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特殊ギフト「亜空間ホテル」で異世界をのんびり探索しよう《本編完結済/書籍化》  作者: 風と空
第一章 セクトの街編

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「碧への誘い」の扉です

ε-(´∀`; )今日は通常通りできた。

 『アテンションプリーズ。ご乗船ありがとうございます。当船内は安心、安全、快適をモットーに運行致しております。間もなく出航致します。ご乗船の皆様はシートベルトを着用してお待ち下さい』


 二回目ですがワクワクしますねぇ。何せ本物のクオーク海の探索です!毎回違う体験が出来るそうですよ。いやぁ、楽しみです。


******************


 「ここは一体……?」


 ジウ様が驚くのも無理はありません。扉をくぐり抜けると青い光に照らされた室内。ゆったりとしたリクライニングシートが間隔を空けて半円状に並んでいます。その席およそ50席。海のさざなみの音と共にアルコのアナウンスが入ります。


 『皆様まずは席にお付きください。席は自由席となっております。どの席も上質な素材から作られたリクライニングソファー。足元もゆったりとした空間をとり、どんな体勢になられましても周りのお客様のご迷惑にはなりません。お気軽に自由なお席をお選び下さいませ』


 アルコのアナウンスに動き出す皆さん。ジウ様ご家族は3人揃って並んで座っていますね。キリク君がはしゃいでいます。はしゃいでいるといったらウチの護衛チーム。リクライニングシート回転もするんですよ。ゼノさん、ハックさん遊んでいますねぇ。ヒースさんケニーさんはお構いなしに静かな場所を選び座って楽な姿勢でいます。


 領主様方の護衛チームは3人を守る体制ですね。前後左右に少し距離を空けて座っています。


 問題はメイド、執事組。「領主様がいらっしゃるのに座っていられません」と近くに座らず立っているんですよ。職務に真面目なのはいいのですが、座ってもらわないと出航出来ない事をアルコからアナウンスが流れようやく少し離れた席に座ってくれました。


 あ、サムさんは僕の近くに座ってますよ。ワクワクしているんでしょう。身体が揺れています。うんうん、わかります。


 全員が席に着くとフッと室内が真っ暗になります。そして冒頭のアナウンスが流れます。ざわざわする室内。


 『お待たせいたしました。まずは当機の全容をお見せ致しましょう』と、アルコのアナウンスが終わると上からゆっくり天井が開いて行きます。


 「うわぁ!」「まあ!」「これは!」「……綺麗」


 上は海面近くなのでしょう。光がゆらゆら揺れていて海の中に光が差し込んでいます。そして目の前にはカラフルな魚たちが群れをなし泳いでいきます。そして床まで透明になり、見事な珊瑚礁が足元に広がっていきます。これにまずは感動するんですよねぇ。


 「どう言う造りなんだ?」「水は入ってこないだろうな?」「これは船なのか?」「球体だぞ?」


 領主側の護衛は真面目ですねぇ。しっかり現状確認しています。ウチの護衛は「うわぁ!綺麗〜!」「凄え!」「こりゃ面白え!」「見事だな」としっかり自分たちも楽しんでますからねぇ。安全ですからいいですけどね。


 『当船は全面フルオープン、どの角度からも楽しめる様に設計されていますが、海の水圧、水流、物理耐性は亜空間同様の設計になっており完璧です。安心してお楽しみ下さいませ。ではまずは推進力を呼びましょう』


 船からピイィィィィという音が海中に響きます。すると「ピューイ」という声が聞こえてきました。


 「お父様!アレって!」「ああ!ビットフリーシーホースだ!……本当にいたのか……」


 おや、キリク君、ジウ様は知っていたんですねぇ。僕からすると大きなタツノオトシゴですよ。異世界ではデカいんですよねぇ。面白いのはビットフリーシーホースの頭に装着出来る装置があって、この船体とドッキングするんですよ。


 『さあ、皆さんお待たせしました!出航です!』


 アルコの声に反応するビットフリーシーホース。「ピューイ!」と鳴き動き出します。ゆっくりと動き出す景観。揺れもなくスムーズに海の中を進んで行くビットフリーシーホース。


 魚達が目の前を足元を、船体の横を並行する様に泳いで行きます。アルコの説明によると、ビットフリーシーホースは大人しい性格の為小魚達が常に側にいるそうですよ。綺麗ですねぇ。


 『さて、皆さんは海の皇帝といえば何を思い出しますか?』


 しばらく進むと不意にアルコからの質問が入ります。船内はざわざわし始めてみんなが口々に「なんだ?」「知ってるか?」と声に出しています。


 「グラスモチノウオ。通称エンペラーフィッシュ。体長5mにも成長し大型な割に泳ぎが早い。美食家には垂涎の的だね」


 なんとジウ様が答えました。「お父様が言っていた魚類だね!」とキリク君。なるほど、キリク君はジウ様の影響で海の事がわかるんですね。


 『その通りです!また王が被る王冠をつけている様な見た目の為その名が付いたと言われています。味も一級品ながら美容にもいい魚です。本日のビュッフェレストランのメイン食材となっている魚の群れがこちら!』


 大岩の向こうに見えてきたのは、グラスモチノウオの群れ。今は悠然と泳いでいましたが、ビットフリーシーホースが現れて凄い速さで泳ぎ去っていきます。


 「うおー、はええ!」「あっというまに居なくなったぞ!」「というかアレ捕まえたのか」「凄えな」


 領主側の護衛達も声を上げる様になりましたね。うん、みんな夢中になってきましたね。でもここからですよ。


 『ではジウ様に問題です。海の宝石はご存じですか?』


 「まさか!そこに連れて行ってくれるのかい!?」


 アルコの質問に身をのり出すジウ様。おお!いい傾向です。ジウ様も素がでてきましたね。サムさんうんうん頷いています。そうか、ジウ様海の生物が好きだったんですねぇ。


 『勿論!さあ行きますよ!ビットフリーシーホース!急潜水です!皆さんしっかり捕まって下さいね!』


 景色がすごい早く斜めに流れて行きます。段々と暗くなり真っ暗な船内。「光はつけないのか?」「真っ暗で何も見えん」ゼノさんハックさんの声が聞こえてきました。もう少し待って下さい。……ほら来た。


 ポウっと海底に似つかわしくないオレンジの光が出て来たかと思えば、黄色、ピンク、赤、紫、黄緑と色がポポポポッと増えて行きます。真っ暗だった海底が一面カラフルな光で溢れ出しました。


 「ジュエリーフィッシュの群れに会えるという事は……!」


 ジウ様がキョロキョロと何かを探しています。すると出てきました。悠然とジュエリーフィッシュの間を泳ぐ金色に輝く髪の長い女性の姿が。


 「セイレーンだ……」


 ジウ様の目から感動の涙が溢れ落ちています。アルコによると、本来上半身は人間、下半身は鳥の魔物。海の中では変化すると言われているが、誰もその姿を見た事がないという深海での姿。


 空を自由に飛び回る羽根の代わりに、推進力がます長い尾びれに鱗が生えた下半身。ジュエリーフィッシュの光に負けない金色の光が下から上がってきます。


 「なんて綺麗なの……」


 口を抑え涙を流すクライス様、圧倒的な光の洪水に船内のみんなはただただ圧倒されているようです。優雅に楽しそうに踊るセイレーンとジュエリーフィッシュの間をビットフリーシーホースはゆっくり泳いで行きます。


 しかし、永遠に続くと思われた光の共演が一瞬にして消えます。まさか!また出ましたか?

 

 「きゃあ!」「何これ!」「お父様!この吸盤は!」


 キリク君が叫ぶ通りビットフリーシーホースや船外にビッタリ張り付いているのは……


 「クラーケンか!!」


 ジウ様が叫んだ通り大型のクラーケンがまた出ました!そうまたなんですよ。前回も襲われたんですけどね。大丈夫。見てて下さい。


 一瞬海底が昼間の様に明るくなり、目を開けるとクラーケンの足が外れて暗い海底に落ちて行きます。そう、これはビットフリーシーホースの特性なんです。並外れた電気を帯電しているビットフリーシーホースは、危険を感じると対象物にのみ電気を流し感電させるのです。


 実は海の覇王という異名を持つビットフリーシーホース。優しく強い海の生物の守り神みたいなものなんですって。


 そして感電したクラーケンはどうなるのか……来ますかねぇ。


 ズオオオオ……と海底に地響きがなり響くと、大きな大きな亀の首が現れクラーケンを咥えて暗い海底に消えて行きます。


 「まさか幸運の守り神まで……」


 ジウ様大丈夫ですか?すごい涙顔になっていますよ。これには隣に座っていたクライス様がハンカチを渡しています。キリク君は「すっげー!すっげー!」と普通の子の様にはしゃいでいます。


 アレ?バスターさんは?と様子を見ると、こちらはメイド長がハンカチを貸していますねぇ。どうやら自分のハンカチはすでニーナさんに貸してしまった様子。もしかしてジウ様の海の生物好きはバスターさんからでしたか?


 その間も上へと泳ぎ続けるビットフリーシーホース。景色は明るい碧の世界に戻ってきました。珊瑚礁が広がる光差す海を悠然と移動し、終着地点に着いた様です。


 ガコン……船体が扉とドッキングをした様ですね。同時にビットフリーシーホースから船体が外れ、「ピューイ」と鳴いて離れて行きます。


 そう戻ってきました。


 船内がパアアッと明るくなり、アルコのアナウンスが入ります。


 『ご乗船おつかれ様でした。扉は世界旅行代理店と無事繋がっております。お帰りの際はお足元にお気をつけてお戻り下さいませ。本日はご利用ありがとうございました』


 海のさざなみの音と共にアナウンスが終わっても、誰も立つ人はいません。一回目もそうだったんですよ。


 「皆さーん!着きましたよー!さあ、ホテルに戻りましょう」


 どうやら僕の間の抜けた声でみんな正気に帰るんですよねぇ。

 そしてここからが長いんです。


 「なんて凄い体験をしたんだ!」「海の中ってあんなに綺麗だったのね」「遂に会えたぞ!バスター!」「ええ!坊っちゃま!」「凄え面白かったな!」「これもう一回乗れねえかな」「すごーい!本当にいたんだねー!」「キリク様!お気持ちはわかりますが、はしたないですよ!」「まあ、なんて素晴らしいの」「なあ、アレ俺らも食べれるのか?」「食べれたら良いよな」……


 皆さん興奮して動かないんですよ。

 次の課題点は、いかにして速やかに退去してもらうかになりそうですねぇ。

アクセスありがとうございます♪世界旅行代理店はどんな店かわかりました?どんどん扉が増えていきますよ〜。でも出張扉の設置も動き出します。そして明日はまだ領主様の歓待です。頑張りますね(*´꒳`*)

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