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美食の街エヴァンスですよ

 やって来ましたよ!美食の街エヴァンス!

 ぶどう農園が広がり、ワイン作りや酪農も盛んなこの街は朝から市場も大盛況です。朝一では地元の人も朝食は市場で食べるそうで、色んな屋台が出ています。


 屋台の前には食事の為の椅子やテーブルがあり、みんなが思い思いの食事を楽しんでいます。あちこちから上がる匂いに呼び込みの声、聞こえてくる美味しいと言う声にワクワクしてきますねぇ。


 「くううー!今日の護衛を勝ち取って正解だぜ!」

 「あ、ザックさん!あのウィンナー美味しそうですよ!」


 今日の護衛を勝ち取ったクライムのザックさんが嬉しそうに噛み締める中、僕はこの地方の特産品に目が向きます。


 「あら、ホワイトカウのフランクフルトも良いわよ。みて、あそこで焼きたてが売っているわ。待ってて人数分買ってくるわ」

 「待て、ティア。その隣でイエローグレープのジュースが売っている。私も行こう。ガレムも手伝ってくれ」

 「ああ」

 

 ティアさんもなんかウキウキしていますね。でもみんなの為に動いてくれているあたり世話好きのティアさんって感じです。そしてレイナさんも甘いものは見逃さず、ちゃんと抑えています。ガレムさんはイエローグレープ屋台の隣のワイン屋台の方が本命でしょう。あそこで試飲してますもん。


 「あ、アレ焼きたてのパンですね。ザックさん、ティアさん達戻って来たら買いに行きませんか?」

 「だな!と言うか、あっちの方にでっかい肉を焼いて、焼けた分を薄く削ぐ屋台あったぞ。アレもよくねぇ?」

 「良いですねぇ!パンに挟んで食べたいです」


 僕らは席を確保しつつ、周りの屋台をみて楽しんでいます。実に楽しい!良いですよね、アレもこれも買えると言うこの高揚感。うん、頑張った甲斐があるってものです。


 「いいでしょう、エヴァンスは。この地方はスヴェンセン山脈からいい風が吹きますし寒暖差がありますが、その分いいグレープが育つのです」


 あ、そうそう、今日は案内役がいるんですよ。エヴァンスの商業ギルド長のワイナさん(35)。体型はふくよかで優しそうな男性です。美味しそうなチーズと瑞々しいイエローグレープを持って僕らの席につきます。


 「ああ、そうでしたねぇ。この間スヴェンセン山脈に遊びに行ったのですが、この辺りは綺麗な農園が広がっていましたからね」

 「それは噂に聞いていたグランデツーリストアルコの扉でしょうか!すごいですよねぇ。この世界に行けないところなんてないでしょうね。今からうちの職員楽しみにしているんですよ」


 かなり楽しみにしていたんでしょう。ワイナさん、いい笑顔です。最近はセクト、王都、ドルナウ、シームズ、フィフスとホテル情報を公開していますからねぇ。やっぱりエヴァンスまで届いていたんですね。


 でもそれも当然なんですって。毎日各ギルドの大型TVで情報を流していますし、商人や冒険者といったあちこちに出かける人達からの口伝えによって、今や出張扉をつけた街は大賑わいになっているそうなんですよ。


 ですから、既に伝令がいっているブルガレア、ディゼラの街からも早く来て欲しいと催促がきているみたいですねぇ。勿論すぐに行けますが、ここは僕のわがままですね。各都市を堪能させて欲しい、とお願いしているんです。

 

 ん?急がなくちゃいけないのでは、って?確かにそうですが、1日置きぐらいは許して下さいよ。いざとなればすぐ設置できるのですから。この辺りはグランデ宅急便センター様々ですね。今も主だった各街に向けて職員さん達が動いているんです。着々と動き出してはいるんですよ。


 「はーい、お待たせ!焼きたて持ってきたわよ」

 「こっちはジュース瓶2本と人数分のカップ借りて来たぞ」

 「ワイン買って来た。ほれ、ザック」


 あ、ティアさん達帰って来ましたね。うわぁ、いろいろ美味しそうですが、ティアさんやたら山盛りですねぇ。ん?これでも足りない?ああ、そうでしたね。あ、ザックさん飲む前にパンとお肉買いに行きましょうよ!


 「あ、悪い。ティア行って来てくれないか?これ美味えわ」

 「やはり地元。味わいはまた違うものだな」


 あー、2人共もう飲んでいます。「仕方ないわねぇ。トシヤちゃん行くわよ」と流石ティアさん。僕も食べたいですし、レイナさんに2人をみてもらって急ぎ買って来ますか。


 そうして僕とティアさんで目的のものをどっさり買って戻ろうとした時、隣の屋台から「ふざけんな!」と声がします。振り返ってみると、屋台のご主人が若い娘さんを庇って商人さんと対峙しているじゃないですか。何があったんでしょう?ちょっとみてみますか。


 「こんな娘如きに大金を払ってやろうと言うのに、何を叫ぶ事があるんです?」

 「はあ?娘を売れなんて言われて黙ってられるか!あんた何考えてんだ⁉︎」


 豪華な服を着た商人さんに、屋台のご主人さんが今にも殴りかかろうとしているじゃないですか!渦中の娘さんが必死に屋台のご主人さんを抑えています。


 「おやおや、何を興奮しているんだか。こんなの普通じゃないですか。これだからこの国は甘いんですよ」

 「……‼︎お前、ゲセナ人だな!そっちこそ人間を何だと思ってやがる!」

 「何を怒っているのかさっぱりわかりませんね。使われるべき人間になぜ教えねばならないのでしょう?」

 「貴様……‼︎」


 一瞬即発の事態です!しかもあの商人ゲセナ人ですか!あの国は一般の人でさえこの考え方なんですかね?と、沸々と怒りが湧いてきましたが、まずはこの場を収めないといけませんね。こうした場合は……


 「誰かー!衛兵さん呼んで来て下さい!」


 お巡りさんここです!じゃないですけど、衛兵さんに仕切って貰った方がいいでしょう。僕がこう叫んだものですから、周りの野次馬の人達も「衛兵どっち行った?」と探しに行ってくれたり、「ゲセナ人は帰れ!お前らのくる所じゃねえ!」と叫び騒ぎ立てます。だんだん騒ぎが大きくなると……


 「やれやれ、下世話な国民だ。大丈夫ですよ、仕入れは済みましたからすぐにここを発ちますよ」


 そう言ってゲセナの商人は肩をすくめながら、野次馬や店主を一瞥して去って行きます。野次馬からの罵倒も気にせず歩いて行く姿は、僕も流石に物申したくなりましたよ。っと、それよりも今だに怒りの収まらない様子の店主さんに声を掛けましょうかね。


 「くそっ!あの野郎!商売中じゃなければ一発殴ってやったのに!」

 「大変でしたね、ご主人さん」

 「ん?あんたか、衛兵を呼ぶように言ったのは。全く、クソッタレな奴だったぜ。……だが助かった。暴力沙汰起こせば今後商売できなくなるからなぁ。娘も無事だったが、胸糞悪いったらねえぜ!」


 うんうん、そうでしょうねぇ。娘さんも娘さんで「ゲセナ人最低!」って怒ってますし。怒りは最もですが、やっぱりここの人達には笑っていて欲しいですからね。これは僕の出番でしょう。


 「あ、申し遅れました。僕はトシヤと言いまして、宿屋のオーナーをやっています。どうでしょうか?気分転換に僕の宿に来てみませんか?大丈夫!僕の奢りですから。あ、これはその1日宿泊券です。ささっ、どうぞどうぞ」


 怪しむ2人に1日宿泊パスポートを渡して「都合がついたら商業ギルドに来て下さいねー」と言ってその場を後にします。後でワイナさんに2人が来たら総合インフォメーションに案内して貰う様にお願いしましょうかね。そう考えていると、ティアさんがふふっと笑い出します。


 「流石トシヤちゃんねぇ。それに衛兵を呼ぶとはいい機転だったわ」

 「いやぁ、僕弱いですからね」

 「あら。私を使ってもよかったのよ。あんな奴ぶっ飛ばしてやったのに」

 「それこそ避けたい事でしたし、ゲセナ人にとって有利になる様な案件を一つでも作るのが癪だったんです」

 「いい判断ね。トシヤちゃんらしいわ」

 「僕は穏便に物事は済ませたいですからね。でも限度もありますけど」

 「……ちょっとぉ〜、また何か考えたでしょ?吐きなさい!」

 「え?なんの事です?」

 

 そんな風に僕とティアさんが戯れながらみんなの元に戻ると「おせーぞ!」と既にワイン2本目を飲んでいるザックさんから声がかかります。僕らも席につき食べながら先程の出来事を話すと「ちょっと失礼」とワイナさんが席を立ってギルドの方へ歩いて行きましたねぇ。何やら静かに怒っていた様ですけど。


 残っていた3人も話を聞いて、ぷりぷり怒り出してしまいましたねぇ。でも「トシヤちゃん、またなんか考えあるみたいよ」と言うティアさんの発言に今度は僕を問い詰めるザックさんとレイナさん。いやいや、なぜに僕が動くって決めつけてるんです?まだ何も言ってませんよ。と楽しく食事をしていると、戻って来たワイナさん。


 「ギルド長権限でゲセナの商人を販売禁止を掛け合って来ました。明日からでも実行したいのですが、まずは他のギルドと足並みを揃えたいので、この後出張扉の設置をお願いできますか?」


 穏やかに言っていますが、結構お怒りだったんでしょう。何やら静かな圧を感じたので、食べ終わった僕らは商業ギルドへ向かうことに。


 設置予定の2階大会議室には、副ギルド長のカッシュさん(36)が既に待っていました。こちらは真面目そうな男性ですねぇ。手短に挨拶をして出張扉を設置。扉とパスポート申請機が出て来るのに驚きの声が上がるのは最早定番です。タブレットをワイナさんに渡し、使い方を簡単に教えます。すぐ覚えるあたり、商人さんはすごいですよねぇ。


 そうそう大型モニターも設置しましたよ。この事も既に各商業ギルドから伝え聞いていたんでしょう。なんと商業ギルドにいた商人さん達も「これの事か!」とざわざわ騒ぎ出すじゃないですか。更にワイナさんとカッシュさんはより詳しく調べていたんでしょう。


 「いつ『グランデ物語』が始まりますか?」

 「『ティモのキッチン』でエヴァンスの特産品を使って貰えないでしょうか?」


 商売もさることながら、ドラマまで知っているとは驚きました。人気上がってますねぇ、うちのスタッフ達は。そんな事を思いながらワイナさんとカッシュさんを「まぁまぁ、その件はターミナルで話しましょう」と出張扉まで連れて行きます。


 後ろの大型モニターではAI達の挨拶が始まり、恒例のホテル案内、ターミナル、スパリゾート施設の案内も流し人々の注目を集めていましたね。そしてビニーからターミナルの利用方法、ホテルの入館申請などの気合いの入った説明の後には商業ギルド窓口が混雑したそうですよ。ギルド職員さんすみませんねぇ。


 で、そこにあの親子がパスポートを持って来たんですよ。ちょうどいいのでギルド長達と共にご案内する事にしました。


 さて、エヴァンスのギルド長達の反応はどうでしょうね。

 ん?僕の企みですか?

 まぁまぁ、焦らずに。次回わかりますよ。

アクセスありがとうございます!ゲセナ人がエヴァンスまで来ていました。お怒りのワイナさんですが、次回は現在のターミナルがわかりますよ!ワイナさんがどんな反応になるでしょうね。次回は8/16(水)に更新します。宜しければアクセスしてみて下さい(*´꒳`*)

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