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聖竜王の誕生

聖竜王の誕生


それは意図したわけでは無い偶然だった、本来ならば数年前に孵っているはずの虹の王卵。

闇に捕らわれ真っ黒く染まっていたがために本来の聖属性が阻害されていたのだ、その成長を著しく遅らされていた虹の王卵。

だが聖女ラポーチにより障害が取り払われたと同時に聖女の力である神聖力を浴び一気に成長を始めた。


【こ これは】

「何?」アリスリア

「わ~ヒビが入ったどうしよう」ラポーチ

「聖女様違いますよ卵が孵ろうとしているのです」

「珍しいわね」

「まあなんとなくそうなると思っていたけど、これほどとはね」ジャクライン

「…歴史的現場かしら、戦わなくてよかったわ」コッテロール

「死んだ卵ではなかったのか」帝王ジード


みるみるうちに卵の殻は割れて行き、中から真っ白いトカゲのような赤ちゃんが首を出す。


「キュ~」


思わずラポーチがそのトカゲに手を差し伸べる。


【あっ】ボルケール

「あら」ジャクライン


卵から生まれる爬虫類あるある、最初に見たものを親だと思う習性があるのだが、この場合は少し違う。

元々聖竜は転生すると言う生態を持つ、従って今回は親だと思うのではなく自分を守ってくれる従者的な存在だと認識するのだが、聖竜の赤ちゃんは目の前にいるラポーチをもう一つ上の存在だと認識したらしい。

差し伸べた手を舐めてすぐによちよちとラポーチの胸の中へと飛び込んでくる。


「ワア 白い~かわいい~」


この時点でボルケールの取り返すと言う計画が半ば失敗に終わったことになる、恐る恐る聖竜に手を出そうとするが、その手を見たとたんまるでお呼びじゃないとばかりに白い竜はそっぽを向くのだ。


(な なんで…)ボルケール

(わたしが盗まれてから20年もかかっているのに今更媚びを売ろうとでも?おかげで10年以上この世に転生するのが遅れたのですよ)聖竜


まだ言葉を話すことができない幼体の竜、だがどうやら竜族だけが使えるテレパシーみたいなものがあるようだ。

聖竜にそういわれてボルケールがガックシうなだれる。


「どうしたの?」ジャクライン

【怒られてしまった…】


周りはその様子を呆気に取られてみていた、だがこの状況は半ば定められていたのではと思わせる。

聖女と聖竜が出会うそれが何の関係も無いわけがない、しかも願いと言う聖女の中でも異質な能力を持つラポーチがこの場所にいると言う事。

それ自体が定められた輪廻なのかもしれない、ラポーチはそんな事全く考えていないがこの時から運命は歯車のようにがっちりと噛み合い回り始める。

聖竜・生まれたすぐの大きさは尾まで入れて体長30センチ、体重は4kだが羽がすでに生えており、その姿は竜の縮小版と言う姿。

そして肌は白とみられる鱗状の肌をしているのだが、実は少し虹色に反射しているオパール色。

目はなんとピンクの瞳、生まれてすぐは歯も小さく牙はまだない。

頭には小さな角が2つ生えており、頭頂部には白い毛が産毛のように生えている。

この幼体の聖竜でも数種類の魔法が使える、特に聖魔法は小さいながらも再生魔法まで使えたりするし、飛行魔法も使えたりするのだ。

しかも聖属性の人や遺物がそばにあったりすると能力も数倍になると言うおまけがつく。


「それでこれからどうする?」ドーン

「王様は私たちがいなくなってもやれるかしら?」アリスリア

「そ それは…」

「手伝うよ」ラポーチ

「え~!」一同


ラポーチが放った一言でなぜか皆手伝う方向で動き出す、まあよく考えてみればわかるのだが。

ここで去る選択肢を取った場合、まだ王として独り立ちするには不安なジードに帝国を立て直すだけの力量が果たしてあるのだろうか?否である。

彼はまだ15歳の精神年齢、体を乗っ取られたときのままなのだ、姿かたちは魔王のせいで老いたとしても中身は少年、彼を手伝わず去った場合又魔族に魅入られて、国を分けての戦争へと突き進みいつまで経っても平和にならない。

知らないうちにラポーチはジードの心を読んでいた。


(どうすればいい、私が王に…家族は全員いないと言うのに一人ボッチになってしまった)ジード


転生前自分が置かれた状況と彼の心境がかぶって見えていた、ラポーチには特に国同士のいさかいなどはどうでも良いと考えている、ただ助けたいと思うその気持ちだけで動くだけ。

その行動にいつの間にか周りが引きずられて行くことまでは考えないが、ラポーチがそう思うそして願えばなぜかその通りになってしまうのだから結果として勇者達はラポーチに抗う事さえ無駄なのだ。


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