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商業ギルド上層部を歓待します 其の壱

うーん、ちょっと長くなってしまいましたf^_^;

 はい、皆さん、おはようございます(小声)。え?なんで小声なんですって?それは勿論ライ君、リルちゃんを起こさない為ですよ。


 今の時刻は朝の4時頃ですからね。まだだれも起きてないでしょうけど……起きてましたねぇ。


 オーナールームを出ると今来館したのか、木陰の宿の女性陣が靴を履き替えています。


 「おはようございます。皆さん今日も朝風呂ですか?」

 「トシヤ兄!珍しいね。この時間に起きてるなんて」


 朝から元気ですねぇ、エルさん。


 「あらあら、どうしましょう?雨が降るのかしら」


 いや、そこまで珍しい事じゃないですって、カルナさん。


 「あら?今日商業ギルドのジョンさん達が来る日じゃなかった?」


 メイさん流石情報通ですねぇ。ん?ゼンさんから聞いた?そのゼンさんは?


 「お父さんはまだ寝てる。今日は宿の休養日だから」


 そうでしたか、フランさん。お疲れ様ですねぇ、ゼンさん。ん?休養日?


 「あれ?休養日なのにこんなに朝早く来館なんですか?」


 僕の質問に顔を見合わせてにっこりする女性陣達。


 「だってトシヤ兄!やっと存分に遊べるんだよ!」

 「そうよねぇ。満足するまでゆったりと時間を気にせずここで過ごせるのよ」

 「メイ姉の言う通り。どれだけこの日を待ち侘びたか!」

 「あらあら、フランちゃんったら。漫画喫茶で読み尽くすんだって言ってたものねぇ」

 「お母さんだって、キャシーさんがハマっていた悪役令嬢もの見れるっていってたじゃん」

 「あらあら、私はライちゃん、リルちゃんとゆっくり過ごせるのも嬉しいのよ」


 おや、今日はライ君リルちゃんも家族で過ごせるのですね。これは家族団欒を邪魔しないようにしましょうか。


 「ところでトシヤ兄は何で早く起きて来たの?」

 「ああ、僕は商業ギルドの皆さんが来る前に亜空間通路(ターミナル)の増強をしておこうと思いまして」


 エルさんの質問に今日も目的を話すと、カルナさんとフランさんが乗り出して来ます。


 「あらぁ、新しい施設ね。それも後で見に行こうとみんなで言っていたのよ」

 「グランさんの仲間増えたんだよね!しかも面白いってサーシャが伝えにきたの」


 サーシャさんレンタカーショップの事、伝えに行っていたんですか。あの後ミック君ちょっと拗ねていたんですよね。「僕だって行きたかったのに」って。今日皆さんが行くのであればキイとグランにミック君とサーシャさんもお休みの日にする様に頼みますか。家族団欒も福利厚生の一環ですし。


 ワクワクしている木陰の宿の皆さんに「ゆっくり楽しんで下さい」と伝えて僕は目的の亜空間通路(ターミナル)に向かいます。

  

 ガチャッと亜空間通路(ターミナル)扉を開けると、丁度商業ギルド側の扉もガチャッと開きます。おや?こんな早くにサムさんですか?……いや、違いますねぇ。サムさんは現在ホテル住まいですし、知らない男性3人が入って来ましたし。誰でしょうねぇ?


 「おはようございます」と僕が声をかけると驚いた様子の3人。そのうちの一人シルバーグレーの髪のナイスミドルが僕に声をかけて来ます。


 「おはようございます。驚きましたな、もう起きてらっしゃるとは。お初にお目にかかります、トシヤ様でいらっしゃいますかな?」

 「はい、初めまして。グランデホテル兼亜空間通路(ターミナル)のオーナートシヤと申します」

 「これは失礼致しました。私は副ギルド長のベックと申します。一緒にいるのは受付、営業担当のまとめ役のビル、経理担当ジョンでございます」


 ベックさんの紹介のタイミングで頭を下げる二人。茶髪で人当たりの良さそうなニコニコ顔がビルさんで、黒髪メガネで難しい顔をしているのがジョンさんですね。うーん、これは手こずりそうですねぇ、サムさん。そう考えていた僕を上から下までじーっと見ていたジョンさんが声を上げます。


 「そもそも、私は反対していたんですよ!いくら設備がいいと言っても、こんな商売の事を何一つわかってなさそうな男に商業ギルドの支部とはいえ一つ委ねるなんて……」


 おおう……痛いところを突かれましたねぇと苦笑していると、いきなりジョンさんの姿が消えました。これには流石に「「は?」」「え?」と声をあげる僕ら。


 「オーナーに害する存在とみなしましたので、強制チェックアウトをさせて頂きました。以後入室禁止となります」


 なんと!グランがうむを言わさずジョンさんをチェックアウトしました!ウチのセキュリティは万全ですが、いささか対応が早すぎる様な気がしますねぇ。そんな僕の考えを読んだのか「オーナーに対する非難は許しません」ときっぱり告げるグラン。嬉しい様なちょっと過剰な様な……。


 このなんとも言えない空気の中、「……ぶっ!ワッハッハッハ!!」「あはっ!あのジョンの顔!」と笑い出すベックさんとビルさん。ん?なんでしょう?こうなるのがわかっていた様な感じは?


 「いやぁ、すまない。ああ、トシヤ君と呼ばせて貰っても良いかな?」と未だ笑いながら僕に聞くベックさん。僕が了承すると理由を教えてくれました。


 「ウチのギルド長がこの空間ではトシヤ君に害する事は出来ないし、暴力沙汰や脅しなども一切できないと言うものだから、悪いと思ったが試させて貰ったんだ」

 「本当に申し訳ない。ええと、グラン君といったかい?ジョンは演技しただけなんだ。申し訳ないがまた入館させてやってくれないだろうか?」


 ベックさんの言葉にビルさんが補足して話してくれました。ふむ、そう言う事でしたか。グラン、ジョンさんの入館を許可して下さい。「仕方ありません。今回のみ許可致します」とグランが渋々許可を出し扉を開けると……


 「うわあああ!良かったあああ!私本当にもう入れないかとおもいましたよおおお!」


 と先程とはまた違った泣き顔のジョンさんが入って来ました。ああ、こっちが本当のジョンさんなんですね。


 ようやく話を聞くと、どうやらサムさん抜きで事前に下調べをしようと早朝に動き出した3人。更に今日僕に会った時にこの件についても検証しようと、公平にくじ引きでこの役割を決めて来たそうですよ。いやいや、何してるんですかねぇ。そして余りにも早く僕に会った為、急遽演技に入ったジョンさん。で、グランに強制キャンセルされて今に至るそうです。


 「こんな面白そうな施設にずっと入れないかと思ったら、一瞬本気で二人を恨みましたよ」と涙を拭きながらベックさんとビルさんを睨んでいます。「まぁまぁ」「悪かった、悪かった」とカラカラ笑いながらジョンさんに謝る二人。ジョンさんいつもこんな感じでイジられてそうですねぇ。


 「で、トシヤ君はなんでこんな朝早くに?」とビルさん。


 今日皆さんを迎えるために、更に設備の増強をしておこうと思った旨を話すと、「おお!」「話に聞いた増設ですな!」「それは是非ご一緒させて下さい!」と前のめりでお願いされました。珍しいでしょうからねぇ、とのんびり構える僕。じゃ、早速やりましょうか。僕の魔力量増えましたからね!


 「エア、亜空間通路(ターミナル)にオープンラウンジ、自動販売機コーナー、大型トイレ、レンタル多目的ホールの設置をお願いします」

 「畏まりました。オープンラウンジ [一人掛けソファー×12 マッサージチェア×6]MP20,000、自動販売機コーナー[ジュース、コーヒー、アイス、カップ麺専用機]MP20,000、大型男女別トイレ[パウダールーム、洗面所、個室20、空調、防音、防臭完備]MP30,000 、レンタル多目的ホール(300人収容可能) MP25,000を設置致します」


 エアが話し終わると、光り出す亜空間通路(ターミナル)。「うおっ!」「うわ!」「おお!」と一人なんか反応が違いますが、驚く3人。そういえば目を閉じて下さいっていうの忘れてましたねぇ。


 呑気にそう考えていると、光が収まり全体が見えて来ます。


 「おお凄い!」と興奮のジョンさん。

 「な、なんだこれは?」と未だ混乱中のベックさん。

 「これがギルド長が言っていた力……」とビルさん。


 流石の僕も一挙に出した事はなかったので、思わず「ふわぁ!」と変な声を出してしまいます。


 目の前には更に広くなったレンタルオフィスと貸店舗通路。通路の真ん中にオープンラウンジが出来ています。ラウンジの両端は腰の高さまでの天然のグリーンフェンスで仕切られ、ラウンジ内は空港の通路にある休憩所の様な椅子の設置になっています。


 オープンラウンジ入り口は四ヶ所あり、そのうちの奥側に自動販売機コーナーが設置されています。この場所、待機場所や待ち合わせにも良いですねぇ。


 更にラウンジの奥には大型トイレが設置されて、トイレの左側には更に奥へと繋がる通路が出来ています。そこがレンタル多目的ホールですかねぇ。一つずつ見ていきましょう。


 「まずは今設置されたものの確認からで良いですか?」と提案すると3人は快く了承してくれます。その中でも「さあ!いきましょう!さあ!」とグイグイ僕を引っ張る意欲的なジョンさん。こういう新しい設備が好きなんでしょうかね。


 まずはオープンラウンジ。座り心地の良いソファーに座り「うーん、素晴らしい」とベックさんが寛いでいます。マッサージチェアにはジョンさん。「こ、これは凝った肩がほぐれていく……」と気持ち良さそうです。自販機前で唸るビルさんは「これは全部試してみたい……」と一つ一つ丁寧にチェックしています。


 3人がそれぞれ満足いくまでオープンラウンジを試して貰った後は、トイレのチェックです。「こんなに綺麗なところがトイレなのか……?」と洗面台に手をつきながら大きな鏡に驚くベックさん。「個室がこんなにあれば、ギルドのトイレも混まないのに」と残念そうなビルさん。「いやぁ!使い心地も最高ですよ!」とジャーと水を流して個室から出てくるジョンさん。それをみて二人とも試しにそれぞれ個室に入って行きます。うん、防音防臭いい働きしてますね!


 そして女性ギルド員の為に女性用もチェックしておきたいというベックさん。みんなで見に行きますと、なんでしょう……女性用の方が更に綺麗でセンスがいいんですよ。パウダールームを見た時のビルさんなんか「駄目だ……こんないいところ受付嬢達に見せたら帰って来ない……」と頭を抱えていました。あー……うん、わかります。


 そして頭を抱えるビルさんを連れて、次の多目的ホールに向かいます。入った途端に沈黙する3人。


 まぁ、そうでしょう。ドームの様に丸い天井から煌々と照らすライトの数々。白く明るい室内が更に広く感じる大きな窓ガラス配置。窓ガラスには青空が投影されています。床は暖かな木目のタイルが敷き詰められていて、この空間は何にでも対応出来そうですね。


 エアによると、正面奥の大きな開閉扉には様々な機材がいつでも使える様にセットされているそうですよ。うーん、いたれり尽せりですねぇ。と、設置の出来具合に満足している僕に、呆然としていたベックさんが問いかけて来ました。


 「トシヤ君。この空間の君の構想を聞かせてくれないか?」


 ん?構想ってほどじゃないんですけどねぇ。


 「ここは天候も気にせずにいつでも販売できますからね。賑わう露天市場になってくれたらうれしいですねぇ。他には店もオフィスという仕事場も順次増設していけますから、多くの人が楽しく快適に商売できるのが僕の夢であり目的ですねぇ。みんなが楽しいと活気がでますし、経済に良い影響出るでしょうし」


 僕の言葉に三者三様考え込みました。

 

 「レンタルって貸し出しの事だよね。トシヤ君の目的に協力するならこちらにも益があるのかい?」とジョンさん。


 「勿論ギルド員が儲かれば商業ギルドにも恩恵は行くでしょうけど、サムさんがギルドに持っていったタブレットや携帯の貸し出しは無料にしますよ。あ、でもレンタルですからね!そこはお間違いなく。勿論使い方講習付きで。あと、レンタルオフィス、貸店舗に関しても貸し出し料金から四割は引きましょう」


 「呼び込んだ商店に対する利点は?」とビルさん。


 「そちらに関しては貸店舗の賃貸料金は毎月三割引きましょう。多目的ホールで露店をする場合は一律一日1,000ディアでいいですよ。市民開放する場合は多目的ホールのレンタル料金はとりませんよ」


 僕の言葉に今度は頭を抱える3人。ん?どうしました?


 「成る程。ギルド長が全面協力するわけだ」とベックさん。

 「全く、商売ってものを甘く見てますねぇ」とジョンさん。

 「これはサポート役が必要だな」とビルさん。


 皆さん苦笑しながら僕を見ています。おや、なんかいい感じですか?すると、3人が顔を合わせて頷き、代表してベックさんが口を開きます。


 「トシヤ君。私達からも言わせて貰おう。是非ともこの亜空間通路(ターミナル)の繁栄に関わらせてくれないだろうか。

 といっても、もうギルド長がそちらについているけどね。それに私達はまだ、聞いた施設の半分も見ていないんだ。それでもそう思わせるこの施設に私達は今後の展開に多くの光を見た。商売に携わる者として、こんなに興奮したのは久しぶりだ!是非長い付き合いをお願いしたい」


 そう言ってベックさんが手を差し出します。僕は喜んで「こちらこそお願いします!」と互いにしっかり握手をするいい場面だったのですが……


 「あー!!なんでもうみんな居るのさ!しかも僕より先に新しい施設なんか見て!!」


 というサムさんの乱入により、真面目な雰囲気が吹っ飛びみんなで大笑いです。


 でもサムさん、ある意味ナイスタイミングです。

 ここにギルド長が居ないと締まらないですからねぇ。


アクセスありがとうございます!ゆっくり進行の本作にお付き合いしてくださり、ありがとうございます(^^)頑張りますね!(//∇//)

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