ヴァントさんを巻き込みましょう
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漫画喫茶を設置してから二日経ちました。なかなかサムさんからの返事が来ませんねぇ。
「あ、ヴァントさん。もう一本下さい」
「あいよ!」
いやぁ、これは本当に美味しいですからね。既に一本食べましたけど、もう一本なら軽くいけます。ん?ボルクさんそれ何本目ですか?あ、まだ五本目。流石冒険者ですねぇ。
あ、皆さんおはようございます。僕は珍しく朝から動き出してますよ。僕の提案を実現させる一歩として、初めて接触した異世界人ヴァントさんの屋台に来ています。と言うか邪魔をしているというか……
「まぁったくよぉ!昨日に続いて今日も来るたぁ、暇人だなぁ、トシヤ。代わってほしいぜ、ほんと」
「あ、代わりましょうか?」
「……俺の屋台を潰す気か、お前」
いやぁ確かに。前科者ですからねぇ。肉黒焦げにしちゃいましたし。でもここで意外な適性者が!
「ほら、焼けたぞ」
「やっぱりトシヤより筋がいいなぁ。冒険者にしておくには惜しい」
「焼くだけならベテランだからな」
そう、今日の僕の護衛の「テラ」のボルクさんがいい腕をしているんです。ヴァントさんお墨付きですね。そして、冒険者として人気の「テラ」のボルクさんが焼いたオーク串焼きはどうなるのか……
「串焼き一本くれ!ヴァント!」「キャー!ボルクさんだわ」「ええ!今日はボルクさん自ら焼いてくれたオーク串焼き食えるのか!?」「おお!俺にも一本くれ!」「……」……
見事なまでの売れ行きです。ヴァントさんが「お前ら並べ!」と叫び、黙々と焼いて行くボルクさん。僕も流石に渡す事は出来ますからね。手伝いましたよ。そしてあっという間に今日の分が売れたヴァントさんの屋台。
「やっぱりAランクは凄えなぁ」とニッと笑いホクホク顔のヴァントさん。ボルクさんは全く疲れていなさそうです。僕は近くの木にもたれかかって、休んでいます。日本人の体力甘くみないで下さい。疲れました……
「おい、トシヤ。これでヴァントに聞きたい事聞けるだろ」
腕まくりをしていた服を直しながら言うボルクさん。ヴァントさんは「ん?」と顔を上げます。さっすがボルクさんですねぇ。
「ヴァントさん、今日この後時間ありますか?」
「お?どっかで酒でも奢ってくれるのか?独り身だからなぁ、時間はたっぷりあるぞ」
「じゃ、屋台片付けて木陰の宿に行きませんか?」
「いつもの木陰の宿かぁ。まぁ、いいか」
ちょっと残念そうなヴァントさん。早速片付けに動き出します。僕もボルクさんも手伝い素早く終わらせて木陰の宿へ。その道中はヴァントさんから屋台情報を聞き出します。
美味しいスープは寡黙な男性ファルゴさんのお店が一番だとか、焼き立てのパンは兎獣人のシルビアさんのお店。いや、良い尻しているとかその情報いりませんって。
新鮮な野菜は自家製のジーナばあちゃんのところだとか、肉はダックさんの所が解体が丁寧だとか、煮込み料理はやもめのカーナさんの所が美味いとかちょっとした個人情報も入ります。
なんでもヴァントさんはこの辺りの屋台をまとめている立場でもあるそうで、「独り身だからって面倒くさいもん押し付けられちまったんだ」とまんざらでもない顔で言ってましたよ。
まとめ役だからこそ宿の情報も手に入ります。勿論安くて美味いのは「木陰の宿」。ちょっと贅沢したければ「バッカスの宿」。王都で修行した料理人さんがいるんですって。更に庶民には高嶺の宿「ヴィンテージ」って宿もあるそうですよ。他は可愛い宿屋の娘さんがいる「白樺」、恰幅の良いこの街の女将さんみたいな存在の「シーラの宿」もあるそうです。
これは面白い!既にそれぞれ味がありますね。これは上手くすれば僕の考える美食の街に更に近づきます。うんうん、と頷いている僕を不審な目で見るヴァントさん。あ、失礼しました。
ほ、ほら木陰の宿に着きましたよ。さ、行きましょう。
「おい、トシヤ。食堂はコッチだろ?」
宿に入って食堂と反対側の方向に歩きだす僕とボルクさんをみて、不思議そうに言うヴァントさん。
「いえいえ、ヴァントさんには、僕の宿にご招待したいんですよ」
「は?宿ってここ木陰の宿だろうが」
怪訝そうな顔のヴァントさんを「まぁまぁ」と誤魔化しながら、ホテルの正面扉のある部屋に連れて行きます。「ヴァントさん歳は?」「35?ふむ意外と……いえいえなんでもありません。ここをちょっと触ってみてくださいませんか?僕の宿が見えますから」と僕が促しても腕を組んで顔を顰めているヴァントさん。
「騙されたと思って触ってみろ、ヴァント。面白いもんみえるぞ」
ボルクさんの言葉でやっと動いてくれたヴァントさん。いきなり見えた扉に驚き「はぁ!?なんだこれ?」と騒いでいます。ボルクさんはスタスタと扉をくぐり、安全だと証明してくれています。
僕は挙動不審なヴァントさんの背中を押して中に入ります。当然サーシャさんとグランの「「いらっしゃいませ!ようこそ亜空間グランデホテルへ!」」といつもの歓迎の言葉がヴァントさんを迎えます。
「おいおいおい……一体何だよ、この空間。あり得ねえ」
驚いてキョロキョロ見回すヴァントさん。初めて入る人はこうなるんですよね。親父さんやヤンさんが特殊なだけで。さて、と……
「サーシャさん、リーヤもう来てますか?」
「うん、先に調理場で待ってるって」
「わかりました、ありがとうございます」
ふふふ、僕はちゃんと増設もしてたんですよ。リーヤ待望の【館内設備】調理場[調理道具、器具、食器、空調、防音、防臭完備]MP70,000 と大型男女別トイレ[パウダールーム、洗面所、個室20、空調、防音、防臭完備]MP30,000 。二階会議室横に設置しておきました。いつサムさんが誰かを連れてきても良い様に。
あ、玄関に立ちっぱなしはいけません。「さ、行きますよ〜」とヴァントさんに靴を履き替えるように案内し、正面エスカレーターに乗って二階に行く僕達。
ボルクさんは宿に着いたら護衛は要らないので、休憩所に行ってますよ。というか、漫画喫茶に向かって行きましたね。今亜空間内は漫画喫茶が流行ってますから。依頼に行ってるメンバー以外ほぼみんないるんじゃないでしょうかねぇ。
ヴァントさんの背中を押しながらそんな事を考えていると、調理場からリーヤが声をかけてきます。
「よお!ヴァント、お疲れ」
「ようこそ!亜空間グランデホテル調理室へ」
「あの……こんにちは」
リーヤの後は調理場に設置されたモニターからキイの歓迎の挨拶が続きます。あ、そしてあの子が「白樺」の宿の子ですね。リーヤより背の小さい可愛い系のリス獣人さんです。ファラさんはリーヤが入館登録してくれました。携帯やタブレットをみんなが持つ様になったので便利ですよね。
「……おい、リーヤ。それは何だ?」
ヴァントさんは色々不思議な事に囲まれているにもかかわらず、作業台に乗っている肉の串焼きに目が釘付けです。
「おう!良い匂いだろ。ファラも美味いって言ってくれたんだぞ」
と得意気なリーヤ。それよりも気になるのか、まだお皿に余っていた串焼きを口にするヴァントさん。目を閉じて口の中でじっくり味わい、ゆっくり飲み込むとカッと目が開きます。
「何と言う深い味わい……甘さとしょっぱさがまさに丁度いい加減だ!しかしなんだ!この調味料は!?リーヤ、教えてくれ!」
あ、やっぱりヴァントさんもこのタイプでした。料理人ってみんなこんな感じなんですかねぇ。そんな僕の感想を感じとったのか、リーヤがニヤッと笑ってヴァントさんに提案します。
「教えても良いが、ヴァント。お前もトシヤの案に乗っかるか?」
「は?案だと?と言うより、ファラいつからいたんだ?」
やっと正気?に戻ったヴァントさんとファラさんに、ここに連れて来た理由である「街と共に歩む上質な時間」の案をモニターを使って説明します。
途中で幾つか質問をするヴァントさんとファラさんに、全ての説明を終えると……
「……商業ギルド待ちって事か。だが、美味さを追求するのにはギルドなんか関係ねえ!俺は乗るぜ!トシヤがその為にも協力してくれるんだよな!」
熱い男ヴァント此処に在りって感じです。まさかここまですぐに協力体制になってくれるとは驚きです。一方、ファラさんからは「家族にまずは相談させて下さい」と慎重な返事を下さいました。掴みは良い感じでしょう。
その後はいつもと同じパターンですよ。リーヤは仕事に戻りましたが、初入館キャンペーンで二人共を大浴場へご案内。ファラさんはサーシャさん、ヴァントさんは僕が館内説明をしました。当然……
「すっげえ綺麗じゃねえか!」「っっかぁ〜!なんちゅう贅沢!」「ふあぁぁぁ……気持ち良すぎる……」と満足して貰いましたよ。また一人、風呂の沼に引きずり込みましたねぇ。良い事です。
お風呂上がりにファラさんは喫茶レストラン「Green Garden」へ、ヴァントさんは僕の奢りで一日宿泊して貰うので、フリードリンクコーナーへご案内。見ず知らずだった僕にも親切にしてくれた人です。しっかり歓待しないと!って思ってたんですけどねぇ……
「まずは最初は生ビールからだな」と依頼から帰って来ていたザックさんからビールを勧められたヴァントさん。「プハッ!凄いコクとキレがあるエールだな!これは良い!」としっかり味の評価をしています。
それを面白がったのはガレムさんと「テラ」のジェイクさん。ヴァントさんに黒霧◯と二階◯の飲み比べをさせています。当然これにも応えるヴァントさん。
「これは鼻から抜ける甘い香りと、舌に優しくまとわりつくトロリとした旨味……辛口でキリッとした喉を滑り落ちる切れ味……美味いな、コレは」と感動していたり、「これは……なんて言うのか。クセを抑え華やかで優美な香りと、ふんわりとした麦の甘みを感じる……また違った美味さだな」とうっとりとしながらも表現豊かに表していました。
こうなると止められない酒飲みたち。出て来ましたよ、手に入り辛いと言われる日本酒の数々。それぞれ勧めている所に親父さん乱入。更に加速する飲み比べ。
これは終わりませんねぇ。みんなにヴァントさんを任せて、僕も喫茶レストランの方へ行きますかね。そそくさと移動する僕の後ろから感動しているヴァントさんの声が聞こえてきます。
「まろやかでいて後味がいい……こんな酒があるのか!」
……ヴァントさん、貴方もうわばみでしたか。これは酒飲みグループにまた一人追加決定です。
因みにヴァントさんが食べたのはオーク肉の照り焼きでした。照り焼きの匂いって我慢出来ないですからね。
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