魔女コッテロール
魔女コッテロール
魔女コッテロールは事務室まで戻り避難してきた、当然出された食事の皿を2点持ってきて現在はそれをほおばっている、そこには先ほどえずいていた給仕がコッテロールの注文に対応していたが、すでに皿はきれいに食べつくされコッテロールの食事は終わろうとしていた。
「なんか揺れない?」
「なんでしょう、見てきます」
「お願いするわ」
数秒して給仕が戻ってくるとアルダリオが竜人と戦っていると告げた。
「あのバカ、それで相手は竜人なの?」
「確かボルケール様だと思います」
「なんで味方と戦っているのよあいつ」
コッテロールは竜王ボルケールやジャクラインとの面識がある。
特にジャクラインは魔女ならば知らない者はいない歴史上の人物だ、今魔王国にある魔女協会は元々ジャクラインが設立したものであり。
後に乗っ取られるまでは不動の地位を誇っていた、一部の魔女からはまだ彼女を崇拝している者もいる。
時代は変わりすでにコッテロールの師匠ぐらいでないとその話もあまり話題に上らなくなってはいるが。
そんな人物が今回仲間として参戦する為コッテロールも一度挨拶している。
だが何故?
「分かったわ、行きましょう」
魔女コッテロール・シルバイア(37歳)は魔女協会に所属する中堅魔術師だ、師匠は魔女協会の古参魔術師ドロリア・カーマイン(77歳)、ドロリアはジャクラインの又弟子に中る。
だが崇拝しているわけでは無く、その技術を高く買っていると言う形だ。
師匠からは少し話を聞いていたが会ってみて少し興味がわいていた。
(ボルケールがいるならジャクラインもいるはず、だが彼らはエイジアルに配属されたはず)
帝城にいくつかある事務室から廊下へ出ると食堂へと向かう通路を歩き始めるとそこにはジャクラインではなく、アリスリアとラポーチ達の姿が。
「あなたたち何者?」
「俺はドーンボルカノ勇者だ」
「あたいはレドラガリオン同じく勇者」
「同じくアリスリアフィーリホフ、じゃなかったアリスリアフローゼル勇者よ」
「マーベルフォレスタ聖女様の下僕であり新米勇者です、そしてこちらが聖女様」
「聖女ラポーチと申しますです」
「なんか恥ずかしいよ~」
「は~~?」
聖女と勇者の話は聞いている、一人でもかなり厄介な相手であり戦うなら勇者一人に対し最低小隊規模(30人以上)の部下がいなければ勝ち目がないと言う話を。
目の前にはそう名乗る人物が4人もいて、さらに聖女などと言う人物までいると言う。
確か聖女と勇者は常に協力関係にあり、勇者は聖女の協力で力を発揮できると言う話も聞いている。
ここは戦うべきかそれとも情報を引き出すため話術で切り抜けるべきか。
魔女コッテロールは少ない知識を振り絞ると、まずは結論から消去法で考えることにした。
(戦えばまず勝てはしない数的にも無理がある、そして負ければ死又は奴隷となる)
(ならばどうするか?選択肢は一つしかなくなる)
コッテロールは敵に情報を渡し、まずは保身に走ることにした、但しそうすればばれた時には魔族の裏切り者として殺されるか奴隷に落とされることになる。
どちらが生き残る可能性が高いか、この帝城の中には見回りの兵士が10人以上いるのだが。
どう考えてもそれら兵士が勇者相手に勝てる見込みはなさそうだ、ここまで入り込まれたところを見れば彼らも軽くやられてしまったとみて間違いはない。
そしてどんな方法で来たのかも聞いてみたいと言う気持ちが湧いてきた、コッテロールも魔女とはいえ研究畑に身を投じた一人だった。
(せっかくこの地位まで来たのに、仕方がないわ)
「それで私をどうするの?」
「それはあなた次第ね」アリスリア
「じゃあ協力するから守ってくれるかしら?」
「守る?」
「だってあなたたちと戦えば私は無事じゃいられないのでしょ?」
「確かにそうなるな」ドーン
「でも戦わないと裏切り者になるわけよね、私は一応幹部なんだし」
「本国の暗殺部隊から守ってくれれば言う事を聞くってわけね」アリスリア
「分かるなら話は早いわ」
そしておもむろに手を差し出すコッテロール。
アリスリアはラポーチの顔色を見る、なんで見たかと言うとアリスリアはラポーチに合図したのだ、それを見てラポーチは魔女コッテロールの考えを読んでみる。
(あーこれでおわりかなー魔族の隊長格もなるの大変なんだよね~でも聖女と勇者ってまだ魔女協会でも題材にしている研究者はいなかったはず、もしかしてチャンス?)
「この地位もなるのに大変だったけどまあいいや~って感じ」ラポーチ
「あらそう」
「もしかして、人の考えを読めるの?」
「そうだよ」ラポーチ
コッテロールはそれを聞いて完全にリューゲル魔王国とはさよならする決心がついてしまった。
当然アリスリアもコッテロールの手を取るとにっこり微笑んだ。
「よろしくね」
(あ~悪夢だわ)
アリスリアの笑顔に対してコッテロールは同じように微笑むが、その眉尻はぴくぴくと動いていた。




