浄化作戦
浄化作戦
敵を懐柔し先へと進む6人、給仕はかわいそうなのでチャームの魔法を使い一時無力化することにしておいた。
「もしかしてアルダリオと戦っているのはボルケール?」
「そうよ」
「じゃあジャクライン様もいるの?」
「そうよ」
「やっぱり」
「何か問題でも?」
「いいえ、それじゃ協力するから少し待っていてもらえるかしら、今帝王の寝所には私の部下が2名警備しているわ、その2名を下がらせるから」
「寝所の警備?」
「そうしないと虹の王卵を手に入れられないわよ」
城の宝物庫には当然カギが掛かっていて、そのカギは魔法で開くようになっている。
もちろん王族でしか開けることはできない。
王族は彼しか残っていないため彼を元通りにしない事には宝物庫を開けることもできないのだ。
「私が先に行って警備を下がらせるわ、そしたら合図するから寝所に入ってきて」
「分かったわ」
寝所の手前にある女中待機室に通されるとしばし待つことになった、待機室には誰もいなかった。
「なんかできすぎじゃない?」
「まあ確かにな」
「でも嘘はなかったよ」ラポーチ
「まあ嘘なら嘘でやり方は他にもあるでしょ」
「確かにそうね」
「大丈夫ですよ、聖女様のお力があれば」マーベル
最後にはラポーチの力で何とでもなると言えばその通りなのだが、それだって万能ではないのだ単純に雷を起こせるのは分かったとしてもその範囲は?威力は?と考えていくと雷に頼りすぎるのも危険な気がするのは当たり前。
ラポーチの能力で雷を起こしたとしてそれが利かない相手がいないとは言い切れない。
この状況もまだ魔王に知られていないからこそうまく行っているのだ、知られてしまえば全ての転移魔法陣を使えなくされて帝国に入り込んだ魔族から一斉攻撃を受けてもおかしくない。
そうなればいくら勇者で聖剣持ちだとしてもただでは済まない。
そんなことを考えていると待機所にある通信機(昔の電話機に似ている)から声がする。
『終わったわ来てくれる』
待機室から出て帝王の寝所へ入ってみるとそこには大きな天蓋付きのベッドがあり、金色の髪をした青年が一人寝ているのが見えた。
「手下は?」
「買い物に行かせたわ、臭い消しを買って来てって」
「ああ~うまい言い訳ね」
確かにコッテロールの服からあのものすごい臭いの残臭が漂ってくる。
まあラポーチぐらいしか気にはならないぐらい匂わなくなっているが。
ラポーチも今は布を顔に巻き付けている。
「これからどうするの?魔王の呪詛は簡単には解けないわよ」コッテロール
「まあみててみなさい」アリスリア
ラポーチは寝ている男性の手を握ると、マーベルの妹の時のようにまずはその体に起きている病気や呪詛そして洗脳魔法などの情況を測っていく。
「うん、大丈夫やってみる」
「我が身の中に宿る浄化の力よ顕現せよこの者の身に起きたる不浄の力を取り除け、パーフェクトクリーン」
ラポーチがそう口に出し願うただそれだけ、するとベッドに眠る青年の体はラポーチが発する光の中へと飲まれて行く。
「何これ?」
「聖女様のお力です」
その後、徐々に光が収まって行くとベッドに横たわる青年は目を覚ます。
「ここは…」
「あんたがジードブラッツアールGだよな」ドーン
「きょ巨人族!」
「ああ別に攻撃しないわよ」
「なんでここに?それに私は…」
「あんた記憶がないのかい?」レドラ
「珍しい卵、触れてその後…わからない、僕は何を?」
「あんたは魔王に操られて父と母そして姉弟全員皆殺しにしたんだよ」レドラ
「そ そんな!」
「本当の事よ、そして今あなたがいるこの国も魔王国に侵されてそのうち滅んでしまうわ」アリスリア
「分からない、そんな僕はどうしたらいいんだ」
「おじちゃん」
「お おじちゃん?」
「あんた多分20年ぐらい操られているんじゃない」
「はい、魔王様・いえ魔王が憑依呪術で帝王を操りだしてから20年が経ちますからその間の事は何も覚えていないのでしょう」コッテロール
「まさか」
帝王ジードはベッドから体を起こし部屋に添えつけてある鏡の前まで行くと、その姿に絶望した。
あのかわいらしかった少年の姿はそこには無く、美形だが影の差す目と青白い顔そしていつの間にか大人になった体が目の前にあった。
そして頭を抱えるとしゃがみこんだ。
「うそだ!こんなことって…」
「あなたは今帝国の王様なの、魔王に操られていたとしても逃げることはできないわ」アリスリア
「僕に 何ができる」
「あなたは先代帝王を見て来たわよね」
「僕に父のまねごとをしろって言うのか?」
「王は命令するだけよ」
「命令?」
「そういえば今この国は魔族に金も食料も差し出すお触れが出されているわね、まずはそれを廃止したらいいんじゃない?」
「いやそれをやるとすぐばれるだろう」ドーン
「じゃあおまけで魔族を排除するようにお触れを出せばいいんじゃない?今ならすぐに暴動が起きて魔族は全員逃げまどう事になるわよ」
簡単なようだがこの進言には無理がある、その前にしなければいけないことがあるからだ。
何をするにも有利になるような計画を練らなければいけない、ただ命令するだけではなく。
全てが魔王の計画だったと国民に知らせてから行わなければ悪者は帝王と言う事になってしまう。
「では文官を呼んで今後の作戦を立てましょう」マーベル
「文官?」
「多分今は牢に捕らわれているはずです」
そういえばここまで見回りの警備兵はいたが、本来いるはずの文官や宰相と言った国を運営するための各種政務官が一人もいなかった。
彼らは全員殺されるか又は牢屋へと幽閉されてしまったのだ、魔王国にとって彼らは必要ないどころか計画の邪魔にしかならないからだ。
「分かったその者らを解き放ち協力を仰ごう」
そこに先ほどの戦いを終えたジャクラインとボルケールがやってくる。
ガタン!
【やはりここか】
すでに変身し直し人型になったボルケール、戦いでちぎれてしまった服を脱ぎ捨て、急遽厨房から料理人が着る服を借りて真上から羽織っている。
何故かジャクラインも同じものを羽織っていた。
「だってこんなのしか無かったんだもの」
確かに二人ともほぼ裸同然まで服がボロボロになっていたのは確かだ、あの格好で帝城内を歩き回るのもかなり違和感がある。
急遽厨房にいるお休み中の料理長に話しかけ、着るものを借りることにしたのだ。
まあ厨房にドレスや戦闘服があるわけがない、あるのは調理人が着るようなポンチョや帽子など。
たまたま予備の割烹着が有ったのでそれを借してもらえることになったが、その代わりかなり文句を言われたと言う。
「なんだこれは!あの臭い魔人をわしらに片付けろって言うのか?」料理長
戦いの後食堂内はめちゃくちゃになり椅子もテーブルも、跡形もなく壊されていた。
そして残されたのは掃除とお片付けなのだが、一番の面倒ごとが屍になったアルダリオだ。
まあ着るものを頂戴する手前、放っておくわけにもいかず、ボルケールはアルダリオの体を抱えると厨房の廃棄施設(ごみ置き場)へとアルダリオを投げ込んだ。すでに死んでいたようでピクリとも動かなかったが、あのまま放置しておくとさらに臭くなっていたことは間違いない。




