480日目その2 河童の悲しくもなんともない過去!
「たっだいまー!」
「おかえり。まだ終わってないから、もうちょっと待って」
「わかってるわ」
買ってきたもの使って、ご飯でも作ろっと。
「芽衣。ご飯は私が作るわよ?買い物行ってくれてたんだし、休んで?」
「ん。了解。なら、ゆっくりさせてもらうわ」
尤も、ゆっくり出来るのはご飯が出来るまででしょうけど。それまでに雷のチェックも終わるでしょ。
ちょっと甘いものが欲しいから、買ってきたグミの袋を開けて口の中へ。むー、思ったより甘くない。そして、弾力が足らないわね。もうちょっと硬いのが好き。
「そうなの?」
「うん。あ。こっくりも食べる?」
「ごめん。聞かれる前に食べてるの」
なんだコイツ。それ、わたしのよ?
「お金は雷が出してるのー」
「それはそう。でも、買ってきたのはわたしよ?」
「確かに。ごめん」
「いいわよ。聞いたしね、食べる?って」
聞いてんのにやっぱなし! なんざ言わんわよ。あまりにもひどいと別だけど。
「既に割かし、硬い気がするの」
「そう?」
すぐに噛み切れちゃうけど……。
「あ、もしかして、口の中に長く残るのをお望みなの?それならガムのがいいの」
「ガムは味無くなってから、捨てるタイミング考えなきゃだめでしょ?それがめんどくさいわ」
「この裏切りもの!」
? 唐突ね。わけわかんないから、とりあえず硫酸でも投げようかしら。
「あそこは硫酸廃液流していい場所じゃねぇの」
「じゃあ、硫酸と|ソーダ《水酸化ナトリウム水溶液》投げるわ」
「ならいいの」
「よくね、ぎゃああああ」
ふっ、つまらない河童をやってしまった…。ま、投げたやつが上手い事中和するとかないんだけど。
でも、量が少ないから河童の皮膚に吸収されるから、排水口には流れないから問題ないわね。
「ぶん投げてる時点で大問題じゃよ」
「確かに。今回は大丈夫だったけど、まき散らされると危ないわね」
特に雷が。わたしらは怪異だからアレだけど。
「言うの忘れておったが、芽衣。咲。お主ら、半分くらい人間になっとるぞ」
「え、マジで?」
「マジじゃよ。DNAで違和感がないようにしとるんじゃ。全部怪異で人間っぽさが出るわけなかろ」
それはそうね。確かに。じゃあ、
「河童のセリフはそれ関係?」
「だと、今更過ぎんかの?」
まぁ、軽く100日は経ってるわね。なら、違うか。でも、こっくりとぬら爺なら、心読めるでしょ?
「「出番の話じゃの」」
いつものことながら唐突過ぎる……! 存在が飛び道具になってるわよ、あいつ。ま、あいつはいいわ。
「ぬら爺。今更過ぎるけど、その弊害は?」
「特にないぞい。じゃからこそ、今まで言う機会もなかったんかったんじゃぞ」
それもそうね。…その原因が危険薬品投擲って何なんだろ。自分でやったけどさ。
「でも、わたし、透過できるわよ?当たらなければ問題ないわよね?」
「じゃな。じゃが、当たらなければ。じゃぞ」
当たれば人間同様に融けるってことね。…うん?
「わたし、もともと人形の怪異だから、組成が人間なのおかしくない?」
「おかしくないのう。検査したら一撃でバレるじゃろが。んなもん」
確かに。
「後、年もとるの」
「研究者として働くなら、そっちのがいいわね」
いや、でも、年を取らないように見える(本当に年を取ってない)って、話題性抜群よね。研究費稼ぐのが楽になるのでは……?
「駄目だこいつ、早く何とかした方がいいと思うの…」
「ただし、寿命がない生き物に寿命を付けるのは可哀そうじゃから、寿命はないぞい。死にたきゃ死なせてやるがの」
「え。ほんと!?」
やったー! 思う存分研究できるじゃない!
「駄目だこいつ(ry」
こっくりがなんか言ってるわね。
「咲も同様じゃぞ」
「私は芽衣と違って、元が口裂け女だから、透過とか出来ないわ。デメリットしかないといえばないのだけど?」
「諦めろい。わし、ずっとおじいちゃんじゃぞ」
おじいちゃんでも、見た目だけで能力とは全盛期なんじゃないの?
「お主らも同じじゃよ」
なら、マジでわたしはそんなにデメリットないかしら。
「ま、お主は愛する人とともに年を取る楽しみを味わうがよい。それは、普通の怪異では楽しめぬことじゃ」
「それはそうね……。わかった。そうするわ」
それで納得するのね…。
「ぬら爺。そんな逸脱しまくってる部分があるのに、人間って言っていいの?」
「人間社会に出て行くのじゃ。構成主体が人間なのじゃから、人間なのじゃ」
「あ。これ、話のキャッチボールが出来てないやつなの。こ、これが人間だったこっくりと元から妖怪のぬら爺のギャップなの……!」
「冗談じゃ。逸脱してようが、遺伝子的には人間じゃろ?しかも、半分と言っとるじゃろが。それに、ほら、お主が読んだことがあるかは知らぬが、転移モノがあるじゃろ?それで魔法が使えるようになった人間を、人間じゃないと考えることはなかろ。今の芽衣はそのようなものじゃ」
わたしは今、透明になる魔法と、若返りの魔法が使えるようなものってことね。そう考えるとあんまりすごくない気がする。
「十分すごいの…」
「それ言ったら、こっくりのがやばいわよ。浮けるのよ?」
川とかあってもガン無視で行けるじゃない! わたしは、川があったら泳がないと渡れないのよ? いかに透過出来ようとも。
「完成。ご飯できたわよ」
「ありがとー」
今日のは材料的に親子丼…ね! やった。ふわふわ卵が絶対に美味しい!
「「「いただきます」」」
「裏切り者ぉぉお」
「ねぇ、またなんか言い出したんだけど」
相変わらず復帰が早いわね、あいつ。
「今更過ぎることを言っとるのぅ…」
「何なの?」
「超今更じゃが、芽衣、もとは人形の怪異じゃろ?ご飯いらんかったじゃろ?」
「ん?確かにそうね」
別に脅かして、恐怖を食べるとかじゃないもの。食べようと思えば食べれたけど。
「てことは、ご飯がいるようになったの?わたし?」
「ん?そんなことないぞい。別に要らぬぞ?QOLがあがって、効率が上がるだけじゃの」
「超大事ね!」
Quality of Life! 生活の質の向上は生産性に直結するわ!
「なら、何であいつは突然、言い出したの?」
「それはの、こっくり。河童は色んなものを食べるんじゃが、人間のお尻から抜いた尻子玉というのも食べるんじゃ。最近の河童は、人間と関わることが少なくなっとるのと、アイドル的な側面が強まっとることから、食べることをやめたのじゃが…。あいつだけはまだ食うんじゃ。しかも、「人間の若いおなごのしか食べとうない!」とかほざくのじゃ。故に、周りの河童から「存在が河童の名誉棄損」だの「飽食の時代により好みして餓死する間抜け」だの」言われておっての」
心の中で言うだけなら兎も角、言ったら駄目よね。うん。ドン引きなのだけど!?
「じゃろ?じゃから、好きなものが食べれるお主が羨ましいのじゃろうて」
「マジで今更ね」
だいぶ前から食べてるし。
「ねぇ、なんであいつ、何でここにいるの?」
確かに。もとは河童のとこにいたんでしょ? 河童の名誉棄損的存在として。
「じゃからじゃよ。こっくり。芽衣。奴が何かやらかす前にって、押し付けられたのじゃ」
草。
「雷ー。押し付けられて迷惑じゃないの?」
「別に。あの子もあの子で、場を和やかに……してる記憶があんまりないけど、液体が基準満たしてるかの判定に使えるしね」
「前に言ってた鉱山のカナリアと変わりないんだけど?」
「あ、死んでる。危ない危ない、有害物質垂れ流すとこだった」でしかないじゃん。
「それじゃと、間に合わんじゃろ?じゃから、ちゃんと浄化しとるぞ。その代わり、ぐだってなるだけで」
「だけって言うなし!」
「うん、その抗議は正当ね」
珍しく。だからと言って、解放してやる義理も……何であいつ、こっち見てんのよ。
「聞くの?」
「めっちゃ嫌そうな顔してるけど、聞かせて?」
「「芽衣が今、人間なら、年齢的にばっちりでは?」だって」
…………。
「ぬら爺。ちょっと、あの辺、コンクリでガッチガチに固めてくれない?」
「えっ」
「よしきた」
「あっ、ちょっ」
よし、悪は滅びたわ。
「ちなみに、咲に対しては「咲もいけ……いや、ババアだしな」って言ってたの」
「加熱してもらっていい?あれ?」
何で言ったし。こっくり。
「こっくりも芽衣と似たようなものと言えば似たようなものなの。こっちに来られても困るの」
「だからって、他人に頼んで、刑罰重くする?」
自分でやりなさいよ。
「予防でぬら爺に頼むのはなんか違うの」
違うのかー。その感性はわかんないわね。でも、コンクリに埋められてる河童に、今のやり取りは伝わってるのかしら。伝わってないと、何で酷くなったかわからないと思うんだけど……? ま、いっか。ご飯、美味しいし。




