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ドワーフの少女

ドワーフの少女


「どこがいいのかな?」

「3軒あるわね」ジャクライン

「右の紹介所は登山用ね」

「真ん中が洞窟専門の人足紹介所の様だな」ドーン


一行は真ん中の紹介所へと入って行った。


「いらっしゃい、と言いたいとこだがうちの人足は全員軍に借り受けされて、もう一人も残っちゃいないんだが、あんたらどこまで行くんだ?」

「トローレまでだ」ドーン

「トローレか、最長距離だな…」

「じゃあどうすればいいんだ?」

「隣のなんでも紹介所へ行ってみると良い」

「何でも?」

「ああどんな人足でも紹介してくれる、うちの人足は全員出払っちまったから」

「仕方ないそっちへ行くか…」

「わりーな」店主


一行は左端の紹介所へと入っていくと、店番には老婆が一人、まるで寝ているとしか見えない様子でぽつりと座っていた。


「あんたが店主かい?」

「あ~なんだって?」

「あ ん た が て ん しゅ か!」

「そうだよ」

「人足を雇いたいんだが」


そういうと奥の方から子供のようなドワーフの少女が走ってきた。


「あ~ごめんごめん、アタイが店主でこっちが店番なんだ」

「そうかどちらでもいいが、人を雇いたい」

「人足かい?」

「ああ、港町トローレまでだが」

「それだと金貨10枚頂くけど」

「金貨十枚だと!」

「いやなら他を探してくれ」


ドワーフの少女はニコっと愛想笑いしながらとんでもない金額を吹っかけて来た。

本来普通の人足ならば金貨1枚が相場だ、それは食料や必要経費までは含まれない。

だが最初に金貨10枚と言ってきたと言う事は必要経費は別途かかると言う事になる。


「もちろん途中でかかる食事代やその他の必要経費は別だ、前金で金貨10枚それ以外は受け付けないけど」


そのやり取りをラポーチは不思議な感じで見ていた、胸に抱いた聖竜がラポーチに耳打ちするように、頭を摺り寄せる。

その鼻でスキルでドワーフの少女の心を読み取る。


「金貨10枚の代わりにお父ちゃん?を治してあげようか?」

「は~?なんで父ちゃんの事を?」

「だって薬代なんでしょ金貨10枚って?」

「ああ、おいらの父ちゃんの病気を治すには毎月金貨2枚が必要だって、医者からそう言われたんだ」

「炭鉱粉塵肺症か?」

「ああ、長いこと山で掘削作業していて、もう肺が持たないって言われた、直すには常に薬を飲むしか方法が無いって言われたんだ」

「じゃあ直したらただで来てくれるの?」

「何言ってんだ直せるならとっくに直してるよ」

「本当に直せたらただで荷物運んでくれるんだよね」

「ああ、でもただってわけにはいかないよ、一応おいらが家族全員食べさせているんだから」

「じゃあお父ちゃんのとこへ案内して、その後は交渉ってことだね」


店に仲間を残しラポーチは少女に連れられ店の奥へと足を踏み入れる、長屋のような建物の奥から咳をする声が聞こえてくる。


「ゲホッゲホッ、ハーハー」

「父ちゃん寝てないとだめだよ」

「ゲホッ!うるせーんなわけにはいかないだろ、少しでも仕事しないと食っちゃいけないんだから、ゲホッゲホッ」


起き上がろうとする男性を娘が制止しようと肩をつかむ、それだけで力なく倒れ込んでしまった。


「くそッ、俺は神に見放されたのか…」


それを見てラポーチもドワーフの男性の肩に手を添え寝るように促す。


「な なんだあんた、ゲホッゲホッ」

「じっとしてて、今楽にしてあげる」

「…」


胸に抱いていた聖竜がぴょこっとはばたき床に降り立つとラポーチの顔を見て鳴く。


「ク~」

「分かったよ今からやるからね」


いつものようにその手を男性の手に重ねると目を閉じて念じる、それだけでその手から光が生まれドワーフの男性の体全体を包み込む。


「な…まじかよ」

「こ これは…」


肺の病気で酸素が不足していた体はみるみる健康な状態へと戻っていく、顔には生気が戻り痩せこけていた体も皮膚も健康な状態へと変化していった。


「どう?」

「え は は~~~」

「す すげ~どうなってんだ!」


いつの間にか側で見ていたマーベルが話し出す。


「この方は聖女様です、私の妹も聖女ラポーチ様に助けていただきました」


そう言って両手を組み祈る。


「せ 聖女様!」


その後はいつもの通りドワーフの少女、マリー・ベルル(16歳)はラポーチ達と共に青の洞窟横断の旅に同行することになった。


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