エピローグ ー僕の日常ー
ピピピピピピ……!
……ん?……もう朝ですか?
「おきるのー!」
「おっきするのー!」
……ライ君、リルちゃん?……って待って下さい‼︎
ガバッと起きて、すかさずベッドから降りる僕。ベッドの上では笑い声と共にライ君、リルちゃんがコロコロ転がって遊んでいます。
……ふう、危なかった。いやぁ、毎朝戦いですよ。と言うのもライ君達に僕が頼んだんですよ。朝起きれない僕を起こして下さい、と。
でもまさか、ジャンピングモーニングコールで起こしに来るとは思ってなかったんですよ……
頼んだ最初の頃こそ思いっきりくらいましたけど、ここ最近は僕の反応の方が早いですからね。今のところ15勝15敗ですけど。
「おはようございます。ライ君、リルちゃん。今日もありがとうございます」
僕が挨拶すると、ライ君達も声を揃えて挨拶してくれます。うん、いい挨拶ですね。じゃ、支度をして行きましょうか。
はしゃぐライ君達と一緒に僕も着替えて、支度を整えます。ライ君達の成長はすごいですよ!ベルボーイ、ベルガールとしてもうしっかり仕事に入っているんです。カディル人のリク君ミウちゃんという、可愛い競い相手がいるからでしょうかね。微笑ましいものです。
「「おはよう御座います」」
支度を終えて僕の部屋から出ると、グランとキイが待機しています。これもいつもの事です。
え?ギフトがなくなったんじゃないかって?
ええ、そうですよ。でもグランを始め元AIスタッフ達からすると、僕はずっと彼らの中でオーナーなんですって。嬉しいじゃないですか。
まあでも、グランが黙って生命の泉の水を飲んだ理由を聞いて、僕は叫びましたけどね。
リセット機能を見つけていたそうですよ、グラン達。
「リセットって……えええ‼︎じゃあ僕のスキルとして戻るどころか、また一からやり直しするつもりだったんですか⁉︎」
「今のオーナーならば、すぐに建て直しできると判断しておりましたので」
僕は頭を抱えてしまいました。そう……1番忘れちゃいけない事を忘れていたんですよ。
「……そうでした。……グラン達は、どこまでも僕優先の考えでしたね……」
しかも彼らはもう一つ見つけていたんですよ!ギフト継承機能!あるなら言って下さいよ!って言ったらなんて言ったと思います?
「オーナーご自身が答えを見つけるべきだと判断致しました」
まぁ、確かに僕の覚悟は必要でしたけど……!
そんなグランは、あの時即座に生命の泉を分析。結果、僕との魔力パスが消えても魔素集積機能が加わり、僕の身体に負担をかける事なく運営が出来ると判明した上で飲んだんですって。
おかげで今やホテル無双状態です。魔素は無尽蔵に集まってきますから、増設や設置のスピードまで早いんですよ。スタッフ達も更にバージョンアップしてますし。
………別にいじけてないですよ?
ほんのちょっと悔しいだけですから。
え?みんなバージョンアップしてどうなったのかって?ああ、気になりますよね。まずはグランから行きましょうか。
グランはもちろんホテルがバージョンアップ!亜空間ホテルのチェーン店が他の国のターミナルに設置出来るようになったんです。利便性が上がりましたよねぇ。
次にキイは、本という本なら仕入れる事ができるようになっています。勿論ゲームも最新式ですよ。本は電子化もされてますから、持ち歩く必要もなくなりましたし。
ビニーは、コンビニってなんでしょうって思う位大きく種類も豊富になりましたね。武器から防具、まさかのホームセンター用品まで揃ってます。そして亜空間拳闘術の流派は弟子急増中。ええ、見事な肉体の方が集まっていて暑苦しい……いえ、皆さん熱心で何よりです。
ファイは、情報産業の先駆けですね。世界中どこにいても通信可能になったんですよ。それに番組制作や映画制作にまで手を出しています。タブレット端末、携帯で視聴は当たり前。ステータス画面で見る事も可能にしたんですから。異世界ならではです。
そして我がホテル自慢のシェフ達。ティモ、フランツ、ティモールも弟子が急増中。他の国からも弟子入り志願者がいるくらいです。そして最近は各町にチェーン店もできてきましたね。よく味のチェックに来店する3人の姿を目にします。
レンは、各国にレンタカーショップを設置。時代は馬車からいきなり車の時代になりました。それもこれも土魔法のおかげですけどね。道路が整備されて、格段に移動が楽になりました。あ、懐かしいスレイプニル馬車も未だ需要はありますよ!アレはアレで良いですからねぇ。
フィットも更に大きく、設備が整ってきました。フィットネスクラブ会員が各国にいますし。最近はフィットネスマシーンの販売も始めたそうです。王族や貴族に需要があるんですって。
アルコは、我がホテルの軍事面でも大活躍。更に最近ドリームホテル天空宮殿《碧》が加わりましたからね。陸は「風の痕跡への誘い」、海は「海原への誘い」、空は「スカイメイト」が加わりどこから攻められても対応出来ます。……アルコ、世界旅行代理店ですよね?って最近よく思います。
ニックとヤク、リョウのところにも留学生が沢山きてますよ。もはやバージョンアップにより、治せない病気はありません。流石に老衰は治せませんけど。というより、敢えてしていないんでしょうね。あの3人、僕と同じ考えでしょうし。
あ、ジュニアですけど、各ホテルのBAR担当になっていますよ。勿論コンシェルジュの育成に精を出してますし。最近は町の酒場のマスターも押し寄せてきてますねぇ。コンシェルジュマスターは大変そうです。本人イキイキしてますけど。
スパリゾートは各階が大幅にグレードアップしましたねぇ。琴の癒し温泉は効能温泉が一挙に増えましたし、フティのラフティングは更に冒険度(危険度)が上がり、よりエキサイティングになりましたし。
でも1番大きくなったのは美の追求師ティティでしょう。王族から一般の女性や男性向けに施設を展開。ウチの洋裁部門と併せてファッション界を牽引。キイも巻き込んで異世界と現代日本のファッションが統合されましたし。僕もよく実験体にされてます。ええ、それはもう拘束時間が長いったら……
インフォメーション8人姉妹と、宅配センターの好青年5人組はいずれも業務拡張。各ホテルやターミナルのインフォメーションを、一人で回せる様に性能が上がったり、流通はもはや国から国へと可能になっています。
流通と運搬に関して外せないのはジーグでしょうねぇ。グランデAIR設置は国の経済を一変させますから。そして旅客機と施設は更に改良、増設されましたし。利便性は大幅にアップですよ!
とまぁ、ホテルの優秀なスタッフ達や増員される人達のおかげで、僕がやれる事が更に無くなりまして。今、何をやっているのかと言えば……
「シュバルツ様、デノンさん。おはよう御座います」
休憩所で待っていたシュバルツ様とデノンさんとまずは合流です。軽く挨拶を交わし、グランやキイも含めて5人で向かうはターミナル。あ、ライ君達とはホテルで分かれていますよ。
第一ターミナルは、もはや一つの街と言っても良いぐらいの大きさに変化しました。そこを行き交う大勢の人々。異世界特有の人種で溢れています。
以前と違うのは、カディル人を誰も差別しない事でしょう。ゲセナ人もオルガデュ人も勿論エルセラ人も、みんなが対等に商売や仕事をしています。そうそう、クエンゼン人も最近入って来てますよ。でもまだ一部ですけどね。
「人が増えましたねぇ」
「今やここが経済の中心を担ってますから」
「珍しいもん良く見かける様になったよなぁ」
最近のターミナルの様子を呟く僕。その言葉に頷くシュバルツ様とデノンさん。グラン達も嬉しそうです。
「……でもまだまだ珍しいものは増えますからね!」
ふんっと気合いを入れる僕の様子に、笑うシュバルツ様。
「ふふっ、今日は海に囲まれたアースメント国でしたね」
「トシヤの好きな海の幸が豊富な国か」
「そうなんです!楽しみですよねぇ」
「お前、腹減ってるだけじゃねぇ?」
「ならば急ぎ搭乗してしまいましょう。ジーグの機内食もティモ監修のものが提供されるみたいですし」
「だな」
デノンさんもシュバルツ様も、僕を良く理解してますからねぇ。有り難いものです。
そして、皆さんわかりました?
僕らはグランデ使節団として動いているんです!
シュバルツ様は宰相の後継を見つけてこちらに戻ってきましたし、デノンさんは主に僕らの護衛がメインになっています。まぁ、護衛はグランやキイが居れば大丈夫なんですけどね。
こうやって、僕は仕事として異世界をのんびり探索できるんですよ。毎日が刺激的で楽しいったらありません!
「さあ!今日も楽しんで行きましょう!」
****
………我がオーナーの活躍は生涯止まる事はございませんでしたね。私、グランも共に旅をさせて頂き、誠に光栄でございました。
一つオーナーについて補足しておきましょう。オーナーはこの数年後にご結婚されております。相手はどなただと思われますか?
木陰の宿のエル様にございます。オーナーの名誉の為一言申し上げますと、年齢よりもエル様だからご好意をお持ちになったそうでございます。常に寄り添い仲の良いご夫婦でした。
そして亜空間グランデホテルは、良き後継にも恵まれて現在も拡大中でございます。
いずれ貴方様の国にも亜空間グランデホテルが開業致します。
その際は、我が亜空間グランデホテルスタッフ一同、心を込めてお出迎え致しましょう。
「「「「「ようこそ!亜空間グランデホテルへ!」」」」」
アクセスありがとうございます!そして最後までお読み頂きありがとうございました!これにて亜空間ホテルは完結となります。番外編ももしかしたら追加するかもしれませんが、とりあえず書き切りました!本当にありがとうございました♪
12月より新作を投稿致します。宜しければこちらもアクセスしてみて下さいませ!