セカンダ村
セカンダ村
岩だらけの坂を進むこと4時間、ようやく坂のエリアが終わり洞窟内は徐々になだらかになって行く。
そして岩の大きさも小さくなり、どうやら岩トカゲが生息するエリアをようやく脱出できたらしい。
この間に仕留めた岩トカゲは10匹近く、できるだけ坂の上を通った為ほとんどの岩トカゲは襲って来ようとしたときにひっぱたくと坂の下へと転げ落ち、半分は戦うと言うよりどかしただけといった方が良い。
坂を豪快に転げ落ちた岩トカゲ、時に他の岩に挟まり身動きできなくなったり、勢いよく転げ落ちて脳震盪を起こしたのかピクリとも動かなくなった個体もいた。
「ここからはもう岩トカゲはいないようですね」
「やっと抜けたか」ドーン
「あと少しでセカンダ村に着きますよ」
そこからは道もなだらかになり徐々に普通の砂利ぐらいの石敷の通路に変化していく、そして洞窟の左右には大きな石英の塊が見えてくる。
魔法のカンテラから発する光を反射しきらきらとあたりを照らし出す、洞窟内の天井は大小さまざまな石英が光っているがこのエリアは左右にも特大の石英が見て取れる。
ちなみに石英と水晶は同じもので、石英は総称であり水晶はその中でも結晶が大きく透明度の高いものを指していることが多い。
勿論ガラスを作る原料でもあるがこの世界ではまだそこまでの技術はあまり持っておらず、加工して板状にすることができる工房はまだ少ない。
殆どが加工された宝石を作る技術として認識されている。
「おお、見えて来たな」
洞窟をさらに進むこと30分、ようやく道の先に灯りが見えてくる、ここから先の道には一定間隔で光魔石の道標を設置してあるようだ。
「ああそれは魔光石と言って暗い洞窟内でも勝手に光るんだ、誰かが道を歩きやすいように設置したんだろう」ドーン
「へ~じゃあどこかに光る石が沢山あるんだね」ラポーチ
「この洞窟の先には鉱山がいくつかあって、その中には光魔石のとれる鉱山もあるんすよ」
約6時間岩ばかりの坂を下り、ようやくたどり着いたのは神殿のような場所。
目の前に大理石で作られた門が現れ、そこをくぐると中は大きなドーム状の空間、そこは前面四角い石がはめ込まれていて、どう考えても魔法で作ったとしか思えないような場所に見えた。
「ようこそセカンダ神殿村へ」
神殿と言って良い場所だった、全体が石で作られており村と言われてもそうは思わないだろう。
そこは昔、神の使徒が修行を兼ねて移り住んだ、彼らは魔法を使いこの神殿を数百年かけて作ったのだと言う。
今は神の使徒もいなくなり遺跡として残されたのだが、そこへ他の神を信じる信者も集まり。結果として神の村となっている、もちろん信者でなくとも滞在できるしここを通ることは可能だ。
但し若干のお布施をねだられることは我慢しなければならない。
現れた信者の横にはお布施用の石の箱が有り、その中には旅行者が入れたであろうお布施が沢山見えている、それはお金であったり、細工された彫刻であったりと様々だが。
「村への逗留にはお布施が必要です、こちらへお入れください」
「私たちはゴッゾニア帝国から派遣された近衛軍と聖女様の一行です、この先へ進み魔王国の侵攻を止めるために来ました」マーベル
「ザワザワ」
「すまん今はお布施をすることができない、魔族を追い返し勝利すれば王様から金一封が支払われるであろう」隊長
「ザワザワ」
「あ~なんか皆いやそうな顔してるっ」
「分かった、それじゃ私が何とかしちゃう、私は聖女ラポーチ、願いの聖女 病気で動けない人やけがをした人を治すことができるよ」
「本当です、私のお父ちゃんを元気にしてくれたよ」
「嘘だと思うならだれかけが人を連れてきたらいいよ」レドラ
そこからは前の村と同じように村人を20人近く診てやることになった。
その結果は書かずともわかるだろう。
「聖女様ありがちょうございます」
「聖女様~」
「ありがたや~」
神殿のような村で今夜は宿泊することになった、洞窟の中は時間がどのくらいたったのかが分からない。
この時代は時計などと言う物はなく日の光が差さない洞窟での行軍は腹の虫で時間をはかるぐらいがせきのやまだ。
魔法具の中には時計のようなものもあるのだが、この場でそれを持っている者はいなかった。
「あれは何をやっているんです?」ラポーチ
「あああれか、この神殿の中では時間が分からんじゃろ、だがな灯りをともすための魔光石というのが採れるからそれを使って時間を測ることができるんじゃ」
魔光石は大きさも光り方も様々だが、その容量を魔法で測ることができる、要するに魔光石で時間が分かるのだと言う。
「この石は8時間用、こっちの石は6時間、これは少し大きめなので10時間、これを交代であの容器に入れるんじゃ」
ちょうど今は8時間用の魔光石が消えたので次は10時間用の魔光石に交換する頃、3つの石を使い切ると24時間、朝6時から6時間用を使い次に8時間用を使うと言う風に続けてセットするらしい。
夜8時と朝6時そして昼の12時が3つの石を交換することでわかると言う事だ。
「中々便利じゃろ」
簡単な仕組みだが何も無いよりはいい、そして今は夜8時と言う事で一行はセカンダ村で宿泊することになった。
一日目の洞窟行軍は30k、岩でなかなか進まなかった道程だがそれは仕方のないところだ。
だからこそ数キロ沖に村がある、もし一日で向こう側まで進めるのならば洞窟の中に村を作る必要などないのだから。




