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367日目その1 ブツの検査!

さて、これで反応は終わりね。ノートとっといてよかったわ。じゃないとミスってんのが多すぎて再現できないところだったわ。



 見直して頭抱えたけど。マジでミスしすぎてるのよー。なんでこんなしょうもないミスをものっそい気軽に犯してるのかしら。



「気がそぞろすぎたの」

「うっさい。わかってるわよ」


 ? 何でこっくりは目を丸くして驚いているのかしら? 声が大きかった……訳ではないと思うのだけど。



「昨日から話しかけても無視されたのに反応してくれたからなの」

「あ、そうだったのね。ごめんなさいね」

「なんかむかつくの」


 何でよ。謝罪が軽すぎるのかしら? 1000年の土下座と賠償が必要かしら?



「んなしょうもないこと言わねぇの。何か嫌な思い出が……」

「ご め ん な さ い ね?」

「ぎゃああああああ!なのー!」


 取って付けたように「なの」を付けたわね。



「咲。それって何なのよ?」

「いつかのセンター試験国語ね。やたらむかつくってことで話題になったのよ」


 なるほどね。元ネタは分かった。だけど、こっくりが何でそれを知ってるのか、何でそれをトラウマにしてるのかが謎ね。



 特に興味ないけど。



「持ってほしいの」

「うわ。いきなり復活したわね」


 頭抱えて白目剥いてた……いや、剥いてなかったかしら。



「こっち向いてなかったはずだから知ってるはずねぇの」

「それもそうね」


 確かに見てなかった気がするわ。まぁいいわ。興味持ってあげるから話しなさいよ。わたしは実験の手を止めはしないけど。



「止めてよ」

「いやよ。輪入道」


 昨日と同じように加熱してもらって……と。



「そんで、何があったのよ?」

「それは雪の降る1月のことだったの」


 回想が始まりそうな出だしねぇ……。回想なんでしょうけど。



「花も恥じらう女子高生だったこっくりは」


 やたら自己評価が高……うん? 女子高生?



「待って、女子高生?」

「そうなの。女子高生だったの。センターって時点で気づいてほしかったの」


 こいつもともと人間だったの!? なじみすぎててぜんっぜん気づかなかったわ!



「でもまぁ、それで分かったわ。例の国語の試験で全然点数が取れなくて自殺かなんかしてその怨念が残ったのね?」

「はっ」


 こいつ、鼻で笑いやがったわ!?



「こっくりがセンター試験程度できないわけねぇの。その時も、過去問も、9割越えは余裕だったの。旧帝医学志望をなめんじゃねぇの」


 わぁ、すがすがしいほどうざいわね。わたしはセンター試験受けたことないし、今は共通試験だっけ? に代わってるから一生受けることもないでしょうけど、受けたことある人からしたらうざいことこの上ないわよ。



「そうなの?そうだったらご め ん な さ い ね」


 うわぁ……。ま、それは置いておくわ。わたしには効かないし。



「じゃあ、何でこっくりになったのよ」

「こっくりは試験会場まで自転車で行ったの」

「雪が降ってるのに?」

「なの。雪が降らない民からすればバカっぽく見えるかもだけど、雪が降る所では普通なの。気を付けるとか、タイヤをスパイク付にしておくとか、対策は出来るの」


 なるほど。じゃあ、雪はあんまり関係なさそうね。



「あるの」


 草。あるんかい!



「あるの。でも、こっくりは毎日1時間かけて自転車で通ってたの。その程度で事故るわけないの」


 なんなのこの子。勉強もできる癖に体力お化けでもあるの?



「今はお化けだk「ふんっ!」うぇぶっ!


 しょうもないギャグを言おうとした河童が沈んだ! このヒトデ!



「だから人じゃ……うん?あの、メリー。訳の分かんないボケをかますのは止めるの」

「ごめん」


 うん、対処にめっちゃ困ってたもんね。ごめん。



「話を戻すの。あの日、私は試験が終わってひゃっはー!という気持ちで坂を下っていたの」

「雪降ってるのに?」

「こっくりは雪ごときで怯まないの。積もっていたってそれは変わらないの」


 あ。積もってたのね。……自信家過ぎない? それで何で無事なのよ。



「ふっ、無事じゃなかったからここにいるの」

「えぇ……」


 いやまぁ、いちいち自転車の件をしてる時点でそんな気はしてたけど。えぇ……。



「坂道をしゃーっと下ってると、突然、目の前に紙が貼りついてきたの」


 あ。死んだわね。



「うん。死んだの。顔に張り付いたせいで前が見えなかったの。だからカーブがあったのに曲がり切れずにそのままそこに飛び出していったの。だけど、着地できたの。無傷で。さすがこっくりなの」


 えぇ……。そこで死になさいよ。何で生きてるのよ。



「わからないの。そんで、そのまま走ってたら死んだの」

「唐突ね」

「なの。最後、ちょっと浮いたような気がした後、落ちるまでの間に死んだから、歩道の段差にでもひっかかって、それから電柱にでも激突したの」


 それは死ぬわね。どうあがいても。でもさ、



「なんなの?」

「今のにゴメンナサイネは関係あるのかしら?」


 ぶつかられてゴメンナサイネとか言われたのかと思ったのだけど、そんなこと一切なかったわよね?



「ちゃんとあるの。ゴメンナサイネが割と話題になったから、それを絵にするやつがいたの。で、その絵は「雰囲気があって怖い。その上、むかつく」的な感じで話題になったの」


 怖いとむかつくは同時に存在できるのかしら。



「出来るの。それで、受験生を煽るためにそれを印刷して持ってくるやつがいたの」

「著作権……」

「んなもん気にしてるわけねぇの。そいつはそれを絵がにじまないようにラッピングして配ってやがったの」


 まぁそうなるわよね。ということは。



「顔に張り付いた紙にその絵が描いてあったのね?」

「違うの。紙は受験票だったの。ざまぁねぇの。わたしがぐちゃってなったせいで、朱に染まってまともに使えるわけねぇの」


 感想がズレてるわよ。何でそれで死んでるのに、ざまぁねぇのになるのよ。



「こっくりが嫌いな奴だったの。だから言ってやったの「ゴメンナサイネ」って!なの!」


 お、おう。なるほど、そうなのね。えーと、それで終わりかしら?



「終わりなの」


 こっくりは「やりきったの」とでも言いたげな顔で頷いた。



「ねぇ、今ので終わられると困るんだけど?何で発狂したのかまるで分らないじゃない」

「わからないの?」

「分かるわけないわよ。あんたがやった側じゃない」


 事故ってるからこの言い方は正しいのかわかんないけど、少なくとも、言った側は

こっくりじゃない。



「周囲の聞いた人に絶大なトラウマを植え付けてしまったの。そのトラウマが悪い念になってこっくりにまとわりついて、こっくりはこっくりに……悪霊にならされたの。そのせいで、ゴメンナサイネに拒絶反応が出るの」

「なるほど。でも、それだと聞くたびに、言うたびに拒絶反応がでなけりゃおかしいんじゃないかしら?」


 わたしが問うと、こっくりは即座に答えを返す。



「こっくりがゴメンナサイネって言ったのはある意味不意打ちだったの。だから、出てくるってわかってれば大丈夫なの」

「なるほど。割と都合がいいわね」

「普通にこっくりとして生きていいく分には都合がいいけど、こうやって誰かと喋って遊ぶのには不便なのー」


 わねぇ。不意打ちにならないようにしようとしたらテンポ悪くなるし、不意打ちしたら発狂しちゃうものねぇ。



「そうなの。この姿もそのせいなの。もともとは結構、スタイルよかったの…」

「ほんとなの?」


 今のこっくりはわたしとほぼ変わらないちんちくりん。そっから言われても、ちっちゃい子が「将来、絶対きれいになるもん!」って無垢に言ってるようにしか見えないわ。



「ほんとなの!もうそれこそ、ボンキュッボンだったの!」

「ボンキュッボンってきょうび聞かないわね」

「きょうびも最近は聞かないの」


 ネタで言ってるからね。…ジト目で見るのやめて。怖いから。



「ん。とりあえず、めっちゃスタイルは良かったの!なのにこんな姿になったの。これはこれでかわいいから、気に入っていないわけではないの。けど、ちょっと悔しいの。悔しすぎて、怨念がおんねんって「「「うわぁ…」」」!?待って!待ってほしいの!?」

「見損なったわ、こっくり」

「わね。まさか貴方がそんなことを言うなんて…」

「安心して、くそおもんなくても、人手は足りてないから!」

「何でそんな辛辣なの!?特にメリーはさっき似たようなこと言ってたの!?あ。雷。解放してくれるなら解放してくれてもいいの」


 急に冷静になった!? 辛辣なのは大事じゃないということかしら。



「んなわけないの!何でそんな辛辣なの!?」

「くっそおもんないこと言うから」

「大阪人なの!?」

「大阪人なら関西弁をもっと使うわよ」

「せやな」

「せやせや」

「取って付けたような関西弁なの!?」


 わねー。さて、試料も出来たし、もう一回実験するわよ。



「え。ここでこっくりをガン無視していくの!?」

「さっさと結果見たいじゃない。ふってる(変えてる)条件以外は前と出来るだけ同じにしとくのは、研究者の嗜みよ?」


 だのに意味わからんのぶち込んじゃった訳だけどね! というわけでスイッチぽちー。さて、結果が出てきたわね。



「見せてー」


 こっくりもこっくりで話題変えてるじゃない。身長そんな変わんないから、手の位置を横にちょっと変えるだけでいいのは楽ね。



 …うん、一緒ね。となると、



「雷ー」

「何ー?」

「出来た」

「何が?」

「常温超伝導物質」

「おー」

「いや、そうはならないの」


 こっくりが呆れたような何とも言えない顔でわたし達を見てる。



「仕方ないでしょ、反応薄いのは現実感ないからよ」

「いや、そっちもあるけど、そんなんで常温超伝導物質は出来ないと思うのって意味もあるの」

「出来てるわよ」


 不思議なことに。二つのデータがそれを示してる。ほら、どっからどう見ても抵抗ゼロじゃない。



「いやそうだけど、んなミスから生まれることなんてあるの?」

「ん」


 ミスから出来た結果(できた物質)をこっくりの前に押し出す。



「いやだけど、そんな偶然で」

「ん」


 さらに近づける。



「ゴリ押しやめて欲しいの」


 不服と申すか。それなら、



「ん」


スマホでペニシリンのwikiを開いて目の前で揺らしてやる。これも片づけ忘れたシャーレに偶然、カビが落ちて見つかったやつ。



「あ。はい。そうだけど、何でそんな簡単に見つかるのよ」

「小説だからよ」

「ドメタなの!?」


 事実だもの。現実でこんなんで出来たら笑うわよ。



「というわけで、こっからはこれでなんか出来たって前提で進むからよろしくね!科学的裏付けは何処にもないわ!」

「究極にメタなの!」


 はっはっは。責任とれとか言われても困るもの。さて……と。



「ん?どうしたの?」

「よっしゃー!出来た!やってやったわよー!」

「今更なの!?」


 うるさいわ! 実感がやっと出てきたのよ!



「おめでとう!今日は焼肉するぞ!ここで!」

「こっちも今更なの!?てか、ここでするの!?」

「ここでじゃないとこっくりが……いや、困らないか。いやでも、さっさと何かしらの形にしたいから、ここなのよ!」


 取り皿は使い捨ての計量容器でいいわよね!

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