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地底湖への誘いの扉にて

 『ようこそ!地底湖への誘いの扉へ!この扉では母なる大地、エルーシアの内部の秘密に迫ります!未知の世界への旅の同行者の皆様!まずは座席にお座りの上出発までお待ち下さいませ!」


 扉を開けるとアルコの声に迎えられる僕達。


 室内は上部がドーム型のガラス張りになっていて、一人用の席が6席、三角形並びの配置になっていました。そして全体が雫を横にした様なフォルムの不思議な作り。それでいて圧迫感のない亜空間仕様だから、どんな大柄な人も乗れそうな感じでしたね。


 ワクワク顔のシュバルツ様を先頭に、それぞれ座りシートベルトをつけます。すると室内の灯りが消え、足元を照らす光へと変わりアルコのアナウンスが流れます。


 『ご乗船ありがとうございます。当船は地底探索船トゥルースでございます。探索時間は約二刻。エルーシア最深部まで皆さんをお連れします。それでは出航致します!』


 ビーーーと言う合図と共に、船体が地面に沈んで行きます。


 全面のガラスがモニター代わりにもなり、正面に図が現れました。現在の進行状況をわかりやすく図解してくれているようです。おかげで、どの位潜っているのかわかりやすくて助かりますねぇ。


 しばらくするとアルコのアナウンスが流れます。


 『まず皆様をお連れするのは、長い年月をかけて作られた自然の造形美、魔結晶の鍾乳洞です』


 暗い土の中を移動して足元から明るくなって来たと思っていたら、パアッと光輝く空間にトゥルースは到着します。


 そこは虹色に輝く純度の高い魔結晶の空間。上部のパイプ状の魔結晶から今も落ち続ける液体化した魔結晶が地面に落ち、地面に固形化したタケノコ状の魔結晶が無数に形作られています。


 トゥルース号はしばらく鍾乳洞の中を横移動し、様々な形の魔結晶を紹介していきます。面白い事に動物の形をした魔結晶もあったんですよ。不思議ですねぇ。


 そんな魔結晶ゾーンは角度によって色合いを変え、僕らを楽しませてくれます。前方に座るシュバルツ様は嬉しそうにあちこちを見て楽しんでいますね。


 うんうん、掴みはいい感じです。


 魔結晶ゾーンの最終地点は、湖と化した魔結晶湖です。そこには、なんと桃色の生き物がいるじゃないですか。


 「ほぅ。ウィルーバーがこんなにも」


 流石シュバルツ様、この生物を知っていたんですね。姿は地球でいったらカモノハシってところですね。尻尾がすっごい長いですけど。食物は魔結晶から生えている魔苔なんですって。大人しいですが、これも魔物なんです。


 まあ、普通の生物はここで生きられないでしょうからねぇ。


 そんなウィルーバー達を避けつつ、トゥルース号は魔結晶湖へ進みます。


 『では潜水開始します。しばらく魔結晶湖の内部をお楽しみくださ……ブブッ!』


 優美な景色を堪能していると、アルコのアナウンスが途中で途切れます。僕とシュバルツ様は演出だと思って落ち着いていたら、後ろに乗っていたエアとグランがガタっと動き出すじゃないですか。


 「どうしました?二人共?」

 「オーナー、すみません。これは異常です。確認の為、アルコの端末に問い合わせ中です。少々お待ちくださいませ」


 グランが僕達に説明をし、エアが目を閉じています。どうやらエアが確認中なのでしょう。しかし、その間も急速に地中に潜行していくトゥルース号。


 途中建物が見えたりしたのですが、それも一瞬で通りすぎ依然変わらぬ速度で地面に沈んで行きます。船内は亜空間の保護があるので揺れはしませんが、音はガタガタと聞こえてきます。


 うーむ、壊れはしないでしょうけど……


 「オーナー、これはどこかに引っ張られている、そんな感じがしますね」


 シュバルツ様が振り返って、僕も考えていた事を話し出します。僕も頷き返すと、後ろからエアがアルコからの情報を教えてくれます。


 「確認が取れました。この現象はアルコも予想外の現象だと伝えています。本来の通常コースであれば、古代ドワーフ族が作り上げた地底都市ノーマンの探索、そして水竜が眠る地底湖スウィーブ湖にて水竜との邂逅を予定していたそうです。そしてアルコの推測によれば、現在向かっているのはどうやらエルーシアのコアと呼ばれる中心部だそうです」


 なんと!異常事態発生ですか!しかもこの地の中心部に向かっているとは!と、僕が驚いていると……


 「……もしかしなくても、そこは生命の泉があるところかい?」


 何かを考えていたシュバルツ様が、エアに問い尋ねます。


 ん?シュバルツ様何か知っているんですか?


 バッと振り向く僕にシュバルツ様が教えて下さいます。


 「エルフ族には古い言い伝えがありましてね。エルーシアのコアまで伸びる世界樹の根が存在すると言われているんです。その根本には、生命を司る泉があると伝えられています。ですが、そこは地中深くだれも到達出来ない場所だって聞いていたんですが……」


 ……成る程。もしかして地底湖への誘いを見た時、シュバルツ様はそれを確かめたいと思っていたんでしょうかね。やっぱり言い伝えって気になりますし。


 すると、ズズン……!と音がして、どうやらトゥルース号が止まったみたいです。


 外の景色を確認すると、外は淡いピンクとオレンジと言う暖色系の色合いの空間になっていました。

 

 なんとなく母体の中のような感じを受けましたね。


 そしてその中心部には木の根で囲われた泉があります。その泉は湧き出し続けているのか、泉から地面に流れ出しています。


 「……ここは……懐かしい感じが致します……」


 それを言ったのはグラン。エアもその隣で同意していますね。


 グラン達が懐かしい?

 もしかして僕のスキルもここで生まれたのでしょうか?


 そう考えていたら、突然僕の目の前にステータスボードが現れます。


 「うわっ!なんです⁉︎………称号が点滅していますね……?」


 僕の称号の「異世界からの来訪者」が点滅していたので、タップしてみると……


 《異世界からの来訪者》

 ーーーーーーーーーーー

 地球からこの世界の創造神によって転移された者の称号。この地「エルーシア」の魔素調整の為に呼ばれた為、神の慈愛故強力なギフトを授かり、またその身は状態異常無効の身となる。帰還不可。創造神の配慮により、生命の泉へと呼び入れられた。


 《生命の泉》

 ーーーーーーーーーーーー

 全てのものに永遠を与える泉。

 ーーーーーーーーーーーー


 うえっ!ここに呼ばれたのは創造神様の配慮?しかしなんでまた……?


 そう思っていたら、僕のステータスを見れるグランが話出します。


 「……おそらくですが、オーナーのスキルはこの世界にとって必要なものに変わったのではないかと思われます。故にオーナー自身にこの泉の水を与えたいと考えたのではないでしょうか?」


 グランの言葉にエアは同意し、シュバルツ様は黙って僕を見つめてます。僕といえば……


 うーん、そんな重大な役目を僕に背負わせないでくださいよ……


 そんな思いでいっぱいだったのですが、一つ試してみたい事ができました。


 「……確認しますが、この空間に出ても問題はなさそうですか?」

 『あ!オーナー‼︎やっと繋がったぁ!アルコです!その場所はどうやら空気が存在していますし、人体に害を及ぼすものはなさそうですよ!むしろ清浄そのものです!』

 「おお、アルコナイスです!では、アルコ。僕らを外に出してもらえますか?」

 『はい!今入り口を開けますね』


 すると入り口のドアが開き、僕を先頭に四人でトゥルース号の外に出ます。


 外の空間は地面に木の根がびっしりと生え、その隙間に溢れでた水が流れています。空気は僕が吸った事のない位澄んでいて、身体中の毒素が抜ける感じがしました。


 「エア、コップを出してくれますか?」

 「はい、オーナー」


 エアからコップを受け取り、僕は生命の泉のもとに近づきます。泉の水をコップに汲み、グランの前に立つ僕。


 「グラン。僕が思うにここはおそらく君達の生まれた場所であり、僕の死後戻ってくる場所だったのかもしれません。僕にも寿命がありますからねぇ。


 それに、僕はいつも考えていました。多くの人が集まり、多くの人たちが僕の亜空間ホテルを生活の拠点とするたびに、僕に何かあったらどうなるのか、と。その答えは意外にも君達が実体化した事により判明しました。


 僕の魔力なくとも君達は動き、ホテルは運営していましたからね。僕はこの時から思っていたんです。


 僕がいなくても君達が居ればいい、と。


 だからこそ、グランにお願いです。……んー、やっぱりお願いじゃ弱いですねぇ。僕からの命令です!グラン、この水を飲み干して下さい」


 僕はグランの前にコップを差し出します。僕の考えがあっていれば、グランが飲めば亜空間ホテル全体に影響が及ぶはずです。そして僕との魔力パスが途切れても存続できる筈。


 沈黙がしばらく流れました。


 グランが僕をジッと見つめます。そして僕の本気の思いを汲み取ってくれたのでしょう。僕の手からコップを受け取り、それを飲み干してくれました。


 グランが生命の水を飲み干した時、グランもエアも身体が光出します。


 そしてはっきりわかりました。


 僕と亜空間ホテルが分かたれた事が……

アクセスありがとうございます!

明日最終回です!

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