帝城
帝城
ドーンの相手である氷狼が砕け散り、それを見た魔術師は後ろにある魔法陣へと走り出す。
「あ、逃げちゃう!」ラポーチ
「くそっ!」ドーン
魔術師が逃げ出すのを見てドーンも走り出すがどう考えても、その距離を詰めるには離れすぎていた。
だがそれを見て聖弓アルテラミスを手に入れたマーベルが弓をつがえる。
「任せて!当たれ!」
ピシュ!
目いっぱいに引かれた弦からホークアイに導かれ的へと解き放たれた矢、その間わずか2秒と言う速さ。
後ろを見ることもせず走っていた魔族の魔術師はその肩に激痛を感じると2・3歩進み地面へとつっぷした。
それを見た残りの魔術師達も立ち上がり逃げようとしたが、マーベルの矢を射る速さには勝てなかった。
ビシュピシュ!
「うっ」
「あっ」
なんと経った5秒で残りの魔族は全員ピクリとも動かなくなった。
よく見ると魔族の魔術師達3人の体には淡くオーラのようなものが見える、聖弓の効果である、身体麻痺効果。
体の自由を奪うだけではなく、当たれば標的の魔力を奪っていく、淡く光るのは体から魔力が漏れ出していることを意味する、当たった後は矢が刺さった痕だけが残ると言うまるでレーザーの跡のようだ。
もちろん急所を射抜かれれば死亡するのだが、聖女を崇拝するマーベルは聖女の意思を継ぐべくわざと急所は外して狙いをつけていた。
「すごいすごい」ラポーチ
「あら やるわね」
いつの間にかアリスリアも敵の帝国兵を全員倒して戻ってきていた。
「まさか新しい勇者とはね」レドラ
「どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ」アリスリア
「よろしくな」ドーン
【全く恐ろしいおなご達だな】
「それってあたしも?」ジャクライン
【もちろんおぬしも含めてな】
これで障害はすべてなくなった、7人は2つ目の社へと近づいていく。
1つ目と同じような作りだが、床一面に書かれている転移魔法陣は1つ目のより大きくそして複雑な文様だった。
「どう?」
「確かにこの魔法陣は帝城行きの魔法陣ね」ジャクライン
【ようやく取り返せる】
「今度は全員一緒に行けそうね」
その魔法陣は縦横直径10メートルはありそうな大きさ、前線に兵を運ぶときに使えるように大きめに作成したのだろう。
普通の人ならば25人近くまでいっぺんに転送可能な魔法陣。
だがこの大きさの魔法陣と言う事は、転移先は普通の場所とは思えない。
「確か大型の転移魔法陣は兵舎の練兵場脇にあったと思うわ」ジャクライン
「だとすると…」
「あたしの雷王ちゃんに任せて!」
確かに兵舎がある練兵場に併設されている魔法陣と言う事なら、目の前は敵の真っただ中と言う事になり。
通常の戦闘ならこの人数では太刀打ちできるわけがない、ラポーチを除いてだが。
「それしか方法がなさそうね」
「どちらにせよ、そこから先も戦わずに進めるわけがないからな」
【その通りだな】
「じゃあ気づかれる前に次へと進みましょう」ジャクライン
ここでの戦闘もすでにばれている可能性がある、まだ町から兵士が駆けつける様子はないが。
兵士は交代で任務を行っているのだろうし、休憩が無いことなどありえない。
最低1時間で交代するとみれば、最初の戦闘からもうすぐ30分が過ぎようとしている。
異変に気付き誰かがやってくれば、帝城へ進むのがさらに難しくなって行くだろう。
「そうね」アリスリア
「わくわく」ラポーチ
【腕が鳴るわい】
それぞれの思いを胸に敵の首都、それも敵の大将がいるゴッゾニア帝国の帝城へと突き進む。
果たしてその先には何があるのだろうか?
第一章 完




