グランデエア開設ですよ 1
「はー……、朝風呂も良いものですねぇ」
「トシヤ、年寄り臭いぞ」
「あらぁ、良いじゃない。朝から肌がプルプルよお」
「まぁ結局俺らも楽しんでいるけどよ。なぁガレム?」
「酒が飲みたくなる」
いやぁ、今朝はスパリゾートの癒温泉にみんなで入りに来ましたよ。癒温泉の休憩所で僕がコーヒー牛乳で一杯やっていると、今日の護衛のクライムメンバーもお風呂上がりの一杯を一緒に飲んでくれています。あ、ガレムさんは不服そうですけどね。
でも朝だというのに癒温泉は大盛況ですね。商人さんがササッと入りにきたり、各街の人たちが楽しそうに話していたり、冒険者の皆さんもここを利用する様になって体調がいい、と話が聞こえてきます。勿論カディル人の皆さんの楽しそうな声も聞こえてきます。ここに馴染んできたんですねぇ。
「で、トシヤ。この後はどうするんだ?」
「ん?レイナさんもう動くのですか?もうちょっと休んでからでも良いじゃないですか」
「トシヤちゃん、そろそろシュバルツ様との待ち合わせに向かった方が良いわよぉ」
「確かに。あの人時間に正確だもんな」
僕がもうちょっとのんびりしようとしていると、流石に痺れを切らしたんでしょうね。ティアさんやザックさんまで動く様に言ってきます。
ん?お風呂上がりは1時間くらいゆったりしませんかね、皆さん。え、なんですかガレムさん?そんなのお前だけだって?そうですかねぇ。ま、約束ですしそろそろ出ましょうかね。
僕がようやく腰を上げて動きだすと、何故か休憩所でいる街の人や商人さんが一緒についてきます。皆さん何やら面白そうにしてますけどなんでしょう?その理由はターミナルの大型モニター前に行った時にわかりましたけど……
『さあ!今日は記念すべきターミナル増設の日よぉ〜!コンビニでは今日はスイーツが全品300ディアセールをやっているわよ!』
『まだまだドルナウキャンペーン実施中です。是非癒温泉へお越し下さいませ』
『今日はターミナル増設生中継でお送りいたします。この後すぐ!』
『グランデツーリストアルコよりお知らせです。本日テーマパークの扉メンテナンス中です。明日よりまた通常営業いたします』
うーむ。まさかビニーやファイが動き出しているとは思いませんでしたね。しかも今は再放送のグランデホテル物語の後のCMです。多くの人が大型モニター前に陣取ってますねぇ。あ、レイナさんビニーのCM気になってるみたいです。甘い物好きですからねぇ。と言うかこんな中でまさかやるとは……
「オーナー、おはよう御座います」
「シュバルツ様とデノンさんおはよう御座います。あれ?まだ約束の時間前ですよね?」
僕らがポカーンとモニター前で佇んでいると、シュバルツ様がデノンさんと歩いて来ました。あ、この騒ぎは僕主導じゃないですよって言っておかないと!
「あ、シュバルツ様……」
「オーナー、この騒ぎは私がお願いした事ですからお気になさらず」
「はい?シュバルツ様なんですか?この騒ぎは」
「ふふっ、オーナーの案もありますからね。ターミナル利用者には知って置いて貰ったほうが最善かと思いますし」
なんと!この騒ぎはシュバルツ様でしたよ。……この人が動くって事はまた何か考えているんでしょうねぇ。
「ま、トシヤはいつも通りでいいさ。お前いつも急に増設するからな」
まぁ、デノンさんの言う通りですけどね。いつも周りの皆さん驚かしてますし、たまにはいいですかね。
「じゃ、早速エアやっちゃいましょうか。ターミナルのバージョンアップとグランデエアを設置お願いします」
「畏まりました。では魔石100万個相当とMP25万消費して、第三ターミナルの解放とグランデエアの設置を致します」
エアの言葉の後に光出した出張扉通路側。光が収まると、なんとターミナルにも二階ができていました。同時に上り下りのエスカレーターが出現。これには多くの人達からの感嘆の声が上がります。
すると大型モニターで音楽が鳴り出し、『祝・グランデエア開設!』という文字と共にファイのニュースが始まりました。ファイ、まだ設置したばかりですよ?
『ターミナルニュースの時間です。先ほど新たな移動手段グランデエアが開設されました。こちらは国外移動専用となる施設です。利用者はカードエア会員、プライオリティ会員どちらかの会員となって頂く予定だそうです。カードエア会員の皆様は年間50万ディア、プライオリティ会員の皆様は年間80万ディアとなっております。詳しくはインフォメーションセンターが窓口となっておりますので、お問い合わせ下さいませ。では気になる内部の紹介を致しましょう。中継先のサムさん、宜しくお願いします』
『はいはーい!皆さんこんにちは!サムでーす。今日はこちらのターミナルオーナー、トシヤ君と一緒に見て周りたいと思いますよー!気になる内部に行く前に一旦CMに入ります!』
なんと今度はサムさんが久しぶりのビルさんをカメラマンとして、リポーター姿で出て来たじゃないですか。サムさん、ベックさんの許可取ったんでしょうかね?
「トシヤ君、なんか余計な事考えてない?今日はちゃんとした仕事として来てるんだからね!」
「依頼したのは私ですからご心配なく。早速見にいきましょうか、オーナー」
どうやら顔に出ていたんでしょう。サムさんが僕の表情を読んで言い訳して来ます。まあ、シュバルツ様の依頼なら大丈夫ですね!僕も新たな施設早く見たいですし、二階に行きましょうか。
僕らが移動を始めると早速サムさんの中継が始まります。
『グランデエアに行くにはこちら!エスカレーターを使いますが、皆さんお気付きですね。上りエスカレーター前にはゲートがあります。こちらはどうやって通るのでしょう?エアさん』
『こちらはインフォメーションセンターにて発行された、年間会員カードをかざすと開く様になっております。本日はオーナー特権としまして、シュバルツ様、デノン様、クライムのメンバー、サム様、ビル様のみ通過できます』
ほほう、ここからすでに施設に入れる人が制限されるのですね。まあ、この時代の一般の方々が利用する必要性はなかなかにありませんからね。そう思いながらもエスカレーターを上っていくと……
『見て下さい皆さん!この広さとこの内装!まるで王宮の様に洗練された室内です!』
サムさんの実況に重なる様に感嘆の声が上がります。これ専用ラウンジみたいですねぇ。手前にはゆったりとした座り心地の良さそうな一人用ソファーが、円形に四つ丸テーブルを囲む様に並んでいます。これが10セットくらいあるでしょうか。
『豪華な絨毯が一面に敷かれ足元も優しく、さらに左右には個室もありますね!エアさんあの部屋はなんでしょう?』
『あちらはプライオリティ会員様限定の専用待合室となっております。シャワー室、メイクルーム、専用ドリンクコーナー併設のお部屋でございます。またカード会員様にはこちらのオープンラウンジ奥に大型トイレ、シャワーブース、無料ドリンクコーナーが設置されております』
サムさん乗ってますねぇ。エアといいコンビです。あ、今サムさんにエアを渡していますよ。僕余り映りたくないですし。おや、サムさん達は個室を撮影した後更に奥に向かいましたね。
『右奥には更に奥に通じるゲートがありますね。その上には大型モニターがあります。時刻とあれは行き先でしょうか?』
『あちらのゲートはグランデエアに通じるゲートです。こちらで最終検問となり、施設やオーナーに悪意のある方は弾かれます。更に安全性を高める装置でございます。また大型モニターには現在出発予定の機体の名称、行き先、出発時間、到着予定時間が表示されております。現在こちらの施設では3機ご用意していますが、本日はまずは1機のみ飛行可能となっております』
『ほほう!これは興味深いですね。行き先はオルガデュ国フランデールの街ですか?』
『こちらは友好国で、事前にシュバルツ様よりご指定された国でございます。まずは先にお進み下さいませ』
思わずシュバルツ様を見ると、にっこり笑顔が返って来ました。本当にこの方は抜け目ないですねぇ。一応オーナーは僕ですけど、と遠い目をしてしまいました。
ゲートは勿論全員通過して、通路を通っていよいよグランデエアに乗り込みます!
グランデエア機内はゆったりとしたシートが両サイドに並び、こちらのキャビンは日本でいったらファーストクラスですね。前後左右に幅があります。でも奥にも扉がありそこはエコノミー席となっていました。これこんなに乗りますかねぇ?
『いやぁ!これで外交もかなり楽に移動する事ができそうです!出発前のグランデエアより中継は以上です!ではスタジオのファイさんにお返しします』
僕が疑問に思っているとサムさんの中継が終わったみたいですね。すると、扉が閉まりキャビン内にアナウンスが流れます。
『ご搭乗の皆様へご連絡致します。当機はこれよりオルガデュ国フランデールの街へと離陸致します。お席にお座りになってシートベルトを着用の上お待ち下さいませ』
ん?本当に行くんですか?そう思ってシュバルツ様を思わずみると……
「さあ、オーナー。出発致しましょう。オルガデュ国フランデールには名産品が沢山ありますよ」
にっこり笑うシュバルツ様に、理解していたのか早速席に着くデノンさん達。僕やクライムメンバーは顔を見合わせていますが、まずは成り行きに任せましょう、という事に。
『お待たせ致しました。オルガデュ国フランデールの街へ出発致します。皆様1時間の亜空間の旅をお楽しみ下さいませ』
全員席に着くとアナウンスと機体が静かに動く音がします。
初フライトがオルガデュ国とは思ってもみませんでしたが、今回はシュバルツ様とエア達にやられましたねぇ。
さて、ゲセナ対策で出したグランデエアでしたが、一体どうなるのやら?
アクセスありがとうございます♪次回は来週水曜日更新です!