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最近の情勢ですよ

 「しばらく来ない内にこんなに変わっているとはね」

 「ええ、本当ですわ。それもこれもライルに使われているせいで、遅れてしまったのですわ」

 

 お久しぶりの登場のユーリ様とイクサ様。現在リゾートホテルコンドミニアムスーベリアのリビングでゆったりエヴァンス地方の赤ワインを堪能しています。


 「全くだね!こんな機会逃すなんて仕事どころじゃないよ!」

 「あら?サムはまた抜け出してきたの?」

 「違うってカーヤさん!いつもいつも抜け出している訳じゃないよ」

 

 同じくリビングソファーでは、サムさんがブルガレアの白ワインを飲みながら、カーヤさんに揶揄われています。

 

 「何だってボードン一家勢揃いしているんだ……」

 「おや、ライル。これはグランデターミナル国営化メンバーが揃っていた方がいい案件でしょう?」

 「シュバルツが呼んだのか……。いやトシヤ君にまず話すつもりだったんだが」


 ライル様もソファーに座りながらワインを飲んでいます。その隣の僕にシュバルツ様がアイスコーヒーを持ってきてくれています。いや、僕やりますよ?って言ったんですけどね。にっこり笑って「座っていて下さい」と言うシュバルツ様に誰が勝てるでしょうか。


 「っかあー!良い湯だったぞ。部屋からすぐ火龍温泉に入れるって楽で良いな!」

 「デノンは何飲みます?」

 「俺、ウィスキーロックで!」


 この部屋に着いてすぐ温泉に入りに行った自由人デノンさんは、堂々とシュバルツ様を使っていますねぇ。流石親子。ライル王がいる空間でも今日はお酒も飲んでますし、気軽な感じなんでしょう。


 「で、今回集めたのはなんの為なんだ?」

 

 ウィスキーを受け取ったデノンさんが、どっかりソファーに座り今回の集まった理由をライル様に聞いています。


 「ああ、トシヤ君に最近のお礼だけ言おうと思っていたんだが、シュバルツがやはり話した方が良いと言うのでな。……トシヤ君、コバディのドゴスを覚えているか?」


 ん?ドゴス?コバディ?誰だったか……ああ!


 「ドルナウで一時問題になった商会の店主ですね」

 「覚えていたか。その男は隣国のスパイだったのは覚えているか?その隣国ゲセナで急な小麦の高騰と更に内乱で荒れていた近隣諸国の制圧に乗り出したらしい。未だ各国が連携した報告はないが、おそらく近い内に隣国がこの国に乗り込んでくるだろう」

 「現にゲセナの商人がこの国にかなり入ってきています。こちらの国からも大量の小麦や武器を買い占める事が多くなってきている現状です」


 何と!予想を裏切りかなり重い情報が出てきました!ライル様の言葉にシュバルツ様が補足して教えてくれましたが、なにゆえ僕に?


 「その動向は商業ギルドでも既に押さえておりますわ」

 「そうだね。ゲセナの商人には既に規制をかけているよ」


 情報通のユーリ様とイクサ様は動き出していたんですね。


 「セクトの方も既に規制はかけているよ」

 「宅配センターの職員からも報告を受けている」


 ピースサインをしながら言うサムさんは勿論、デノンさんの方まで情報が来ていたんですね。知らぬは僕ばかりじゃないですか。


 「……そうか。そして話は戻るが、ドゴスの話では狙いは人だ。主にカディル人が予想されるが隷属するのに人種は選ばないだろう。だが、カディル人だろうが我が国の民だ!今更あの洗脳王国になんぞくれてやるつもりなぞない!」


 よほど頭に来ているんでしょうね。ライル様が怒っています。うんうん、気持ちはわかりますよ!僕だってカディル人に関わっていますからね。


 「まあ、泣き虫ライルがここまで怒るって事は、ゲセナ情報が入ったって事?」

 「そうですよ、サム。最近ゲセナ王宮内で、奴隷反対派の第三王子の存在が急に消えたそうなんです。足取りが掴めまして、現在洗脳して王子までも奴隷扱いしている事がわかりました。奴らの人に対する扱いは聞いているだけで腐敗臭が匂ってくるようです」


 シュバルツ様の話に僕も胸焼けがしてきました。なんて事でしょう!恐ろしいですね、人というものは!腐ればどこまでも腐っていくんですね!


 「お、珍しい。トシヤが怒ってる」

 「デノンさん。僕だって怒る時は怒りますよ。だけど、怒りで動き出すほどおバカではないですよ」

 「まあなあ。若いのに、そこがお前の凄いところだよなぁ」

 「ええ、お爺さんの教えですから。怒りを力に変える冷静さを身につけろ、と言われてましたからね」


 お爺さんは本当に僕に色々教えてくれたんです。怒りや憤りに身を任せるなと、常に周りの状況を掴め、と。……なんかルー爺に会いたくなりましたねぇ。


 「そんなオーナーだから話せるんですよ」

 

 にっこりとシュバルツ様が笑っています。おや?何やら不穏な雰囲気が漂ってきましたよ。


 「ああ、そうだなシュバルツ。トシヤ君、ここまで聞いていてわかるだろうが、君の力を借りたい。我が国という民を守る為に、早急に出張扉を各地に設置して貰えないだろうか?王としてではなく、この国に住む者として頼みたい」


 わわ!またもやライル王が頭を下げているじゃないですか!……でも、そうですか……。一国の王としては頭を下げられないから、この雰囲気を作り出したんでしょうかねぇ。


 僕としては、前と同じなんですよね。もう気持ちはこの国の民なんです。僕だって知り合いが多くなったんですよ。その人達が苦しむ姿なんて見たい訳ないじゃないですか!


 「ライル様、いつも僕の気持ちを考慮に入れてくれてありがとうございます。僕は僕の意思でこの国の為に動きたいと思っています。ですからできる事であれば僕はいつでも動きますよ」


 頭を下げるライル様の前に僕は跪きます。すると、僕の行動に気付いたライル様が急ぎ僕を立たせます。


 「トシヤ君!そこまでしなくとも、君はもう私よりもこの国にとってなくてはならない存在なんだ!むしろ私がしなければならないくらいなんだよ」


 僕をソファーに座らせ同じ行動をしようとするライル様を、今度は僕が焦って止めます。その様子を見ていたデノンさんが吹き出して笑うと、他の人達も笑い出します。


 「ぶははは!2人して何やってんだ!立場を取っ払えば、ライルもトシヤも同じ想いを持つチームだろう。メンバー同士握手でもすりゃ良いじゃねえか」

 「おや?デノンたまには良い事言いますね」

 「そうですわね。流石我が弟ですわ」


 イクサ様がデノンさんの言葉に感心し、ユーリ様が弟自慢をしています。僕もその言葉に感銘を受け、ライル様を見るとどうやら同じ思いみたいですねぇ。2人で笑いながら顔を見合って、手を差し出します。


 「ライル様。僕らはチームです。僕は防御を担当しましょう」

 「トシヤ君。個人として王としてこんなに心強いものはない。私はこの国を守る剣となろう」


 2人でしっかり握手をして決意を固めます。流石ライル様、言う事がかっこいいですね!と思っているところに、サムさんがシュバルツ様に話かけます。


 「で、爺ちゃんはもう動き出しているんだろ?」

 「当然です。守る事は防御するだけじゃないですからね」


 なんと!この短い期間に既にシュバルツ様は手をうっていたんですか?更に冷たさを感じる微笑みを浮かべるシュバルツ様。うわあ、何をしているんでしょうねぇ。聞くのが怖い。


 「まあ、そっちは大丈夫だろう。あと俺も動いているからな、トシヤ。エヴァンス、ブルガレア、ディゼラの街にうちの社員既に着いているぞ」

 「因みに国境付近の領地に向けてスタッフがもう出発しているわよ」


 ニッと笑いながら言うデノンさんと笑顔のカーヤ様。おお!もう動けるなんて素晴らしい!


 「各商業、冒険者ギルドにも通達済みですわよ」

 「いつ行っても良いようにしていたからねぇ」

 

 ユーリ様、イクサ様も抜かりはありません。


 「こちらは支援体制を整えているからねぇ!いつでも要請に応じるよ!」


 笑顔でサムズアップするサムさん。


「ボードン一家って凄いですねぇ」

「全くだ」


 思わず呟く僕に、心から同意しているライル様。

 いやあ、敵に回したくないものです。

 さて、じゃあ僕も頑張りますかね。


アクセスありがとうございます!嬉しい事に書籍化決定です!皆さんのおかげで亜空間ホテルがあります。本当にありがとうございます!そして本編の方も動き出します。ただ、更新が週一のままになります事をご了承くださいませ。毎週水耀になりますのでこれからも宜しくお願いします!(*´꒳`*)

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