368話その3 いるもの作るよ!
まぁ、ぴかっと光ったところで自覚するところに影響は何もないんだけど。
「おそらく出とるぞ。じゃが、忘れんうちにとっとと登録するのじゃ」
「あいさー」
必要情報をぽいぽいぽいっと入れて……
「雷ー。発表形式ってなにー」
「発表形式だぞ」
「そのまま返してくるのやめて。答えになってないから!」
Q. ほにゃららって何? A.ほにゃららです。は質疑応答として成立してないってそれ一。
「見して。ふむ……要するに、前に立って発表した後で殺されるか、紙の前に立って制限時間いっぱい殴られるか。どっちか選べってことなの」
物騒すぎない? こっくり?
「はっは。そんなことはねぇの。まぁ、どっちでもいいと思うの」
「だな。こっくりが言ってくれてる通りだ。芽衣。好きな方を選べ」
なるほど。じゃあ、初回として向いてるのはどっち?
「知らねぇの。一応、ポスターだと思うの」
「ありがと、なら、それで行くわ」
えいえいっとな。ふむ、ポスター作製要綱を見て作れとな。うわ。グロでかサイズで作らなきゃ駄目なの!?
「遠くからでも見えるようにって心構えなの。ま、書いてる指示守ってればそうそう変なことにはならねぇの」
あいあい。でも、図のサイズとか弄るのめんどくさい……。もうこれ、結果だけバーン! って張っちゃ駄目?
「それでちゃんとしのげる自信があるなら構わねぇの」
無理☆ ……まともに作りますかー。
「雷さん。研究室の子が作ったのは?参考に渡してあげないの?」
「確かに!ごめん、忘れてた!えっと、USBは…」
「私が場所知ってます」
「ごめん、お願い」
マジで雷、咲に頭上がらなさそうね……。
「芽衣。ちょっとマウスかして」
「はーい、お願い」
適当にぽいぽいっとデータを投げてくれた。って、重い!? え。何でこんなフリーズしてるの? あ。出てきた。は? え、待って。何でたった数個で1 Tまでいってるの!?
「え。えーと……あ、ごめん。要らないデータもあるわ。後で消しとこ」
戦犯のファイル名がやばいんだけど。何、「悪霊退散」って。
「中見たらわかると思うの。ぽちぽちっ」
自分でSE出していくスタイル。嫌いじゃないわ。
「あぁ、コピペの産物みたいなの。悪霊退散って文字を大量に羅列しただけなの。はっ、この程度で悪霊退散出来たらせわねぇの」
「こっくり。それはいいけど、データ渡させて」
「あ、ごめんなの」
よし、データはちゃんともらえたわね。中身……はまとも……っぽい?
「データ量だけで判断してんじゃねぇの。明らかにチラシ混じってるの」
掲示板に貼ってそうな、要らないのね。…え、でも、ここに入ってるってことは、まさかこれがポスター!?
「ちげぇの。サイズ的にはそんな感じなの。参考に出来るやつだけ見て作るがいいの。ま、こっくりも手が空いてれば教えてやらんこともないの」
ありがと! よーし、作るわ!
「あ、ポスターより先に、要旨書いてね」
「ゑ?」
さっきまでポスターの話してたのに!?
「まず、要旨って何?」
「漢字で書くと、文の要点の要と、旨味の旨なの。要は、大事なとこだけ抜き出せってことなの」
「なるほど、それの書き方は?」
「誰かが作ったの見る方が早いの」
えぇ…。てことは、
「咲。要旨も頂戴」
「了解」
すぐにくれたわね。えっと…、うわぁ、超コンパクト。A4用紙一枚に全部ぶち込んでるの、これ。えっぐ……。
「まずは適当に構成作って。時間もないし、サクサクやろう」
それってサクサク行けるモノなの……? ううん、ここでごちゃごちゃ言ってたって仕方ないわ。やるわ!
「やる気出してるとこ申し訳ないけど、ちゃんと、この学会の求めてる作り方で作るの。枚数違うとか、左右の余白違うとか、ちょこちょこあるのー」
「ありがと!」
えっと、要綱要綱……これね! そんで、過去のこの学会の要旨……求めてる要件は一緒っぽい! なら、これをコピペしてテンプレとして改変して行けばいいわね! やるわよ!
「出来たぁ!」
「頂戴。すぐに見る」
「え、あ、うん」
「ちょっとのんびりしてて」
はーい。のんびり…ねぇ。おやつでも食べてようかしら。確か、お茶の茶葉といい感じのクッキーが棚にあったような…。あぁ、あったあった。お茶を注いで、クッキーを盛って、
「芽衣。話そう」
「はやっ!?了解。やるわよ」
食べようとしてたとこだったのに! って感じはあるけど! やるわ!
「多分、この方針より、もうちょっと出来たものの成果をアピールする形の方がいい」
「なるほど?理由は?」
「インパクトを出すため」
「なるほど?」
______
「疑問点は?」
「ないわ。さっさと修正するわ」
「うん、お願い」
さー! 書くわ! でも、疲れたからお茶……って、こっくりに飲まれてるー!!!!
「こっくりー!」
「冷めるからもったいねぇの。心配しなくても、こっくりが新しいの入れてやるの」
「あ、ありがと」
ソファに座ろうと思ってたら、なんか作業机の前に座らされたけど、ありがと。
「そら、これでどうなの?」
「あ、ありがと」
このお茶、美味しいのかしら……。あ。美味しい。ていうか、悔しいけど、わたしよりうまいかも。
「なら、とっとと書けなの」
「あ、そうくる?」
「なの。人間なら兎も角、怪異なら出来るの」
ですよねー! あーもー! 嫌だけど、やってやるわよ!
出して、直して、出してを繰り返すこと3回。
「正味、まだ若干直したいような気がしないでもないけど、時間もないし、出そう」
「えぇ……」
それでいいのかしら。
「出せなきゃ何の意味もねぇの」
「こっくりさん、良いこと言う!そう!出せなきゃ意味ないんだよ!芽衣!」
「まぁ、そうね」
ちょっと解せないけど……。
「大丈夫なのかしら。こんな超特急で仕上げて」
「大丈夫。良いモノにはなってるよ」
かしら? まぁ、でも、文の骨格はわたしのが生きてるけど、ほぼほぼ雷仕様だし、平気かしら。
「図表は芽衣のなの。ま。変わる方が珍しいけど」
じゃあ、言うんじゃないわよ。
「変わる時は変わるの。変わってないから、そこは誇って良いの」
そっか、なら、完成! とっととこれを送って……! よし! これで参加登録完了ね!
「なら、ポスター作るの」
「今日は休ませて!?」
まだ期限まであるから! しんどいから! ずっと今日、なんか書いてるから!
「雷ー!芽衣がポスターのver1完成させたのー!」
「なら、後で見るからこっちにデータで頂戴。さすがにポスターサイズの紙はないから」
!?!??
「芽衣。データ送るの」
「え。待って。いつ、わたし、ポスターを描いたの?」
「カットしてる間なの」
だからメタい。てか、何でカットなのにわたしがこんなに困惑してるの?
「ネタにするためなの」
「身もふたもないわね!?」
ま、まぁ、いいわ。さっさとデータ送りましょ。