料理対決⁉︎ ティモ対ハルムント
今年も宜しくお願いします!
美味しいものって心が満たされますよねぇ。
皆さん、美味しいものが更に美味しくなるスパイスって、なんだと思います?
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「あー!腹減った!」
ザックさん、お風呂で修行していたからでしょうかね?お腹になにか飼っているんじゃないかってぐらい、お腹を鳴らしています。
「今日も期待できそうねぇ」
「そうね、ティモとハルムントがいるもの」
そんなザックさん同様、ティアさんとビニーのオネエコンビもお腹空いたんでしょう。足取りが早いですねぇ。
「今日の特別食材ってなんすか?」
「今日は二人共違う食材で、ティモはクオーク海産アバロニとキングシャーモン、クイーンクラッブ。ハルムントは特選キングレッドオークね!」
その後ろを、個室で休んでいたレンと合流したアルコが、今日の特選食材を話しながら歩いています。
あ、因みにアバロニは鮑の味に似た貝。キングシャーモンはサーモンの味がするデッカい赤身魚。クイーンクラッブは蟹の様な甲殻類の海の魔物です。
しかも、お肉は手に入り辛いキングレッドオークですって!うーん、聞いているだけでよだれが出ますねぇ。
「お!凄え、今日遂に飲めるのか!」
「確か今日の筈だ」
こちらは僕の前で歩いているデノンさんとガレムさん。天空宮殿名物スカイワイン。ハルムントが厳選に厳選を重ねて作り上げた熟成ワインなんです。
「フフッ、期待してしまいますね」
「前のは僕も飲めたんですけど、今回はどうでしょう?」
僕の隣を歩くシュバルツ様も名物ワイン楽しみにしていたんですねぇ。僕は、甘いスイートワインが好きですけど、どんな味がするのやら楽しみです。
そんな僕らが今向かっているのは、特設レストラン会場「碧」。
特設会場ですが、100人は入る事が出来るでしょう。オープンキッチン付きのアクアレストランです。
そう!壁四面が水槽になっているんです!凄い迫力なんですよ。水族館の大水槽が四面にあるようなものなんですから!
本来はまずその水槽に目が行くんですけど……
「フフフ〜ン!今回ハ頂きましタヨ!」
「……料理に勝ち負けなどないだろうに……」
まあ、真ん中のオープンキッチンで、やり取りしている二人が居ますからねぇ。
「よお!ティモ、ハルムント来たぞー!」
ザックさんが二人に声をかけながら、カウンターに近づいて行きます。そんなザックさんに「「いらっしゃいませ(イラッシャイマセ)」」と同時に声をかける時は仲良さそうですけどね。
そうハルムントは、新たに実体化したレストランAIです。ティモと違い料理人として逞しい身体付き、しっかり着込んだシェフの姿が似合う寡黙な性格の青年。
顔については言わずとも良いでしょう。もう整っているのは当然なんですから。……ええ、悔しくなんかありませんよ。どーせ普通ですから僕!
いや、失礼しました。コホンッ!そしてもう一つ。ハルムントは、ティモをも負かす腕の持ち主。っていうか、ティモが勝手に勝ち負けを決めている気がしないでもないですが……
「サアサア!皆サーン、座って下サイネ!」
そんなティモですが、ハルムントがナイフやフォークを準備する中、仕込みをしています。仕事に関しては息があってる二人なんです。
僕らは、オープンキッチンを囲むように設置されているカウンターテーブルに着き料理を待ちます。
「まずは食前酒です」
ハルムントが給仕してくれたワインは、みんなが楽しみにしていた熟成ワインです。
これは……渋みもなくまろやかです。僕でも飲めます!
「しっかりとしたボディですね」
「これは……ホワイトとヴェインのブレンドか!」
ワインの評論は僕よくわからないですが、シュバルツ様もご機嫌で飲んでますし、ガレムさんは何か言い当ててますよ?
「その通りです。ホワイトオーク樽とヴェイン産オーク樽のブレンドが1番食前酒によろしいかと結論致しました」
料理や食材、ワインの事には笑顔で話し出すハルムント。「ウーム。私ハ、ツウィート樽モ入れタライイと思ってマシタガ……」ティモも納得の味わいみたいですね。何やら悔しそうな顔をしています。
あ、ティモやハルムントもオープンキッチンの中で食べたり飲んだりしますよ。身内だけですからね、無礼講です。
「ナラバ!コノ前菜が合う筈デスヨ」
今度はティモが出してきたのは、『キングシャーモンのカルパッチョ〜温野菜を添えて〜』です。温野菜にもガーリックバターが使われていてワインに合うんですよ!
これもみんながおかわりしています。するとタイミングを見計らったハルムントが、スープを給仕して行きます。
「スープは今日は新鮮なコーンが手に入ったんです」
僕も早速飲んでみたんですけど……凄い!コーンスープってこんなに濃いんですか?それでいてくどくない!
「ムッ……そうキマシタカ」
感動する僕らの前でティモが呟きます。ティモ、作りながら器用に食べているんですよね。ハルムントはティモの作ったカルパッチョを黙々と食べています。うん、表情が読めませんねぇ。
そしてウチの欠食児童達は、マナーを気にしなくて良いのでおかわりしまくってますし。あ、スープは僕にも下さい。
「魚料理ハ、キングシャーモンのポアレデス」
すると次に出てきたのは、カリッとオリーブオイルで焼いたキングシャーモン。ソースはオランデーズソース。ピリっとした黒胡椒が味を引き立てます。
「……ふむ。この焼き加減は流石だな……」
おや?ハルムントが褒めましたねぇ。これにはティモも「ソウデショウ!ソウデショウ!」と上機嫌です。
しかし、丁寧に食べるシュバルツ様の横で「足りねえ!」って叫ぶデノンさん。食べるの早っ!
そんな感じで程よく食が進む中、次に出てきたのは……
「……キングレッドオークのステーキ、ワサビソースでどうぞ」
ん?これ生肉じゃないですか?
「コレは……!贅沢ですね!」
僕が首を傾げていたら、アルコが驚いています。はて?どういう事でしょう?
「オーナー、コレ上質な肉の中の上質ステーキです……!塊肉を香草と共にオーブンで焼き、火が通ったギリギリのラインの肉を取り出して食べる贅沢な料理ですよ!しかもキングレッドオーク!」
興奮して説明してくれるアルコの横では、幸せそうに頬に手を添えるティアさんと恍惚の表情をしているビニーの姿も見えますねぇ。これは楽しみです。では……
これは⁉︎……なんて柔らかい……肉が溶けるなんて‼︎
「……クッ‼︎マタヤラレマシタ!」
ティモも納得の味なんでしょう。でも、これには僕も言葉がありません。そう言っている間にも次を仕込んでいたハルムントは、すぐにみんなにお代わりを聞いてきます。
ええ、もう全員頷きましたよ。レンなんか「全部うめえっす!」ってなんか涙流してました。美味しいって罪ですねぇ。
その後のサラダとデザートは二人の合作。これが、また食が進む進む。素材を最高の状態で調理してくれたんです。お腹が膨らんでも食べれる料理こそ僕は凄いと思います。
僕は、気になったのでハルムントに聞いてみました。料理を作るコツってあるんですか?って。すると……
「……素材の本質を知る事でしょうか……それに、ティモのようにもてなしたいという相手を思う気持ちがヒントになります……」
ハルムントの口から、ティモを認めている言葉が出ます。これにはティモも苦笑い。
「コレダカラ、コイツに勝ちタインデス」
僕にとっては二人共の料理の腕の差はそんなに分かりませんが、結局美味しいものって、探究心と思いやりがあってこそなんでしょうか?
だって証拠に、食後全員が満足した笑顔で寛いでいます。
いやあ、僕も大満足です!
「さあ!皆さん、今日はこれでお開きですよ!何たって明日からは7階層に入ります!7階層は、草原地帯で主な魔物は、ジャイアントアードハイーナです!油断できませんから、ゆっくり寝てくださいね」
ゆったりとした雰囲気もアルコの声でまた動き出し、それぞれが満足して部屋に向かいます。
「ア、明日も参加シマスカラネ!」
部屋に戻ろうとする僕らに、片付けながら声をかけるティモ。ティモも、明日またダンジョン攻略に参加するみたいです。人数は多い方が楽しいですからねぇ。
ん?そういえば、グランとキイはどこに行ったんでしょう?部屋に戻って聞いてみますか。
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