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ドルナウの街の再興に向けて研修ですよーターミナル編ー

 「ここもひでえな……」

 「まあな」


 2人の冒険者が街の外に向かう為、壊れたドルナウのカディル人地区を歩いています。道路には瓦礫や家具が散乱していますねぇ。周りの家は崩れ、壁だけが立っている家がちらほら。


 「ここの復興が遅れているんだろう?手伝うか?」

 「ばーか、コバディに目つけられたらこの街じゃ生きていけねえよ」

 

 どうやら気持ちはあっても動けない1人の男性と構わず進んで行くもう1人の男性。佇んでいたもう1人の男性も「それもそうか……」と動き出した時……ブロロロロロ…と言う聞いた事のない音がこちらに近づいてきます。振り返ると何とも奇妙な形の箱に人が乗っています。


 「ちょ、ちょっと見てみろ!何だアレ?」「おい、引っ張るな……よ?」


 立ち尽くす2人の前に止まった奇妙な二つの箱。ガチャっと扉を開けて出てきたのは……


 「おう!お前ら手伝いに来てくれたのか?だが悪いなぁ。こっちでやるからちょっとどいてくれねえか?」

 「デノン様!先に行かないでくださいよ!全く」

 「おお、ヤンすまんな。アレ?ブライトどうした?」

 「馬鹿ギルド長はデスクに監視付きで縛りつけてきましたから、書類整理しているはずですよ」

 「お、おお……そうか。まぁ、早速やっちまうか」


 デノンさんとヤンさんが、グランデ宅急便センターの1人用配送車、通称「グラタク」に乗って登場です。あ、グラタクの命名は僕ですよ!カッコイイでしょう!ん?なんか違う意見聞こえますがおかしいですねぇ。ま、それは置いといて。


 デノンさんが「グラタク」からタブレットを出してカメラモードにしています。ヤンさんは既に設定をしてきたのか、タブレットで周りを撮影しています。すると……


 「「はあああ!!?」」「お、いい感じじゃん」


 何と!ヤンさんの撮影した場所から瓦礫や壊れた家が消えたじゃないですか!これには冒険者の2人は驚きすぎて叫び出します。デノンさんはそれを見て自分も撮影し始めましたね。


 辺りから消えて行く瓦礫や家を、ぽかーんと見る冒険者の2人。ものの数分で景色がただの何もない土地へと変化しました。するとブロロロロロ……と背後から今度は数台こちらに向かってくる音がします。今度は長距離運送車のミニバン「グラ車」もきましたよ!え?ダサい?良いんです、僕がオーナーなんですから。


 バンバンバンバン……とグラ車やグラタクから出て来る、ドワーフの大工職人や土魔法専属の魔法使いさんと、カディル人の配送スタッフ達。「お、来たな」とデノンさん。


 「っかぁー!マジで全部収納するとは恐れいったぜ!」

 「本当にここに瓦礫あったのかぁ?」

 「まあ良い、儂等はやるべき事さえやってればあの美味い酒に今日もありつけるんじゃ!」

 「ああ、グオルクの奴がまだまだ上手い酒があるって言うてたものなぁ。しかし景気付けにウィスキーっちゅう奴飲みたいのぉ」


 辺りを見回し驚きながらも流石ドワーフですねぇ。仕事始めのお酒の要望が出ましたよ。それにはデノンさんが「ホレ、1人一本だとよ」と渡して行きます。「おおお!」「さすがじゃわい!」「景気いいの!」「くうー!有り難え!」と受け取って行くドワーフ職人の皆さん。ええ「店主会」のドワーフ、グオルクさんが呼んでくれた皆さんですからねぇ。ここは僕が出しましたよ!


 因みに渡したのは◯ッカ フロ◯・ザ・バレ◯ですよ。ブレンデッドウィスキーでお値段手頃。非常に飲みやすいとはいえアルコール度数は50度以上。まあ、皆さんは常に60度以上飲んでますし、いいかなぁって。


 「よおっしゃ!今回の依頼は当たりじゃわい!」「毎日出るんじゃろ?」「くう〜!やるぞぃ!」「よし!そこのカディル人の男よ!道具と材料出してくれ!」「「はい!只今!」」


 デノンさん達をもはやいないものとし、動き出すドワーフ職人の皆さん。ドワーフ職人さんには2人のグランデ宅急便スタッフが付きます。タブレットから資材の持ち出し、補佐担当ですね。


 「で、私の仕事も出してくれますか?」

 「はい!ではレンガ材、石材をお出します」


 今度は土魔法使いの男性がカディル人スタッフにお願いしています。そう、うちの宅急便のタブレットは収納無制限、選別はハヤテ達が行いますからね。収納した物の中から選択して取り出すのは通常業務ですから。


 道路脇に出した崩れたレンガ達と石材。「出来るところまででいいのですよね」と魔法使いの男性は崩れたレンガを使用可能なレンガへと作り変えていきます。作り変えたレンガはすぐにタブレットで収納。すると、ドワーフ組の方についているカディル人スタッフもすぐ取り出せますからね。


 「じゃ次は」と土魔法使いの男性は、石材を用いて道路に埋め込んで行きます。石畳代わりに使うんですね。きっちり表面を滑らかにしてあっという間に出来る立派な道路。これを3回繰り返したところで「ここまでですね」とため息をついて魔法使いさんが申告します。すると、カディル人スタッフが「ありがとうございました。ではこちらをお受け取り下さい」とターミナルウィークリー通行パスポート、グランデホテルウィークリー宿泊パスポート(ビジネスホテルタイプまで)を渡します。


 「お!やった!これでターミナルのモニターでやっていたグランデホテルに入れるのですね!」と嬉しそうです。最近ターミナルのモニター前は更に人が増えまして、グラン達がこぞってCMしているんですよ。おかげで認知度が上がってきたんです。その様子を見てデノンさんヤンさんが頷いています。


 「いい感じじゃね?」「そうですね。この分だと数日で片付きそうです。次の現場にも行ってみましょう」


 2人共また「グラタク」に乗ってこの場を去って行きます。残されたのは状況についていけない冒険者2人。


 「お、おい。俺ら夢見てねえよな?」

 「……これドゴスさん知らねえだろ……悪い!俺戻るわ!」

 「え!おい!どーすんだ依頼!」


 何も知らない1人の冒険者を置いて、もう1人の冒険者は走り出して行ったそうです。どうやら1人はコバディのところの冒険者だった様ですね。ふむ……それはそれは。


 「で、どうするんだ?トシヤ?」と本日の護衛担当「テラ」のボルクさんがジュージュー肉を焼きながら僕に聞いてきます。あ、今僕らはキッチンカーで現場に来ています。そして僕はキッチンカーの入り口で現場スタッフから報告を受けていたんですよね。


 「おーい!トシヤも野菜くらいは切れるだろ!手伝え!」と苦手な料理に借り出されているグレッグさんが僕を呼びます。ジェイクさんはキッチンカー内の流しで洗い物。器用なスレインさんは隣りに座りナイフでスルスルとガイモ(ジャガイモみたいな野菜です)を剥いています。


 「ちょっと!手伝ってくれるんじゃないの?オーナー?」


 ボルクさんの隣で味付けをしているヘレンさん(エルフのレノさんのお母さんですよ)からも声がかかりましたが、僕が動いていいのでしょうかね?と思って一旦報告を打ち切り立ち上がると、「お前は辞めとけ」とボルクさんから止められる僕。そしてみんなにヴァントさんの屋台での様子を話すボルクさん。結果……


 「お前動くな」「だな」「何で焼くだけでそんな大事になるんだよ……」「オーナーは奥に座ってて」


 みんなに否定された僕。うん、予想通りです。


 さて、ご覧の通りターミナルの仮研修は既に実地研修の段階に入っています。どうせならもう動き出そうって話になっていたんですよ。で、僕はヘレンさんのキッチンカーで見学していたんですが、護衛メンバーを見て人手と思ったヘレンさんによって、テラメンバーは補佐に入っています。もちろんキッチンカーメンバー6名、一台ずつ乗ってきてますよ、助っ人にもなるお子さん連れで。


 今日のメニューは「生姜焼き丼」、「カツ丼」「天丼」「オーク丼」とサイドメニューでガイモフライ(ヘレンさん担当)、「ボアチャーシュー丼」「一角ウサギ肉使用の中華丼」で丼フェアです!


 広々とした元カディル人街に奇妙な箱が来たと思ったら、いい匂いがして来るものですから、気になって集まってくるドルナウの街人達。勇気のある1人が恐る恐る確かめに来たので、一つ500ディアでオーク丼を売ったら、これがきっかけで買いに来る人達。練習が本番に変わったのですが、それぞれの車には補助機能もあるし、このまま販売展開をしていた訳です。あ、作業員はタダですよ。


 いやあ、作業員の皆さん食べる食べる!全種類制覇した方もいましたねぇ。お見事です。それを見てまたお客様が来店されますが、余計なお客様もくるんですよねえ……


 「おいおい!お前ら!誰の許可を得てここでカディル人達から買ってんだ?」「良いのかぁ!コバディで買い物できなくなるぜぇ」「塩は必要だもんなぁ」と柄の悪い冒険者3人が来るじゃないですか。


 すると青い顔をした街の人達はサアッといなくなり、残ったのは作業員のドワーフの皆さんと土魔法使いの皆さんと我がカディル人スタッフ。あー、せっかく来てくれたのに何でしょうこの人達。


 作業スタッフの丼を見て「お、美味そうじゃねえか」「よこせ」「俺らが食ってやる」とまあ、いきがってますけど……相手が悪いですねぇ。


 カディル人スタッフは、いち早くタブレットのセキュリティ設定を起動させ皆さんを集めます。するとタブレットから半径3mは亜空間と同じ空間になりパスポート持ちじゃなければ入れない空間になるんです。しかも移動も可能。


 これは当然「グラ車」と「グラタク」、「キッチンカー」にも初期機能として付いているので全部が起動されると結合して巨大な亜空間ドームが完成されるんです。ん?持ってない人はどうなるのかって?


 「うぎゃああ!」「ぐえっ!!」「ぎょえっ!」


 ドサドサドサッと弾き飛ばされて、地面に叩きつけられる柄の悪い冒険者達。それを見ていた「テラ」メンバーが「おお!飛んでった!」「は!馬鹿野郎共!」「成る程な……」「俺らが出なくて良いわけだ」と納得してましたね。


 当然恥ずかしい思いをした奴らは「「「覚えてろ!」」」と三流の言い訳をして戻って行きましたけど。まあ、良いセキュリティの確認になったと言う事で。人も引けたし今日のキッチンカー研修は一旦終了。車専用亜空間ポータルが設置されている商業ギルドへ戻ります。


 車専用亜空間ポータルの出入り口は一つ。レンのグランデレンタカーショップ教習所へ繋がるポータルとグランデ宅急便センター車庫に繋がるポータルが自動認識で切り替わり目的地へ繋がります。


 まあ、今回無事に戻ってこれましたけど、キッチンカーメンバー怖くなかったですかね?教習所について僕がちょっと気になって様子を見ると……


 「ザマーミロ!」「スッキリしたよね!」「アイツら本当嫌いだったもん!」「いい気味だよ!」とキッチンカーメンバーの子供達が興奮気味に話してます。ママさん達は「これなら安心ね」「女性だからって侮られる事もなくなるわ」「そうね!」「後は味付けに慣れないと!」「そうねぇ、今回石盤に頼っちゃったし……」「でも収穫は多いわよ!」と前向きに捉えていたので一安心。


 ヘレンさんに感謝を伝えてから、後は皆さんとレンに任せて僕らは貸店舗の見学に向かいます。いやあ、ボルクさん、スレインさんヘレンさんから「また来て!」って言われてましたねぇ。2人共げっそりしてましたけど。え?僕らは気にしませんよ。人には得て不得手があるものです。


 さてレンタカーショップを出て、賑やかになったターミナル内を歩いて行くと、大型モニターではグラン達が今日もCMを頑張っています。今はティモの五分クッキングの時間ですね。皆さん立ち止まって見ています。


 その中賑わうジーク君、ドイル君のお店。良いですねぇ。二人共イキイキ商売しています。屋台組も結構売れていますね。その隣の貸店舗を覗いて見ると、貸店舗の主人達が会議中。それぞれタブレットの使い方ある程度慣れたみたいです。店内にモニターがある店舗でしたので、ファイやビニーがサポートしています。


 うんうん、良い感じです。どんな店ができるでしょうねぇ。頷く僕の横で「なんか良い感じだな」「活気出てきたよなぁ、ここ」と言うグレッグさんとスレインさん。


 「じゃ、俺らも動き出すか?」「そろそろ良いだろう」と僕に向かって尋ねるボルクさんに同意するジェイクさん。


 そうですねぇ。

 他の街に繋がるのはいくらでも早い方が良いですからね。

 よし!次の出張扉を設置しに動き出しましょう!

アクセスありがとうございます!研修ターミナル編ですがまあ、実地研修編でしょうかね^_^;でもターミナル内にある店舗だからターミナル編にしてます。そして同時に動き出すメンバー達。更に謝る作者。……トシヤのバージョンアップ話忘れてた……。と言う事で次回はそれも入ります!すみません、こんなんで。でも宜しければぜひ明日もアクセスしてみて下さい(*´꒳`*)

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