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新しい扉を開きますよ

 今日は、久しぶりになーんにも予定が無い日なんです。ですから、朝もライ君リルちゃんと一緒にグリムを見て、ゆっくり朝食を食べて、今は休憩所でコーヒータイム。


 ライ君リルちゃんはお勉強の時間という事で、キイがお世話に行っています。そして僕の側にはグランが居ます。もうね、グランが朝から晩まで僕に付き添ってくれているんです。一方で、ホテル運営をしっかりやりながら。ええ、頭が上がりません。


 「オーナー、おはようございます」

 「おや、シュバルツ様とエア。おはようございます」


 起きたてのシュバルツ様とエアがこちらに歩いて来ます。実は、現在エアをシュバルツ様に貸出中なんです。この間のセーガル国との会合で、エアの有能さに助けられたシュバルツ様。僕にわざわざ頼み込んできましたからね。


 僕としてはグランが常に居ますし大丈夫ですよって言ったら、エアがショックを受けてましたねぇ。それを見てシュバルツ様は一時だけですよ、って苦笑いしてましたけど。


 そう、何かにつけて実体化したAI達が僕の周りに集ろうとするんです。全員集まって来たらそれはそれで大変ですからね。今は交代制で集まるようになったのですが、グランだけはずっと一緒です。


 実体化したAI達の中で、重要な位置を占めるのは実はグランなんですって。エアはグランの次ですかね。僕エアだとばかり思っていましたからねぇ、聞いた時は驚きました。どうりでグランの言葉には逆らわないはずです。


 「オーナー?また考えごとですか?」

 「いえいえ、シュバルツ様こそ今日はどうしました?」

 「ええ、ライルに働きすぎだと仕事を奪われましてね。それでこちらに来たんですが、最近はホテルでも仕事が無い状態なんですね」


 これまた苦笑しながら話すシュバルツ様。仕事中毒ですねぇ。僕とは大違いです。でも、思わずああ……って思いました。


 有能なグラン達が実体化した事により、それぞれがバージョンアップされて更に有能になったんですよねぇ。それに加えて最近になって増えて来たホテル運営スタッフ。


 エルセラ国内はもとより、カディル人や元ゲセナ人からも集まってくるんです。どうやら今うちのホテルが、王宮を抜いて憧れの職場になっているそうです。今でも求人かけて無いのに、多くの人が押しかけてくるんですよ。大概、うちのスタッフ達に上手く断られていますけどね。


 とまぁ働き手に困っていない我がグランデホテル。巡回ぐらいはできそうですけど……


 シュバルツ様は働きすぎですからね!ここは一つ、僕が労ってあげましょう!


 「シュバルツ様、なら僕に付き合ってくれませんか?」

 「ええ、それは勿論。ですが、どこに行くんです?」

 「アルコの所ですよ」

 「ああ、アルコも久しぶりです。良いですね」


 ニコニコ顔のシュバルツ様を連れて、僕達はアルコへと移動をします。勿論グランとエアも一緒ですよ。


 え?専属護衛はどうしたのかって?それはですね……


 「そういえば、テラがディゼラのダンジョンの最高到達点を突破したそうですね」

 「あ、シュバルツ様もご存じでしたか。56階層でしたっけ?凄いですよねぇ」

 「ええ。この間、セイロンが先を越されたとここで騒いでいましたから」

 「あー。セイロンももう少しで追いつくって言っていたのが、また離されましたからね。でも、追いついてやるって気合い入れ直してましたよ」

 「ふふっ、彼ららしいですね。そういえば、クライムはパーティーを解散してここに就職したんですよね」

 「そうなんです!既に貴重な戦力ですよ!」


 クライムの決定も驚きますよね!そもそもグラン達が実体化した事により、専属護衛の必要性が無くなってしまったんですよ。うちのスタッフ皆能力持ちですし、いつも僕の側に誰かが必ず居ますからね。それで話しあった結果、テラとセイロンは専属護衛を辞めて、ここを拠点としながら冒険者を続ける事にしたそうです。


 ここを離れてしまうかもと心配していた僕に、リーダーのボルクさんとゼノさんは……


 「俺達にとって、もうここはホームだ。離れるなんて選択肢はないさ」

 

 珍しく笑顔のボルクさんはそう言って僕の頭に手を乗せ、ゼノさんは僕の背中をバシバシ叩きながら「頼まれたって出て行かねえよ!」って嬉しい言葉を言ってくれましたからねぇ。僕も一安心です。


 で、クライムメンバーはどうしたかというと……


 「ティアはジュニアのBARで働いているそうですね」

 「そうなんです!カクテル作るのが凄く上手いんです!既に常連さんもついているんですよ!」


 ティアさんは以前酒場で勤めていた経験から、ジュニアに直接交渉しに行きましたからね。ジュニアの試験にあっさり合格し、即採用された実力の持ち主です。


 「それはレイナも心配ですね」

 「大丈夫ですよ。レイナさんの中には大事な命が宿ってますし、ティアさんがレイナさんの他に目を向ける事はありませんからね」

 「今回の解散の要因の一つでしたね。そのレイナはGreen Gardenのウェイトレスでしたか?」

 「そうなんです……僕は安静にしていて欲しいんですけど。当の本人は黙っているのは性に合わないって言ってるんです……」


 もう一つ嬉しいニュースです!ティアさんとレイナさん両思いになってたんですよ!そして最近になって発覚したレイナさんの妊娠。ちょっと怪我をしたレイナさんに慌てたティアさんが、レイナさんを横抱きにしてニックのもと運び込んだ時にわかったそうです。


 僕は思いました。ティアさん手が早い……と。


 ま、まぁ、当事者のレイナさんはそんなのは気にした様子もなく、元気そのもの。よく食べ、良く動いています。ティアさん、様子を見に来ては僕と一緒にオロオロしてますよ。二人共レイナさんに見つかってすぐ追い出されますけどね。僕にとっても大事な仲間ですからね。無理はしないで欲しいものです。


 そうそう!キイのところにはもう一人居ます。


 「はいはーい!いらっしゃいませー!お、ゼノ来たか!よっしゃ対戦しよーぜ!」


 ええ、ゲーム大好きザックさんです。ちょっと暇を見つけてはゲームに逃げ、他のスタッフによって連れ戻されている姿をよく見かけます。でも、仕事に関しては覚えが早く、やる時は丁寧にやりますからね。憎めないムードメーカーです。

 

 「そういえば、ガレムは意外な選択をしましたね」

 「僕からすれば納得ですよ。セクトの街に家を買って酒蔵を作るくらい、酒作りにのめり込んでいましたからね。グラレージュの親父さんと共同経営者になりながら、お酒の開発に勤しむとか。自分達の酒を作るんだって、それはもう熱心に取り組んでいますよ」

 「セクトの街が更に盛り上がる、とサムも喜んでいましたね」

 「サムさんらしいですねぇ」


 ガレムさんは、ヒロシの酒にかなり感化されたんですね。もともとの酒好きも相まって、解散の話しが出る前から動き出していたそうです。テラのジェイクさんもよく顔出しに行っているようですよ。グランデ酒連盟の輪も凄い勢いで広がっています。……酒好き多いですからね。

 

 お、アルコにつきましたね。


 そういえば、最近になってグランデツーリストアルコまでの宇宙空間が、「天空回廊」って名前になったんです。それを命名したのが今受付にいる職員のヤレアハさん。あ、ヤレアハさんに関しては星詠みの唄の回を参照して下さいね。


 「やあ、ヤレアハさん。アルコ今どこに居ます?」

 「トシヤオーナー!いらっしゃいませ!アルコさんは古代文明への誘いの扉でお仕事中です」

 「張り切ってますねぇ、アルコも」


 アルコは実体化して以来、ようやく本来の業務(添乗員)につけると張り切っています。ん?今日のお客様はジウ様ご一家ですか。皆さん覚えていますか?セクトの街を含めたこの辺り一帯の領主様ですよ。今回は気分転換にいらっしゃったようですね。


 あ、そうするとどうしましょうかね……


 「トシヤオーナー、アルコさんより例の扉は設置済みですと伝言がございます。本日はトシヤオーナーの貸切となっておりますよ」


 僕の表情を読み取って、笑顔で教えてくれるヤレアハさん。そして流石アルコ!


 「おお!ヤレアハさんありがとうございます!さぁさぁ、シュバルツ様早速行きましょう!」

 「ええ?オーナー?新しい扉ですか?」

 「行けばわかりますって!」


 珍しく狼狽えるシュバルツ様の背を押し、奥へと進む僕。クスクス笑いながらエアとグランもついて来ます。押し問答しながら目的の扉の前に来た時、シュバルツ様が目にした扉の名前は……


 「『地底湖への誘い』…………オーナー、覚えていたのですね」

 「勿論です!シュバルツ様が行きたいと言っていた扉でしたからね!1番に見せるのはシュバルツ様って決めていたら、なんでか1番最後になりましたけど」


 そうなんですよねぇ。結構最初に出て来た扉だったんですが、忘れていたというか、タイミングが合わなかったというか。


 それでもようやく訪れた機会です。

 僕は扉に手をかけながらシュバルツ様を促します。


 「さ、シュバルツ様行きましょう!念願の地底湖への旅に!」

アクセスありがとうございます!私の中では完結まで後2回!走り切ります!

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