ゲセナ国の様子を見よう
「小麦また値段上がったの?」
「すまないね。国の命令だもの」
「まぁ、隣りのエルセラ国から奴隷が来たらまた改善されるだろうし、ちょっとの我慢かしらねぇ」
「ああ、奴隷なら使い捨てできるからね。奴らは私達の為に役立てるんだもの。今回は、迎えに行ってやる様なもんだし、感謝して働くだろうよ」
………皆さん、僕は現在かなり腹が立っています……ん?ここはどこですって?ええ、ゲセナ国首都オルビアの街の商店街に来ています。この会話はかなりいい服を着ている奥様と商店の店主らしき人との会話を歩きながら耳にしたものです。
僕の隣りを歩くレイナさんは無の表情、ティアさんはポーカーフェイスを保ってますが手をさっきから握りしめています。後ろでは、ザックさんが街の人に飛び掛かろうとするのをガレムさんが抑えています。
ゲセナ国の富裕層の考えも、うちの国に来た商人さんと一緒って事ですかね……そういえば街の人もどうやら似た感じです。こーれは反政府といえど、反応はどうなんでしょう?不安になりますねぇ。
そう、僕達はまず他国から来た冒険者と商人して、ゲセナ国首都に潜入しています。え?入場する時の身分証明はどうしたかって?そんなもの無視ですよ。グランデAIRの入り口をひっそりとした路地裏につけましたからね。THE密入国です!
はい?そもそもオルガデュ国はどうしたかって?……そうですねぇ、じゃちょっと数日前の話に戻りましょうか。
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オルガデュ国のメンバーとの食事の際のシュバルツ様の言葉の通り、僕は頑張りましたよ!
オルガデュ国のメンバーを更に接待した後に、また送り届けて魔石を受け取り、グランドAIRの出張扉をオルガデュ国に設置したんです。設置してみてビックリ!グランデAIRの出張扉の入り口が自動ドアになっているんです。センサー付きらしくチケットがないと開かない仕組みになってましたね。
勿論搭乗チケット販売機も一緒に出て来ました。グランドAIRの出張扉はどうやら設置した場所しか行けないみたいです。なのでオルガデュ国側は、オルガデュ国←→グランデ第三ターミナルの一本のみ。金額は往復金貨10枚だそうですよ。
ところでオルガデュ国側はどこに設置したと思います?なんと、王宮の門の内側なんです!いやぁ、信頼されているのは嬉しいですが、大丈夫ですか?って思いましたね。セラム王によると、
「ん?亜空間を通ってこれる奴らしか使えないだろう?勿論我が国の指おりの騎士達にしっかり守らせるがな。使わせるのはこちらとしても限定させるし、管理をするのは王宮が便利だ」
……とても余裕の発言頂きました。まあ、僕としてもグランデAIRの出張扉の設置に関しては審査しますしね。シュバルツ様達を頷かせる国しか設置しません!……うーむ、どれだけあるでしょうかね?
とりあえず、オルガデュ国側は王宮上位陣と騎士さん達がしばらく利用するみたいです。その後選抜された商人さんに開放していくみたいですね。うんうん、皆さんまとめておいでませグランデホテルへ!
いやぁ、オルガデュ国側の反応も色々聞いてみたいものです。
さて国内の出張扉の方はどうなったのか?って思いますよね。勿論頑張りましたよー!今回は設置するだけして、後はエルセラ国営メンバーのサムさんとデノンさんに丸投げです。
しかし、ダンジョンのあるディゼラの街はもっとゆっくりしたかったですね。だってダンジョンですよ、ダンジョン!THEファンタジー!見て見たかったぁ。え?なんです、ゼノさん?腕試しに行ってくる?なんて羨ましい!お土産話待ってますからねー!
皆さん不思議に思いますでしょう。僕が我慢してまでなんでここ数日頑張ったのか……
「セラム、ゲセナ国反政府との次の話し合いはいつなんです?」
「ああ、確か先発隊の出発式の日の前日だな。その祭りの日の騒ぎに乗じて落ち合うと報告があったぞ。……おい、シュバルツ。その笑みはなんだ?」
はい、セラム王とシュバルツ様の会話から分かりますね?僕らも接触してみよう、と言う事になったんです。でも僕の参加にはシュバルツ様始め皆さんが最初は反対したんですけどね……頑張りましたよ僕!(粘ったとも言う)
いざとなったらオリジナルゲートですぐ帰る約束しましたし!数日前のオルガデュ国側諜報員と接触兼顔合わせに間に合わせて設置終わらせましたし!基本暇ですし!
「お前、自分の立場いい加減認識しろよ……」
まあ、デノンさんには呆れられましたけどね。気になるじゃないですか!それに状況知っていた方が、すぐ動けますしね。僕の秘密計画の一端です!シュバルツ様にはバレてますけど……
ま、まぁ、それはおいといて。オルガデュ国側の諜報員さん達へはセラム王から協力頂き、僕らは反政府軍に物資を供給する商人として紹介してもらったんです。僕、真っ当な商人ですし。
で、今はなにをしているかと言うと……
『……は……した?持って来たのか?』
『ああ。今向かって来ている。エターナル商会が来たら入れてやってくれ』
ふむ、ちゃんと接触できているみたいですね。
そう僕は諜報員さんに携帯電話を渡しているんです。僕はイヤホンをしながら通話していますし、あちらの方は通話したままこちらの音声は聞こえない様に設定して貰っています。
……そろそろですかね。
「ボブさんから呼び出し来ましたよ、レイナさん」
「よし、向かうか」
僕らは少し遅れて現地に到着する手筈になっていたんです。密会場所はどこかって?
「お待ちしておりました。エターナル商会の皆様でございますね。どうぞこちらへお越し下さいませ」
門番さんから案内されて玄関の扉が開いたら、迎えてくれたのは執事さん。うーん、セバスチャンって名前が似合いそうですねぇ。そんな感想を持つ僕とクライムメンバーは、執事さんの後をついて応接室に案内されます。
そう、なんとお屋敷が密会場所だったんですよ!いやぁ最初はスラムかと思っていたので驚きでした。
「旦那様。エターナル商会の皆様がお越し下さいました」
玄関から案内された奥の部屋に、ノックと共に執事さんが声をかけると「入れ」と声がします。扉を執事さんに開けてもらい中をみると、そこにいたのは立派な体格をした男性。ガレムさんより体格いいかもしれませんね……
「シルディア侯、改めてこちらがエターナル商会長トシヤでございます」
「お初にお目にかかります。私エターナル商会長トシヤと申します……」
「ああ、茶番はいい。まずは座ってくれ」
先に室内にいた諜報員のボブさんが僕を紹介し、僕も丁寧に挨拶しようとしたら、僕の挨拶を遮ってシルディア侯が座る様に促します。おや、折角親父さんに鍛えてもらったのに残念です。しかし相当切迫しているんでしょうねぇ。シルディア侯が切り出して来ます。
「時間がない。早速だが、トシヤ商会長。物資に関してはどうなっている?」
「はい、私がアイテムボックスに持っております」
いや、まぁ僕じゃなくてエアが持っているんですけどね。
「ふむ。相当な大きさのアイテムボックス持ちだな……うちに欲しいくらいだ。後程我が家の執事に渡し代金を受け取ってくれ。トシヤ商会長の協力に感謝する。……して、ボブよ。こちらの提案はどうなった?」
「そちらからの提案にもお答え出来る用意はしております。ただ何人程になる予定でしょう?」
「そうだな。保護してもらいたいのは、女子供年寄りを合わせて150人程だが……正直匿っているカディル人や奴隷を含めると人数が300人以上になる。……全員とは言わんが受け入れられるだろうか?」
真剣なシルディア侯の願いにボブさんが僕を見ます。あ、因みにボブさんは僕の正体を知ってますよ。僕ボブさんを早速ホテルに招待しましたから。
とまぁ余談は置いといて、ボブさんに僕が頷いて返事をします。受け入れは可能な人数ですね。
「そうか……ありがたい!オルガデュ国にはなんと礼をすれば良いか……!」
よっぽど心配していたんでしょう。シルディア侯が安堵の表情を見せています。貴族って表情出さないのが普通らしいですけど、この人はそう言った駆け引きはしない人みたいです。僕としてはそう言う人がいいですし。好印象ですね。
「シルディア侯、一つ誤解をしております。保護を受け入れてくださるのはこのトシヤ商会長です」
「は?国ではなく商会だと?……どう言う事だ?」
笑顔で様子を見ていたボブさんが冷静に訂正をすると、シルディア侯が表情を一変し、威圧しながら僕に聞いてきます。おお、さすがこの国の騎士団長。凄い迫力です。あ、クライムの皆さん大丈夫ですよ。そのままそのまま。さて、誤解を解きましょうかね。
「シルディア侯、ご理解を頂く為にお時間を少しいただけませんか?」
「……良いだろう。何をする気だ?」
「ご招待します。僕の商会が運営する避難先へ」
僕はオリジナルゲートを出し、シルディア侯の入館登録をエアに準備してもらいます。
「何を馬鹿な事を……」
威圧を止めないシルディア侯にボブさんが上手く取りなし、魔力登録を成功させます。ボブさんナイスフォローです!するといきなりオリジナルゲートが見えたシルディア侯がガタっと音を立てて立ち上がります。
「な‼︎なぜこんなところに扉が⁉︎」
「これが僕の能力です、シルディア侯」
「貴様の能力だと……⁉︎」
「はい。さ、百聞は一見にしかずですよ!さあ、ご案内いたします。僕の亜空間ホテルへ!」
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