ダンジョン慰安旅行 2
慰安旅行って、心を慰め、労を労う事って定義があるんですよ。僕の心を慰め労を労う事を誰かしてくれませんかねぇ。
諦め悪い僕がそんな事を考えていたら、もうダンジョン入り口に到着していたんです。
「へえ、ダンジョンの入り口って洞窟じゃないんですか?」
「ディゼラのダンジョンは、古代遺跡が入り口となっている珍しいダンジョンでございます」
「古代遺跡とはいえ、白い大理石で建てられた柱は装飾も見事で観光地としても人気が高い場所ですわ」
僕の質問に素早く答えてくれるグランとキイ。ふむ、神殿の古代遺跡の中にダンジョンの入り口があるなんて、また面白いですよね。
そんな見事な柱廊の間を全員でゾロゾロ歩いて行くと、神殿の内部に入る門があります。衛兵さんが検問しているみたいですね。
ハッ!僕ら冒険者カード持ってませんが、大丈夫なんでしょうか?
「お待ちしておりました!グランデホテル一行の皆様ですね。こちらは代表者の方がお持ちになって頂くセービングカードです!ダンジョン挑戦者の皆様は、セービングカードに魔力登録をして頂くと入場可能になっております」
そんな僕の心配は、ただの杞憂にだったみたいです。誰か連絡していたんですかね?それも並んでらっしゃる冒険者さん達より優先されたみたいですが……?
「オーナー……一応我らグランデホテル関係者は、エルセラ国では特権階級に所属しております。ダンジョンであろうと同様ですよ」
疑問に思っていた僕の表情を読み取って、解説して下さるシュバルツ様。僕が未だにその立場になれてない事に、ため息をついていらっしゃいます。
うーん、そんな事言っても僕は一般人ですしねぇ。
「ハイハイ!オーナーはそのままで良いですよ。ホラホラ、みんな登録したんですから、セービングカードはオーナーが持っていて下さいよ!」
僕がのんびり構えていると、さすが旅行代理店のアルコ。率先して動きカードを僕に渡して来ました。
「ええ!代表者僕ですか?」
「って言うか、お前以外に誰がいるよ」
驚く僕に呆れながらも突っ込むデノンさん。他のみんなも頷いてますし……仕方ないですねぇ。
「ハーイ!ではグランデホテル慰安旅行の御一行様!行きますよー!」
しっかり旗を持って先頭するアルコに、ウキウキしたみんながついて行きます。まあ、僕もワクワクして来ましたしね。
先導するアルコの後ろで、興味深く周りの様子を見る僕達一行。柱廊の通路が終わり、神殿内部に入って行きます。ステンドガラスからの光で彩られた祭壇。
うーん、なんとも神秘的な空間ですねぇ。
その祭壇の前には地下に続く大きな階段がありました。
「此処が入り口です。足元に気をつけて降りて下さいねー!」
アルコの案内のもと、全員階段を降りて行きます。
「へえ!階段まで装飾凝って居るっすね」
「OH!ナンテ見事なんでショウ!」
僕の前を歩くレンとティモは、嬉しそうに周りをキョロキョロしながら降りてますねぇ。
そういえば実体化してから、みんな働き詰めでしたっけ……うん、これからはしっかり休みを与えないといけませんね。僕のところはホワイト企業なんですから!
「何を決意して居るのかわかんないけど、着いたわよぉ」
「あら、一階層は神殿内部みたいな感じね」
1人百面相をしながら階段を降りる僕に、ビニーが一階層に着いた事を教えてくれました。僕に慣れているティアさんもお構いなく、周りの状況を確かめています。
うん、もう少し構ってくれてもいいんですよ?
「ハーイ皆さん注目!一階層から三階層は冒険者も多く、敵もスライム、ゴブリン、コボルトなんですよ。ここを探検したい人居ますー?」
まあ、僕に慣れているメンバーだらけですから、当然お構いなく進んで行きます。そんな中、アルコは事前調査していたんですねぇ。流石旅行代理店です(二回目)。
話しは戻しますが、このメンバーでこの階層を探検したいって人は居ないでしょうね。
結果は僕の思った通り。「さっさと進もうぜ」というデノンさんの意見に、全員頷いています。
「ハーイ!わかりました!じゃあ、レンお願い!」
「任せてくれっす!」
ん?アルコにお願いされたレンが何か出しましたよ?
「まーずーはコレっスね!DAHONのDR250!優れた高性能サスペンションは、強い衝撃を緩和するっすから凸凹道も快適に走れるっす!スペックはこのメーカーがイチオシっスね」
レンが出したのはオフロードバイク5台。これにはデノンさん、ビニー、ティアさん、ガレムさん、ザックさんが大喜びで乗り出します。
「あ、オーナー達はコレっスね」
レンが出したのは、5人乗りのトゥクトゥクです!ダンジョンをトゥクトゥクで走るとは思いませんでしたねぇ。でもよかったぁ。歩いてだったら、1番に脱落していた自信ありますからね。
「OH!私のマイバイクはドーしまシタ?」
「ティモの旦那!わかってるっすよ!」
レンがティモの愛用車を出した時は驚きましたねぇ。なんとディビッツソンのDVO RORD GLAIDEですよ!色はなんとワインレッド!
「力強いフローステート!よりダイナミックにツーリングするにはコレっスね。なーぜーかティモの旦那が乗ると貫禄が出るっス」
確かに……なんでしょうね。ティモの体格だからこそ似合ってる気がします。しかもティモ、マイヘルメット付きじゃないですか。おお!格好いい!
「で、俺っちはアルコっちの車でお願いするっス!」
「はいよー!この階層は私達にお任せあれ!」
アルコが出したのは、勿論大地の赫への誘いの扉の1人乗り車両です。ウキウキと乗り込むレンに、なぜに僕らの乗り物はトゥクトゥク?とちょっと不満を言ってしまいましたが、レン曰く……
「ほら、やっぱり慰安旅行って感じするじゃないっすか!あ、安全性と乗り心地の心配っスか?全車両結界付きっすから安全は完備!乗り心地は勿論ターミナルレンタカーショップ仕様っスからね!振動も騒音も排気の心配も要らない安心設計!抜かりはないっスよ!」
うん、知ってました。そのチート能力。
「オーナー、さあ乗って下さい」
そうでしたねぇと納得する僕を残し、いつの間にか全員それぞれ乗車し準備は万端。僕も急いで移動します。
おお!トゥクトゥクはグランが運転ですね。あ、僕が1番前でいいんですかシュバルツ様。ハイハイわかりました。乗ります乗ります。
「ハーイ!じゃ、一挙に四階層まで進みますよー!」
全員乗り込んだのを見計らって、進み出したグランデホテル一行。1−3階層は正にアルコとレン無双でした。
「いやっほー!」
「負けないっスよー!」
白熱する2人のおこぼれは、ティアさんの魔法や、なんとシュバルツ様の魔法で仕留めていましたよ。
シュバルツ様氷の属性なんですって。
似合いすぎますねぇ。
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