魔王国の戦略
魔王国の戦略
帝国はすでに敵の手に落ちた、だが帝王ジードがそう簡単に執政を行えるとは思えない。
誰かが協力しなければ無理な話だ、それに帝国兵は現在全盛期の半分以下まで勢力が減少している。
魔王がそうなるようにことを運んだからだ、魔王国から一番近い帝国領トローレは港町で、過去にも攻め入ったことがあるが、その後方には山脈が広がり一時的に占領してもそこから先には攻めにくい場所でもある。
帝国に再度攻め入るにはそれでもその場所を手に入れるのが必須なのだ、現在はどの魔法陣も無効化されており魔法ですぐには帝国に入ることはできない。
帝王ジードに憑依して20年徐々に乗っ取る計画が、聖女のせいで水の泡となってしまった。それでもこの1週間でかなり帝国からは物資を搾り取れたのだが、その量は予想をかなり下回っている。
「それでは作戦会議を執り行う」ムスリナム・ダ・クルスト元帥
目の前には楕円形の大きなテーブルが有り奥には魔王が腰掛け、その両側に各魔将軍がそれぞれ座る、現在4名の将軍はすでに仕事を割り当てられているが残りの3将軍と元帥であるムスリナムが作戦室にいる。
ゴッゾニア帝国占領そしてエイジアル王国の占領がたった数日で白紙に戻ってしまった。
両方の国から得られる利益はかなりの物だった、それが一気に無くなったのだ、兵士たちの収入も当然のことながら激減するだろう。
彼らの反感をかわすにはすぐに戦争へと移行して敵の陣地を手に入れなければ減った収益を満たすことができない。
「我々はまず港町トローレを手中に収めそこから他の地域へと戦火を拡大し帝国を再度わが手に入れる、何か質問は?」ムスリナム元帥
「もう帝国からの物資は手に入らんのですか?」ジョーニ将軍
「ああすぐに物資の放出を半分以下にするようお触れは出したがこれからは戦争による略奪でしか手に入らない」ムスリナム元帥
「贅沢もおしまいじゃのう」バロン将軍
「それで?」ウッシー将軍
「3将軍にはそれぞれ敵国の情報を探ってもらう、特に聖女教の動きだ」
約20年帝国を操りほぼ完全に手中に収めたと思った矢先、たった数人の聖女達にわずか数日でひっくり返されてしまった、失敗した原因はたまたま帝国に魔族側の将軍職が一人もいなかったこと。
そして噂をしていた通りブリタス聖王国への進軍は事実だったこと、将軍職を全員一時帰国させていたのが裏目に出た、そのため兵士全員の一時帰国まで不思議に思わなかったことだ。
まあ単純に今までがうまく行きすぎていたのも油断を生んだ原因でもある。
魔王の元、元帥の命令で3将軍は3つの国へと聖女の動向を調査するよう部下へ命令を下した、一つは聖女教の総本山ローデリア共和国、次に奪還されたエイジアル王国そしてブリタス聖王国だ。
ゴッゾニア帝国にはすでに2将軍が向かうためわざわざ他の将軍を向かわせる必要もない。
これからブリタス聖王国へと戦争を仕掛けるはずが、計画を大きく変更せざる負えなくなった。




