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疎開先へのご案内

 「さぁ、いらっしゃい!いらっしゃい!今日はクオーク産のフライフィッシュが入ったよ!この季節ならブルックス産のレスカを絞って食べるのが通ってもんだ!なんなら刺身でも食べられる新鮮さ!ターミナル商店ならではの鮮度だよ!奥さんどうだい?」


 「こちらはドルナウから採れたての新鮮な野菜さ!馴染みのない人は食べ方を教えるぞ!炒めて美味しい木の根の様なボーゴや、煮て良し、スープにして良し、サラダに良しのジャワイトディッシュ!もちろんガイモは今が旬!どうだい、そこの料理長さん!買って行かないかい?」


 「こっちは辺境フィフスから届いたオークのベーコンさ!オーク撲滅月間のフィフスの街は今オーク肉が安いぜ!今日もAランクパーティがガッポリ仕入れてきてくれたんだ!オークベーコンとオークウィンナー、更に更にオーク肉塊1キロもつけて半額だぁ!ターミナル商店街だけの特価だよ!さぁさぁ買った買った!」


 「こちらはセクト名物オーク肉の串焼きだ!今から帰っても作るのが大変な奥さんの為に、味付け済みの焼く前の串肉もあるぞ!更にボア肉入りのハンバーグの種も新発売だ!パンに挟むも良し、煮込んでも良し、勿論焼きは最高さ!今日の夕飯に困ったらヴァントの店がサポートするぜ!」


 「ホワイトカウのミルクはいかがですかー!健康増進!栄養抜群!何より美食の街エヴァンス産のミルクです!もちろんホワイトカウから作られたバターやチーズも揃ってますよー!是非エヴァンスワインと共にどうぞー!」


 おおお……!いつの間にかこんなにターミナル商店が活性化してますよ!人の波が凄いです。しかもヴァントさん率いるセクト屋台の皆さんの発展ぶりも良いですね!屋台から店舗に何店も移動しているじゃないですか。スープ専門店にパン屋までありますし、木陰の宿からはカレーパンですか!ふむふむいい匂いが充満してます。


 因みに、奥が食品や食事所で、手前には各地の特産品のお店が配置されています。服や絨毯、家具まで売っていて、目移りしちゃいますね。おお!ウチの裁縫部門に錬金部門も頑張ってます。


 「なんと……‼︎カディル人がこんなにいるとは……!」


 連れてきたシルディア侯は、周りの様子にさっきから驚きっぱなしです。シルディア侯の二人の護衛の方達もキョロキョロして開いた口が塞がってませんし。


 おや、オルガデュ国密偵のボブさんどうしました?ああ、既にオルガデュ国から来ていた、顔馴染みの騎士さん達を見つけたんですね。うんうん、ここのオフィスを視察しに来てたんですか。ハイハイ、サムさん宜しくお願いしますよ。


 「なんだ……⁉︎一体この空間は?なぜこんなにも商品が多彩なんだ!」


 シルディア侯は唖然としたまま呟いていますねぇ。でもまだターミナル商店見せただけですけど……


 「シルディア侯、ここは僕が管理するほんの一角です。ここからはまずカディル人の疎開先をお見せしますよ」

 「何⁉︎カディル人だけやはり別なのか?」


 おや?シルディア侯何か勘違いしていますね。少し嫌悪の表情を浮かべています。……ゲセナ国の貴族の中にも、正常な考えをする方はいるんですねぇ。最もそうでなければ亜空間に入れませんけどね。


 まぁまぁとシルディア侯を宥めながら案内したのは、ターミナルの簡易宿泊所です。ええ、話を聞いて増設していたんですよ。余裕で三百人は入れるだけですね。ん?人数は聞いていたのかって?いやいや、エアが大体このくらいあれば大丈夫でしょうってアドバイスしてくれたんです。


 「オーナー!いらっしゃいませ!そちらが新しい見学希望者ですか?」

 「やぁイエニタさん、お久しぶりです。受け入れ状況はどうですか?」

 

 いやぁ、懐かしい方が迎えてくれましたよ。ドルナウ店主会紅一点の宿屋代表イエニタさん。木陰の宿の奥さんカルナさんと仲良しで、エアからよく漫画喫茶で二人、お茶を飲んでいる姿が報告されています。


 「いつでも受け入れ大丈夫です。受け入れ先の部屋は勿論、各棟に二人の世話役をつけています。仕事先はターミナル内ではいくらでもありますし、グランさんからドリームホテルでの就職希望者を頼まれてるぐらいですしね」

 「うんうん、さっすがイエニタさん!助かります。ドリームホテルでの助っ人は必須ですからね!」


 皆さん気付きました?そうなんです!ドリームホテル第一弾ツリーハウスタイプ設置しましたよ!いやぁ、ツリーハウスタイプとはいえホテルですからね。綺麗でしたよ!あ、後ほどきっちり紹介しますからお待ちくださいね。


 「待て待て待て!驚きすぎて何が何やらわからん!一度整理する時間をくれ!」


 シルディア侯も流石にここまでは予想していなかったのか、僕に休憩を提案して来ましたね。うん、ならば会議室に移動しましょうか。


 ボブさんも合流して、何やら疲れているシルディア侯と騎士さん達をエグゼクティブクラスの会議室へお連れします。ここはボブさんも初めてでしたっけ?テーブルに人数分の紅茶が勝手に現れたのにびっくりしてました。初めては驚きますからね、慣れてください。


 「……はぁ、ボブよ。お前もどうやらこの男の力全てを知っているわけではなさそうだな……」

 「そりゃそうですよ。俺だって最近来たばかりですって……」


 机に肘をついて項垂れているシルディア侯とボブさん。後ろに控えている騎士さん達も、心なしかげっそりしているような……なぜ?


 コンコンコン……


 ん?もしかしてきましたか……?


 「どうぞ」と声を掛けると入ってきたのは、予想通りシュバルツ様とデノンさん。今日ゲセナ国から代表をお連れするかも、とは言っていましたがピンポイントで良い時間に来るのは流石ですねぇ。え?エアがグランに連絡していたんですか。うーん、いつの間に。


 「あ、シルディア侯ご紹介します。エルセラ国宰相のシュバルツ様と護衛のデノンさんです」

 「エルセラ国宰相は代理で、本職はグランデホテル総合管理職代表のシュバルツと申します」

 「宜しく、デノンだ」


 シュバルツ様とデノンさんの挨拶に、驚いたのはシルディア侯。


 「待て!ここはエルセラ国なのか⁉︎いや、それよりも戦地となる場所ではないか!ボブ!どうなっている⁉︎」


 シルディア侯と騎士さん達も敵意をむき出しにしてきましたからねぇ。当然いち早く動き出したのは……


 「は⁉︎トシヤさん、シルディア侯達は?」


 いきなり居なくなったシルディア侯と騎士さん達にボブさんがキョロキョロしています。うーむ……グラン対処が早いですねぇ。で、グラン?どこにシルディア侯達を出したんです?セクトの街?じゃあ、迎えに行きましょうか。


 「あ、オーナー。そこは私に任せて下さいますか?デノン、ついてきて下さい」


 会議室をサッと出て行くシュバルツ様とデノンさん。勿論ボブさんも連れて行くのを忘れません。


 シュバルツ様達なら大丈夫ですかね。と、僕は呑気にお茶を飲み待つ事1時間。


 おかしいですねぇ。セクトの街なら、出張扉ですぐ戻って来れるハズですけど……


 不意にガチャっと扉が開き、「トシヤ、待たせて悪かった」とデノンさんが入ってきます。その後にシュバルツ様と笑顔で話をしながら入ってきたシルディア侯。おや、表情が柔らかくなっていますよ。シュバルツ様の外交手腕はすごいですねぇ。


 改めて全員席に着き直し、まず話を切り出してきたのはシルディア侯。


 「まずはトシヤ殿。先程までの我らの非礼を詫びよう。すまなかった」


 シルディア侯がガタッと立ち上がり、後ろの騎士さん達も一緒に頭を下げるじゃないですか。……いや、トシヤ殿って。態度がガラっと変わっています。思わずシュバルツ様を見ると……


 「当然ですよ。誰に敵意を向けていたのか、ちょっと教えただけです」


 にっこり笑いながら言うシュバルツ様に、デノンさんは苦笑い。ボソっと「氷のシュバルツが説明すりゃ、ああなるわな」って教えてくれましたけど。ん?なんです、ボブさん?側にいるだけだったのに震えが止まらなかった?……あー、うん。まぁ、紅茶であったまって下さい。


 「シルディア侯、頭を上げて下さい。大丈夫ですから」

 「すまない……感謝する」


 僕が許しを与えると、ようやく顔を上げて座り直したシルディア侯。何とも言えない沈黙が流れてきたので、僕は待っている間にグランやエアに頼んで作ってもらった疎開先の簡易宿泊所の間取りを映像で紹介します。


 「トシヤ殿に重ねて感謝を。この亜空間の安全は我が身で実証されている故、安心して避難できる。だが、我らの仲間を避難させる為に、トシヤ殿に動いていただくのはいささか問題ではなかろうか?それに、ゲセナ国はエルセラ国に向けてもう動き出しているが……」

 「ご安心下さい。オーナーには後大人しくしてもらいますよ。それに、打つ手はいくらでもありますから」


 映像を見終わったシルディア侯の心配もよそに、キッパリ言い切るシュバルツ様。うーん……この人の考えている事は本当にわからないのですよ。でも僕にも先手を打って来るとは……!くうっ、動きたかったのに!


 「そうか……いや、すまん。ならばこちらはこちらできっちり事を進めよう。あと、皆の移動はいつでも出来るように常に話してある。いつ決行しても良いようにな」


 おお!流石に頼んでくるだけあって準備は整っているんですね!ならば問題はありません!


 「では早速、出発式に便乗するのはいかがでしょう?」

 「は?明日か?」

 「そうですよ。で、勿論全員連れていきますよ?多分ですけど、本当はもっと人数いるんじゃないですか?」

 「……そこも気づくのか……ああ、そうだ。全員で500人はいるだろう。が、しかし……」

 「うんうん、そうでしょう!そうでしょう!大丈夫、安心してください!全員お引き受けしますし、僕が動かなくても、移動も一回で済みますよ!」


 僕の発言にまたもあんぐりと口を開けて驚くシルディア侯。騎士達もざわついています。でもまぁ、僕のやりたい事を理解しているシュバルツ様は優雅に紅茶を飲んでいますし、デノンさんはニヤっと笑ってますしね。


 僕が考えている手段には男の子が大好きなアレが出てきます。

 答え合わせは次回以降ですね!

アクセスありがとうございます!11/14より完結目指して、月曜日以外亜空間ホテルが毎日投稿になります!気合いで頑張りますので応援よろしくお願いします!

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