オルガデュ国メンバーをおもてなししましょう 2
『皆様大変お待たせ致しました。エルセラ国に到着致しました。お降りの際はお忘れ物の無いようお気をつけ下さい。また機内にてお会いできます事を楽しみにしております。本日はご利用ありがとうございました』
あっという間に到着ですねぇ。まあ、僕のオリジナルゲートなら一瞬ですけど、これはみんなの足になるものですからこんな感じでしょう。
「いや、面白いものだ。移動がこんなに快適で楽しく時間が早く過ぎるとは思わなかったぞ」
満足気なのはセラム王です。乗っている間はとにかくシュバルツ様を質問攻めしてましたし、色々試していましたしね。ん?シュバルツ様苦笑しています。いやぁ、お疲れ様です。
「なんて面白い演劇でしょう。今後のファイの進展が気になって降りる準備が遅くなってしまいましたよ」
こちらは宰相ロイドさん。ハマりましたね。うちの国がイチオシのドラマに。ドラマってなんでこう気になるんでしょう。悔しいですけど作り手の思惑に乗ってしまうんですよね。ああ!サムさん駄目ですって、先を教えるのはマナー違反ですって。
「デノン様、これは飲んだ事が?」
「お、ギオンいいの見つけたな。これ飲みやすいしいいぞ」
うーん、騎士団長のギオンさん『月間ウィスキー〈初心者にもわかるウィスキーの飲み方特集〉』片手にデノンさんに確認しています。雑誌離しませんねぇ。もしかしてずっとデノンさんと酒談義していたんでしょうか。……ここには酒の種類がまだまだあるのを知ったら……うん、考えないようにしましょう。
ビルさんに書記のフェイさんは見てるだけでなんかほのぼのします。お土産の話ですか?ふふふふ、これは楽しみにしていて下さいね。ええ、シュバルツ様に見てもらいながら設置しましたとも!グランデショップ!僕も楽しみなんです。
クライムの皆さんと騎士の皆さんも和気あいあいと楽しそうです。ん?こちらは食べ物ですか?ふふふふふ、これも楽しみにしていて下さい。ビュッフェレストランottimo2号店がオープンしているはず!エアを通して予約しておきましたからね。これも楽しみです。
ああ、騎士さんなんです?ん?残念ながら今日はホテルの観光は無理なんですよ。グランデエアの扉を設置しないと利用が難しいですから、ちょっとお待ち下さいね。
そんな感じでワイワイと通路とゲートを通って第三ターミナルに戻ってきた僕達一行。一先ずオープンラウンジに座って貰って……って思ってたんですけど。
「うお!トシヤ!お前また新しい施設作っただろ!なんだこの広い土産物屋!」
「トシヤ君!これ出張扉を設置した街の特産品まであるよ!」
「ちょっとぉ!これうちのデザイナーチームの最新服じゃない。いつの間に用意したのよ」
ええと、デノンさんいきなりグランデショップに突撃しないで下さいよ。サムさん僕も見たいの我慢しているのに。あ、ティアさん目ざとい!僕も服まであるなんて思わなかったんですって。
「いやあ、これは嬉しい。もしや、できたばかりの施設ですな。ならば是非共に見て回りましょうぞ。サムさん」
「さっすがロイドさん話がわかるね!エルセラ国の良さを教えてあげるよ!」
ああ、ロイドさんまでサムさんを連れていっちゃいました。流石にセラム王がまだ動いていないから騎士団長や騎士達は我慢してますね。しかし意外です。セラム王が先に動き出すと思っていたんですが……
「ふふっ、オーナー。セラムが話があるようですよ」
ん?シュバルツ様?ああ、そうですね。セラム王におもてなししないといけません。ええっとコーヒーでも……
「ああ、トシヤ君飲み物はもういい。ちょっとシュバルツと3人で話そう。座ってくれるかい?」
セラム王に言われて、オープンラウンジの4人用テーブルの一席に座る、セラム王とシュバルツ様と僕。うん、第三ターミナルの椅子はふかふかで座り心地いいですね。とまぁ、斜めの感想を思っている僕の隣でセラム王がシュバルツ様に話かけます。
「シュバルツ、まさか手紙が本当だったとは……恐れ入ったよ。何よりトシヤ君。君の能力だ。能力の一端のこの乗り物を使えば様々な戦略が立てられる。我らの後方のエコノミー席だったか……兵士を積み込み奇襲作戦まで可能じゃないか。こんな物を見せられて、更に手紙でもあった海の防衛、亜空間という空間の防御の高さを考えると、敵対しようなんて考えるのも、取り込もうとする気力もなくなる」
「当然でしょう。オーナーの能力はオーナーだけの物です。我が国であってもたまたま在籍して頂いているようなものですから」
「シュバルツの言う通りだな。この力は君をとことん守る物だ。同時に敵対するならその力が鋭い刃になる。それはエルセラ国も同様だろう。だが、味方になるならその力はなんと頼もしいものだろう、と実感したよ。君とは協力体制を組んだ方が、国が発展するだろうな」
笑顔で僕にそう話すセラム王は何故かスッキリした表情です。その表情を見てセラム王にシュバルツ様が問いかけます。
「ふむ、ではセラム。ゲセナ国に対する共闘の件は了承とみていいのでしょうね」
「ああ。だがシュバルツ、私の一存では今のところ同意は出来ないのは知っているだろう?……まぁ、あの様子なら心配は要らないと思うが」
セラム王がサムさんの説明を聞いているロイドさんや、ビルさんの案内に一つ一つ驚く反応をするフェイさんの様子を見て微笑んでいます。
……そうでした。シュバルツ様は僕が思っている以上に動いてくださっていたんですね。ゲセナ国に対しての包囲網を短時間で作り出そうとしていたのですか……相変わらず動きが早いというかいつの間にというか。本当に有り難い存在ですねぇ。
とりあえず話がまとまったなら、更に好意的になって貰った方がいいですよね!
「セラム王も僕の自慢の施設ご覧になってみませんか?今日はお土産も奮発させて頂きますよ!」
「おお!いいかね!さっきから気になっていたんだ。ギオン!お前達もお土産を持って帰りたいだろう!自由に見て回ってこい!」
「なんと!王よ、それでは護衛がいなくなります!」
「馬鹿者。既にここはトシヤ君の能力内だ。愚かな事を考えたら排除されるらしいぞ。ここは誰でも一人の人として楽しめる場所らしいからな」
僕にウィンクしながらギオンさんに諭すセラム王。嬉しいですねぇ、亜空間の事を理解した上で、楽しんでくださるなんて。心の寛大な王なんですね。ライル王と同じ匂いがしますよ。うん、オルガデュ国もこの王なら大丈夫でしょうね。
「さぁさぁ、皆さんうちの特産品見ていって下さい!」
僕が皆さんをグランデショップに促すと、スッと動き出したのはシュバルツ様。
「仕方ない。セラム、行きますよ。オーナーの力が国を巻き込むとどうなるのかしっかり見ていって下さいね」
「おお、勿論だ。それでなくとも国交が盛んになる利益は計り知れんからな」
シュバルツ様の隣をこれまたワクワクした表情で歩き出すセラム王。うんうん、じっくり見ていって下さいね。
「おーい!ギオン!こっちこい!うちの自慢の酒が揃っているぞ!」
「なんと!デノン様本当ですか!今参ります!」
デノンさんやっぱり酒売り場にいたんですねぇ。……ああ、大変です。日本酒からまだ見た事のない酒まであるじゃないですか。もちろんエヴァンスのワインも取り揃えています。いやぁ、どうなっているんでしょうね。
「さあ、行こうぜぇ。俺達も」
「そうだな。美味い物も沢山あるからな。ほらガレムなんかもう一人連れて酒目掛けて向かって行ってるし、うちのティアは服しか目に入ってないからな。色々案内するにはザックと私でいいだろう」
ザックさんが遠慮する騎士さん二人の背中を押してグランデショップに入って行く隣を歩くレイナさん。騎士さん達の案内役を買って出てくれたみたいです。ガレムさんに至っては飛行機で隣だった騎士さんを捕まえて、うむを言わさずに酒売り場直行ですよ。ガレムさんらしいですねぇ。
しっかし、本当に広いんですよ。ゲートを出てすぐがグランデショップフロアなんです。面白いのが生鮮食品から加工品、勿論お酒やお菓子に衣料品まであるんです。寝具はホテルの寝具でしょうね。
何がすごいってテーマパークの扉のポップコーンや屋台のおやつ、大浴場の備品、ミニコンビニとも言えるコーナー。うわぁ!なぜに魔物素材まであるんです?アレ風の痕跡への誘いの扉の魔物達ですよ。
なんと!漫画本や雑誌コーナーまであります。ええと読めるんですかアレ?ん?手にとった瞬間にその人の言語に変化するって?エア、一体その現象どうなっているんです?亜空間ならでは?
……ええ、理屈で考えるのを放棄しましょう。
それより皆さん楽しんでいるようで何よりです。
「皆さーん!あまり試食食べすぎないようにして下さいねー!お昼は新しく出来たレストランで食べますからねー!」
僕の声に皆さんが野太い声で了承してくれます。全部見ちゃうと時間がなくなりますから、ほどほどにさせてもらいますよ。レストランも見たいですからね!
というか、僕も誰か案内したかったんですけどねぇ。
ま、次回に期待しますか。
アクセスありがとうございます♪