ボルケール対憑依魔族
ボルケール対憑依魔族
まるで鏡を見ているようだった、その姿は下半分が人の様な足と胴体だが上半分は竜の様。
ボルケールの変身魔法別バージョンとそっくり、ボルケールの変身魔法はいくつかあるらしい。
よくある段階的変身、人型・竜人型・火竜型・そして大火竜型。
その中の竜人型とほぼ同じ容姿、そしてボルケールもそれを見て自らの容姿を合わせて戦うことにした。
【変身魔法竜人!】
その大きさは人型の2倍になり上半身にはうろこ状の皮膚、そしてお尻からは長く太い尻尾が生え、口は大きく裂けて牙が大きくせりあがる。
相手の憑依魔法と比べても外観的には優っているような容姿に変身した。
その姿で戦う、それは真っ向勝負だった。
「ガオ~~」
【その姿2度とできないようにしてやる】
まずはお互いの爪を使い相手の体へと攻撃するが、どちらも傷がついてもあっという間に治っていく。
竜族の特殊能力である自己修復スキル、だが本物と憑依変身ではその膂力は大きく違う。
ボルケールはそのままずっと戦えるが、変身は魔力が尽きればいずれ解けてしまう。
魔族の憑依術師はMPが切れた時点でその命を失う可能性があるのだが。
傷は治っているように見えるがそれはMPをかなり消費することを意味する。
お互いの爪は何度となく相手に傷を負わせはしてもそれ以上の決め手がない、だがこの状況でもボルケールには本物の火竜が使える各種魔法がある。
火属性魔法は本来はファイヤから始まるが火竜であるボルケールが使うと中級魔法に匹敵するファイヤーブレスからになる。
但し肉弾戦で戦っているときには避けられる可能性が高いのでタイミングを見計らっているところだが。
相手もなかなか素早く、こちらが魔法を使おうとすると視界から逃げ出してしまうのだ。
【くそっ!】
「ガウ~」
そうこうしていると、ジャクラインから追加のバフが飛んできた。
「何もたもたしているのよ! スピード」
【かたじけない】
相手の動きに対してやはりボルケールの方が遅かったのを、味方であるジャクラインが見逃さなかった。
【これでどうだ!】
「グアウ!」
相手の体が視界から移動した直後に先回り、さらにそこから太く長い尻尾を使ってカウンターを叩き入れる。
相手の脇腹にその太い尻尾がめり込むのが見えた。
「グ グ」
【くらえ!ファイヤーブレス】
「ゴー」
吹き飛ばされて倒れた魔族、そのまま数秒起き上がれないところへボルケールから容赦ない攻撃、憑依変身後の能力である自己治癒スキルでもその火力の前では太刀打ちできなかった。
徐々に皮膚は真皮まで焼け修復不可能な火傷へと変化していく。
とうとう変身魔族はその姿を保てなくなり元の人型へと変化していく。
「うお~苦しい~ た たす け て…」
最後は焼けただれた肉の塊となり息絶えた。
【こんなので苦戦するとは、又修行でもするか】
「長い間戦ってなかったんだもの仕方ないわ」
【だが奴が生き返ったならそうも言ってられん】
「そうね、そうかもね」
魔族との戦闘、過去にも同じようなことがあり一族総出で魔王国と戦争をしていた時期もあった。
今から5百年以上前の事、二人は共闘し魔王と戦ったことがあった、その時の相手こそ先々代の魔王ジオルク。
だがその戦いは引き分けで終わっている、もともとドラグニアに住んでいた竜族の元に魔王が戦力を増やす名目で攻め入ったことがあったが、そこにはもう一つの用事があった。
それは魔女ジャクラインの引き渡しだった。
魔女ジャクラインは元々魔王国の出身、彼女の高い魔法知識を使い魔王国は様々な魔法を開発し戦争に使用していた。
だが彼女の妹である魔女スーベリアが事故によって死んでしまう。
その事故は仕組まれたものだった、ジャクラインは魔法を使い調査を始めたが。
裏には当時の魔王ジオルクが一枚かんでいることが分り問い詰めたところ、逆に命を狙われる羽目になってしまう。
ジャクラインは命の危険を感じ友達だった竜王の助けを求めドラグニアへと逃げ込んだ。
そして当時の竜王アルカルカタスは彼女をかばい戦いの中魔王の攻撃を喰らい命を落とす。
もちろん魔王ジオルクも大きな傷を負うことになりドラグニアから逃げ出した。
その時瀕死の竜王から託された約束が虹の王卵を守ると言う事、その代わり彼女は竜の血を飲み永遠ともいわれる命を手に入れたのだ。
現在の竜王ボルケールは先代の竜王アルカルカタスの息子であり、目の前で命を落とす父の姿を目の当たりにし、いずれ復讐を果たすと父の前で誓ったのだ。
【今度はこちらの番だ】
どうやらこちらもうまく敵を排除できたようだが、今回の魔族には苦戦してしまった感はぬぐえない。
ここまでラポーチの力に頼りすぎてドーンもボルケールもただ見ていただけだったのが裏目に出てしまった。
戦いは虹の王卵を手に入れれば終わると言うわけでは無い、魔族の王に考えを改めさせるか、最悪魔王と戦い黄泉送りにでもしない限りこの戦いは永遠に続くだろう。




