フィフスの皆さんをご招待ですよ
「お待ち下さい!ルーティ伯!只今冒険者ギルド長との会談中です!お取り継ぎ致しますから!」
「なあに、あの悪ガキ供じゃろ。手間が省けて良いわい」
えーと……良いんでしょうかねぇ。ルー爺の後について商業ギルド内を歩いているんですけど、窓口のお兄さんが一生懸命制止させようとしているんです。いやぁ、普通はそうですよねぇ。でも、ルー爺がドカドカ歩いて行って止まりません。
「おお!お前達!遂に国営責任者が来たぞ!ほれほれ、さっさと設置してもらえ!で、噂のホテルに突撃じゃ!」
バタン!と大きな音を立ててルー爺が奥の扉を開けます。中では話し中だったんでしょう。4人の男性が一斉にこちらを見ます。おお、またまた個性的な皆さんがいますね。
「ルーティ伯……もういい加減悪ガキ扱いはやめて下さいよ」
「なんじゃ?ワッツ、お前がイタズラ良く考えていただろうが。今もそう変わらんだろ」
「遊びと商売を一緒にしないで下さいよ」
はい、ここで僕が紹介しましょう。って言ってもルー爺から聞いた話ですから僕の所見も入りますよ。 今ルー爺と話しているのはフィフス商業ギルド長のワッツさん(32)。メガネをかけたクールガイって感じですね。ルー爺曰く
「ずる賢さはピカイチじゃ」
だそうですよ。フィフス生まれのフィフス育ち。ギルド長にはルー爺が推薦したそうです。やり手なんでしょう。
「仕方ないですよ、ワッツ。ルー爺、脳筋なんですから。いつまでも子供はそっちでしょうに」
こちらは商業ギルド副ギルド長のアルイドさん(32)。正統派の美形ですねぇ。頭良さそうです。こちらはルー爺
「あやつは昔からワッツの子分じゃの。気が合うんじゃろ」
って言ってましたが、見た感じこちらもやり手に見えます。ん?僕からしたらみんなそうですって?まあ、聞かなかった事にしましょう。
「まあなぁ。それがルー爺だし、俺らがここにいる理由だしな」
体格のいい青い髪の男性ですねぇ。ああ、フィフス冒険者ギルドのギルド長ナイツさん(31)でしょう。ルー爺が
「あやつはワシが育てた様なもんじゃ」
って言ってました。よく、シーアの大森林に連れて行ったそうですよ。雰囲気がゼノさんに似てますが、強そうですねぇ。
「そうですが……ルー爺、お客様にはちゃんと挨拶くらいさせて下さいよ」
赤い髪で長髪……ああ!冒険者ギルドの副ギルド長ベルノさんですね!ルー爺が
「あやつはの……顔に似合わず性格が細かくての。参るわい」
って言ってました。補佐役らしい真面目そうな方ですねぇ。
「おお!そうじゃったの!トシヤ、ほれ挨拶じゃ」
「そっちじゃない!」
と4人が見事に揃ったツッコミ。仲良いはずです。何せこの4人、小さい時からずっと一緒に育って来た幼馴染グループだそうですよ。良いですねぇ、生まれ育った地元を今度は自分たちが盛り上げるってのは。あ、挨拶でしたっけ。それじゃ……
「ああ、お気になさらず。ただの国営総合責任者なだけですから。トシヤと申します。本業は亜空間ホテルのオーナーです」
僕の挨拶に「いやいや、なんだよ。ただの国営総合責任者って」と後ろから背中をバシッとグレッグさんに叩かれましたが、僕はお飾りですからねぇ。「そんなもんですよ」と笑って誤魔化します。
「済まない。話を割って入るが、パーティ名テラのリーダーボルクだ。ウチの責任者は王や宰相にもこんな感じなんだ。慣れてくれると助かる」
おや、ボルクさんナイスフォローですね。うんうん、無理しないのが僕ですから。わかってらっしゃる。
「ブハっ!面白え!トシヤと呼ばせて貰うぜ。俺は冒険者ギルドのナイツだ。宜しくな。で、そっちは噂のテラか。うちの三強とアイスドラゴン共闘したパーティだな。手合わせお願いしたいねぇ」
「ナイツ、そうじゃないだろうが!トシヤさんと呼ばせて頂きます。私は副ギルド長のベルノと申します。今回はお世話になります」
ナイツさんを抑えながら、ベルノさんが自己紹介をして下さいました。こちらのギルドも副ギルド長が頑張っていらっしゃるのでしょうね。セクトの冒険者ギルドを思い出します。
「改めて私はワッツと申します。フィフス商業ギルドギルド長の職を務めさせて頂いております。どうぞ宜しくお願いします」
「同じく副ギルド長を務めさせて頂いております。アルイドと申します。冒険者ギルド共々お世話になります」
おお、こちらは正統派って感じですねぇ。改まらなくても良いですのに。
「ほれほれ、挨拶もすんだし、さっさと要件済ませんか!こっちはさっきから待っとるんじゃ」
「ルーティ伯……台無しにしないでください。トシヤさん、早速ですみませんがお願いしても宜しいでしょうか」
待ちきれないルー爺に頭を抱えながら、僕らを丁寧に設置部屋に案内してくださったワッツさん。構いませんよ、それが目的ですしね。
全員で移動した先はやはり二階の大会議室です。
「じゃ、設置しますねー。あ、ボルクさん、皆さんに入館者登録してあげて下さい。僕の方で年間パスポート用意しますから」
「ああ、わかった」
ボルクさんに協力をお願いして、僕もさっさと設置をしてしまいます。いつも通り扉が現れて、パスポート申請機から5人分年間パスポートを取り出します。
「さ、これを扉にかざすと入れますよー。ってどうしました?」
僕がいつも通り説明をしていたら、なんか反応が薄いんですよ。もっとおお!とか、うおっ!とかあって良いのに。
「いや、本当に手紙にあった通りなんじゃの」
「こんな簡単に空間繋げちまうのか」
ルー爺もナイツさんも感心している方が強い感じでしたね。成る程、シュバルツ様の手紙に詳しく書かれていたんですね。ま、進め易くて良いですね。とりあえず僕権限で扉を開けて、まずはターミナルへと皆さんをご招待しましょう。
「さあ、フィフスの皆さん、まずは一番利用するターミナルにご案内しますよー!」
遊びで作ってもらっていた〈案内〉と書かれた旗を持って歩き出す僕。「あ、いつもの事だから気にせずついて行って」とスレインさんのナイスフォローで全員でターミナルの大通りについた途端……パパパパパパン!!と一斉にクラッカーの弾ける音がします。
これには「うわあ!」と僕が驚きましたね。周りを見てみると、大勢の人達が僕らを待っていた様です。大型モニターには「歓迎!フィフスの皆さん!」とデカデカと文字が表示されています。そして一斉上がる歓迎コール。
どこから用意したんでしょうね。花束を持った女性がルー爺やワッツさん達に歓迎しながら渡しています。そして輪の中から出てきたサムさん達ギルド組。
「ようこそ!亜空間ターミナルへ!ルーティは久しぶりだね。そしてワッツにアルイド、ナイツにベルノ大きくなって……」
わざとらしくハンカチを出して泣く真似をするサムさん。成る程、サムさんが音頭をとったんですねぇ。
「なんじゃい、サム爺も来おったんか」
「ちょっと!爺さんに爺さん呼ばわりされたくないんだけど!」
「事実じゃろうが」
まあそうですよね、サムさんルー爺より年齢上ですし。サムさんがルー爺と遊んでいる間に、スッと前に出てくる王都商業ギルド長のシロカ様。
「あちらは置いといて、楽しみにしておりましたわ。フィフスの商業ギルドのお二人が加わるのを。商業ギルドのお二人は私共商業ギルド同士でご案内させて頂きますわ」
優雅な出立で出迎えてくださったシロカ様にキーン様。
「これはこれは、王都の凄腕ギルド長シロカ様ではございませんか。まさかこのような形でお会い出来るとは思っておりませんでした。是非お願い致します」
すぐに笑顔で対応するワッツさんとアルイドさん。……僕だけでしょうか。静かな駆け引きが始まっているように見えるのは……
「よお!ナイツにベルノ!久しぶりだなぁ。ブランドのメンバーは既にホテル入りしているみたいだぜ。お前らはウチが案内してやるよ」
僕が商業ギルド同士静かな火花が飛んでいるのを見ている隣りで、久々登場のセクトの冒険者ギルド長ブライトさんが張り切って出迎えています。
「よお!ブライト」
「お久しぶりです」
とこちらは和やかな雰囲気です。親交があったんですねぇ。
それぞれ各ギルド同士で移動していく中、爺さん同士まだからかいあっているサムさんとルー爺。うん、僕はルー爺を案内しましょうか。
「サムさん、ルー爺は僕が案内したいのですが、良いですか?」
「ん?トシヤ君はこの後のんびりしてても良いんだよ?」
「いえ、ルー爺は僕のお爺さんに似ているんですよ。だから僕、もう少し接待したいんです」
「ふーん……じゃ、僕もついていこうかな!トシヤ君が案内するって事は何かやるんでしょ?」
「シュバルツ様には後で怒られようかと思ってますよ」
「そっか。良いんじゃない?という事でルーティ。僕も一緒に案内してあげるよ」
「なんじゃい、サム爺も一緒とは豪勢じゃの」
そう、僕はルー爺をもてなす事で、僕のお爺さんをもてなしている気がするんです。だからこそ、最高のもてなしがしたい。
「エア、リゾートホテルBタイプ コンドミニアムスーペリアの設置をお願いします」
「畏まりました。MP 100,000を消費して設置致します」
さあ、今の僕の最高のもてなしを受けて下さいね。
……お爺さん。
アクセスありがとうございます!遂に登場!リゾートホテルBタイプ!……ええ、忘れてたわけじゃないですよ。でもすみません、内容は次回です。次回は7/12(水)に更新します。宜しければアクセスして見て下さいね♪