勇者達
勇者達
エイジアル王国は時間を追うごとに勇者と聖女の部隊により王城を皮切りに地方の領へと魔族の支配下から解き放たれて行った。
「あと一つかしら」シンシア・ラブラドーラ(26歳)念動力、活性、超再生
「ああ、ここまでは順調だな」チョリス・ヴォルガノフ(29歳)勇者・槍術士
王国の城からすでに200k以上北西へと移動してきた、今回聖女と勇者は8組が参加している、それぞれがペアを組み王城から近くにある町や市に魔族の排除を目的として進んできたが、その旅も次の町で終わろうとしていた。
エイジアル王国の左にはゴッゾニア帝国が有りその手前には妖精の森がある、以前はこの森自体が一つの国でありエルフ族が住んでいた、現在は帝国の傘下になり妖精たちはひどい扱いを受けていると聞くが。
今のところエイジアルの王城にいる聖女マリアルーナからは何の連絡も入っていない。
連絡が入っていないと言う事は魔族の排除が順調に進んでいると言う事だ。
前の町では領主もろとも粛清することになったが、牢に入れられていた前領主を解放し後を託してきた。
どの町の領主も2名から4名の魔族が担当し町を牛耳っている、そうゴッゾニア帝国は各町に軍を派遣していたがエイジアル王国に派遣されている魔族はそれほど多くはない。
それにエイジアルから魔王国へと帰還する魔法陣は作られていないようで、エイジアル王国から魔王国へと帰還するには一度ゴッゾニア帝国へ移動してから魔王国へと転移するようになっているらしい。
すでに午後5時を回り、10k先にある国境の町へと進めば魔族の排除後はその町で一夜を明かすことになりそうだ。
「この丘を越えれば…」
「見えて来たわ!」
国境の町フーデリア、その向こうには大きな森林が有り、今はその森林が国境線になっている。
以前は森にすむエルフとの交流の町でもあったのだが、今は彼らも帝国に侵略されてしまっている。
「なんか変じゃない?」
遠目から見ても町の様子がおかしい、というより騒がしい。
2人は速足で丘を駆け下りていく、すでに200k以上を歩いてきたので本来疲れて歩けそうもないはずなのだが、さすが聖女の一人シンシアは超能力所持者、自分たちの体を補助するスキルを使用している。
町の入口には本来警備兵がいたりするのだが様子がおかしい。
「おかしいわね、とにかく中へ入りましょう」
「ああ」
街の中へと入っていくと中央の広場には人だかりができていた。
噴水のある広場には立札が立っておりそこには張り紙が張られていた。
【緊急連絡、これよりブリタス聖王国と戦争を行う、魔族は直ちに本国へ帰還する為ゴッゾニア帝国帝城転移館へと移動されたし、ゴッゾニア帝国帝王ジード・ブラッツアール・G】
「ねえねえ、これってどういう事?」
「ああ帝国と魔王国が手を組んで聖王国にケンカ売ろうって話だ、魔族は全員帰還だとさ」
「そうなの?」
「何かおかしいわね全員帰還なんて、もしかして帝国も解放しちゃってたりとか…」
「普通数人は残すはずだがな、まあこれで魔族を排除する手間は省けたが、領主の洗脳が残っている」
「そうね急ぎましょ」
町の端にある一回り大きな洋館へ向かっていくと、そこにも少しの人だかりが。
「なんの騒ぎ?」
「どうやら領主様が倒れたらしい」
人だかりをかき分け建物の中へと入っていくとそこにはソファーに寝かされた領主と思しき男性とそのそばで様子を見ているメイドの姿が。
「どうしました?」
「それが魔族の従者の方がいなくなったら突然倒れられて…」
「ちょっと見せてくれる」
「あ え ちょっと…」
メイドの制止を振り切り領主とみられる男性の手を取るとシンシアは魔法と自分の能力である活性と再生を使い領主の体から魔法の残滓を排除する。
多分隷属系の魔法で操られていたのが術者の支配下から離れたために意識を失ってしまったのだろう。
このまま置いておくと魔族が帰ってきたときに又支配されてしまう。
まずは魔法の力で脳内にある魔力をリセットする、そして失った記憶や体力を活性で取り戻す。
「マジカルスキャン」
「やはり隷属魔法が掛かっているわ このままでは又洗脳されてしまう」
「マジカルリムーブ!」
「フィジカルアップ!活性」
数種の魔法と自己スキルを次々に掛けていく、ソファに寝ていた男性がようやく目を覚ました。
「こ ここは?」
国境の町フーデリアは聖女と勇者が戦わずして魔族から解放することができた。
この後聖女と勇者は町を調べ転移魔法陣を全部消していった、もう魔族が入り込まないようにだが。
そして夜8時になってようやく聖女マリアルーナから連絡が入った、その連絡では魔族は全員魔王国へと帰還し、ゴッゾニア帝国の帝王に掛けれた呪いも解除したと言う知らせが入った。