれる事を話してくれますが……
「うわぁー、爺ちゃん、母さん、父さん周り固めてくるねぇ。トシヤ君の性格からしたら答え一つじゃん」とサムさん。
そうなんですよ!僕の性格知った上で促しているじゃないですか!もはや流石としか言いようがありません。……でも、やっぱり僕個人の意見も尊重してくれるこの国のトップはいいですねぇ。答えなんか決まってますよ。
「ライル様、顔を上げて下さい。僕は有能なスタッフを失いたくありませんし、僕ももうこの国で生きているんです。是非協力させて下さい」
ガバッと顔を上げて僕の手を掴み両手で握手をするライル様。その顔から涙が一筋流れます。でもすぐに下を向いて「ありがとう!ありがとう……」と言っている姿に泣き虫ライルと、以前サムさんとシュバルツ様が言っていた事を思い出します。優しい人なんでしょうね、この国の王様は。
ボードン一家が微笑みながら僕らの様子をみていると、不意にガチャッと扉が開きます。
「いやぁ、悪い悪い。で、トシヤOK出したんだろ。どこから行く?辺境か?海の街か?それとも全部の都市に設置するか?」
「ちょっと!遅れて来ていきなりそう言ったってオーナー困るでしょ!ってあら?まだやっぱりそこまで話してなかったかしら?」
はい、デノンさんカーヤさん登場です。最強ボードン一族揃い踏み。皆さん僕の答えなんて最初からわかっていたんですねぇ。
「……デノン、ちょっと来なさい。オーナー、隣の会議室空けてくれますか?」
「うええ!何で?ちょ、ちょっと助けてくれ!トシヤ!」
はい大丈夫ですよ、シュバルツ様。エア経由で総合インフォメーションセンターに連絡済みですから。デノンさん、僕には氷のシュバルツから逃げる術はありませんから、頑張って下さい。
……あれは流石にデノンさんでも倒せませんよねぇ。
アクセスありがとうございます!やっぱりシリアスにはなりませんねぇ。でも内容を詳しく書くとシビアになるのでこんな感じに。街計画が国計画へと規模が大きくなります。さて、のんびりトシヤはどう動くでしょうね?




