王妃様を診療しました
今回ちょっと長いですね^_^;
「まぁ!なんて素晴らしいのでしょう!なんて素敵なのでしょう!こんなに世界は広く綺麗でしたのね!」
少女の様に目を輝かせてはしゃぐモレア様。はい、例によって「碧への誘い」の体験後です。寝てばかりいたので、筋力がまだ頼りない為車椅子で移動しています。
ん?車椅子ってどうしたのかって?亜空間通路も常に進化しているんです。ニックのGTCメイン画面でコレ追加されていたんですよ。
【診察時間】24時間対応
【診療案内】人体の異常全てに対応
【検診・検査】無料で対応
【予防接種】各種細菌・ウイルスに対応(効果継続期間約半年) 一回 3,800ディア(MP4)
【入院設備】個室二部屋有り
【内部施設】リハビリステーション←コレ!
そう!リハビリステーションを設置したわけです。と言う事で、設備の一つとして出て来た車椅子。早速利用です。
でも、そもそもモレア様を動かして良いのかって思いますでしょう?それにはちょっと時間を戻しましょう。
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「私、半年前からよく物を落とす様になってきたんですの。普通に歩くだけですのにつまずく事が多くなり、ほぼ転ぶ様になって、今では歩くどころかベッドの住民ですわ。上半身や腕や手は意識してよく動かしておりますの。ですからまだなんとか動きますのよ」
モレア様が現在の病状を僕らに話して下さっています。笑顔で話して下さるのですが、内容が軽くありません。……強いですね、モレア様。僕なら笑顔で話せませんよ。
「で、最近は特に動くと疲れが凄いらしくてな。食べるのにも体力を使うらしいんだ。シュバルツがトシヤが来たらすぐに診てもらえないかって言っていたんだがどうだ?」とデノンさんが補足します。メイドさんからもすがる様な目を感じますし、好かれているんですね、モレア様。
「勿論ですよ。すぐにでもニックの所へ連れて行きましょう」
「まあ!嬉しいですわ!ジュリ!ジュリ!お願い、すぐに支度を整えて!」
僕が即答すると、首だけ動かして嬉しそうに言うモレア様。「まぁ、まぁ。モレア様余りはしゃぎ過ぎてはなりませんよ。では皆様、一度ご退室をお願い致します」とメイドさんの中から人の良さそうな年配の女性が、モレア様の近くに近づいて行きます。
僕らは一旦退室。皆で応接室で待機です。応接室に着くと早速オリジナル扉を出す僕。役立ちますね、アレが!「ちょっとニックの所に行って来ますね」と言伝して行こうとすると、デノンさんまで一緒に来ましたねぇ。「なんかするんだろ?」とデノンさん。僕の行動読まれてます。
とりあえず王妃様が準備出来たらわかる様に、レイナさんに応接室で待機してもらい、僕らはホテルからターミナルへ向かいます。
「おや、オーナー。少しは運動していますか?」
GTCに入った途端にニックが待合室のモニターに現れます。いやいや、僕の事はいいんですよ。「やってないわねぇ」「逃げてるもんな」「(頷き)」と僕の代わりにティアさん、ザックさんがニックに答えています。まさかガレムさんまで知っていたとは……!
「おや、いけませんね。ですが、オーナー今日はその事では無さそうですね。以前話していた王妃様の件でしょう。設置しますか?」
皆にバレているのに驚く僕の様子を見て、モニターの中で苦笑いするニック。そして鋭いです。
「はい。多分必要になるでしょうから、先に設置しておこうかと。エア、お願いします」
「畏まりました。ではGTC【内部施設】リハビリステーションをMP30,000消費致しまして設置致します」
エアの言葉の後に目を閉じる僕達。やっぱり瞼の裏が明るくなります。「設置完了しました」と言うエアの声で目を開けると……待合室の右の壁側に新たな扉があります。扉の横にはモニターが有りますねぇ。プッっと電源が入り、理学療法士姿の後ろ髪を一つ縛りにした女性がモニターに映し出されます。
「初めてましてオーナー。私はリョウと申します。理学療法、作業療法を担当させて頂きます。どうぞ宜しくお願いします」
にっこりと笑って挨拶をするリョウ。最近は名前持ちが多くて助かりますねぇ。ん?ザックさんとデノンさんが落ち込んで、ガレムさんとティアさんがなんか喜んでますね?どうやらまた名前の文字数で賭けていたみたいです。デノンさんまで何やっているんです?
まあ、ともかく入ってみましょう。
リハビリステーションらしく様々な運動機器や器具、筋力トレーニング器具、有酸素運動機器、バランストレーニング、起立歩行や歩行支援器具、移動支援/車椅子等があり、かなりの設備が整っています。
で、やっぱりありました、車椅子!ん?リョウなんです?W◯VIT+W◯P22-40Sが良い?乗り心地や駆動性のよさなどはそのままにアームサポート跳ね上げ機能やスイングイン・アウト式フット・レッグサポート機能を追加した多機能タイプですって?へぇ、それでGTC 特製機能で自動走行機能付きとは凄いですねぇ。
あ、これモレア様に良さそうです。と僕や皆んながそれぞれ器具を見て回っていると、ジリリリンジリリリンと室内に着信音が鳴り響きます。
『トシヤ。モレア様の準備が整ったぞ。案内していいか?』
良いタイミングでレイナさんから連絡が入りましたね。僕もリョウに車椅子の貸し出しをお願いし(今回は設置キャンペーンでレンタル無料です)、すぐにターミナルからホテル入り口まで向かいます。
入り口まで戻ると、丁度レイナさんがモレア様達を案内している所でした。モレア様、やっぱり護衛の兵士さんに横抱きにされて、応接室まで移動して来てましたね。ここで車椅子の出番ですよ!
「まあ!座ったまま一人で動けますの?」
「はい。右手のアームレストについているレバーを前に倒すと前進、右斜め前で右に、左斜め前で左に曲がります。バックしたい時も同様ですね。止まりたい時は、左手のアームレストレバーをゆっくり後ろへ倒して下さい」
この車椅子ヘッドレストも付いてますからね。ベッドで上半身起きている感覚で動けるんです。さぁ、練習をしましょうって、アレ?
「凄いですわ!自分の意思で動いていますの!誰の力も借りなくても良いなんて!」
感覚を掴んだのかヴィィ……とゆっくり動き回るモレア様。とても良い笑顔ですね。その様子を見て涙ぐむメイドさん達や驚きの表情をしながらも微笑みながら見ている護衛の兵士さん達。
うんうん。そうですよね。でもまだまだですよ。嬉しそうに動くモレア様とメイドさん達御一行を、そのままターミナルに案内しGTC院内に入ります。いつも通り綺麗な音楽と共にニックがモレア様達を迎えてくれました。
「ようこそグランデターミナルクリニック、通称GTCへ!初めまして、私はニックと申します。こちらでは診察と診療を担当致します。どうぞよろしくお願い致します」
設備に驚く皆様をとりあえずはそのままに、モレア様を診察室へ。そして、兵士さん達に車椅子ごとモレア様を丸い診察台の上に置いてもらいます。そして診察の結果は……
「魔力萎縮性側索硬化症ってなんだ?」
デノンさんの質問に答えたニックによると、魔力を生み出す細胞が衰え硬化していく病気で、日常生活はもとより生命維持に必要な体内活動まで衰え死を招くという病気だそうです。この難病は何千人に一人という、この世界ではどうしようもないものとして知られているそうですよ。恐ろしいですね。
「で、どうなんだ?治るのか?」という心配そうなデノンさん。にっこり笑うニックは、モレア様を治療カプセルに横になる様に指示を出します。兵士さんによって、カプセル内に横たわらせて貰ったモレア様。不安そうな顔で僕らを見ています。
「さあ、少し目を閉じていて下さい。大丈夫です」
ニックの温かい言葉でカプセル治療器の蓋が閉じ、内部が見えない青い不透明な色に変わります。治療が始まりました。
でも5分すぎ、10分過ぎても終わりません。兵士さんは何回も確認に動き、メイドさん達やジュリさんもソワソワして落ち着かない様子です。……結構時間かかっていますねぇ。モニターの中のニックは静かに微笑んで様子を見ています。それから更に10分過ぎて……
「終わりましたよ」とニックが笑顔で言うと、カプセルの蓋が開き目を閉じたままのモレア様の姿が。ジュリさんやメイドさん達、護衛の兵士さん達までモレア様に急いで近づきます。
「モレア様!」「王妃様!」「お妃様!」「目を開けてませんわ!」「どうなったのです?」
メイドさんや兵士さんに詰め寄られるモニターのニック。そのニックが「振り返ってごらんなさい」と言うと、目を開けたモレア様にジュリさんが抱きついています。
「ねぇ、ジュリ。起こしてくれるかしら」
モレア様の言葉に、ゆっくりと上半身を支えながらモレア様を起こすジュリさん。するとカプセルの両端に手を置き、ゆっくりゆっくり片足ずつ立たせようと足に力を入れるモレア様。
「モ、モレア様!」「王妃様!足が!」「動いている……!」
少し動いた足に感動するジュリさんやメイドさん、兵士さん達。「!!」でもすぐに力が抜けてバランスを崩すモレア様を、素早くデノンさんが支えます。ふぅ〜……危なかった。
「うふふ。ありがとうございます、デノン様。でも見て頂けました?……動きましたわ。……ねえ、ジュリ?動いたのよ、足が……ねえ見てくれたかしら……動いたの……動いたのよ」
笑顔のモレア様の目から一筋の涙が流れます。そして笑顔のまま皆を見て涙を流すモレア様をジュリさんが優しく抱きしめます。
「ええ……ええ!見ておりましたよ!モレア様。ようございました!ようございました……」
モレア様以上に涙を流すジュリさん。メイドさん達や兵士さん達まで喜びの涙を流しています。そしてこの人達も。
「うおお……駄目なんだよ、俺。ごういう場面弱いんだっで!」ザックさんが右腕で顔を隠し、涙声で言い訳しています。
「わかるわぁ、ザック!駄目なのよ、私だって!もう!なんて良い場面なの!」とハンカチで涙を拭いているティアさん。
ガレムさんは後ろを向いていますが、少し肩が震えています。デノンさんは優しく微笑みながらモレア様の頭を撫でています。え、僕ですか?
「オーナー、是非とも鼻をかんで下さい」
ニックが苦笑いしながら言っていますが、僕だって弱いんですよ〜。こういう場面。さっきから涙と鼻水が止まりません。見かねたティアさんからハンカチを借りて、鼻をかんでしまった僕。あとで洗って返しますね、ティアさん。え?要らない?
そんな僕らを見ていたニックからモレア様に、治療の結果報告が伝えられます。
「治療は成功しました。ですが、衰えた筋力や身体の内部はすぐには治りません。隣のリハビリステーションのリョウの指示のもと、しばらく通院して頂きます。リョウ、ご挨拶を」
「モレア様初めまして。リョウと申します。隣のリハビリステーションにて日常生活支援、運動支援を致します。……大丈夫です。また自分の足で歩ける様になりますよ。一緒に頑張りましょう」
優しい笑顔で歩ける事を保証したリョウの力強い言葉に、また涙が溢れ出したモレア様達。でも泣く事って体力使いますよね。気が抜けたのでしょう、いつのまにか眠ってしまったモレア様。
嬉し泣きが止まらないメイドさんやジュリさん、そして兵士さんと共に今日は元の部屋へと戻って頂きました。あ、もちろん車椅子も一緒に持って行きましたよ。
そして次の日、身体が軽く力が入る事に喜んだモレア様が早朝に僕を呼びにホテルの受付に来館しました。
「トシヤ様、昨日は失礼致しましたわ。気がついたらベッドに寝ていたのですもの。私とした事がお礼も言わずに大変申し訳ありませんでした」と車椅子に乗ってお詫びするじゃないですか。
僕は焦って「是非お気になさらず」と言っても、なかなか首を縦に振らないんですよ。じゃあ、とモレア様に一つお願いをしたんです。
それが「碧への誘い」に付き合って貰う事だったんです。これから始まるリハビリの力になれば、と思って誘ったんですけど……予想以上に興奮しちゃって、冒頭に至ります。
まあ、喜んでくれたのは何よりですけどね。さ、次はリョウの所へ移動しましょう、と皆で正面玄関まで来た時に「モレア!」という声と共に一人の男性が駆け寄って来ました。後ろからシュバルツ様が笑顔で歩いて来ますねぇ。と、言う事は……
皆さんもうわかりましたね。
それにしても、シュバルツ様連絡下さいって……
アクセスありがとうございます♪さあ!また毎日更新頑張りますよ〜!早速王妃様登場です。そして王妃様が来れば誰が来るかはわかりますね。なぜ直接ホテルに来館したか理由は明日判明します。宜しければ明日もアクセスして見て下さいませ(*´꒳`*)