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180日目その2 確保ー!!!

 せっかく来た怪異手! 逃がすわけないわよねぇ!



「だから出たくなかったの!」

「あんたが馬鹿で助かったわ!」


 あんな阿保みたいな挑発に乗ってくれるなんて!



「誰が馬鹿って!?」


 あら、ちょろい。こんなよわよわな悪口にさえ反応しちゃうなんて! 



「縄持ってこい縄!」

「はっ!縄なんかで縛られると思わないことなの!こっくりはこっくりさん!霊体なの!」


 自分を名前で呼んでるせいで分かりにくいわね。



 でも、そんなのはどうでもいい! だからあなたは負けるのよ! 物質で霊体を縛れない? そんなもの幻想よ!



「うぇっ、ちょっ。おまっ……。何なの感触!?」

「縄だよ」

「こっ、これが……縄なの?」


 何で恍惚とした顔をしてるのよ。若干、キモイわね。マゾなのかしら。



「よっし!縛れたわ!雷さん!」

「だね!うまくいったよ!」


 イエーイとハイタッチする二人。ほんと、仲いいんだから。真横で手をさまよわせてる河童は見なかったことにしときましょ。



「って!縛られてるのー!?」

「やっぱ馬鹿なのかしら」


 縛れー! って言ってるんだから、縄が体を這っている=縛られかけてる。でしょうに。それをほっといたらこうなるわよ。残当ね。



「誰が馬鹿なの!?」

「あら、口に出ちゃったわね。貴方よ」

「ぐにに」


 何で反論しないのよ。激発したんだったらちゃんと言葉を紡いでみなさいよ。



「敗北者!敗北者!」

「うるさいの!うるさいの!」


 うーん、この子、語彙がないのかしら。河童も同じくらい語彙ないけどね。ネタがいちいち古いのよ。



「あたしを縛るなんて、ただじゃおかないの!」

「何がどうただじゃおかないの?」

「え?そりゃあ、もう…。すごいのがぐわー!ってなるの!」


 何でこの子とことん残念なのかしら。見た目はいいのに……。見た目だけなら正統派の少女霊よ? あ。なるほど。怪異だからって色眼鏡で見るのが悪いのかしら。



 見た目まんま……すなわちロリとして考えると、この残念さにも説明がつくんじゃないかしら。……いや、駄目よね。わかってるわ。それが正しいなら子供は皆残念になっちゃうもの。そうよね? うん。



「ほどいてくれないの?」

「欲しいの?」


 わよね。雷。なんかさっき恍惚とした顔をしてたもの。ほどく意味、あるかしら?



「ほどかないとすごいのがくるって言ってるの!」

「そんな語彙が終わってる時点で平気でしょ」

「「「んだんだ」」」

「ひどいの、ひどいのー!」


 ゴロゴロ転がりまわるこっくりさん。床は綺麗にしてるけど、よく実験室の床でゴロゴロできるわね。わたしもそこまでのメンタルないわよ。



「って、立てるじゃん!」


 そりゃそうよ。足まで縛ってないもの。両手を体の周りにぐるぐる巻きにしただけね。



「じゃあ、逃げれる!じゃねー!なの!」


 ほんっとうに嬉しそうに入り口の方めがけて走って行くこっくりさん。結末が分かってるからのんびり見れるわね。



 こっくりさんはドアを開け……開け……。



「開かない」


 えぇ……。そんなことある? こっくりさんの身長だったら普通に取っ手に手が届くでしょ? ていうか、霊体じゃない。浮きなさいよ。浮いて縄を押し付ける感じでやればうまいこといけるでしょ? だのに何でそんな絶望した顔してるのよ。絶望はまだ早いわよ。



「浮けよバカ」

「誰が馬鹿なの!?でも、確かにそうなの!ありがとなの!」


 素直ねぇ……。「わたしにもああいう時があったのかしら。



「メリーは割と純粋だと思うけど」

「心読んでくるのやめて」

「普通に声出てたわよ」


 え。マジかー。恥ずかしいわね。少し顔が熱いわ……。



「時間かかってるね」

「わね」


 話を変えてくれたからのっとこう。でも、やっぱ純粋じゃなくなってると思うんだけどなー。こうやってあの子が絶望するのをワクワクして待ってるんだもの。



「メリーも同じことあったからいいんじゃない?」

「久しぶりに言うけど、原因作ったのあんただからね?」


 雷さんよぉ。何しんみりした顔で言ってくれてんのよ。ジト目で見てやろうかしら。いや、時間の無駄ね。てか、発注まだよね? かけとこ。



「開いたー!」


 お。やっと開けれたみたい。ここまでかかるならほどいてあげてもよかった感。



 開いたドアに向かって歩き続けるこっくりさん。だけど、部屋からは一歩も出れない。なるほど。傍から見たらこういう風に見えるのね。パントマイムみたい。



 本人は必死なんでしょうけどね!



「え、えーと、出れないの……?」

「でしょうね」


 ここは出れなくなった先達として答えを教えてあげましょう。捨てられた子羊みたいにこっくりさんがこっちを見てくる。



 可哀そうだけど、それよりもわたしと同じやつが出来た! やったー! って感じが強いわ! 酷い? そうかもね。でも、この気持ちが抑えられないの! わたしってSだったのかしら。まぁいいわ。



「残念ながらあなたはもうこの部屋から出れないわ。こっくりさんは正直、こっくりさん側に帰る権限のある怪異だけど…」


 だって、帰ってもらうには儀式をしないと駄目。しないと何か悪さをする。そんな怪異。であれば、帰る帰らないは霊であるこっくりさん側に決定権がある。でも、



「今回はわたしらのせいでめでたくバグったわ。やったね!」

「やったじゃない!?」

「研究できるわよ?」

「嬉しくなぁいの!」


 そう? わたし的には嬉しいのだけど…。わからないかー。



「ま、こっくりさんは呼び出して帰ってもらうまでが儀式。そこにこっくりさんが捕まるなんて要素は介在してないわ。だのにわたし達はそれをした。だから見事に帰るって部分が消えて、捕まったって結果に置き換わったわ!」

「ごめん、簡単にお願いできる?」


 ……ごめん。難しかったよね。折角、テンション上がってたのに。



「わたし達に捕まったので、もう自由に出歩けません!」

「えっ……」


 いや、だから何で恍惚とした顔をしてるのよ。さっき絶望してたでしょうが。落差酷すぎて風邪ひくわよ。縛られた時も同じ顔してたけどさぁ…。



 自由を奪われることに快感を感じるタイプなのかしら……。放置したら喜ぶかな? 試したくはないわねぇ…。



「というわけで、買い物に行って来て」

「え?」

「「「え?」」」


 何で不思議そうな顔をしてるのよ。



「今、出れないって」

「言ってないわよ」

「あれ?言った」

「言ってないわ。間違いなく言ってない。研究ノートに誓ってもいいわ!」

「ごめん、その重みが分からない」


 分からないかー。そっかぁ……。めっちゃ大事なんだけどね、研究ノート。研究パチられたときの防御にも、研究した証明にもなって、某S細胞の人みたいな自体は避けられるのよ!



「まぁ、言ってなかったわね」

「だねぇ。言ってなかったね」

「そうそう。言ってないわ。あくまで「自由に」よ!」


 だからわたし達が行けって言えば外に出れるって寸法よ! わたしとおんなじ状況ね!



「どういう原理でそうなるの」

「ISIの力ね」


 そこに理由なんてないわ! あぁ、でもぬらりひょんがいるから、なんかいい感じにしたのかもしれないわね!



「でっ、でも、あたし、霊体!買い物が出来るわけないじゃない!」

「出来るようになってるに決まってるじゃない!」


 わたしでも出来るんだから! え? わたしはもともと人形で実体あるだろって? そーだけど、わたしはメリーさん! 壁とかすり抜けれるタイプの怪異よ! たぶん。そんなわたしがいけるなら、こっくりさんもいけるに決まってるわ!



「出来なくてもISIの力で出来るわ!」

「拒否権は?」

「ないわ!行って来て!」


 だから恍惚とした顔をするんじゃないわよ。マジで自由を奪われることに喜び見いだせる人じゃない!



 さて、実験の準備しましょうか……。え? こっくりさん縛ったまま? だのに出て行った? え、まっさかー、そんなわけ……あるわ。マズい! あ。ちょっ、まっ、ぐえっ、出れない。



「咲!」

「えぇ!行ってくるわ!」


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