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初入館者です

アクセスが1100超えました!ありがとうございます♪

 「…… これどうなっているの?」


 元気な声の猫耳少女が扉をペタペタと触って、確認してますねぇ。


 グランに外の音声も拾って貰っていたので、入り口付近の様子がよりわかる様になったのはいいですが、ここまで扉がハッキリ見られているとは思いませんでした。看破スキル恐るべし。


 グラン曰くここの音声も外に届けられるそうなので、この機能を使って声をかける事にしました。


 『あー、あー、テステス。もしもし、看破スキル持ちのお嬢さん。今から状況を話しに行きますので、ちょっと扉から離れて頂けますか?』


 いきなり扉から声が聞こえてきた事に驚いたんでしょうね。耳も尻尾もピンとなって警戒している様子が窺えます。まぁ、そうなりますよね。


 『今外に出ますから、大きい声出さないで頂けると助かります』


 僕はそう言ってから正面入り口に向かいます。ドアを開けると、元気な女の子が律儀に口を押さえています。いい子なんですね。


 「すみません。驚かせて」


 「良かった!お客さん無事だったんだね。コッチこそ勝手に入ってごめんなさい。でも今日は食堂混んで来そうだから、部屋でも食べられる事伝えに来たら、こうなっているんだもん」


 困惑した表情で僕に素直に教えてくれる女の子。なるほど。わざわざ教えに来てくれたんですね。やっぱりここはいいお宿です。


 「あれ?看破スキルの事は否定しないんですね」


 「だって、私がそれ持ってる事この辺じゃ知られてるんだよ。ウチの宿では悪巧みはできないってね」


 ニッと自慢気に笑って僕に教えてくれる女の子。それは下調べをしなかった僕の落ち度です。仕方ない、本題にそろそろ入りますか。


 「成る程。であれば、もし良ければ食事を持って来てくれる時、少し時間取れますか?この事について説明します」


 「あ、話してくれるんだ。一応内容見えてるんだけど、どうにもわかんなくてさ。じゃ、一旦取りに行って時間もらってくるよ」


 そう言って女の子はすぐ行動を起こし、部屋から走って出て行きました。あの子、宿屋を手伝っているだけあって理解が早いですね。話がしやすそうです。


 …… いや、でも一人で来るものだと思いますよね。普通。


 「ごめんなさい。この子たちも一緒でいいですか?」


 戻って来た女の子と共に、お手手繋いだ可愛い子二人も一緒です。「だめでしゅか?」「いっしょにたべたいでしゅ」と、上目使いに僕を見上げる子供達。…… 可愛いすぎでしょう。一瞬にして籠絡された僕。


 「大人しくすると約束できますか?」


 僕の質問に笑顔で尻尾をぶんぶんさせて「ライできる」「リルもできる」と頷きます。二人の頭を撫でていると、ほっとした様子の元気な女の子。いい加減女の子の名前聞きますか。


 「さて、改めて僕はトシヤと言います。皆さんの名前教えてくれますか?」


 男の子が元気に「ライ!」というと「リル!」と女の子も元気に答えてくれます。うんうん、よくできました。


 「私はエル。宜しくトシヤお兄さん」


 エルさんですね。しかもお兄さん呼び。なんでしょう、嬉しいものですね。


 「ライ君、リルちゃん、エルさんですね。宜しくお願いします。詳しい事は場所を変えて話しましょう。その前にエルさん、代表してみんなの年を教えて頂けますか?」


 「エア」は既に《入館者登録》画面を出して用意してくれたみたいですね。流石エア。答えを待ちつつ、まずはエルさんの名前を打ち込んでいきます。


 「私は10歳、この子達は4歳です」


 不思議そうにしながらも答えてくれるエルさん。ええとエルさんは年齢は10歳、職業は木陰の宿店員っと。


 「エルさん、あの扉について話すには、中に入って貰った方がわかると思うんです。そして中に入る為に、この丸の部分に人差し指置いてくれませんか?」


 エルさんは更に不思議な顔をしつつも、僕の言葉に嘘はない事を確認したんでしょう。しばらくしてから人差し指をタブレットのホームボタンに当ててくれました。


「入館登録完了致しました。ようこそ亜空間グランデホテルへ」


 エアの歓迎の声にエルさんが「きゃっ」と声を出して驚きます。僕は続けてライ君、リルちゃんの登録に移行します。職業は無しでもいけるんですね。可愛い二人の指も当てて貰い、登録完了。二人は「ようこそ」というエアの声に喜んでいます。


 登録した事で扉が見える様になったライ君とリルちゃんは、「これなーに?」「なんでここにあるの?」と不思議そう。エルさんはワクワク顔ですね。


 さあ、入り口を開けて三人を中にご招待しましょう。


 「さあ、三人とも中へどうぞ」


 扉を開けて促す僕の横をライ君、リルちゃんがキョロキョロしながら先に入り、エルさんが二人の後に続きます。


 入った途端「きれーなの」「キレーなの!」とはしゃぐライ君、リルちゃん。「ここって一体…… 」と不思議そうなエルさん。そこへグランが歓迎の声をかけます。


 「ようこそ亜空間グランデホテルへ。私は当ホテルの総合受付担当グランと申します。当ホテルは現在喫茶店、大浴場をご用意しております。更に入館者一組目を記念して、本日エル様、ライ様、リル様は入浴が無料となります。是非、ご利用下さいませ」


 グランの声がどこから聞こえているのかわからない三人は、天井や壁をキョロキョロとみています。


 「今の声が、僕のギフトの総合責任者グランです。細かい事は喫茶店の中で教えますから、まずはこちらへついてきてもらえますか?」


 「きっさてん?」「わかんないね」とライ君リルちゃんは首を傾げながら顔を見合わせていますし、エルさんは状況が飲み込めていない様子。すぐは理解できないでしょうからね。ともかく三人を連れてキイの喫茶店に入ります。


 「ようこそ、グランデ喫茶店へ。喫茶店総合責任者のキイと申します。こちらの店では軽めの食事や各種飲み物、甘いデザートを提供しています。どうぞご利用くださいませ」


 今度はキイからの歓迎の言葉にまたキョロキョロする三人。まずは落ち着いて貰いましょうか。三人をカウンター席に案内しますが、今になってライ君リルちゃん用椅子が無い事に気づきます。


 キイが機転を効かせてくれて、[備品]の中に[キッズチェア(高さ調節可能、角丸、天然木タイプ) 1脚 MP54]がある事を教えてくれたので、二脚注文してもらいます。


 突然に現れたキッズチェアに驚くエルさんに、喜ぶライ君リルちゃん。子供は適応が早いですね。あ、エルさんも子供ですけど、彼女は保護者枠です。


 ようやく三人共カウンター席につき、僕はカウンター内に移動します。今日は僕が奢りますかね。三人共[オレンジジュース 300ディアMP3]でいいでしょう。キイに三つ注文しグラスを準備します。いつも通りジュースが出現し、ストローをさして三人の前に置きます。


 「さあ、どうぞ。これは僕の奢りです。…… ってエルさんどうしました?」


 ライ君リルちゃんはエルさんの顔を窺っていて、当のエルさんは困惑顔。ん?飲み方わからないのですかね。


 「ああ、この棒みたいなのに口をつけて中のジュースを吸い上げて下さい。美味しいですよ。さ、遠慮せずに」


 僕が勧めるとエルさんは「はぁ」とため息をついてから、ストローで飲み始めてくれました。それをみて嬉しそうに真似する二人。「おいしー!」「おいしいねー」と言いながら飲みすすめる二人は見ていてほのぼのします。エルさんも「美味しい!」と喜んで下さってますし。


 ニコニコ様子を見る僕に、「あのね、トシヤお兄さん」とエルさんが真面目な顔で話しかけてきます。


 「私まだ全部は把握できてないけど、とにかくお兄さんのこのギフトは凄いって事は良くわかった。で、もう一つ。お兄さんのこのギフト、まだ知られたくなかったんだろうって思ったんだけど、どう?」


 真っ直ぐ僕の目を見て話すエルさん。…… この子は鋭いですねぇ。

 

 「正解です。エルさんの言うとおり、見つかった事は実は想定外なんです。このギフト施設「ホテル」っていって人を泊める宿泊施設なんですけど、まだ未完成なんですよ。


 それに、どこにでも入り口を開く事ができ、それでいてこの性能の高さを考えると、誰かれ構わずに迎え入れる事は難しいと考えています。自衛手段が先だと思ってましたし。何より僕がこの街を知らないですから。余計にですね」


 「そっか。それはごめんなさい。でもそりゃそうだよね。ちょっと見ただけだけど、これだけすごいんだもん。警戒は必要だよ」


 「ここすごい!」「うん!すごいおいしーの!」


 理解してくれるエルさんと、エルさんの言葉に同意する二人。本当にいい子達です。


 「理解してくれて嬉しいです。でも難しい事はライ君とリルちゃんがいない時にしましょうか。二人がソワソワしてますから、先に持ってきてくれた料理食べませんか?エルさんアイテムボックス持ちですよね」


 「当然!じゃ今出すね」


 何も持っていなかった事からアイテムボックス持ちだろうと予想していた通り、エルさんが慣れた手つきでアイテムボックスから料理を出し配膳してくれます。


 黒パンにオーク肉の肉煮込みスープはほんのりあったかい感じでした。ライ君リルちゃんは早速パンをスープにつけて食べ始めています。僕もカウンター席に移動し、一緒に食べ始めます。


 うん!美味しい!味は塩ベースですが肉の旨みと野菜のあまみで濃厚な味わいになっています。肉は勿論柔らかいし、これはいいですね!


 「おいしー!」「おいしーねー!」と笑顔で同意を求める二人に混ざって「美味しいですねぇ」「でしょう!」とみんなで会話しながら食べる賑やかな食事。この雰囲気いいですねぇ。


 メインの食事を食べ終わったら、今度は僕の番です。カウンター内に入りお皿を準備してキイに[バニラアイスクリーム 200ディア MP2]を四つだして貰いました。出てきたアイスにスプーンを添えて、三人の前に「甘いものもどうぞ」と渡して行きます。


 三人の口に入った途端に上がる歓声。「冷たくておいしー!」「おいしー」「あまいのー!」と出したこちらも満足する反応振り。良いですね、素直に反応が返ってくると。


 そしてデザートが終わったら、散歩がてらにお風呂案内。靴を入り口で脱いでもらって、中に入るとトイレに驚き、脱衣場に驚き、タオルに驚き。そして、今日一番の歓声は浴室内を見せた時に頂きました。


 そうなると当然三人共「「「はいりたーい!!!」」」コールです。今日は三人は無料。設置したのは男性専用浴場ですが、他のお客様がいない状態でオーナーである僕が許可すれば問題ないようです。勿論喜んでご案内させて頂きました。使用方法は服を着たまま案内しましたが、エルさん一回で理解してくれて助かりました。


 ん?一緒に入らなかったのかって?


 入りませんよ!大変かもしれませんが、エルさんにライ君リルちゃん任せました。エルさんも「いつも世話してるから大丈夫!」って張り切ってましたので、僕は早々にお風呂場から撤退です。


 キイの喫茶店で片付けながら待っていると、ゆっくりしてきたんでしょう。ほっかほかでニコニコの三人が喫茶店に入ってきました。


 「もう最高!」「「さいこー」」


 三人共テンション高かったですねぇ。その後はオレンジジュースを出して少し雑談していたら、おねむの時間になった二人。「じゃ、難しい話は明日にしましょうか」と言う事で、ライ君を僕が、リルちゃんをエルさんが抱っこして出口に向かいます。


 するとまたグランから呼び止められました。この展開はもしや……


 「オーナー、画面をご覧下さい」


 …… 案の定です。今度は扉はみつけられていませんが、僕の部屋に30代位の男性と女性が困惑顔で立ち尽くしています。

 

 「あ、お父さん、お母さんだ!うわ、やばい…… 」


 やっぱりこのお宿のご主人さん達でしたか。グランの話では、つい先程僕らがいない事で様子を見に来たエルさんのお母さんが困惑し、お父さんを呼びに行って来たばかりなんだそうです。まだ宿中の騒ぎにはなっていませんが、重なる事は重なりますねぇ。


 「トシヤ兄!ごめん先行くね」


 エルさんがリルちゃん抱えたまま正面入り口へ走って行きます。僕といえばライ君抱えてますし、何事もなかった事にはできそうもありませんし、観念してゆっくり歩いて後を追っています。


 ああ…… 今日は長い夜になりそうです。

♪───O(≧∇≦)O────♪

アクセスありがとうございます!な、なんと評価人数が2人!ブックマークが8になってました!嬉しい〜!見つけて下さって本当にありがとうございます!テンション上がってますが、今日もう一つ上げれるかは残念ながら未定。明日も必ずあげますよ〜!頑張ります!


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