聖竜伝説
聖竜伝説
その町は洞窟だった、いやそれは当たり前だって?そうではなく、壁一面に穴が空いている。
それぞれにドワーフや人族、さらに魔族までがそれぞれに居を構えている。
横穴式の住居左右の壁には大小さまざまな入口とみられる穴が有り、そこまでは階段や梯子がかけられ。
我々の到着をそれぞれに見ている。
「ようこそファウストへ」村長のムット
「ゴッゾニア帝国近衛隊隊長ゼック・ガラナンだ、少し休憩させてもらっても良いか?」
「かまわんよ、それより聖女様が来とると聞いたんだが」
「あたしの事?」
「お~聖女様それに聖竜様も」
ラポーチの前で土下座する、しかもそこに他の住人も集まってきて、すごいことになって行く。
目の前にドワーフ族も含めこの村の住民30人近くがラポーチ達の前に来ていた。
「な なんだいこれは?」
「どうやらここの住人には聖女教かもしくは聖竜伝説の信仰者がいるみたいね」ジャクライン
「何?それ?」アリスリア
「聖女教の中にもある物語で、聖竜と共に巡礼の旅に出る聖女がいるって言う話でね、各地を回り奇跡を起こして国を平穏に導く聖女の事よ」ジャクライン
【わしのところにも同じような話があるな、わしはあんたの事だと思っていたんだが】ボルケール
確かにボルケールを助け先代の竜王から啓示を受けたのは魔女ジャクラインだが、それは又違う話だ。
彼女は魔王に追われた魔女なので聖女とは程遠い、まあ竜族から見れば自分達を手助けしてくれる人族なので聖女と間違う事もあり得るが。
「違うわよ」ジャクライン
【今思うと不思議な感じだったがな】
「不思議?」
【聖女なのに少し歳をとっているし、姿も清くなかったからな】
「ほっときなさいよプンプン」ジャクライン
「まあまあ」アリスリア
「とにかく少し休もう」ドーン
「よしここで小休止」隊長
壁際にはどうやら店のようなものを出し始めた住民がいる、そこからいい匂いが漂ってきた。
「あそこでお店始めたみたい」
「あ!こら」ドーン
臭いを嗅ぎ付け聖竜のオーパが小さな羽をぱたつかせながらそちらの方へ飛んでいくので、ラポーチも行かざる負えなくなった。
さらにその後をマーベルやボルケール達も付いて行く。
「いい匂い」
「キュー」
「何?これ?」
「洞窟トカゲの燻製じゃ」
「へ~食べられるの?」
「もちろんじゃ」
「キュー」
「じゃあえ~と」
「7つほどいただけますか」マーベル
後から来たマーベルが横からお金を差し出す、彼女は元居た領主の館から支度金として金貨をもらっていたらしい。
ラポーチといれば食事代などはかからないので半分は妹に預けてきたが、ようやく使う場所ができたようだ。
勿論金貨だけではなく銀貨や銅貨も持って来たようだ。
「銀貨1枚じゃ」
「こちらは聖女様と聖竜様ですが、その金額でお売りになるのでしょうか?」
「これはとんだ粗相を、聖女様とは知らずお許しください、お代は頂きません」
「え~良いの?」
「はい」
とはいえ目の前にいる店主の目には、涙がにじんでいたりする。
(あ~今日も稼ぎは無しかのう、じゃが聖女様からお足は頂けないからのう、もう少し体が動けば他の仕事もあるのじゃが)
「おじいちゃんあたしが動けるようにしてあげる」
店主である年寄りの思考を読んで、ラポーチはその力を使う。
店主の腰に手を当てるとそこから光があふれだし、その体を包んでいくと…
「お~おお~お~~腰が体が動く!」
「これでいい?」
「ありがとうございますありがとうございます」
「よかった!」
「全くおまえは…」
「ただでもらうわけには行かないでしょ」
「うふふ、こうなるのは分かってましたよ」マーベル
まあそうなることは分かっていたが、そのきっかけをわざと作るのも使徒の務め、という風にマーベルは感じているのかもしれない。
まあ目の前で奇跡を見てしまえばだれでもがそう思うだろう、特にエルフ族であるマーベルは聖なる力に対しては絶大な憧れと敬う思考を持つ種族。
精霊や妖精に対しても、その扱いは神にも等しいと感じているらしい。
そしてそれを見た他の住民もラポーチの元に訪れては聖女の力を目の当たりにする。
「ポーちゃん疲れたりしないの?」ジャクライン
「ぜんぜん疲れないよ」
一回力を使うと次々にその力を当てにして住民たちがやってくる、結局15人ほどがラポーチの願いの力で元気になった。




