グランデ喫茶店設置しました
あの後、喫茶店をタップしたと同時に大量に身体から何か抜けていった感じがしました。多分魔力が一挙に抜けて行ったからでしょうね。大きな設置物は寝る前にやった方が良さそうです。
さて、取り敢えず身体は動きますし、お腹はもうぺこぺこです。カプセルベッドから降りて、ドアに向かいます。
ガチャッと扉を開けるとフロントの右向こう側の壁がガラス張りに変わり、温かい木目調の扉がある喫茶店ができていました。
『新たな施設「喫茶店」が設置されました。メインタブレットを持って中にお入り下さい』
フロントAIシステムの音声で手に持っていない事に気づき、急いでタブレットを取りに戻ります。
なんかワクワクしてきますねぇ。
早速、喫茶店のドアを開けると、カランという鈴の音が迎えてくれます。中にはカウンターとカウンター席が四つ、四人用テーブル席が二つ窓際に設置されていました。
内装は、明るいレンガ調の壁に深い焦げ茶のテーブルと椅子。床は木のフローリングが、温かい雰囲気を醸しだしています。黒のヴィンテージ北欧風ペンダントライトが優しい光で室内を照らす僕好みの喫茶店。
うわぁ、と感動していると、『オーナー、カウンターの内側へ移動をお願いします』とタブレットからの音声指示が。
指示通り内側にいくと、作業台の天板に嵌め込まれたタブレットとその隣に薄型長方形の黒い天板石がありました。
近づいて行くと『今から喫茶店のタブレットと同期を開始します。しばらくお待ち下さい』とメインタブレットが音声で僕に伝えます。すぐに作業に入った様です。
有能なスキルですねぇ。僕は待っている間カウンター内を散策しましょうか。
壁に備えつけられた棚には、様々なお皿とコーヒーカップ、グラスが綺麗に陳列されています。引き出しにはナイフ、フォーク、トングなどがあります。お客様にお出しする使い捨てナプキンも常備されているみたいですねぇ。
不思議な事に調理スペースがありません。作業台下の大きな引き出しを引っ張ると、食器洗浄機みたいですし。肝心の食材や調理はどうするんでしょう?
僕が疑問を抱いていると、『同期完了しました。オーナー、メインタブレットでも注文可能ですが、喫茶店に備え付けのタブレットで注文操作してみて下さい』と指示が聞こえてきます。
喫茶店タブレットに向かい合うと、こちらはホームボタン無しのタブレットでした。タップをすると『ようこそグランデ喫茶店へ』と女性の様な音声と共に文字が表示されて画面が変わります。
【グランデ喫茶店】
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・メニュー注文
・備品発注
・スタッフ登録
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『初めまして、オーナートシヤ様。こちらの喫茶店では召喚によって調理済みの料理や飲み物を提供致します。さらにオーナートシヤ様限定で魔力対価で召喚可能です。まずは現在提供されているメニューをご覧下さい』
音声が話し終えると喫茶店メニューに画面が切り替わります。
【Drink】
・ブレンドコーヒー 300ディア(MP3)
・ココア 400ディア(MP4)
・紅茶 400ディア(MP4)
・アイスコーヒー 400ディア(MP4)
・アイスティー 400ディア(MP4)
・オレンジジュース 300ディア(MP3)
・コーラ 300ディア(MP3)
【Dessert】
・フルーツタルト 500ディア(MP5)
・チーズケーキ 500ディア(MP5)
・ワッフル&バニラアイス 500ディア(MP5)
・ショコラケーキ 400ディア(MP4)
・フルーツパフェ 600ディア(MP6)
・シフォンケーキ 400ディア(MP4)
・バニラアイスクリーム 200ディア(MP2)
【Food】
・ミートソーススパゲッティ 800ディア(MP8)
・カルボナーラスパゲッティ 800ディア(MP8)
・ビーフシチュー 800ディア(MP8)
・オムライス 900ディア(MP9)
・シーフードピザ 900ディア(MP9)
・BLTサンド 700ディア(MP7)
・チーズトースト 500ディア(MP5)
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セットメニュー +300ディア(MP3)
(上記フード+ミニサラダ+ドリンク)
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やりました!待望のご飯です!しかも安い!
当然セットメニューでしょう。ドリンクは食後のコーヒーで、オムライスにビーフシチューも頼みましょう。それでMP20ですか!?驚きです。
口頭で頼むとAIから天板石の上に大皿、スープ皿、小皿にコーヒーカップを置く様に指示されました。壁棚からそれぞれ取り出し設置すると、天板石の右端が点滅しています。ここを押すんですか?
AIに指示された通り右端タップすると、なんという事でしょう!出来立てのあったかい料理とサラダにコーヒーが出現しました!
『お待たせ致しました。お席についてごゆっくりどうぞ』
AIに促されるまま、カウンターに座りガツガツと食べ始める僕。もう食事しか目に入っていません。そして美味しいんですよぉ!思わず涙流して食べてました。日本人の舌を大満足させる味は凄いです!
「ふぅ、ご馳走様でした」
感動の食事が終わり、未だあったかいコーヒーを頂きながらメインタブレットAIに質問タイムです。
まずメニューの「ディア」という単位について。これはこの国「エルーシア」の通貨単位だそうです。お金の内訳はこんな感じ。
10ディア ー 鉄貨
100ディア ー 銅貨
1,000ディア ー 銀貨
10,000ディア ー 金貨
1,000,000ディア ー白金貨
だそうです。時間は24時間で一緒みたいですね。朝の6時の鐘の音で一刻。そのあと二時間毎に二刻、三刻と呼び名が変わって行くそうです。時計持ってる人って裕福な人なんでしょうねぇ。
週も七日で呼び名も一緒。これは過去に来た「異世界からの来訪者」の入れ知恵とか。過去の来訪者も日本人だったんでしょうか。
この世界には人族の他に獣人、エルフ、ドワーフがいるとか。幸いにもラノベあるあるの差別はないみたいですよ。但し、この国では、という後付けがありましたけど。
なんでこんなに知っているのか、タブレットに聞いてみたら初期設定の際に一般常識がインプットされていたそうです。流石ギフトですねぇ。
あ、でもここまで特殊なのは他にないそうです。う〜ん、それでホテルとして人を呼び込むんですか…… 。課題ですね。
まぁ、お約束の冒険者ギルドと商業ギルドがあるみたいなので、登録と買取がてら明日は散歩ですね。
ふぁあ…… いやぁ失礼。かなり気を張っていたのが緩んできたんでしょう。さっきから欠伸が止まらなくて。
『オーナー、お皿は作業台の下に入れて置いて下さい。洗っておきますから』
「ふぁあ…… うん。じゃあ、入れておくから頼むよ」
汚れたお皿を作業台の下の引き出しにセットします。忘れずにメインタブレットを持ってオーナールームに戻る僕。カプセルベッドに入った途端に寝ついたらしく、気がつけば異世界一日目が終わっていました。
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